魔法少女リリカルなのは ~その拳で護る者~   作:不知火 丙

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本編 第三十話

― 駆動炉制御室 ―

 

 制御室はけたたましい警報の音がそこらじゅうから流れている。

 駆動炉の温度、出力、圧力、等々いたるところが危険値を示していて、部屋の中はそのせいで赤一色に染まっている。ランプは回転し、モニターは異常を異常や危険を示している場所が赤くなっている。

 それは今も増え続け今では赤くなっていないところは無い。

 しかしそんな部屋の中、身動きをしないでその様子をじっと見ている人影があった。

 ここのスタッフであるならばじっと見ているなんてことはせず、今頃必死になって駆動炉を正常に戻す為にあれこれ作業をするはずである。

 しかしその人物はそう言った事を全くせずただただじっと見つめている。

 その人物は全身真っ黒の服装に、金髪、サングラスをしている。そうカリウムだ。

 カリウムの見つめる先には、ガラス窓がある。ただ普通の窓では無く、とんでもない厚さのガラスがはめ込まれた窓だ。そしてその先にはこの「時の庭園」の駆動炉が動いていた。

 円盤の様な部屋の中心で今も動き続けている。どの位じっとしていただろうか? しかしカリウムは一向に動く気配はない。

 すると、カリウムの後ろにある制御室のドアがスライドする。その時初めてカリウムが動く。動くといっても身体は正面を向いたまま首を回し後ろを確認するだけの動きだが。

 そして入ってきた人物を確認すると今度はその人物に向き直り声をかける。

 

「やっと来たか」

 

 どうやらカリウムはその人物をこの部屋で待っていたようだ。

 その人物は白がメインのバリアジャケットを着ていて、周りは黒く縁取りされており、肩から腕、腰から足に向かって赤いラインが入っている。頭部は赤いヘッドギアを装備されている。

 ミリタリー風の上着にカーゴパンツ、靴は黒のブーツを履いていて、腕には黒い小手を、手は赤いグローブを付けている。そう、斎藤一樹だった。

 

「はあ、はあ、すいません、遅くなりました」

 

 息を切らしつつも挨拶をする一樹。

 何時もの一樹を考えると、珍しい挨拶だ。普段の一樹なら初対面であれ、顔見知りであれ、上司であれ、いい加減な挨拶しかしない。こんな挨拶をするのはそうしなきゃいけない事態に直面した時だけだ。

 

「まあ、仕方ないか。戦闘はしないとは言ってもそれなりに距離はあったしな」

 

「そう言っていただけると幸いです」

 

「んじゃ始めるか。いくらこのまま放っておいても大丈夫だと言っても流石に警報とかがうざい」

 

「そうですね、うざいというのは兎も角いい加減戻しましょう」

 

「しかしなんだ、もう元の姿に戻ってもいいんだぞ? リニス」

 

「一樹さんこそ。元の格好に戻らないんですか?」

 

 カリウムと一樹はお互いにそんな事を言い出した。

 

― 斎藤一樹 ―

 

 お互いに自分の姿を指摘しあう。

 リニスは俺のバリアジャケット姿、俺は、黒のカーゴパンツに上着、更に金髪にオッドアイという姿になっている。そう、カリウムの姿だ。

 

「ん、そうだった。変装解くの忘れてた」

 

 そう言うと俺はサングラスを外し、自分の顎のあたりに爪を立て、皮膚の上についている特殊素材を掴むと一気に上に持ち上げ顔からはがす。

 それはベリベリとはがれ、その下からは何時もの俺の顔と髪の毛が現れる。更に目からカラーコンタクトを外して何時もの黒眼に戻る。

 そう、実は今まで俺は「カリウム」として行動していて、リニスは「一樹」として行動していたのだ。

 つまり、作戦に参加していたのは本物のだったのだ! まあ、偽物になるような言動をしていたので仕方ない、と言うかばらす為の言動だったので逆にばれなかったら多少厄介になるところだった。

 

「ふ~、すっきりした。リニス、スサノオ返して」

 

「どうぞ」

 

 そう言ってリニスはスサノオを渡してくる。俺に渡すとバリアジャケットは解け、リニスは何時もの姿に戻る。

 

「よう、久しぶりだな相棒」

 

 しばらくリニスに預けていたスサノオに声をかける。

 

