今までで最高記録の長さかな?
最後の学園祭、一体どうなるのか!!
では、どうぞ!!
「お帰りなさいませお嬢様」
高校生の間は時間が過ぎるのが早いって中学生の頃先生が言ってたが本当だな。あっという間にもう学園祭当日だよ。オレはどうして執事なんだろう? 積極的に話し合いに参加してなかったのが悪いが……
「………七島、もっと笑顔笑顔」
とかいう霧島もまだ笑顔が足りていない気がする。周りを見てみると、秀吉や愛子ちゃんやは分かるとして、優子さんや梓ちゃんも既に馴染んでいた。
「執事、少ないんだから頑張っていこう」
「そうだな久保」
なかなか話す機会は無かったが、Aクラスの勉強バカの中でも常識人……だが、もうあの性癖は治ったのか? 別段、避けるわけでもないが、相手となるヤツが可哀想で……
とか考えていると再びドアの開く音がした。接客だ。
「お帰りなさいませ……ってお前ら?」
軽音部の後輩3人がやってきた。素直にお嬢様なんて言えないよな~
「あれ、3人ともどうしたの?」
梓ちゃんがこちらに気づいたらしく、駆け寄ってきてくれた。
「先輩方のお店がどんなところか来てみたかったんです!」
「3-Aは凄いですね……」
「ヒロ兄、案内は?」
「はいはい。こちらにどうぞ」
オレが案内するのがさも当然のように聞いてきたのでそのご要望にお答えすることに。
「うわっ! メニューが多い!」
「これが学園祭でやる質ですか!?」
「3ーAって万能だね」
そうかもしれんが、実はそうでもない。
3-Aの厨房、誰がやっているか。料理長:竜也を筆頭に、その下にアキ・雄二・康太・憂ちゃんという、高校生のレベルとは思えない食事を作るメンバーが揃っている。
それに、他のクラスにはバレちゃまずいが、取引をしている。
竜也がバイトをしている「ラ・ペディス」。3年生になってから軽音に入ってくれたため、バイトの日数は激減したが、それまではほぼ毎日のように働いていたこの店。オーナーの娘である清水美春とAクラスは取引をしていた。売り上げの数割を「ラ・ペディス」に入れることと、さりげなく「ラ・ペディス」の宣伝をすること。これを条件にAクラスのメニューを「ラ・ペディス」と一緒にしても構わないというお墨付きを得たのだ。
竜也の腕は清水さんには分かっている上に、Aクラスという最高設備を使って宣伝してくれるというわけで、清水さんもこの話には上手く乗ってくれた。だが、これがバレたら大変なことになるために、この情報を知っているのはごく僅か。Aクラス上層部と清水さんしか知らない。
Aクラス上層部って誰がいるか? 察してくださいな。
「みんなは、クラスの出し物はいいの?」
「わたしと直ちゃんは明日ですから」
「はい。今日は今日のことで一杯です」
「わたしも明日に回してもらいました!」
話を聞いてみると、軽音を応援しているから頑張ってと励まされたそうだ。これを伝統にしていかないといけないよな~先輩方が3年掛けて作り上げてきた軽音部、オレたちの代で潰す訳には……。
「わたしたちもシフトは朝までだから。昼からは部室行けるよ」
「その間はちょっと待ってて。3人で練習しててもいいから」
ふと考えてみると、ウチのクラスの厨房の主な人物は全員軽音部に所属しているではないか。オレたちが演奏している間、ここは休業ってことに?
