青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 前話の終わりである程度予感はしていたでしょう。

 とうとう3学期に入ります。

 そこでやはりあの方登場します。

 では、どうぞ!!




#85 3学期!

 

 

 「先輩来ないね」

 「うん。3年生は3学期は、週2しか来なくていいんでしょ。2月から週1」

 正月の騒動の後、その次の日に初詣に行ったオレたち2人。何か特別なことがあるわけでもなく、始業式を迎えた。その日の部活。部室に行っても先輩達が一向に現れる気配が無いのだ。

 

 「そうだったね。ちょっとメール見てみようか」

 「何がしかの連絡が入ってるかもね」

 梓ちゃんが携帯を取り出すと、確かに澪ちゃんからのメールがあった。内容は、学校に来ない日は部室にも来ないんだそうだ。最後の追い込みの時期、塾等忙しいのであろう。

 

 「どうしよっか……2人で練習するにしてもね」

 と、オレたちが考えていると、部室のドアが開いた。オレたちは自然とその方へ顔が向く。するとそこには…

 

 

 

 「ヒロ兄……」

 「優花!?」

 オレの従兄妹:月野優花が現れた。それも、ウチの制服を着て。

 

 「今日から若葉学園生。ヒロ兄よろしくね」

 しかも転校生というね。オレのいとこってのは転校してくるのが多いな。

 

 「何故ここに?」

 「ヒロ兄が他の ー じゃなくて、勝負をいつでもつけれるように」

 女子高生としては平均的な体つきをしながら、顔立ちが整っているため、内心自慢の従兄妹だ。こいつがその気になればいつでも誰かと付き合うことが出来るだろう。性格も悪くはない(オレに対して例外)

 いい加減諦めれば良いのに、オレの後ろをついてきては追い抜こうとしている。何がきっかけなんだろうか、オレには全くの覚えがない。

 

 「分かった。お前の意志は分かったが、よくも簡単に親父さんが許したな」

 「引越しはしてないから、ちょっと通う距離が遠くなるだけ」

 「転校の手続きとかいろいろ面倒だろうが」

 「喜んでしてくれた」

 あの叔父さんも何を考えているんだか……

 

 「それで、この学校のことを聞こうにも先生達は忙しそうだったから、やめにした」

 「だからオレのところに来たってか?」

 優花は返事する代わりにうなずいた。ふむ……暇だし別に構わんが、梓ちゃんもいるしな。

 

 

 「じゃあ、わたしはちょっと教室の方に戻るね」

 「梓ちゃん、そんなに気を遣わなくていいんだよ」

 「えっ?」

 「ヒロ兄のバカ」

 何故に罵倒されなければならないのだろうか。こいつはこんな性格だったか? そういう風な言葉はあまり聞き覚えの無いのだが。

 

 「この学校にどんなところがあるか教えてよ」

 「あ~分かった。梓ちゃんも行こうか」

 「いやいいよ。わたしがいると話しにくいこともありそうだし」

 梓ちゃんは優花のほうを見て、オレに伝えた。女子同士にしか分からないようなことだろうな。さっぱり分からん。梓ちゃんを1人にしては問題だということで気を利かせたのに……

 

 「じゃあ、行こう!」

 「あ、ああ…」

 オレは優花に学校紹介をするために部室を出た。

 

 

 

 

 

 「は~やっと邪魔がなくなった」

 「邪魔?」

 「何でもない」

 今日のこいつは何かとおかしいような。オレは何もやった覚えないが不貞腐れている感じだ。

 

 「って、離れろよ!」

 「いいじゃん。いつもこうしてるでしょ」

 「お前、実家で会うときと学校で会うときの違いくらい分かれ!」

 突然腕を組んできたから振り払おうとするも、知っての通り運動神経抜群であるため、力の掛け方が絶妙なのだ。オレが離そうとすると痛みが来る。何もしないで置くと痛みは来ない。何ともいやらしい……

 

 「お兄ちゃん」

 「ちょっと待て。それはいろいろと語弊がある」

 「小さい頃はこう呼んでたじゃん」

 「今いくつだ」

 「16」

 自覚しているのなら、行動にも現して欲しい。その呼び方はいろいろまずいということで、今の言い方に変えたのに。

 