『ええ、久しぶりです《クソ野郎》。しかし、ホントにこんな作戦を実行するとは思いませんでした。本来プレシアが起こすはずの犯罪全てを肩代わりするとは……。輸送船強奪・爆破(ジュエルシードを運んでいた船)から始まり、暴行(プレシアに龍掌で攻撃)、傷害罪(士郎さん、恭也さん、管理局員に攻撃し負傷させた)、殺人未遂(フェイトの首を絞める・アルフへの攻撃)、公務執行妨害(管理局員に対する傷害等)、遺失遺産(ロストロギア)の違法使用による次元災害未遂(現在暴走中のジュエルシード)、これだけあれば執行猶予無し、実刑で懲役三ケタは確実ですね』

 

「まあ、ミッドチルダの刑法だとそのくらい行きそうだな」

 

 因みに、ミッドチルダでの刑法は日本の様に「懲役刑は最高で何年まで」というのが決まっていない。

 日本では有期懲役は一ヶ月から二十年まで、ただし併合罪などにより刑が加重される場合は三十年までと決まっている。しかしミッドチルダの場合はそれがない。単純にどんどんたされていく。

 例えば、傷害で十五年、殺人未遂で二十年、日本だと三十年以上にならないが、ミッドチルダだと三十五年になる。なのでこれだけの犯罪を犯せば簡単に三ケタの懲役刑になってしまうのだ。

 まあ、その代わり司法取引で減刑される事はあるけど。

 

『万が一捕まった時は私は関係ありませんので』

 

「一緒に考えたくせに何言ってんの!?」

 

『当然です。《クソ野郎》に「考えてくれ」と言われたら逆らえませんので』

 

 さらりと、言い逃れに保身? をするスサノオ。しかしそれをよそにリニス慌てて聞いてきた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 輸送船って!? そ、そんな事までしてたんですか!?」

 

「今思えばあんときはドキドキしたな~」

 

 驚愕しているリニスをよそに当時の事を思い出してしみじみ思う。

 こっそりパイロットと入れ替わってスサノオのサポートで操縦したのはいい思い出である。

 まあ、実際は数日前の出来事なので明確に覚えているが。

 

「スサノオ!? あなたは止めなかったんですか!?」

 

『リニス殿、そんなつまらない事をしてどうするのですか?』

 

「つ、つまらないって……。何時もそういう次元で考えてるんですか!?」

 

『はい、私は常に私も楽しいと思える方法を選択します。それが偶々《クソ野郎》と同じなだけです』

 

「……性質(たち)が悪いですね」

 

『そう言わない出ください。流石に今のは冗談ですが、今回の件はまともな方法が無いのも事実なのですから』

 

「確かにそうですけど……、ここまでする必要あったんですか?」

 

『ええ、やるからには徹底してやります。それに、この件に関しては共犯です。その覚悟も実行する前に決めたではないですか。まあ、リニス殿の場合は今回の作戦前でしたが』

 

「まあ、そうですね。まさか事前にそこまでしているとは思わなかったです」

 

「言ってないからな。反対されても困るし」

 

「……はぁ」

 

 それを聞いて盛大にため息をつくリニス。

 

「まあ、そういう事だ。別にいいんじゃね? 今回の犯罪は存在していない「カリウム」のした事になる訳だし。俺と「カリウム」を結ぶ証拠はスサノオ位しか今んとこ残してないし。今後俺が「カリウム」にならなければめでたく時効成立するし。今は手筈通りにやる事やっちまおう。スサノオ頼む」

 

『了解』

 

 そう言って俺はスサノオを制御パネルの「デバイス接続パネル」の上にセットする。

 

「スサノオ、どの位で終わりそうだ?」

 

『五分程度で終了します』

 

「まあ、元々こっちで暴走直前まで出力を上げるようにプログラムを調整したんだ。元に戻すのにそんな時間は掛かんねーか」

 

「そうですね、でも一樹さん。なのはさんのあの攻撃を受けてよく無事でしたね?」

 

「いやいや、無事じゃないよ!? 多分内臓系に多少ダメージはあるだろうし、骨はきしむ上に肋骨は衝撃で何本か折れてるし、くらった時一瞬だけど意識飛ばされたよ。非殺傷設定なのにこれだから解除されてたら多分「ジュッ!」って感じで蒸発すると思うぞ?」

 

「…………え? 非殺傷設定だったんですよね?」

 

「ああ、多分」

 

「…………」

 

