しかし回りこまれる   作:綾宮琴葉

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第5話 入学式の魔法使い

 春休みも終わりいよいよ入学式の日。桜はまだまだ咲いているから、新入生としては良い思い出になるのではないだろうか。私だって新入生、せっかくだから桜は咲いていた方が良いと思う。春休みはこれと言って問題なく過ごせたのだが、アスナに関してはもう説明する必要も無いだろう。

 

 同室になってしまった事もあり、当然の如く食事は作る羽目になった。抱きつき癖も変わる事は無く、逃げても結局は付いて来るので諦め気味になってしまっている。

 このまま流されてしまうと、非常に危険な予感がするので、新学期からもA組メンバーへの警戒を緩めたりする事は出来ない。

 

 とは言ってもこれから入学式なので、春休みの間に採寸して送られてきた、麻帆良学園中等部の制服に袖を通す。前世では自分が着る事になるとは思っても居なかったが、実は結構楽しみだったりする。やっぱりかわいい制服には憧れるものだし、今の十代の自分なら普通に似合って楽しめる。

 

 そうして制服に皺やよれが無いか鏡でチェックしていると、横で着替えていたアスナが近づいてきて事も無げに口を開く。

 

「フィリィ。髪、結ばせて?」

「なんで?」

「お揃いにしたい」

「……それはイヤ」

 

 それはどこのペアルックだというのか。学校なのだからみんな制服なのは当然。

 けれども、入学式当日から同じ服で同じ髪型。それが一緒に並んで歩いている女子二人などどう見ても怪しい。これが双子だったら違うのだろうが、私はそんな趣味はないし、アスナとそんな関係になる気は毛頭無い。

 

 当のアスナを見ると、とても残念そうに儚げな瞳で見つめてくる。ついでに美少女オーラも飛んで来るのだが無視する。とりあえずそんな瞳で見つめられてもツインテールにはしないので、遅刻しない内に寮を出る事にした。

 

 

 

 学校までやってきて、登校した事を後悔した。

 何故かと言えば、生徒登校口に張り出されたクラス分けのせいだ。B組からチェックして自分の名前を探したが見当たらず、まさかと思ってA組を見ると、ものの見事に自分の名前があった。

 

「フィリィ。どうしたの」

「……何でもない」

 

 今の私はあからさまに嫌そうな顔をしていると思う。それに肩を落として呆然としている姿は、傍から見ても確実に変な人に見えるだろう。

 

 空に向かって「何でA組なんだ!」と叫びたい所ではあるが、そんな事をして目立ちたくないので渋々何でもないと答える。確かに冷静になって考えれば、魔法生徒である私がA組じゃない方がおかしい。

 だがしかし、魔法関係者からの不干渉の約束を、こうもあからさまに破られると流石に納得がいかない。だからと言って学園長に詰め寄れば、先日の様にはぐらかされた上に、更に不利益を被るに違いないだろう。

 

 となれば、やはりこちらから距離を置くしかない……。干渉してくるA組のメンバーからは極力逃げる様にしよう。

 

「入学式始まるよ。行こう?」

「……うん」

 

 そう言って顔を覗き込んでくるアスナは、何故かキラキラと擬音が付くような笑顔で、美少女オーラを全開にしている。どうしてそんなに嬉しそうなのか。原作で入学式や生徒集会のシーンは無かったので、神楽坂明日菜がどんな態度だったのか分からないが流石にこれは無いだろう。

 一般的な入学式だと考えれば、桜も綺麗だし笑顔で迎えられたのかもしれない。だがA組と魔法使いの関係を知る私には、もうそんな気分には到底なれない。

 

 などと思って居ると、いつの間にか右腕がアスナに絡めとられて、入学式会場に向かって引っ張られている事に気が付く。

 

