新キャラ登場で、徐々に見えない壁が積みあがっていく。
その壁を取り壊すことが出来るのか。
はたまた、高く積みあがって取り返しのつかないことになるのか。
今後のヒロと梓は優花の登場によってどうなってしまう!?
では、どうぞ!
「こんな時期にと思うかもしれないけど……」
「どったの?」
さわちゃん先生が、いいお知らせということで突然やってきた部室。受験勉強にいそしんでいた先輩方も手を止めて、さわちゃん先生の話を待つ。
「軽音部に新入部員がやってきました!」
「マジ!?」
「こんな時期に!!」
「嘘~」
「どんな人?どんな人?」
………オレはとある1人の女子の顔が思い浮かんできた。それと同時に冷や汗がタラリと。
「どうぞ。入ってきて頂戴」
「失礼します」
といって、入ってきたのは女子。上靴の色からして1年生のようだ。
「月野優花と言います。昨日転校してきたばっかりですがよろしくお願いします」
やっぱりか。予想通りというべきなのか……まさか部活までオレの後を追ってくるとは。
「かわいい~」
「楽器は何が出来るの!?」
「どっから来たの?」
「甘いもの好き?」
「先輩達落ち着いてください。この子もちょっとひいてるじゃないですか」
先輩達は一瞬にして優花の元へ行くが、梓ちゃんがそういうと、先輩達は再び元の場所に戻った。
「月野優花です。楽器はキーボードを少し。先輩達の受験勉強の邪魔はしません。本格的には春からやろうと思っています。それまではどんな部活かを知るための見学のようなものですかね」
「どこかで聞いたことがあるような」
「あれだ。ヒロが入ってきたときと似ているんだ。最初は見学ってのが」
「そうか!」
確かにそうだな。意図せずしてやったんなら、やはり親戚というべきなのか。
「よろしくね、優花ちゃん」
「…………はい。よろしくお願いします」
機嫌悪そうに答える。何か喧嘩でもしたのか? 会って間もないのに。
「じゃあ、わたしは職員室に戻るわね」
「ほ~い」
「仲良くするのよ」
「ほ~い」
さわちゃん先生は部室を後にした。
「ヒロは何も聞かなくて良いのか? 今度からずっといる部員だぞ」
「え、まあ……聞かなくてもいいですよ」
「何だ? 梓以外には興味ないのか?」
「そういう意味で言ってるわけじゃないですよ! ただ、既に十分すぎるくらい知っているから別にいいでしょ」
「どういう意味?」
「オレの従兄妹なんですよ。まさか部活まで一緒になるとは思ってもいなかったですけど」
「「「従兄妹!?」」」
「全然似てないね」
従兄妹ってそりゃ~4親等も離れてりゃ似てないだろうよ。
「何か迷惑かけたら言ってください。すぐにしかりますから」
「なるほど。面倒見が良いのはこういうところからか」
「嫌が応にもその手のスキルは上がりますからね」
「そうか~1年の頭からこの学校に居たら、もっとわたしたちも楽しかっただろうに」
「残念ながらわたしたちももう受験だからな」
「楽器弾いている暇ないもんね」
「本当にね」
そりゃあもちろん、後輩としてもみんなに同じ大学にいって欲しいから、勉強してもらいますけど。
「ねえ、ヒロ君」
「なんだ?」
「お前、ヒロ君って呼ばれてるのかよ!」
「昨日からですよ。突然。同じ学校に通うようになってから」
りっちゃんの笑いが止まらないのはどうにかしてほしい。
(軽音部のみなさんには、ヒロ君が学年より実年齢が1個上って教えてるの?)