「強力だってのは分かってたけどこれほどとはね。危うく作戦がおじゃんになるうえに豚箱に入れられるところだった。流石なのちゃん。轟砲ロリは伊達じゃないな」

 

「ごうほうろり?」

 

「説明しよう! 轟砲ロリとは凄まじい火力で爆音を轟かせ、相手を亡き者にするロリッ娘の事である!」

 

「……否定できないですね」

 

「因みにまだ増える予定です」

 

「……悪夢ですね」

 

「うむ、流石にもうあんな砲撃くらいたくねーからな。まあ、時間が経つとロリじゃ無くなるけどな」

 

「安心出来る要因がないんですが……」

 

「成長してパワーアップ! テンプレだな」

 

「安心できませんよ!?」

 

 そんな漫才(コント)をしているとスサノオが報告してくる。

 

『もう間もなく修正完了します。リニス殿、そろそろ「時の庭園」から引いてください。異常状態が解除された場合転移反応なども観測されてしまいます』

 

 む、もうそんな時間か。

 

「わかった、リニス」

 

「分かりました。一樹さん。プレシアとフェイトをよろしくお願いします」

 

「おう、ここまで来たんだ助けて見せるさ」

 

「期待してます」

 

 そう言ってリニスはほほ笑むと転送魔法で転移した。

 

「さて、久しぶりに全力で行きますかね」

 

『了解。カートリッジは使用しますか?』

 

「う~ん、まだ試作品だが使ってみるか」

 

『了解。駆動炉のプログラム修正完了しました。駆動炉正常運転開始しました。危険値、正常値までの回復を確認。オールグリーン問題ありません』

 

 赤一色だったモニターがグリーンに切り替わる。

 

「よし、じゃあ戻るぞ。クロノ! こっちは駆動炉の暴走を止めた。今から合流する!」

 

『分かった! すまないが急いでもらっていいか? でかくて硬いやつが出てきてちょっと厄介だ』

 

「でかくて、硬い……何それ卑猥」

 

『バカ言ってないでさっさと来い!!』

 

「了解!」

 

 そう言ってクロノの通信を切って、バリアジャケット姿になるとスサノオの格納領域から一発の弾を出す。

 改めて見るとその大きさに呆れてしまう。なんせその大きさは牛乳瓶程のサイズなのだ。通常ライフルで使用される弾は7,62mm弾が使用される。自衛隊で使っている六二式機関銃や六四式小銃に使われている物だ。

 後に出てくるであろうなのちゃんのカートリッジシステムの使用弾もこのくらいの大きさか一回り小さい5,56mm弾のサイズだろう。

 しかし俺が持っているのはその3倍はあろうかという大きさだ。例に挙げればこれは戦闘機などに搭載されているレベルの大きさだ。

 もしこれを使用する銃火器を使うとなると、地面などに固定して使うもので、間違ってもマシンガンのように人間が手に持って撃てるものではない。

 俺はそれを腕についている籠手の内側のスリットに入れる。すると重い音がしてスリットが閉まる。

 

ガシャン!

 

 右腕の籠手のスリットが閉まり準備が終わる。

 

「エイミィ、クロノ達の現在地送ってくれ」

 

『了解! 一樹? なんかするの?』

 

「おう、クロノがさっさと来いって言ったから一直線に向かおうと思うんだ」

 

『……程々にしないとまた怒られるよ?』

 

「HA! HA! HA! HA! そんな事で俺は退かぬ! 媚びぬ!! 省みぬ!!!」

 

『はあ、まあ良いか。ん、今スサノオに送ったよ。後は何かある?』

 

「退避勧告を頼む。新システムを使用するから加減が出来ない」

 

『新システム? 何それ?』

 

「カートリッジシステム」

 

『え? 別に新しくないよね?』

 

「20mm砲弾を使うって言っても?」

 

 そう言って俺は使用する弾をエイミィに見せると、

 

『…………』

 

俺が持っている砲弾を見て沈黙するエイミィ。しかしすぐさま再起動する。

 

『く、クロノ君!? 一樹がまた馬鹿やるから逃げて! 超逃げて!!』

 

「む? 馬鹿とは失礼だな? せめて大馬鹿と言え」

 

『そっちの方が失礼じゃない!?』

 

「さてと、ちょっと遠いけどやるか」

 