 女子同士ならば割りと普通の事だと思うのだが、このアスナの場合だと何故か嫌な予感がするのはどうしてだろうか……。

 はっ!? と言うか、いつのまにこんなにアスナ慣れしてしまったのか。このまま好感度を上げ続けたら確実にヤバイ。

 

「アスナ……」

「どうしたの?」

「……離して。帰りたい」

「だーめ」

 

 柔らかく微笑んで駄目だと言う。その笑みは清楚な雰囲気を醸し出している。

 どうしてこんなアスナに育ってしまったのか。頼むから腕を離して欲しい。そして神楽坂明日菜様、どうか帰ってきてください。

 

 その後の入学式での学園長挨拶。お決まりのパターンだがやたらと話が長かった。

 その間学園長を睨み続けてみたが、いつもの仙人顔でこちらを気にしてもいない様子。恐らくあのぬらりひょんの事だ、分かっていたとしても完全に気付いていない振りをしたのだと思う。

 

 やる意味は無いと分かっていたが、それくらいしかこの理不尽な気持ちを晴らす矛先が思い浮かばなかった。

 

 

 

 入学式が終わった後、各教室への移動。当然のあの1-Aに入らなくてはならない。

 

「はぁ……」

「フィリィ、どうしたの?」

「帰りたい」

「HR始まるよ?」

 

 そんな事は分かっている。分かっているから帰りたいのだが……。

 仕方がなく教室に眼を向け、ドアに貼り付けられた席順を確認する。原作のアスナは近衛木乃香の隣で中央くらいだったはず。まさか自分がその場所になっていたりはしないだろうかと、恐る恐る確認すると近衛木乃香の名前。その名前を見て心から安堵する。

 

 こんなに安心したのはいつ以来だろうか。もしかしたら育児施設で子供の振りをしていた時以来かもしれない。

 しかし、その安心感は自分の名前を見つけた瞬間、脆くも崩れ去った。そんな馬鹿なと。何度も確認するが、やはり同じ位置。まさかの最後列で右から二列目。

 

 そう、あのエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの隣。

 

「なっ……」

 

 開いた口が塞がらないとは正にこの事か。信じられないものを見るかの様な気持ちで再び確認する。何度見てもエヴァンジェリンの名前。そう、あの【闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)】だった。

 いや、今ここで硬直して驚いていてもどうにもならない。ここは逃げるしかないだろう。そう思うと加速をイメージして精神を集中する。そのまま魔法を唱え様としてハッっと気付く。

 

 ここで魔法を使えばA組の裏のメンバーに「私は魔法使いです!」と正体を公開する事になる。初日から正体バレなど絶対にやりたく無い。どうすればこの場を回避出来るか悩んで居ると、高畑先生がやってきた。

 

「皆、HR始めるから席に着いてくれないかい」

「「はーい!」」

「タカミチ?」

「中学からは僕が担当だよ。よろしく、アスナ君。真常君も」

「あ……。はい」

 

 小さな声でそう返事をする。素直に「はい」としか言えなかった。

 正直、自分が怯えているのが分かる。いくら女子供には手をかけないと言われているエヴァンジェリンでも、席が隣となればどうなるか分からない。

 

「大丈夫。エヴァなら居ないよ」

「――っ!?」

 

 かけられた声に思わず息を呑む。私の様子を察したのか、高畑先生が耳元に小声で呟いた。

 

 エヴァンジェリンが居ない? その言葉に教室内を見渡すと、彼女だけではなく絡繰茶々丸の姿も見えない。と言う事は、サボリと言う事だろうか?

