青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 人間関係が複雑になってきた気が……

 ほんの少しの出番ですが、一気に10人以上出てきますので。
 若葉学園生(1年生)が。

 では、どうぞ!!




#20 ライブハウス!

 

 「ヒロ~」

 「お、竜也、久しぶり」

 次の日、従兄弟の竜也と学校内で久しぶりに再会した。同じ学校だけど、違うクラスなのでほとんど会わない。

 

 「学園祭のライブ見た! 楽器出来なかったヒロがあそこまで出来るとは」 

 「お前、学園祭約2ヶ月くらい前じゃないか?」 

 「仕方ねえだろ。オレだって忙しくて、学園祭以降話す機会が無かったんだから」

 「メールか電話すりゃいいじゃん」

 「お前のアドレス知らないぞ」

 そうだった。交換してないんだったな……

 

 「ったく、何をしたらお前がそんなに忙しくなるのか」

 「バイトだよバイト。オレはな、1人暮らしをしてんだ。あ、厳密に言うと2人暮らしか」

 「何でだ?」

 「家出したんだ。あんな家には居たくないって。親と喧嘩してな」

 贅沢な話だ。どんな喧嘩をしたかは知らないが、豪勢な家から飛び出すとか。

 

 「それで、オレが家出してしまったせいで、生まれたときからオレの世話をしてくれた爺やがクビになってしまったからさ……オレも責任感じるじゃん。だから一緒に住んでいるんだ」

 「ったく自由な男だ」

 「褒め言葉だな」

 「そうだ。お前に渡すものがあった」

 オレは胸ポケットから、大晦日ライブのチケットを取り出して竜也に渡した。

 

 「お前にオレたちのライブを見に来てもらいたくてな」 

 「そのチケットか?」

 「そうだ。お前の音楽センスは凄いからな……何か気づいたことがあったら言って欲しい」

 「是非とも行く」

 竜也はバカだ。どうしようもないバカなんだが、芸術才能には秀でている。絵が上手い、料理も上手い、運動神経もいい、そして極め付けが、音楽の才能がある。ドラム・ギター・ベース・キーボード全て出来る。小さい頃からしていたから腕も確かだ。

 

 「ヒロ~おはよう」

 後ろから話しかけられ振り向いてみると、そこにはアキ・雄二・秀吉・康太がいた。

 

 「お、お前らちょうどよかった」

 「何が?」

 「今度、大晦日にライブをするんだ。是非とも見に来て欲しい」

 4人にチケットを渡す。これで、ちょうど5人全員に渡した。

 

 「行く!」

 「暇だしな」 

 「ワシも大晦日は部活休みじゃ」

 「………(コクコク)」

 全員、簡単に了承してくれた。嬉しい。

 

 「あ、ヒロの従兄弟だ」

 「どうも。竜也だ」

 「そうそう。竜也も行くの?」

 「ああ、誘われたからな」

 あんまり接点が無いが、正直やつらは来年同じクラスになりそうだ。

 

 「お前ら、もうそろそろHR始まるぞ」

 「ほ~い」

 西村先生がやってきて、急いで席に着いた。

 大晦日が楽しみだ。

 

   ★

 

 ヒロからチケットを貰った後、オレ竜也はたまたま優子さん(この人だけちゃん付けするのは気が引ける)とすれ違った時に、同じチケットを持っていたので気になって聞いてみた。

 

 「そのチケット……?」

 「あ、ああこのチケットね。憂が“お姉ちゃん達ライブに出るから見に来て欲しい”って」

 「憂ちゃんが? 優子さんは行くの?」

 「え、ええ。もらったからにはね」

 憂ちゃんも優子さんも見に行くのかあ。テンションが上がってきた!

 

 「オレもそれ見に行くんだ!」

 「へ~そう」

 「楽しみだね」

 「わたしはそこまでバンドに興味はないけど、唯ちゃんたちが出るからね」

 ちょっとそっけない優子さんだったけど、当日みんなで一緒にライブを見る約束をして教室に入った。

 

   ★

 

 今日は、クリスマス・イブ~12月24日。

 オレには別に関係ないんだが、こういったイベントごとに盛り上がる方がいらっしゃるんです。

 

 「今日、クリスマスパーティーしようよ!」

 「いいな、唯!」

 唯先輩だ。

 

 「今年もウチは誰も居ないからウチでしよう!」

 「両親は?」

 「海外旅行中!」

 えらく仲が良い両親のようだった。

 

 「みんな来れるね。ヒロと梓ももちろん」

 「何、その嫌味が籠った言い方は」

 「クリスマスだよ。誰か一緒に出かける相手居るのかな?」

 「いませんよ!! りっちゃんだっていないでしょ!」

 むう……妙に劣等感をあおられるな。

 

 「何か律先輩に言われるのは悔しいです」

 「おう言うな梓~」

 「澪先輩なら仕方ありませんけど」

 「な、わたしだってそんな人はいないぞ!!」

 そんな顔を真っ赤にして怒らなくても良いじゃん。

 

 「あ、みなさんいらっしゃい」

 「憂ちゃん、今年もお世話になるよ」

 「どうぞ、ごゆっくり」

 去年もこの家でクリスマスパーティーをしたようだ。去年はプレゼント交換をしたみたいだったが、今年はそれを買う暇が無かったので、ただ鍋をみんなで食べるだけ。

 

 クリスマスもあっという間に過ぎ去って、いよいよ大晦日。

 とうとう、学外でのライブだ!!