 「分かった。ヒロ君」

 「ちょい待ち。何で元の呼び方に戻そうとしない」

 そうだったな。こいつはもともとこんな明るい性格だったよな。一時、オレから距離を置くためか何か知らんが勝負のとき以外話すこと無かったんだが……とことんオレを振り回すんだよな。

 

 「気に入った」

 1つの教室を案内する前にどっと疲れたよ。その後、数十分かけて校舎中を案内して回った。その間中優花は腕を絡めて歩いていたんだが…たまにすれ違う知り合いと目が合うと、気まずくなる。これを見て、オレが脅されているようには見えないもんな。

 

 

 

 

 「あ、西村先生…」

 「七島……お前は校舎内で何をやっているんだ」

 「優花に言ってください」

 「お前は見ない顔だな。転校生か?」

 「はい。今日からこの学校に転校して来ました月野優花です。ヒロ君の従兄妹です」

 「そうか……出来れば校舎内でそういった行動は謹んでもらえるといいんだが」

 呆れながら優花に言う西村先生。どんどん言ってください。オレを社会的に抹殺するつもりですよ。この野郎…勝負で勝てないからってこんな姑息な手を使うまでに落ちぶれたのか。お兄ちゃんは悲しいよ。冗談。

 

 

 「あ、ココにいた」

 「あれ、大島先生どうかなさいましたか?」

 「あ、ウチのクラスに転校してきた月野です」

 「大島先生のクラスでしたか。どうやら七島の従兄妹らしいですよ」

 「そうでしたか。いい先輩がいてよかったじゃないか」

 「光栄です」

 そこはお前が照れるんじゃなくてオレが照れるんだ。

 

 「校内見学をしないといけないから ー 」

 「もう終わりました。ヒロ君に」

 「一応、施設は教えました」

 「ありがとう七島。それでは早速だが部活動の紹介を」

 「それもいらないです。もう決めてますから」

 「そうか。早いな。いいことだ。何部に入るつもりだ?」

 オレの方をちらっと見てから優花はまだ内緒ですと答えた。明日教えるらしい。オレもそれは知りたかった。こんなに器用な優花だ。どこの運動部からでも引っ張りだこだろう。

 

 「じゃあ、俺はもういらないな。七島わざわざすまんな」

 「くれぐれも校内では気をつけろよ」

 この学園1・2の運動神経いい先生を目の前にして身じろぎ1つしなかったこいつの肝っ玉の太さは何か。もはや金属か。

 

 「ヒロ君今日はありがとう」

 「ああ。本当に疲れた。お前がこの学校に来るとか思っても無かった」

 おかげで気が休まる日が来ないよ。

 

 「わたし帰る。また明日ね」

 そう言うと、テンションが高いのか軽くスキップして帰った。って、おい。また明日もお前と会うのか!? 部室に会いに来るのか。もしくは教室に乗り込んでくるか。個人的に両方避けてもらえると嬉しい。学校外で会う分には全然構わんのだが。

 

 

 

 

 

 「帰るか」

 部室に帰る。ドアを開けたら、大勢の人がいた。

 

 「なんで?」

 オレは思わずつぶやいてしまった。しかも、その面々がアキや雄二といったいつものメンバーであった。

 

 

 「ヒロ。ココに来て」

 「んあ? どうした。って、梓ちゃんは?」

 「席を外してもらってる」

 何だ、みんなのまとってるムードがいつもと違うぞ。怖い……

 

 「え、ええーっと……?」

 「「「失望した!!!」」」 

 「突然、何を!?」

 みんなに指差され、息ピッタリでこんなことを言われた。

 

 「見に覚えが無いのかい? それはそれで末期症状だ」

 まさかとは思うが、さっきの学校紹介していたときの見られてたんじゃ。

 

 

 「ちょっと待て。お前ら何か勘違いしてねえか?」

 「言い訳無用。僕らは異端審問会ならぬ ー 」

 「おい待て。状況整理くらいさせろ。それだとFFF団と同レベルだ」 

 「ふむ。それは嫌だ」

 いや、今の追い詰め方とか十分それに近かったと思うぞ。

 

 「お前たちが何を持ってオレに失望したのか」

 「それはヒロ自身が分かっているはずだ」

 おいアキ。たいがいにしとけ。状況整理だって言ってるだろ。食い違ってたら元も子もないんだよ。

 