「………だから、2グループに分けて最後の練習をしてきて」
とのこと。そうなるわな……
「安心していいわよ。あなたたちが演奏するときはここ閉めるから」
「みんなライブ聞きに行くからさ!」
今年のライブ、優子さんの取り計らいで、学園祭のトリを務めることになった。そのため、ライブは夕方からだ。その優子さんも、Aクラスの手伝いはごく僅かな時間しか出来ない。生徒会長としての仕事があるためだ。
「先輩、ご飯を食べましたら先に部室で待ってますから」
「分かった」
ということで、3-Aでご飯を食べたあと後輩3人は部室に向かった。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
それ以降も3-Aの人気は高く、ずっと人が入っていた。そんな中、お昼になったのでオレと梓ちゃんは抜けさせてもらう。接客のほうだから替えはきく。そのため、オレらはもう戻ってこず部室で最後の仕上げだ。
「ライブ期待しているからね」
「絶対聞きに行くぞ~!!」
2-Aになったときは反発を買っていたオレだったが、音楽を通じてこんなに思ってくれているのは非常に嬉しい限りだ。
「ありがと~」
「行って来る!」
オレと梓ちゃん、そして厨房の方からは憂ちゃんが抜けてきた。女子グループでの練習が最初だ。
「わたしを忘れないでくれ!!」
「あ、純、ゴメンゴメン」
接客もしていたらしいが、全然視界に入らなかったため危うく置いて行きそうに。純ちゃんも一緒に部活に。
「待ってました~」
「早く練習しましょう」
「最後の仕上げです」
軽音内での女子のフルメンバー。構成は、Gt.&Vo.の梓ちゃん、Gt.の憂ちゃん、Ba.の純ちゃん、Dr.のスミーレちゃん、Key.の優花、………
「直ちゃん、ライブ本番何するの?」
「何でしょうね……?」
「バックダンサーとか?」
「しませんよ!!」
直ちゃんいわく、出番はさわちゃん先生が作るそうだがあまり期待は出来ない。
「じゃあ、早速やろうか」
1時間ほど、細かいところに気をつけながら練習をする。
その次は、男子メンバーの練習だ。憂ちゃんと純ちゃんが戻り、代わりに男子勢がやってくる。こちらもまた同じように練習を重ねる。こちらのメンバー構成は、Key.&Vo.のオレ、Gt.&Vo.のアキ、Gt.の竜也、Ba.の康太、Dr.の雄二という構成である。ボーカルはオレとアキのツインボーカル。
「ま、こちらはそこまで心配することは無いな」
「そうだね。女子に比べて練習期間は長かったからね」
新入生もベンバーに加えている女子メンバーに対し、このメンバーは1年生の時からちょくちょく練習していたらしかったからすぐに仕上がった。
「じゃあ、俺らはもう一回戻るわ」
「分かった。言っておくが、最後にあのメンバーでの練習もあるからな」
「覚えているさ。じゃ、2人での曲も練習しておけ」
「了解」
雄二と竜也、アキと康太は再び忙しい3-Aに戻っていった。残ったのは、オレと梓ちゃんと後輩3人。
「コレが一番心配なんだよね」
「確かに。練習しよう」
2人がリベンジと意気込んでいる、アコギとピアノの2人による演奏。歌うのはもちろん両方。新歓ライブでの出来はイマイチだったために、ここで完成形を披露しようと思っている。
「全員来たぞ~」
あまりにも集中していたためか、他のメンバーが全員揃ってきたのにも気づかなかった。梓ちゃんと見合って苦笑し、全員を迎え入れた。
「じゃあ、最後に2回ばかり練習して本番に臨もう」
今日1度も音合わせをしていないメンバーで練習をする。ちょうど2回ほど終わらせた頃に、
「軽音部のみなさん、そろそろ講堂へ道具を運んでちょうだい」
と優子さん直々軽音部の部室にやってきて伝えにきてくれた。今も講堂で何か出し物があっているだろうに……
「よし。今までの練習どおりにやれば大丈夫だから。みんな頑張ろう!!」
「「「オオー!!!」」」
それぞれ道具を運び、講堂に向かう。着いた頃にちょうど前の出し物が終わろうとしていた。ナイスタイミング。
「次は軽音部からの出し物です。準備がありますので少々お待ちください」
と言われ、ステージの幕が下りた。オレと梓ちゃんは互いに言葉を交わさず一回顔を見合わせ、うなずいただけで、ステージ中央に向かった。梓ちゃんはエレアコとアンプを手に。
「お待たせしました。本日最後の出し物。みなさんお待ちかね、軽音部からの出し物です!!」