 

 「こんにちは~」

 「よろしくお願いしま~す」

 コッチがいつもの調子で気軽にライブハウスに入ると、既にそこには他の出演バンドの人たちが。とても張り詰めた空気で、場違いなんじゃないかと思ってしまった。

 

 「こんにちは~」

 「よろしく~」

 見た目怖そうな人(ヴィジュアル系?)が気軽に話しかけてくれたため、ちょっとほっとした。

 

 「あ、りっちゃん! 澪ちゃんも久しぶり」

 「マキちゃん! みんな紹介するね。こちら今回ライブに誘ってくれたラブ・クライシスのマキちゃん」

 「よろしく」

 「こちらこそ、りっちゃんがお世話になっています!」

 唯先輩が珍しいと言っちゃ悪いけど珍しくちゃんとした言葉で。

 

 「学園祭のライブ見に行ったわよ」

 「ありがとう」

 「今度はわたしたちのライブ見に来てよ。単独ライブだから」

 「おおっ。すごい!」

 普通、他の高校の軽音部ってこんなこともしてるのかと思うと、オレたちは井の中の蛙だったと思い知らされる。

 

 「あと、これがわたしたちのCD。自分達で作ったんだけどね」

 「すご~い!!」

 「じゃ、また後でね~」

 「意気込みが違うな」

 駆けて去っていくマキちゃんと言う子を見ながらつぶやくりっちゃん。確かにそうだ。

 

 「ねえねえ、何かわたし達もロゴマーク考えない?」

 「いいねそれ!」

 「じゃあ、こんなのとか」

 唯先輩は何かを手に書いて見せてきた。

 

 「温泉か!」

 そう、温泉の地図記号まんまであった……

 

 「あ、それ下をティーカップにすればいいんじゃない?」

 「こう?」

 おおっ!すげえよくなった!

 みんなピックやらスティックやらに書いてもらう。

 

 「わたしもキーボードに」

 ムギ先輩は、キーボードを持参しているのでそれに書いてもらうみたいだ。オレはキーボードにこだわりがあんまりないため、ここに置いてあるもので演奏しようと思っていたから、キーボードに書いてもらうことは出来ない。

 

 「唯先輩、オレは今日は手に書いてください」

 その後は、何か対策を練ろう。みんな私物にロゴマーク書いてあるから。

 

 「すいませ~ん、コレ、バックステージパスです」

 「ど、どうも……」

 関係者ってことを分かるようにするためのシールか。

 周りの人のギターケースを見てみると、さまざまなシールが目に付く。歴戦の強者揃いだ。

 唯先輩はそれに習って、ギターケースにつけようとするが、りっちゃんからのツッコミが入る。

 

 「当日は、自分に貼らないと出入りできないから」

 「そうなんだ~」

 「そこに貼るか!?」

 ももに貼り付けたのであった。

 

 「無難な位置だね」

 「そりゃそうだ」

 左の二の腕にみんなつけた。

 

 「そうだ。セッティングシート書こうぜ!」

 「曲名、曲調はいいとして、照明のイメージとかだな」

 「聞いてくるよ」

 よりによって一番怖そうな人たちのところに唯先輩は聞きにいく。その繰り返しで何とかシートも埋まった。

 

 その後、リハーサルが始まって他のバンドのも見ることになった。

 

 「凄いエフェクターの数」

 「マイマイクだ」

 ライブを重ねた証といったところなのだろうか。

 

 「ねえねえ見て! お菓子も一杯あるよ。りっちゃんCDも!」

 唯先輩は全く緊張するそぶりも見せずに生き生きとしていた。

 

 「お茶にしようか~」

 「ええっ!?」

 ムギ先輩も唯先輩もある意味最強だ。

 

 「わ~良い香り」

 「一緒にどうぞ!」

 「じゃあ、お言葉に甘えて」

 出演者全員でお茶することになった。

 

 「いろんなコンテストに出ているんですね~」

 「絶対プロになりたいから」

 「ずっと音楽やって行きたいし」

 刺激になるな。こういったものは。今まで音楽を楽しんでやってきたんだけど……プロねえ。

 

 「放課後ティータイムさん、リハお願いします!」

 「あっ!」

 まったりしすぎた……

 

 「な、何からすれば?」

 「セッティングだろ!」

 「そ、そうね」

 「誰に言ってるんですか!」

 動揺しすぎて、みんながあたふたしている。

 

 「じゃあ、お願いします」

 「4曲目ふわふわ時間1コーラスいきます。ワン・ツー」

 前奏が始まって、演奏を始めるが ー 。

 唯先輩が歌うのを忘れて、動揺しているところに助けに行こうとしたみんながつまづいたりと、ぐだぐだだった。

 

 「落ち着いていこう」

 「もう1回やればいいからね~」

 他の出演者の人たちも励ましてくれた。

 これは、放課後ティータイムだけのライブじゃない。他の人に迷惑かけられない!

