太陽の子、ゼウスの使い魔   作:ブライ

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十二話 出会う力と技の男 パート2

「まだ見つからないのかね?」

 

「申し訳ありません、現在は瓦礫の撤去や逃走した者などの確認で作業が大幅に遅れております」

 

「まぁ構わない、予想外の事が起きたとはいえ被害は少ないし王達との戦いは終わったのだ」

 

 

黒い帽子を被りカールした髪型の男が一人の兵士に話す、彼の名前はオリヴァー・クロムウェル、レコン・キスタの長である、元々はブリミル教の司教の一人にすぎなかったのだが貴族派達をまとめ上げこの内乱を起こした人物でもある。

 

 

「しかし赤い仮面の男か、噂に上がっていた銀色の悪魔といいもう噂で片づけられんかな」

 

「だと思われます、初めは盗賊上がりの者たちの戯言かと流されていましたが、実際に見た者が多く目の前で城を破壊されたのでは信じない訳にはいかないでしょう」

 

 

その話を聞き、ふむ、と頷きながらクロムウェルは考えるようなそぶりを見せる。

 

 

「おいおい共に戦ってくれた同士の事をあまり悪く言わないで上げたまえ、まぁその男が王たちを倒してしまったのは残念だが起こってしまった事よりもこれからの事を考えるとしよう」

 

「やはり我々で首級を上げねば……」

 

 

そう言う兵の言葉をさえぎりクロムウェルは話す。

 

 

「いや、そう言う事では無い、先ほどの残念と言う意味はな……王たちとも仲直りをしたかたったのだよ」

 

「仲直りですか?」

 

「そうだ、本当に残念な事だが戦いが起こってしまい、この様な事になってしまったが、一度死んでしまった後ならばそんな事も気にせずに仲良くなれると思うのだ」

 

 

普通ならばこの様な事を言われれば何を言っているんだと思うだろうが、この言葉の意味を兵達は理解している。

 

 

「なるほど、虚無の力でございますね」

 

 

虚無の系統、始祖ブリミルが使ったとされる失われた系統、水、風、土、火、この四つのいずれにも属さぬと言われているが詳しい事は伝えられていない、いや正確に言えば残っていないと言うのが正しい。

それをクロムウェルは使えると言うのだ、しかも噂だけでは無い、何度かレコン・キスタの者たちはその虚無の魔法の奇跡を見ているのだ。

 

 

「そう言う事なのだよ、しかしそれはともかくとして、そろそろワルド子爵から連絡があっても良いと思うのだが」

 

「そちらの方も残念ながら……」

 

「まぁ彼も王宮に仕えている魔法衛士の隊長なのだ、動くのに手間取っているのかもしれないな」

 

 

ワルド子爵に頼んでいたのは、トリステインとゲルマニアとの連合を破棄させるための手段である。

そして彼の報告からするとウェールズとアンリエッタは恋仲にあったとの事だったので、その方向から何かないか探らせていたのだが、そろそろ一時連絡がくるはずなのだ、レコン・キスタとアルビオン現王権との情勢は知っているはずなので、流石にアルビオンが落とされた後まで連絡をよこさないと言う事は無いだろう。

 

まだまだ気になる事はあるが戦い事態はレコン・キスタ側の勝利で終わっている、今の作業も所詮は余計な犠牲をださないための処理と確認に過ぎないのだ。

 

ちなみに彼らがワルド子爵は既に赤い仮面によってボコボコにされた上に、トリステインの王宮にしょっ引かれていると言う事を知るのは、もう少し先の事になるのだった。

 

 

そして噂に上がっている赤い仮面のV3こと風見志郎は、ガーゴイルに乗り船の近くまで寄りは腕を横に構え力を込める。

 

 

「変身……V3!!!」

 

 

その掛け声と共に船に向かって飛び立つ志郎、腰には二つの風車のあるベルト、ダブルタイフーンが浮かび体を変化させ、力と技を兼ね備えた仮面ライダーV3へと変身を完了させる。

 

 

「な、なんだお前は!!」

 

 

いきなり甲板に現れたV3を見て驚く乗組員達、それを無視するかのようにV3何かを空中に飛ばすとそのまま駆け抜けて行く。船というのは大砲などで弾幕を張れるので近付くのは非常に困難だが、一度中に入られると対処するのは難しい。

 

なので大体は船に乗り込まれてしまう前に敵を叩かねばならないのだが、一騎しか居なかったので発見と対処が遅れてしまったのだ。

 