 ゴキゴキと首を鳴らして静かに構える。

 右半身を引き右拳を腰につけ、左腕を曲げ左拳を顔の前に持ってくる。そしてそこから深く息を吸い込みゆっくりと吐く。体内で氣を練り身体を循環させていく。

 更にそこから魔力を混ぜていく。氣と混ざり合った魔力を右拳に集めていく。充分に集まったところでカートリッジを撃発する。

 

ガッシャン

 

 そして一気に膨れ上がる魔力。撃発とほぼ同時に右拳を打ち出す。

 打ち出す為に回転したつま先から生み出された円運動は力を蓄積しながら肉体上部へ加速し、右拳に集約された回転力は氣と魔力によって針の様に鍛えられ、円運動から直線運動になった際には凄まじいエネルギーへと変化しそれらと一緒に打ち出される。

 淡い青色をして針の様に細いそれは見た目からは考えられない様な破壊力を伴い、大気を経由して対象に伝達させ正面の壁を破壊しながら直進する。

 

鍛針功

 

 いわゆる発勁と呼ばれる技。それはそのまま突き進んで抵抗される事なくそのまま「時の庭園」の外壁をぶち抜いて外へと消えていく。

 途中確かな手ごたえを感じたし目標の反応も消えたのでどうやら問題無さそうだ。

 

「予想以上の威力だな。反動も馬鹿にならんし」

 

 俺は鍛針功を撃った右腕を見る。右腕のバリアジャケットは肘から先が吹き飛び、籠手の部分が残っていてそこから煙が出ている。

 壊れた訳ではなく、どうやら加熱したのを冷却している為のようだ。

 更に腕は煤けていたり、赤くなって血が滲んでいたりする。二、三回手を開閉し問題が無いかを確かめる。

 痛みはあるがそのほかの異常は無さそうだった。俺はぶち抜いた穴からクロノ達の所に合流する。

 

「よ、クロノ。無事か?」

 

「こ、このバカズキ! 何て事するんだ!」

 

「んだよ。問題ねーだろ? 方向も威力もばっちりじゃん」

 

「いきなりすぎるんだ! 何時も何時も何時も!」

 

「もう慣れたろ?」

 

「慣れる訳ないだろ!!」

 

 クロノといつも通りの会話をしているとなのちゃんが近付いてきた。

 

「一樹お兄ちゃんその手どうしたの!?」

 

 そう言ってなのちゃんは所々焦げたり、焼けて血が出ている俺の手を心配してきた。

 

「ん? ああ、ちょっとな。未完成のシステムを使ったらこうなった」

 

「お前は……、はあ」

 

 なのちゃんに説明したらクロノに盛大にため息をつかれた。

 

「もういい、早いとこここから移動してプレシアの所に行くぞ」

 

「おう」

 

「一樹! ちょっと待ってよ! 治癒魔法ぐらいかけるって」

 

「ん、そうだな。治療してもらうか。それとフェイトちゃん話がある」

 

「……なんですか?」

 

「さっきカリウムに言われた事だ」

 

 俺がそう言ったらみんなが反応する。

 

「……お兄ちゃん」

 

「今奴が言った事は全部本当の事だ」

 

「そ、そんな……嘘だ」

 

「事実だ。フェイトはアリシアのクローンだ。リニスから直接聞いてる」

 

 それを聞いて崩れ落ちそうになるフェイト。それを見て亜夜となのちゃんが両脇を支える。

 しかしフェイトはうなだれて動かない。

 

「一樹! 今それを言う必要は無いだろ!」

 

「いやある。どっちにしろプレシアさんから聞かされるんだ。そんなところでこんな状態になったら邪魔なだけだ」

 

「お、お兄ちゃん!」

 

「いくらなんでも酷いよ!!」

 

 俺が言った事に対して非難の声を上げる亜夜となのちゃん。その声を無視してフェイトに近付く。

 

「フェイトちゃん、よく聞いてくれ。確かに君はアリシアのクローンだ。だけど、それがどうしたんだ? クローンの何がいけないんだ? どこが駄目なんだ? クローンだとプレシアさんに愛されないのか? 本当の親子じゃないのか? 一緒に暮らせないのか?」

 

「……で、でも造り物なんだよ!? 何度でも同じ物が作れちゃうんだよ!!」

 

 フェイトちゃんが目に涙を浮かべ言ってくる。

 

「フェイトちゃん、それはあり得ない。例えどんなふうに生まれても全く同じなんてあり得ない。遺伝子とかそう言ったレベルでは同じでも、その後の行動や住む場所でいくらでも代わる事があるんだから。第一、アリシアと違うからプレシアさんはフェイトちゃんに「フェイト」って名前をつけたんだろ」