 その事に安堵して決められた席に着く。今日の半日だけで寿命が縮んだ様な思いだが、まだ死ぬわけにはいかない。気を取り直して教卓に眼を向けると、高畑先生がHRを取り仕切っている所だった。

 

「今日は相坂君、絡繰君、マクダウェル君が欠席。連絡内容はプリントの通りだから――。そうだね、出席簿代わりに自己紹介でもしてもらおうかな」

 

 そう言って教室全体を眺める。すると歓声が上がり我先にと手を上げて、自己主張が激しいA組らしい姿が見える。

 ふとアスナの様子を見ると、高畑先生に対して熱い視線を送っていない。

 原作の神楽坂明日菜ならば、オジコンで高畑先生ラブなのだが、このアスナはそうではない様だ。私が関わってしまった事でそうなってしまったのかと思うと、今後の干渉は出来るだけ控えたいと思う。

 

 あらためて教卓を見ると、朝倉和美が自己紹介の場を取り仕切っていた。

 麻帆良のパパラッチと呼ばれる彼女の事だから、こうなるだろうと分かっては居たが、いざ自分がこの場に居る事で、彼女が強引で遠慮も無い事が良く分かる。

 

 出席番号順に自己紹介をしていき、八番目のアスナの番になる。神楽坂明日菜ならば、元気良く挨拶をする所だろうが、このアスナはどうするのだろうか。

 

「出席番号八番、神楽坂明日菜。身長は156cm。体重は秘密です――」

 

 朝倉和美が出したお代、名前と身長・体重・好きなもの。それぞれをスラスラと答えていく。答えていくのだが……。そのはにかんだ笑顔と小首を傾げる動作はどうにかならないのだろうか。

 

 しかしその後、そんな事はどうでも良くなる様な爆弾発言をしてくれた。

 

「――好きなものはフィリィです。よろしくね」

「フィリィって!?」

「まさか、告白来たーー!?」

 

 突然の個人の指名に教室内が騒然とする。そんな様子を気にする素振りも見せず、当のアスナはこちらを見つめて優しく微笑んでいる。

 そんなアスナに開いた口が塞がらず、唖然として居ると朝倉和美がこちらに近づいて来て、マイクに見立てたペンケースを向けてくる。

 

「で、噂のフィリィちゃんはOK? って言うか日本語OK?」

 

 何を言い出すかこの馬鹿娘は! ある意味バカレッドなのかもしれないが、それとこれとでは意味が違うだろう!?

 ぴくぴくと震えるこめかみを押さえながら、詰め寄ってくるクラスメイトから逃れるため、朝倉和美の質問に答える。

 

「日本語は大丈夫です。アスナとはルームメイトなだけなので特に何もありません」

「本当に~? ルームメイトとか、超怪しい香りがするんだけどー?」

 

 くっ……。このパパラッチめ! どうしたら大人しく引っ込むのだろうか。こうなったらこのまま自己紹介をして、場を抑えてしまった方が良いのだろうか。

 

 そう思い立つとスッと立ち上がり、マイク代わりのペンケースを奪い取って自己紹介を始める。

 

「出席番号二十七番、オフィーリア・W・真常。身長は148cm。体重は秘密。好きなものは特にありません。アスナとも何もありません」

 

 淡々と一気に言い切って、朝倉和美にペンケースを付き返す。そうしてそのまま自己紹介はもう終わりだとばかりに席に着く。すると突然。

 

「か、カッコイイー!」

「白人! クール美人!」

「良いなー、肌キレーイ!」

「日本語うまっ! 天才か!」

 

 先程よりも更に勢いを増してクラスメイトが詰め寄ってくる。その余りにも遠慮が無い様子に恐怖感、むしろ戦慄と言っても良いかもしれないレベルのものを覚える。

 

 どうしてこうなってしまったのか? こんなに目立ってしまってはA組に関わらないで日陰暮らしをするどころではない。

 本当にどうしたら良いのか悩んで居ると、パンパンと手を叩く音が聞こえてくる。音の主を探すと高畑先生が手を叩き、場を抑えようとしているのが見えた。

 

「こらこら、真常君が困っているだろう? 無理やり聞くものじゃないぞ?」

「あっ! はいはーい。ごめんねーフィリィちゃん♪」

「……はい」

 