しかもこの一騎は平民が白兵戦で倒すのはほぼ不可能なレベルの一騎なのだ、乗りこまれた時点で詰んでいるとすら言える。

 

V3は襲いかかってくる敵を細心の注意を払いながら、当て身などで気絶させながら進んでいく、生身の人間相手にするのは中々に神経使うが泣き言は言えない。

 

 

 

「さて、操舵室は……あそこか」

 

 

V3は先ほど空中に飛ばしたV3ホッパーからこの船の情報を読み取る、このV3ホッパーは怪人の能力などを図る事が出来る他に、地形や内部構造を調べる事の出来る優れ物。余談だが光太郎を見つけたのもこれのおかげである。

 

 

そこまで大きなサイズでは無いとはいえ戦艦は戦艦。数十人ではきかない数の乗組員がいる。全員を倒すだけならばそこまで時間はかからないが、問題はこれをウィールズ達の元へ持って帰らねばならないと言う事だ。

 

だがV3には一人でそれをどうにか出来る術があったのだった。

 

 

「操舵室、機関室、人員……良し動かせるな」

 

 

V3は幾つかのガーゴイルを取り出し命令する、例え船の操舵が出来たとしても一人では船を動かす事は出来ない。そこで自分の思い通りに動かせるガーゴイルの出番と言うわけだ。

 

V3はガーゴイルに指示を出し自分は操舵室に向かう、そしてたどり着くと素早く動きそこに居た船員たちを気絶させる。

 

そして船内全域に聞こえるように伝声官を使い放送するのだった。

 

 

 

 

そしてV3が戦艦に乗り込んで十数分が経ち船体は当初の位置からずれていく、少し高度が下がり方向転換をしている、これは乗りこむ前に言っていた合図でもある。

 

 

 

 

「おっ、どうやら上手く行ったみたいだな」

 

「でもどうやって乗り込むのよ」

 

「まぁ見てなって、へん……しん!!」

 

 

光太郎はRXへと姿を変えルイズを脇に抱える。いきなり抱えられ反論しようとするが、その暇は無かった。

 

 

「しっかり捕まってろよ」

 

「え?きゃああああああ!!」

 

 

RXは膝を曲げ空に浮かぶ戦艦に向かい大ジャンプをする、RXは垂直飛びで60Mジャンプする事が出来るのだ。

 

そして自身のジャンプが最高点に達した時に、ライドルをロープモードにし戦艦に引っ掛け見事に着地する。

 

 

「とうちゃ~く、痛って!!なんだよ」

 

「うううう、うるさい馬鹿!!飛ぶなら飛ぶって言いなさいよ!!!」

 

 

RXに抱えられたまま顔をポコポコ殴るルイズ、彼女は少し涙目になっている。20階のビル程度の高さを、脇に抱えられて飛ばれては怖いに決まっている。

 

 

「あー悪かった悪かった、それよりも取りあえずは操舵室に行かないとな」

 

「反省して無いわね……ま、まぁいいわ今はやらなきゃいけない事があるものね」

 

 

一回深呼吸をして息を整える、色々な事が一気に起こって混乱しそうになるが、なんとか心を落ち着かせ二人は操舵室に向かうのだった。

 

 

 

 

一方その頃、レコン・キスタ側の方も異変に気付いていた。いきなり戦艦の一隻が動いたのだから当然と言えば当然だ。

 

 

「どうした!!あの艦からは連絡が無いのか!!」

 

「どうなっている、動けと命令はしていないぞ」

 

 

と状況が分からずに将兵達が騒いでいると。

 

 

「報告いたします!!今あの戦艦に乗っていた龍騎士からの情報です」

 

 

と慌てた様子で伝令役の男が入ってくる。

 

 

「先ほど赤い仮面の男に、館内に侵入され操舵室を占拠されたとの事で、しかも奴は堂々と伝声管を使い、戦艦は貰って行くと宣言した模様、乗組員はまだ何割か中に残っていますがいかがしましょう」

 

 

そう報告され、しばしの沈黙の後一人の男が声を荒げる。

 

 

「ただちに航空戦力で追いかけさせろ、最悪の場合は撃ち落としても構わん!!」

 

 

そう命令しすぐさま兵に伝えられるのだった。

 

 

 

 

最悪の場合は落としても構わない、そう言われたがその最悪はもう既に来ていると言ってもいい。

 

殆どの船は停船状態な上に、今から船を動かして追いかけてもその前に目標を失ってしまうのは目に見えていた。

 

ならば幾つか素早く動ける龍騎士を何騎か先行させ砲撃を開始しながら近付く、もはや落とす気で動かねば逃がしてしまう様な状況だったのだ。

 