 「僕たちは偶然見てしまった」

 「何を」

 「梓ちゃん以外の女の子と仲良く手を繋いで歩いているシーンを」

 食い違いはなさそうだ。予想通り勘違いをしている。オレはこの勘違いを解くのにどれほどの労力を要するだろうか。本人にしたときも大変だったが、こいつらはvs10人いるから大変だ。

 

 「よし。お前たちの言い分は分かった。オレの言い分も聞いてもらおう」

 「聞くまでもない」

 だとしてもオレは身の潔白を証明するために言うぜ。

 

 「あれは、オレの従兄妹だ」

 「ヒロ君~いる?」

 最悪のタイミングで当の本人が現れた。悪意があるのかこいつは。嫌がらせか?

 

 

 「あ、さっきのヒロと手を繋いでた人」

 「お前からも言え。優花。オレの従兄妹だ。自己紹介しろ」

 「あ、え~っとヒロ君の従兄妹の月野優花です。よろしくお願いします」

 「それでいい。分かったか。これでいいだろ」

 何かとオレを貶めようとするな。やめてくれ。

 

 「お前は何しに来たんだ」

 「荷物をここに置いてたの忘れてて」

 「わざとだろ」

 「違うよ。ちょっと舞い上がっちゃって」

 「はいはい。転校初日だから分かるけど、気をつけて帰れよ」

 「…………分かった」

 さっきまで調子が良かったのにオレがごく当たり前のことを言うと、また不機嫌になったようだ。そして、やつはこの部室を後にした。

 

 

 

 「でもヒロ」

 「何だ」

 「いくら従兄妹とはいえ、あそこまでする?」

 「無理やりだ。あいつの運動神経のよさを知らないから分からんだろうが……」

 普通に運動部だったら……例えば、女バスだったら普通に4番背負って県大会以上は確実。ソフトボールだったら4番ピッチャー。そんなやつが、きれいに腕を絡めるのだ。後は言わなくても分かるだろう。

 

 「でも……梓ちゃんのことも考えるとね」

 「分かってるさ。本人もあいつのことは知ってる。お前らもオレたちの仲を心配してくれたのはありがたい。ただ、あいつとの決着はオレ自身の手で下さないといけないんだ」

 「決着?」

 「やつは小さい頃からオレの後についてきて、オレがサッカーするならサッカーして、野球するなら野球してという感じでやってきたんだが、その度にオレと勝負をするのだ。オレの得意分野でオレに勝つことを目標としているのだ。今回転校してきたのも年に1回しかチャンスがないのを変えるためだそうだ」

 「ははは………大変だね」

 よくぞ同情してくれた。ただ、同情してもらってもやつとの勝負がなくなるわけではない。

 

 「でもよかった。ヒロ君がまさか梓ちゃんを捨てたのかと思った」 

 「憂ちゃん、そんなわけあるものか。オレだって梓ちゃんは大切な人だよ」

 「よかったね~梓、そう言ってもらえて」

 と、純ちゃんが言うと、物置から梓ちゃんが出てきた。

 

 

 

 「うん……わたしは信じてたよ」

 「アツいね~」

 「っていうか、みんな勝手に先走っちゃってびっくりしたよ。わたしはもう知ってたのに」

 「てっきり梓を捨てたのかと思ってさ~問い詰めようと思ったんだよ」

 「そこまでしなくても」

 「甘い! 梓は甘いよ!」

 心配しなくていいよ。オレは梓ちゃんと一緒にいるからね。

 

 「ってか純、ジャズ研行かなくて良いの?」

 「しまった~!! もうとっくに始まってるじゃん!!」

 ご愁傷様です。急いで出て行った。

 

 「秀吉も」

 「ワシもそろそろ行かねばのう」

 「アタシも生徒会の仕事があるし」

 「………わたしも手伝いを」

 「ボクも部活があるんだった」

 秀吉も部活に向かい、愛子ちゃんも同じ理由で部室を去った。優子さんは、この1月から若葉学園の生徒会長として君臨することになった。和さんの跡を継ぐ者としてこれ以上ないだろう。霧島代表は学年代表として、生徒会のサポートもしている。