 そんな悪びれる様子も無い態度で朝倉和美が下がっていく。その態度に若干苛立ちを覚えるが、余計な事をしてまた追求されても困るので、大人しく返事をして場を済ませる。

 その後は特に問題も無く順々に自己紹介をしていくが、再び耳にしたくない言葉を聞き、信じられないものを見る様な目で思わず視線を送る。

 

「出席番号二十八番、宮崎のどかです! 身長は151cmで体重はヒ・ミ・ツ! あとあと、本が好きです! 本が好きです! 本が大好きです! 本屋さんは正義だと思います! キラッ☆彡」

 

 ちょっと待て、誰だお前は!? ご丁寧にあのポーズまでして、本当にこれは宮崎のどかなのだろうか?

 私が知っている原作の宮崎のどかといえば、ネギ・スプリングフィールドがやってくるまで引っ込み思案で前髪で目を隠し、とろとろとした喋り方をする凄くおとなしい少女だ。

 それがこれは一体何か? 前髪で目を隠していないし、髪もポニーテールにまとめて活発な雰囲気を見せている。そして原作の後半の様な爽やかな笑顔を浮かべ、やはり美少女オーラを飛ばしている。

 

 もしかしたらアスナが儚い系美少女になってしまった分、宮崎のどかがこうなってしまったのだろうか? しかし私は何もしていないし、今日初めて会うのだが……。

 正直もう勘弁して欲しい。これ以上原作が変わってしまったら、何が起きるのか想像がつかない。

 

 その後の自己紹介はもう何も聞きたくなくて覚えていない。気が付いたらHRは終わっていて、放課後となっていた。

 

 

 

「フィリィ。もう終わってるよ?」

「――え?」

 

 突然アスナに声をかけられて、HRが終わっていた事に気が付く。

 

 あぁ、そうか。どうやら私は思考を放棄していたらしい。信じがたい事だが私はそこまでショックを受けていたのだろう。人間、余りにもショックを受けると心神喪失の様な状態になるのは本当だったのか。

 

「ごめんアスナ。ちょっと一人にしておいて」

「……わかった」

 

 今はちょっと一人にして欲しい。このまま放心したままではこの先やっていけない。

 私だって何も完全無視を決め込むつもりはないし、必要最低限の人付き合いはしなくてはならないだろう。少し気持ちを落ち着けたいのだ。

 

 そう思うと席から立ち上がり、鞄を持って1人で学園の裏山へと向かった。

 

 

 

「はぁ……」

 

 初日から目立ってしまった……。まさかこれだけで死亡フラグが立ち上がったりはしないと思うが、下手に干渉され続けて、ネギ・スプリングフィールドの従者候補達と仲良くなりすぎても困る。

 

 女子中等部の裏山は何故か世界樹が立っている。まるで狙った様な作りだが、実際のところ漫画の世界には好都合なのだろう。

 その根元にハンカチを敷いて腰を下ろし、今日下ろし立ての制服が汚れない様にする。

 

「何でこうなっちゃったんだろう」

「さぁな。その漏れ出る魔力が目立つからだろう」

「――なっ!?」

 

 突然に聞こえた凛とした声。慌てて立ち上がり周囲を見渡すと、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルとその従者の絡繰茶々丸。

 

 これはいくら何でもマズ過ぎる! ここで目を付けられれば確実に死亡フラグが立つ!

 

「――ヘイスト」

 

 そう思うと即座に逃げることを判断。急いで精神を集中して魔力を立ち上げ、小さな声で聞き取られない様に魔法を唱える。

 そのまま一気に学園駅に向けて駆け出す。しかし。

 

「茶々丸、逃がすな!」

「イエス! マスター!」

 

 捕獲の命令を受けた絡繰茶々丸の背中の装甲が開き、ジェット噴射口が露出する。そのままジェットを噴射して一気に加速。圧倒的なスピードで前方に回りこまれる。

 

「う……あっ」

 