 

「砲撃用意、撃て!!」

 

 

奪われた戦艦目掛け大砲を発射する、ある程度距離があるために全て命中させるのは難しいが、幾つかは船に直撃するコースを飛ぶ。

 

しかし直撃する前に船の甲板から謎の光が放たれ、弾は撃墜されてしまったのだった。

 

「ば、馬鹿な……一体なにが」

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく先輩も人使いが荒いぜ」

 

甲板にいるのはロボライダーに変身したRXである、先ほどの大砲を打ち落したのは、ロボライダーの専用武器のボルティックシューターによる狙撃だ、V3が船に乗りこむ前に光太郎に頼んでいたのは船の護衛だった。

移動し始めた船を敵とみなして攻撃しようとしてもすぐに船で追いかけるのは難しい、当初は竜騎士などが追いかけてくるだろうと思い念のために配置していたのだが、砲撃という落とす気満々の攻撃がくることとなり、RXを置いていなければ下手をすれば撃墜されていたかもしれないので、用意というのは周到にやっておくものだ。

 

 

「光太郎、10時の方向からも来るぞ注意してくれ」

 

 

「了解!!」

 

 

返事をした後にロボライダーはボソッと呟く。

 

 

「しかしまだこっちには人が乗っているってのに撃ってくるなんてな……」

 

 

戦艦を強奪しておいて言うのも何だがと思いつつもロボライダーは思う。戦争と言うのは政治の延長であり、不特定多数の人間に被害が及ぶテロとは違うのはある程度は理解している。

 

だがこの内戦の理由が、【現王権を打倒し貴族を纏め聖地を目指す】と言うのもならば、もう既に体勢は決している。

 

そして彼らの戦争の行動理由からは、この内戦の勝利だけでは終わらず、次の戦争を仕掛けようとしているのはこれまでの経緯からなんとなく分かる。

 

ならばこれ以上の犠牲を出さず、次の戦争が回避出来るのならば、今の自分の力を振るう事に戸惑いは無い。

 

そしてその犠牲を出さずと言うのは、レコン・キスタ側に付いている人間達の事も入っている。

 

 

「さて、かかって来な、俺は手ごわいぜ」

 

 

ロボライダーは気合を込めてそう宣言するのだった。

 

 

操舵室の方からは直接甲板は見えないが、砲弾を全て打ち落しているロボライダーの活躍は分かっていた。

 

途中砲弾だけでなく、龍騎士もやってくる事態となったが、ボルティックシューターによって翼等にダメージを与え、戦艦に乗りこまれないようにしていた。

 

例え乗りこまれても数匹の龍程度でロボライダーを抑えるのは難しいだろうが。

 

流石に体勢が決したこの状態で、こんな奇襲を受けては多くの追撃は出せず、一度振り切ればそこまで難しく無くウェールズのところまでは行けるだろう。

 

 

船はスピードを上げニューカッスル城の地下にある、秘密の場所まで近づく。

 

 

「光太郎、取りあえず今は追撃は無さそうだ、一旦戻ってきてくれ」

 

 

操舵室から光太郎にそう指示を出す、その後に操舵室に待機していたルイズにV3は話かける。

 

 

「ではルイズ嬢、そろそろ王子様との御対面だ、心の準備は良いかな?」

 

「だ、大丈夫よ」

 

 

ルイズはちょっと噛みながらだがV3に返答する、やはり一国の王子に会うのはトリステイン有数の大貴族の娘とはいえ緊張はする。

 

それを知ってか知らずかV3は話かける。

 

 

「ふっ一応アドバイスしておこうか、何が来ても驚くなよ、何が来てもな」

 

 

そう含みのある言い方をされて首をかしげるルイズだったが、その意味を考える暇も無く光太郎が戻ってくる。

 

 

「お勤め御苦労、光太郎」

 

「おかえりコータロー」

 

「ただいまっと、これからやっと王子様ってのに会うんだな」

 

「そうだ、今からあそこの洞窟に入るぞ」

 

 

そう言うと船を洞窟に停泊させる、そしてウェールズ達に挨拶しようと意気揚々と船を降りた三人の前に立っていたのは……

 

 

 

 

いかつい空族の方々だった。

 

 

 

 

「え……っと…………」

 

思わず言葉に詰まるルイズであった、船から降りる前に色々と考えていた、挨拶や話の切り出し方等が全て吹っ飛び硬直している。

 