(心配するな。軽音部だけにしか教えてない。お前も絶対にバラすなよ)
(分かってる)
ここらへんの事情は優花もよく知ってるから、十分に対処してくれるだろう。
「もうわたしのことはいいですから、先輩達受験勉強なさってください」
「そうだな。休憩終わりだ」
優花はそういうと、オレと梓ちゃんの座っている場所の対角線上の机の前に、椅子を持ってきて座った。要するに、さわちゃん先生の席だ。
「えっとこの式を微分すると……そして増減表から ー 」
「If were not ー ああ、仮定法ね」
「井上馨は、欧化政策の一環として鹿鳴館を建て、条約改正をしようとした」
「メンデルの遺伝の法則じゃなくて、これは連鎖だね」
先輩達ってここまで勉強に集中することが出来るんだ。おみそれしました。でも、全員が違う教科をしているのは何だろうか。耳に入ってくる単語だけでも勉強になるからわざと教科をずらしているのか。
「わたしたちもしないとね」
「うん。そだね」
この頃、先輩達の受験勉強に付き合っているおかげで、オレらの成績は上昇中。家ですべきものが全て部活中に終わるんだもの。
その後、ずっと勉強で今日の部活を終えた。優花から特に異存が無かったところを見ると、さわちゃん先生にこのような状況と既に伝えられていたのであろう。
「じゃあな梓・ヒロ、えっと優花!」
「お疲れ様です」
優花もオレたちと一緒のほうから帰るらしい。
「えっと………これは……」
今オレは、右手は梓ちゃんと手を繋いでいる。これはいつもの光景だ。だが、左しかも腕には優花の手が。これじゃ、どっちと付き合っているか分からなくなるものだ。梓ちゃんもやめて欲しいなら言っていいんだよ。オレが言ったところで意味が無いからさ。2人きりになりたいなら言ってくれ。オレも喜んでそっちにいくから。優花は悪気は無いんだよ。多分。いつも通り、今まで通りオレと過ごしているだけだ。
「じゃあ、わたしはここでいいよ」
「いつも通り送っていくよ」
「それじゃ、悪いし」
「優花は気にしなくていいよ。というか2人とも名前で呼び合ってよ」
何かと疎遠な空気漂う2人。お互い同士でしゃべることはほとんどない。
「梓ちゃんは優花って呼び捨てで言っていいよ」
「優花、これでいいかな?」
「いいだろ優花」
「…うん。中野先輩」
「そんな他人行儀にならなくても。下の名前で呼べば良いだろ」
「梓先輩」
「よろしくね」
夜道だから2人の表情はよく見えないが、話し方・言葉で大体分かる。
「じゃあ、また明日ね」
「うん。バイバイ」
梓ちゃんを家まで送り届けた後は、オレも家に帰るだけ。
「わたしを家に送ろうとはしないの?」
「冗談だ。お前の家、ここから遠いだろ」
「そう。だからヒロ君の家に行く」
どういう意味かな? それに、直接帰ればこんなに遠くは無かっただろ。
「ヒロ君の家に自転車置いているからそれで帰る」
「毎朝、ウチに止めて通っているのかよ」
「うん。そのつもり」
まあ別にダメじゃないけどさ。ってかお母さんが許したならいいけどさ。
「じゃあ、わたしも帰るね」
「家まで送らなくて良いのか?」
「自転車だから大丈夫」
「そうか。気をつけて」
家の前まで来ると、確かに優花の自転車があった。それに乗って帰っていく優花。その後姿を見ながら、今日一日もどっと疲れたと感じてしまった。
★
次の日もその次の日も、来る日来る日毎日優花は軽音部の部室に来るようになった。部員になったから当たり前なんだが……オレはそのため、梓ちゃんと話す回数が激減した。クラスでもなかなか忙しくて話せない、こんなときでもいつも部室で話していたんだが……帰り道も本来なら2人きりで帰るんだが、最初の日のように優花がずっとついて来るためそんなことも出来ない。
梓ちゃんが嫌と言えば終わりなんだろうが、それをしない優しさというか何というか……梓ちゃんは優花を悪く思っている感じはさっぱりないのだ。優花がどうも梓ちゃんを嫌っているというか、そんなオーラを出しているきがするんだよなあ。どうすればいいんだろうか。結局のところはオレが解決しなくてはならない問題なんだけどさ。
そんなこんなで1月がいつの間にか過ぎていた。なんらいい解決策が思い浮かばずに。進展0。先輩方がセンター試験を受けたり、私立の試験を受けたりというのがあったというのが最
近の軽音部活動記録であろうか。