 

「……でも!」

 

「まあ、どう思うかはフェイトちゃんの自由だし、実際プレシアさんにそう思われる可能性もある。でも、プレシアさんを助けてあげられるのはフェイトちゃんだけだと思うぞ」

 

「……!」

 

 その言葉に若干反応する。

 

「さてフェイトちゃん、今フェイトちゃんの前には二つの道がある。一つはこのまま耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らすか、一つはプレシアさんとアリシアを助けて家族一緒に仲良く暮らすかだ」

 

 それを聞いたフェイトちゃんが顔を上げて聞いてくる。その目には光が戻り始めていた。

 

「……母さんとアリシアを助けられるの?」

 

「アリシアの方は確約できないが手がない訳じゃない。もっとも成功するのは神のみぞ知るって確率だけどね」

 

「え? でもアリシアって子は亡くなってるんだよね?」

 

 不思議に思った美由希さんが聞いてくる。

 

「うん」

 

「生き返せるの!?」

 

「運が良かったらね」

 

『はあ!?』

 

 全員が驚愕する。そりゃそうだろう。死んだ人間が生き返る何て事は普通だったらあり得ないんだから。

 

「さあ、どうするフェイトちゃん! 君はどっちが良い!!」

 

外野を無視してフェイトちゃんに聞く。

 

「一つ聞かせてください」

 

「なんぞ?」

 

「どうしてここまでしてくれるんですか?」

 

 そう思うのも無理もないだろう。実際フェイトちゃんと会ってまだそんなに経ってないし、そこまで仲が良い訳でもない。

 

「なんだ、そんな事か。いいかプレシアさんが助かったらアリシアも助かる。そうしたらロリなのにお姉ちゃんキャラと言う属性になる! なんせアリシアが生まれたのは26年も前だからな! そして助けた謝礼にプレシアさんに頼みこんでフェイトちゃんのシスターズをつくってもらう! 一万人ぐらい! そしたらテスタロッサネットワークとかを使ってフェイトちゃんの魔法の演算やらプログラムやらを肩代わりしてもらって新しい魔法理論を「何処の学園都市のシスターズよ!!」あべし!!」

 

 亜夜の痛烈な突っ込みを受けて悶絶する。

 

「しかしだな! フェイトちゃん雷変換できるんだぞ! リアルレールガンだぞ! 「これが私の全力だー!」って言ってくれるかもしれないんだぞ!? ここまで条件がそろってんのになんでしないんだ!」

 

「法律に引っかかるからだバカズキ」

 

 力説する俺に冷静にツッコミを入れるクロノ。

 

「なん……だと!?」

 

「それに全力でぶっ放すのはなのちゃんだけで充分だよ!」

 

「亜夜ちゃん酷い!?」

 

「それに一万人も名前考えるの大変じゃないかな」

 

「「フェイトちゃん突っ込むとこそこなんだ」」

 

 亜夜となのちゃんがため息交じりに言う。

 

「何時も通りの一樹君だな」

 

「まあ、一樹は何時も通りだって事だ」

 

「そうだね、いつも通りだったね」

 

 高町の御三方もほのぼの言い放つ。

 

「まあ、冗談はこのへんにして」

 

(((((絶対本気だった)))))

 

 一樹のセリフに全員の考えが一致した。

 

「フェイトちゃんを助けるのは、俺やみんながフェイトちゃんを助けたいと思っているからだよ」

 

「それだけで?」

 

「おう、十分すぎる理由だろ。そんじゃ、今度はフェイトちゃんの答えを聞こうか」

 

 そう言って俺はフェイトちゃんを見る。するとフェイトちゃんは意を決して俺に言ってくる。

 

「お願いします。母さんとアリシアを助けてください!」

 

「よし! 引き受けた!」

 

 そう言って俺達はプレシアさんの場所に向う。

 

「所でお兄ちゃん。もしフェイトちゃんがもう一つの方を選んでたらどうしたの?」

 

 気になったのか亜夜が聞いてくる。

 

「あん? 決まってんじゃん。無理やり立ち直らせてプレシアさんを助けに行かせたよ。手段なんか選んでる余裕はないからな」

 

 けけけ、と笑う俺に「はあ」と、ため息をつく亜夜だった。

 

 

 


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