優子さんのこの声と同時に幕も上がり、外から歓声も聞こえてくる。この感覚にはいつまで経っても慣れないものだ。しかも心なしか今日は観客がいつもより多い気がする。
幕が上がりきる前に2人で顔を見合わせて息を揃え最初の曲を始める。
♪きっといつかまた出会えるさ~
の出だしから始まるこの曲。この部分は歌オンリーという失敗したら目も当てられないものだ。滑らかな滑り出しで、伴奏アコギとピアノの音が鳴り響く。そして、AメロBメロサビと順調に進めていく。2番も同様に。そして最大の見せ場、間奏の梓ちゃんのアルペジオに、その後音はピアノだけになりそれまでのサビとは違って少し、儚い雰囲気。そしてすぐ後にサビをもう一度サビを繰り返すがそこではアコギとピアノ両方入って盛り上がる。
今までで最高の出来だ。長く感じたこの1曲。終わると、拍手が講堂中に鳴り響く。梓ちゃんと顔を見合ってお互い笑顔。1曲目というのにやりきった感があるよ……ダメダメ。まだあと3曲もある。
「こんにちは~軽音部です!!」
オレと梓ちゃんは目の前にあったマイクを取り、ステージの前のほうまで出てきて話す。
「最初の曲は『memory』という曲で」
「わたしたち2人、1年生からずっとやってきた組が演奏しました」
そう言うと、再び歓声が沸く。オレたちと1つ下の代なら放課後ティータイムの時期を知っているからな。先輩達の遺産がまだ残っているな。いつまでも『memory』として残っていくよ。いや、軽音部の伝統として残さなければならない。若葉学園軽音部中興の祖だからな。
因みに、初代はさわちゃん先生たちの代らしい。聞いてビックリだ。引退した後メタルの波が終わり、軽音部も徐々に衰退していたそうだ。泣きながら話されたよ。
そして、復活させたのがメタルとは程遠い放課後ティータイムと。その時の顧問が初代のさわちゃん先生だったということで、思い出深いらしい。ずっと泣きながら話された。
「去年、先輩方が引退して、メンバーがわたしたち2人になって活動を続けられなくなるのかと思った時期もありましたが」
「無事に新入部員が入りまして存続が可能となりました!」
「メンバーの紹介も兼ねて次の曲に行きたいと思います。わたしを中心に女子だけで組んだバンドです」
オレは梓ちゃんたち女子にステージを譲り、いったん舞台袖に退く。
「直ちゃんの姿が見当たらないが」
舞台袖に退いても見当たらないので雄二たちに聞いてみる。
「先生に連れられてPAの仕事をしているぞ」
「PA!!」
機器がたくさんあるほうに目を向けてみると確かにさわちゃん先生と直ちゃんがいた。すごいな。運動部で言うマネージャーの役割に近いかもしれないが、バンドでは十分メンバーの一員だよ。
「お、準備が出来たみたいだね」
アキがそういったため、ステージのほうに目を向けてみる。
「早速、2曲目行きます! 『Answer』!」
この曲は、梓ちゃん目線で詞を書いてみたとのこと。By直ちゃん。詞の内容の端々に梓ちゃんの気持ちも隠されている。直ちゃんすごいな~よく人を観察しているよ。
それに、初心者でまだ3ヶ月くらいしか練習していないと言うのによくドラム叩けるねスミーレちゃん。他の上級者と一緒に練習しているから上手くなっていっているんだろうな。
梓ちゃんは言うまでもなく、実力はジャズ研の頃から折り紙つきの純ちゃん、センスの塊は姉妹とも憂ちゃん、オレに認めてもらう一心で、ずっとキーボードを練習してきた優花、全てがクロスして音を奏でているな。
「ありがとうございます! 早速、この曲を演奏したメンバーを紹介します!」
2曲目が終わり女子のメンバー紹介。
「まずは、昨年まではジャズ研のベーシスト:鈴木純!」
「純ちゃ~ん」
「かっこいい!!」
「あはは、ありがと」
歓声に照れながらも思いっきりはしゃぐ純ちゃん。
「放課後ティータイム天才平沢唯先輩の妹、こちらも天才平沢憂!」
「天才なんかじゃないよ~」
「憂ちゃんかわいい~!!」
「ありがと~」
普通に観客と会話しているし。憂ちゃんもまさかこっち側の人間になるとは思ってなかっただろうな。前まで観客側から話しかけてくるほうだったのにね。
「転校生でヒロ君の従兄妹、ヒロ君には負けない月野優花!」
「どうもです」
「キャー可愛い!!」
「演奏中はカッコイイ!!」
人気だな優花よ。がっちりとみんなのハートつかんでるじゃん。
「そして1年生、ポワポワはムギ先輩譲り、斉藤菫!!」
「あ、どどどうも!!」
「やっぱり緊張してる?」
「もちろんです。足が震えています」