 

 「俺たちも帰るか?」

 「そうだね。問題も解決したし」

 「竜也、暇ならドラム叩いてくれ。2人じゃどうも練習できなくて」

 「…………どうしようか」

 竜也はアキや雄二・康太のほうを見て、こういった。

 

 

 

 「ねえねえ。わたし何か楽器弾いてみたい!」

 「憂、唯先輩が置いていっているギー太使えば?」

 「使っちゃって良いのかな?」

 「いいんじゃないの。憂ちゃんが使うんなら喜んでいると思うよ」

 「そうかな~」

 というか、家で練習するときにも憂ちゃん何回か触っているし別に構わないだろう。

 

 「よし。俺が叩いてもいいか?」

 「雄二が? 出来るのかよ」

 「どうだか」

 「やってみろよ」

 と言うと、雄二はドラムの前に座りスティックを握ると、激しくたたきだした。

 

 

 

 

 「おお……なかなかやる。練習しているのか」

 「練習ってほどではないが、暇つぶしにな」

 「家にドラムが?」

 「ねえよ。ま、そんなことより練習しないのか?」

 「お、おう。するする。梓ちゃん用意できてる?」

 「今の間にしたよ」

 オレも自分のキーボードの電源をつけて準備完了させる。

 

 「これでよしっと」

 憂ちゃんもいつの間にかギー太を持っていて、チューニングも終わらせていた。

  

 「ベースがいねえな」

 「音に深みがないよね」

 「………心配するな。ジャズ研から借りてきた」

 「竜也が弾いてくれるのか」

 「………いや、俺が弾こう」

 「何っ!?」 

 そういえば前に言ってたな。康太、たまに純ちゃんにベースを教わっているって。

 

 「何か随分と本格的になったな」

 「じゃあオレがもう1つのキーボードするか」

 「僕が何か歌おうかな」

 「お前ら即興でそんなこと出来るのかよ」

 「「「まずはやってみよう」」」

 確かにこいつらの言う通りだから、やってみることにする。そんなことを思ってたら、突然憂ちゃんのギー太が音を上げた。というより、憂ちゃんが弾きだした。これは「ふわふわ時間」だな。突然鳴り出したというのに、みんな動揺もしていなかった。オレや梓ちゃんが入れるのは当たり前だが、雄二や康太・竜也が入れたってのは凄いと思った。そして、歌の部分、アキが歌えている。何だお前ら練習していたんじゃないんだろうな。この出来は。すごすぎるぞ。軽音メンバーは誰も楽譜を教えていない(そもそも楽譜がない)から、おそらくは全て耳コピ。竜也を中心に作ってたのか。忘れていたが、憂ちゃんの応用力の高さ。唯先輩の練習に付き合ってただけで自分も弾けるようになるのかよ。

 

 

 

 

 

 

 「すごいよみんな!」

 梓ちゃんの声。オレもそう思った。

 

 「楽しかったね。またこんな機会があるといいね」

 「そうだな。俺たちはそろそろ帰るか」

 「………じゃあ、帰る」

 「ありがとね~楽しかったよ」

 「さらば」

 いつの間にか自分の楽器を片付けて部室を後にする5人。

 

 「何だったんだろうね」

 「さあ?」

 謎が残った今日の部活だった。

 

 

 

 

 

 

 

    ★

 

 「みんな~ちょっと聞いて~」

 「どうしたのさわちゃん」

 「いいお知らせがあるの」

 次の日、学校に来た先輩方と部室にいたら、さわちゃん先生が突然乗り込んできた。この時期、3年生の担任を持っているということで滅多に現れなかったのに。何があったんだろう。

 

 

 

 





 どうですか?
 新キャラ月野優花。
 読者の皆様がどう思われているのか気になります。

 名前の由来は……しょうもないことですが……
 この頃見た作品の中で作者が最も好きな女子キャラからそれぞれ1字取っています。
 部分部分分かるかもしれませんが、誰か全部分かる方はいらっしゃるのでしょうか!

 
 最後らへん、今後に向けての伏線でしたが、いつの間にかアキたちは楽器が弾けるように。 これが今後どういう風に軽音部にどういう風に影響していくのか!!

 最後、さわちゃんは一体何しに来たのか。

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