 これはマズイ! このままでは原作に関わるどころか何をされるか分からない。

 確かエヴァンジェリンは封印状態で、殆んど魔力は使えないはず。だからと言って先程魔力が目立つと言われたからには、ネギ・スプリングフィールドの様に血を吸われる可能性もある。

 

 どうするれば逃げられる? この場を逃げ出すためには茶々丸の時間を止めて、再び加速するしかないだろう。

 ならばと再び魔力を意識して、茶々丸に目標を定める。だが、すでに茶々丸の姿は前方に無かった。

 

「え、どこ!?」

「失礼します」

 

 控えめな声でそう聞こえたかと思えば、声の主は私の真後ろに居た。警戒する間もなく、即座に両脇の下から機械の腕を回され、羽交い絞めにされる。

 

「い、いや! 離して!」

「うるさい。大人しくしろ」

 

 吐き捨てるように命じてから、エヴァンジェリンが近づいてくる。

 そのままスルリとブラウスのリボンを引き抜き、一個づつボタンを外していく。そのまま首元に顔を近づけられ、囁く様に声を掛けてくる。

 

「なに、命まで取りはしない。ただその魔力を少々頂くだけだ」

 

 聞き分けの無い子供に言い聞かせる様に告げて、つつっと首筋を舐められてから、牙が首元に突き刺さる感触。

 

「――痛っ!」

 

 一瞬の痛みの後に、首元に埋め込まれる異物の感触。これが、吸血鬼の牙。

 怖い。血が、吸われる? 恐怖のあまりに、体がまったく動かない。一体彼女が何をしているのかも分からない。

 今から命を吸い上げられる事、原作のキーパーソンに関わってしまった事。彼女の餌食にされている事。何もかもが恐ろしくて、震える事すらできない。

 

「ぅんっ……あぁっ!」

 

 彼女に噛み付いた部分から、唾液と血の水音が聞こえる。そして、血が吸い上げられる音。分からない、どうしてこんな事になっているのか。しかし、やがてゾクゾクと背筋に何かを感じ始め、思わず声を漏らした。

 

 このままではマズイ。それだけは間違いない。朦朧とし出した意識の中で考える。こうなったら自分もろともで構わない。重力の攻撃魔法グラビデを唱えて、押し止めるしかないだろう。

 

 何とか精神を集中して、魔力を立ち上がらせる。

 

「グ、グラビ――ひゃう!」

 

 何か体中が熱くなり声が出た。そんな自分に赤面するが、背筋に沿って何かを感じ、精神が集中できない。血を吸われ続けると、次第に身体から力が抜けていく。

 目の前のエヴァンジェリンの魔力が、大きく膨れ上がっていくのが分かる。すると、その様子に慌てた様に絡繰茶々丸が声を上げる。

 

「マ、マスター? それ以上は危険なのでは」

 

 私は何をしているのだろうか。こんなところで死んでしまう?

 いや、それは違う。私はこの人のためのもの。この人のためなら何でも。私はこの人のために何かをしたい。私は生きて血を捧げる大切な――!

 

「フィリィを離しなさい!」

 

 突然アスナの声が聞こえ、そこで思考が止まる。

 アスナは右手に気を。左手に魔力を集め始め、そのまま両手を合わせると、咸卦法で全身から強大な気を放つ。そしてそのまま一直線に、私に喰らい付くエヴァンジェリンに向かって駆け出した。

 

「マスター! 気付いてください!」

 

 茶々丸が警告を出すものの、彼女は完全に私の血に夢中になっているようで、気が付いていない。

 駆け出したアスナが感掛の気を纏って飛び上がり、そのまま右足でエヴァンジェリンの頭を蹴り飛ばし、茶々丸から強引に私の身体を引き離した。

 

 アスナに抱き留められた事に安堵して顔を見上げると、いつもよりもやや頼もしい、そう、まるで神楽坂明日菜の様な顔付きがそこにあった。


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