「そのうち慣れるよ」
確かに慣れる。が、慣れても緊張するのには変わりない。足が震えている感覚に慣れるだけだ。
「最後、舞台にはいませんが、軽音部の縁の下の力持ち、奥田直!!」
突然スポットライトを当てられ、ビックリする直ちゃん。まさか呼んでもらえるとは思っていなかったか。
「実は、今日演奏する4曲、作詞作曲は全て直ちゃんなんですよ!」
梓ちゃんがカミングアウトすると観客ビックリ。そりゃそうだ。音楽のイロハも分からなかった子がここまで出来るんだからな。みんなも希望にあふれるよね。
「そして忘れてはならない」
「我らが部長」
「「中野梓先輩です!!」」
まさか自分にも振られるとは思ってなかった梓ちゃんはビックリするも落ち着き払って観客に手を振っていた。
「女子のメンバーは以上です! 次3曲目は男子メンバー。よろしくヒロ君!」
「了解、梓ちゃん。またまた出てきましたヒロ君こと七島弘志です。早速3曲目を演奏する男子のメンバーを紹介したいと思います!」
女子が全員舞台袖に退いたのを見て、1人ずつメンバーを紹介する。
「まずは、ギター本田竜也!!」
オレが名前を呼ぶと1人でギター持って現れた。しかし相変わらずかっこつけだな~投げキッスまではしなくてもよろしい。女子のファンが集まりそうだぜ。
「竜也は幼少の頃から音楽の英才教育を受けていて、実力は相当なもの」
「よろしくっ!」
簡単に挨拶を済ませた竜也、さっさと次に進めという無言の抗議か。
「じゃあ次! ムッツリーニと呼ばれたこともあった土屋康太!!」
「………」
もともと無口な康太。それにこの人数を前にしたらなおさらだ。
「この無口なスタイル。陰から音楽を支えるベースにピッタリ」
「………俺はいいから次に進め」
「最近こいつの話を聞かないと思っていた人! カメラをベースに持ち替えて練習してました」
康太がジロリとこちらを見てきた。何だ……人前に立つのがイヤだからか。お望みどおり次行きますよ。
「そして、神童とも悪鬼羅刹とも言われた坂本雄二!」
「そんなの過去の話だ」
「そう、もはや過去の話。見た目通りドラムを叩きますが、パワーにあふれるだけでないドラムに注目!」
メンバーを紹介するにつれて3年生の方からはあまり声が上がらなくなる。
「そして最後、若葉学園初観察処分者、吉井明久!!」
「僕にもその称号いらないから」
「バカと言われたのはもはや過去の話。いまやAクラスの一員で、ギターも演奏できる」
「あはは……よろしく」
一通り全員紹介したところで、メンバーを見渡してみると確かにオレたちの学年じゃ評判悪いのばっかだ。そんなのは演奏する上ではどうでもいい。要は心に音楽が響くか響かないか。
「この個性豊かなメンバーが揃って演奏する軽音部3曲目。『Go Ahead』!」
パワーにあふれかつ正確なドラムソロ2小節をスタートにオレたちは全員演奏する。アキとオレの相性は抜群。デュエットもすぐに適応した。アキのやわらかい声とオレの中途半端な声。それらが微妙にマッチするんだ。そして、間奏のギターソロはもはや竜也の独壇場。それぞれの個性を十分に生かしたこのバンド。
「ありがとうございました!!」
拍手喝采。評判悪いのは地味に気にしていたからそれが認められたのは嬉しいばかりだ。
「これで、全員の紹介終わったね」
梓ちゃんが女子全員連れて(直ちゃんいないけど)ステージに現れた。
「そうだね。それと同時に後1曲しか残ってないけど」
オレらがこういうと、えーとかブーとか聞こえてきてとにかく嬉しかった。
「宣伝いいのかな?」
「やっちゃおう! ここにいる3年生、全て3-Aクラスなんですけども」
「執事・メイド喫茶をやっていますので、よかったら是非!!」
そういうと、キャーキャーわーわー男女の声が入り乱れて凄かった。人気ってのは嬉しいものだ。
「後輩、3人ともAクラスなんで、2-Aや1-Aもよろしくお願いしますね」
軽音部って頭良いイメージ普通ないはずなのに。何のキセキだろうか。
「は~……もう最後の曲演奏しますか」
「何かあっという間だったね」
「そうだよ。この3年間もね」
「放課後ティータイムの頃からわたしたちは演奏していたけど、3年生2年生のみなさん聞いてくれてましたか~!!」
と梓ちゃんが聞くと、歓声が上がった。
「ありがとうございます。1年生の皆さん、楽しんでますか~!!」
「凄い歓声。嬉しいね」
「わたしたちに元気くれるよね」
「ホントに」