何せ目の前に立っていたのはアルビオンの王権派の貴族達でなく、へっへっへ、とか、ひゃっはー、とか言いそうな、いかにもという感じの連中だったのだから。

 

すると固まっている、ルイズの横から志郎が前に出て空族達に挨拶する。

 

 

「宣言した通り船は持って来たぜ、これで上手く脱出出来るだろう」

 

「まさか本当に持って来るとはね、いやはや何もかも規格外といった感じだな」

 

 

空族のリーダーと思わしき人物に、気軽に話しかける志郎を見て、フリーズしていた頭を解凍したルイズは口を開く。

 

 

「な、何なのよこいつらは!!ここに残っているっていう王権派の人達はどうしたのよ!!!」

 

 

「ふっ一応先に言っただろう、何が来ても驚くなってな」

 

 

少し意地の悪い笑みを浮かべ、ルイズに返答をする志郎であった。

 

 

「すまないがこちらの方々は?」

 

 

志郎と話していた男がそう聞いてくる、海賊映画にでも出てきそうなイメージの服を着て、長い髭を生やしている見た目に反して、丁寧な喋り方をしている。

 

 

「トリステインからの使者だそうだ、ウェールズ殿」

 

 

そう言われピクッとルイズが反応する、そして数秒時間がたった後に光太郎が口を開く。

 

 

「な、なぁウェールズって確か……」

 

「え、ええ……」

 

「取りあえず話は船の中で、今は大丈夫だが余り長居していると見つかるかもしれないんでな」

 

 

ややあってその場に居た人間が全員乗りこむ、そして船の中にいた敵の乗組員も全員一か所に集め、素早く行動する。

 

先ほどまでは船が勝手に動いたために、逃げ出す手段の無かった者や戦う術の無かった者が何人か隠れているかもしれないので、それの調査も行ったのだった。

 

上へ下へドタバタ動き回り船を完全に占拠するにはそう時間はかからないだろう。

 

そしてここは操舵室、中に居るのは光太郎とルイズと志郎、そして先ほどの男と老いた男が一人。

 

 

「先ほどは話の途中で失礼した、改めて名乗らせて貰おう、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーと、こっちは古くから王家に仕えてくれている」

 

「パリーと申します」

 

 

一礼をし自己紹介をした後に話を続ける。

 

 

「この格好では信じて貰えぬのも無理は無い、だが今はこの船を奪ったのは空族と言う事にするために変装をしているのだ」

 

 

そちらに居る彼の提案でね、と最後に付け加え話を志郎に振る、すると志郎は補足の説明をするように話す。

 

 

「元々は相手側の補給線を絶つために、空族まがいの戦法を取っていたらしいからな、船を一隻奪うのは少々大胆だが、内戦による治安の悪化を狙った悪党の仕業、って事にしておいた方が都合が良いだろう、俺も謎の赤い仮面の男で有名になったしな、ついでに利用しておいた」

 

 

と言い放ちルイズ達に続けて説明する。

 

 

「レコン・キスタの連中はアルビオン内を平定させれば、恐らく次の戦争を仕掛けるだろう、それがどれだけの時間でどんな様に仕掛けるのかは分からないが、今はまずは生き延びる事だ」

 

「なぁ先輩、やっぱり戦争は起こっちまうのかな……」

 

 

志郎の話しが終わったのを見て、そう光太郎は話す、正直に言って聞いた話しだけだがレコン・キスタとか言う連中のやっている事は、ネオ・アクシズの時の様な乱暴さを感じている。

 

だがこれ以上の犠牲は出したくないとも思っており、幾ら相手が理不尽に近い行動を取っていたとしても、悪の秘密結社とは違う訳で出来る事なら戦いたくは無い。

 

テロリスト相手に好戦的に戦ってきた光太郎ではあるが、血を見ずに済むのであればそれにこした事は無いのだ。

 

 

「恐らく……いやまず間違いなく仕掛けてくるだろうな、もしあいつらの言っている聖地を目指す、とか言うのが本当ならばアルビオンを落として得た戦力、物資だけじゃ足りないからな。兵站の補給の当てや安全な行軍の道を確保するためには、もう一つは国を確保しなけりゃならんだろう。しかも戦いに行くので同盟国になり支援しろ、なんて要請を他の国に言ってそれが通る訳がない」

 

 

なぜなら既に【情けない王権】と定義してアルビオンを滅ぼしているのだから、いつその定義が自分の国になるのか分からない奴らを支援など出来る訳がない。

 

その言葉を聞いて場が静まる、言いだしっぺの光太郎ですら暗い表情をしている。

 

だがそこで終わる風見志郎では無かった。

 