こうやって、ちょいとばかし梓ちゃんとの距離が疎遠になりそうなときに、2月も数日過ぎていった。このまま梓ちゃんとの距離がどんどん遠くなる気がする。それは絶対に嫌だ。むしろ、梓ちゃんもそれを望んでいないと信じたい。優花という1人の登場によってここまで関係が途切れると言うのも予想してなかった。正直、自分の見立てが甘かった。
「梓ちゃん」
「……どうしたの?」
だから、行動を起こす。優花には悪いと思うが、梓ちゃんをまず最優先に考えることにした。
「今日、部室に行かずに帰らない?」
「急にどうしたの?」
「部活に行くと優花がいるじゃん。だからこの頃ゆっくり話していないなと思ってさ」
「それだけ?」
あんまり乗り気じゃなかった。どうしよう。これがいわゆる倦怠期ってやつなのだろうか。
「分かった。そうしよう!」
「今日の部活は中止。ということで」
「山中先生に言いに行かないとね」
さわちゃん先生には事情を話して、優花が来た場合は今日の部活はないということを伝えてもらうようにした。
「寄り道しよっか」
「何処に?」
優花がカンが良かったら、確実に追ってくる。梓ちゃんと帰っているいつもの道を。だから今日はその方向に行きたくない。ということは、意外と近場のあそこだな。
「久しぶりラ・ペディス行く?」
「いいね。この頃ご無沙汰だったからね」
竜也のバイトも1年の時に比べたら少なくなっているらしい。あのときが異常だっただけだが。
「いらっしゃいませ~って、お前ら」
「ココで会うのは久しぶりだな」
「こちらにどうぞ」
「ありがとうな」
竜也は学校が終わってすぐにココに来たらしく、既に仕事に入っていた。
「今日は部活無いのか」
「切り上げてきた。いろいろと話がしたかったから」
「そか。本当にごゆっくりしてけ。別に注文しなくても構わない」
「気遣いありがとう」
竜也のこういった気配りが非常に助かる。オレは竜也が持ってきてくれたお冷を飲みながら話す。
「3学期になって話す回数減ったよね…」
「うん」
「やっぱり、優花のせい?」
「………………」
「怒っている?」
「そんなんじゃ ー 」
「ゴメンな。オレのせいでこんなことになって……オレはもっと梓ちゃんと話したいのに」
「……わたしだってもっと。でも」
「でも?」
「優花ちゃんにヒロ君を取られたって感じに思っちゃって。ヒロ君にとっては昔から面倒を見てきた従兄妹なのに」
梓ちゃんがそういう風に思ってくれたんだ。本当にゴメンな……
「あいつは前からオレの真似をして追い抜こうとする」
「そう思っているのは多分ヒロ君だけ」
「どういうこと?」
「優花ちゃんは、ヒロ君のことを好きなんだよ」
「はあっ!?」
そんなわけがあるわけない。あの優花がだぞ。
「好きな人と同じことをして、それを認めてもらいたい。そう思っていると思うよ」
「絶対違うよ~」
「本当かどうかは本人に確かめてみればいいよ」
そこまで言うか。にわかには信じられないんだが。
「わたしはヒロ君が優花ちゃんにその事実を告げられたとしたら ー 」
「梓ちゃんを選ぶよ。梓ちゃんもそれを信じてくれる?」
「もちろん」
よかった久しぶりに話せて。これを聞くと本気で優花と話さなければなったな。
「何か注文しよっか」
「そだね」
オレたちは竜也を呼んで注文する。今日は何か気を遣ってくれたのか心なしか大盛りだった。
「ねえヒロ君」
「何?」
「先輩たちに何かプレゼントする?」
「合格祝いにってこと?」
「あ、いや…それも兼ねてというかなんというか」
? 全く心当たりが無いものだ。
「ば、バレンタインに、日頃の感謝を込めて何か送るかなと思って」
そんな日もあったな。例年変わらず過ぎていっていたから気にもしてなかったよ。
「そうだね。もうすぐ先輩達も卒業だし、これがラストチャンスだね」
「うん……去年はムギ先輩が持ってきてくれたけど、今年はわたしが持っていこうかなと思って」
「オレも手伝うよ」
「ありがと」
今日はこの後ずっと何を作るかで決めて帰ったのであった。
三角関係?
果たして梓の見立ては当たっているのか。
ただの思い過ごしに終わるのか。
バレンタインね~
二次創作の小説書くときに毎回題材にするけど、その度にちょびっと憂鬱に。
欲しいな~ってね。
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