世間話をして時間を長引かせようにも、2人には唯先輩ほどの話術は無かったと見え…話が止まってしまった。
「最後の曲は、このメンバーの中からえりすぐって構成したバンドです」
「ドラムは雄二!」
乱れ打ち(勝手にオレが命名)をし、アピール。
「ベースは純!」
こっちも1フレーズ何かを演奏しアピール。
「ギター竜也!!」
さまざまな技法を使い1フレーズだが猛アピール。
「そして、わたしとヒロ君、この5人で演奏します!」
「ボーカルは……聞いてからのお楽しみ」
どよめきが起きたが、気にしない気にしない。そして演奏しないはずの他のメンバーも舞台袖に下がらない。それは何故か。
「1・2・3・4!」
雄二のカウントから入るこの曲。数小節してから歌になる。
ボーカルは残り全員だ。1人1人の個性を消さないようにそれはちゃんと考慮してある。2人で一緒に歌ったりする場所ももちろんあるし、ユニゾンの部分もある。
えりすぐった、と言うが全員が軽音部の残ったメンバーだ。みんなで軽音部。これで曲は完成する。
最後の曲になって余裕が出てきた。観客のほうを見てみると、座れないくらいお客さんが入っているじゃないか。いや~そりゃ歓声もあんなに大きくなるわけよ。
「ヒューヒュー!!」
演奏が終わり、あらゆるところから指笛が聞こえてくる。
「キャー!!」
「カッコイイ!」
「カワイイ!!」
そしていろいろな歓声が。
「「「アンコール・アンコール・アンコール!!!」」」
今までに聞いたことも無い言葉が。オレたちは思わずステージ上で顔を見合わせる。そうしている間、徐々にその声は大きくなり、しまいには全ての声がこれに統一された。
「アンコール! ありがとうございます♪」
「こんな経験初めてです!!」
「じゃあ、そのアンコールにお答えして!」
と梓ちゃんが言うとみんないっせいに梓ちゃんのほうを見る。そりゃそうだ。そんなの想定してないから用意もしていない。どうするつもりだと言わんばかりに。
「放課後ティータイムのカバー、ふわふわ時間をやります!!」
このメンバーなら演奏できる。全員が。そして、全員が歌える。だからこの曲を選んだのか。
「軽音部の伝統のこの曲、最後に演奏してみなさんとお別れしたいと思います」
それだけ言うと、みんなで一気に顔をあわせ、最初は竜也から入る。そして、雄二や梓ちゃん、純ちゃんやオレが演奏し、歌の部分。ボーカルはアキ・康太・憂ちゃん・優花・スミーレちゃんの5人がいる。ぶっつけだがどう対応するのだ。それにスミーレちゃんや優花はあんまりこの曲に馴染みが無いだろう。
本来唯先輩が歌う部分を憂ちゃんが歌い、澪ちゃんが歌う部分をアキが歌っていた。他の3人はノリでなんとか。みんなの顔を見渡すと全員が笑顔、楽しく演奏していた。
そして観客の顔にも笑顔が見えていた。音楽をする上でこれが一番幸せだ。
あっという間にふわふわ時間も終わり、今年の学園祭が幕を閉じた。去年の学園祭も最高だったが、今年3年生となり後輩を持つ身になった学園祭も最高だった。
★
「先輩方がいて、本当に楽しかったです!」
「これが最後なんですよね……」
「寂しいです!」
部室に帰って来てから、後輩3人が泣きながらこう言った。
そうか、あえて気にしないようにしていたがこれで2年とちょっと続けてきた部活もおしまいか……いろんなことあったな~今年は先輩として涙は見せないでおこう。笑顔で。笑顔で幕を引こう。
「大丈夫。もう3人なら軽音部を引っ張っていける!」
「5人になるまで活動停止なんですよね」
「部員集めるところから頑張ります! 軽音部の伝統を潰さないためにも」
いい意気込みだ。この素晴らしい伝統は若葉学園必須だ。
「あの~すいません」
軽音部に聞きなれない声がした。そのため、みんなそっちのほうを振り向いてみると1人の男子と1人の女子がいた。上靴の色から察するに1年生か。
「………陽向!?」
学園祭の曲。題名だけ考えました。歌詞は考える暇が無かった……
『memory』『Go Ahead』
です。
『Answer』はHighschool編で使われています。
この作品を書き始めてずっとぶれなかった、最後の学園祭ライブの最後の曲でこのメンバーでやるということ。
もうここまで来たか……と思ってしまいますね。
最後になんらかの伏線が。
この考えも当初からありましたね。
そしていよいよ、次話が最終話。
最後までお付き合いくださいね。
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