 

「だからと言って何もしないでいる訳じゃ無い、アルビオンが落ちたのを見てこれから各国々は動き出すだろう、それの成り行きによっては戦争を仕掛ける事を諦める事だってある、無論それは理想論だが俺は俺なりに回避出来る手を打つつもりでいる」

 

 

その一手がこの人達の救出だからな。そう締めくくり話を再びウェールズ達に向ける。

 

 

「そう言う訳でね、本来ならば我々は例え散ってでも最後まで抵抗するつもりでいた、だが亡き国王の意思とこれからの事を思い、生き恥をさらす事になろうとも逃げ延びて行動する道を選んだのだ」

 

 

例えこの地に返り咲く事は無くとも出来る事はあるはずだ、そして最悪戦争が起こったら傭兵となってでも守るべき物のために戦うつもりさ。

 

そうウェールズは決意を持って語り続けて話す。

 

 

「これでこちら側の事は大体伝えられたな、では今度はそちら側の事の用件をお聞きしたい」

 

「はい、実は……」

 

 

やや緊張しながらもルイズはこれまでの経緯を簡単に説明し、ウェールズにアンリエッタから受け取った手紙を渡す。中身を確認するとウェールズは目を閉じ数秒間そうしていたかと思うと口を開く。

 

 

「そうかアンリエッタが……分かった少し待っていてくれ」

 

 

ウェールズは持ち込んでいた荷物から小さな宝箱を取りだし蓋を開ける、すると中にはボロボロになった手紙が一つ入っており、それをルイズ達に渡す。

 

 

「宝物でね、これがその手紙だ」

 

「確かに受け取りました」

 

 

ルイズはそれを丁寧に受け取り下がる。

 

 

「トリステインとゲルマニアの同盟、上手くいけば直接の戦闘は回避出来るかもしれないな」

 

「はい、あの……アンリエッタ様には…………」

 

 

ルイズは遠まわしになりながらもウェールズに尋ねる、愛している人の生存、それほど嬉しい報告は無い、だからこそ伝えても構わないかどうか聞いたのだが返ってきた返事は。

 

 

「大使殿には申し訳ないが、生死不明と言う事にしておいて貰えないだろうか」

 

 

という物だった。

 

 

「今はあの叛徒どもにも我らの生死はつかめていない、万が一にも情報は漏れない方が良い、それと……」

 

愛した人の邪魔になるやもしれないからな、と少し悲しそうに呟いたのだった。

 

 

 

 

「上手く脱出出来たのならば、我々は暫くの間各地に散らばり動くとするよ、色々と世話になったな大使殿達」

 

 

船の運航準備が完了しいよいよ出発となった時に言われ深々と一礼をするルイズ達、志郎はV3ホッパーを使い周囲を調べ安全を確認し合図を出す。

 

 

「今からアルビオンからトリステイン行きの船は暫くは出ないだろう、途中まで一緒に居たら後はガーゴイルで送ってやる」

 

 

と志郎に言われ同行する事となった。

 

その後はなんとか敵にも見つからず、船は無事にアルビオンを離れる事が出来たのだった、そして光太郎とルイズを乗せたガーゴイルはラ・ロシェール付近で光太郎達を降ろし去って行った。

 

 

色々と不安の多く残った旅であったが、取りあえず姫様からの任務は完遂した事で胸をなで下ろすルイズ、そしてそれを思ってか光太郎はルイズに話仕掛ける。

 

 

「まっ先輩が居るからあの人達は大丈夫さ、んで……姫様に報告しに行くか」

 

「そうね……ってアクロバッターを置いてきちゃったじゃない!!」

 

「ん?ああ、大丈夫だあいつは呼べば来るから」

 

 

光太郎はそう言うとアクロバッターを呼ぶ、しかし流石に距離があるのためすぐには来れない様だ、そしてその間に軽く話をする二人。

 

 

「やっぱり助けられちゃったわね」

 

「どっちかって言うと先輩の方が活躍してるけどな」

 

 

そうね、と相槌を打ちルイズは話す。

 

 

「ねぇコータロー……もし戦争になったらあんたはどうするの」

 

「さてな、どっちが悪いとかどっちが酷いとか、そんなのは分からねぇけど、理不尽な暴力が襲いかかるってんなら、相手が誰であっても殴ってでも止めてやるさ」

 

「殴ってでも止めるって……まぁあんたらしいわ」

 

「おうよ」

 

 

暫くしアクロバッターが到着し二人は報告すべく、アクロバッターを走らせるのだった。

 

 


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