 

   ★

 

 「ここらへんだよね」

 「あの行列だな」

 「すごい人の多さ」

 僕吉井明久はヒロのライブを見に、雄二とかとライブハウスに来た。

 

 「お、来た来た」 

 「竜也、来てたのか」

 「ああ」

 先に来ていた、竜也と合流したんだが、周りに女子がいたので気になった。え~っと確か、平沢さんと鈴木さんは分かる。あ、あれは ー 、

 

 「秀吉!?」

 「何じゃ」

 「えっ?」

 後ろから秀吉の声が聞こえてきた。目の前にいるのは?

 

 「あれはワシの姉上じゃ。木下優子。前に言うておったじゃろ」

 「それにしてもそっくりすぎて見分けがつかない」

 「みんな言うのよね。すぐに分かるのに」

 いや、分からないです。顔が全く一緒だもん。

 

 「こんにちは、みんな若葉学園の生徒ね」

 「こ、こんにちは」

 「みんなも知ってると思うけど、生徒会長の真鍋和さん」

 ごめんなさい。知りませんでした。

 でも、何で生徒会長がこんなところに?

 

 「わたしは、唯……あのギターボーカルの子ね。その子の幼馴染だから」

 「そうなんですか」

 すごい。この人はエスパーなんだろうか。僕が考えていることが何で分かるんだ!

 

 「もう入って良いみたいね」

 僕たちは、9人で一緒にライブを見ることになった。

 

   ★

 

 「終わった~!!」

 「何か、あっという間だったな」

 本当にそうだ。あっという間に終わった。でもミスも少なく、初めてのライブハウスでのライブにしてはよかった。

 

 「お疲れ様」

 「あ、さわちゃん、待っててくれたんだ」

 オレたちはライブ終わっても、いろいろとしていて遅くなったのに……さわちゃん先生と憂ちゃん・純ちゃん・和さん、それに竜也も待っていてくれてた。

 

 「お姉ちゃんすごかったよ!! 後、優子ちゃんも喜んでた!」

 「みなさん、かっこよかったです!!」

 「ホント……みんなよかったわよ」

 少ない人数だけど、ライブを褒められるのは本当に嬉しい。

 そんなときに、ラブ・クライシスの人たちがライブハウスから出てきた。

 

 「誘ってくれてありがと~」

 「楽しかったよ~」

 「良いお年を~」

 「また誘うからね~!!」

 ちょっと遠いところでの会話だったけど、ちゃんと耳に聞こえた。

 

 「ヒロ」

 「竜也、見に来てくれてありがとうな」

 「ああ。今回のライブでよくわかったよ」

 「何が?」

 「内緒だ」

 ?何かは教えて欲しいが、全然教えてくれそうに無かったのでそのままスルーした。オレは、携帯がなったので見てみると、メールが4件も届いていた。明久たちからだ。ちゃんと見に来てくれてたんだ。よかった……

 

 「じゃあ、今日はこのままウチに」

 「おおー!」

 新年を平沢家で過ごすことになった。ちゃんと親にメールしたら許可をもらえたので良かった。純ちゃんと和さんは、家に帰らなければならなかったらしく、他のメンバーで平沢家に向かうことになった。

 

 「オレ、関係ないけど行っても良いのかな?」

 「お前の音楽についてのことをみんなに語って欲しいと思う」

 「聞きたいな。ヒロ、そんなに詳しいのか?」

 「それは、平沢家に行った後で」

 ということで、さわちゃん先生も含めて、何人だ? 年を越すことになった。

 

 「 ー だと思うんですよ」

 「す、すごいな……」

 平沢家についた後、くつろぎながら、音楽について竜也に語ってもらうことにした。今日のライブの話とか。 

 

 「何で、軽音部に入らないんだ?」

 「バイトしてますから、ちょっと忙しくて」

 「そうか~もったいないな」

 「みなさ~ん、年越しそばが出来ました~」

 憂ちゃんがさっきから見当たらないと思っていたら、そばを作ってくれていたらしい。しかも全員分。準備がいいなあ。こんなに来るとは思っていなかったはずなのに。

 

 「ゴメンね。大勢で押しかけて」

 「いえ。お姉ちゃんのあの顔が見られるだけで幸せですから」

 唯先輩が幸せそうにそばを食べていた。

 

 その後、ババ抜き(案の定、唯先輩が弱かった)やらして楽しんでいる途中、

 

 「さあ、残すところあと1分となりました」

 TVからこんな声が聞こえてきた。

 

 「澪、今年はどんな年だった?」

 「たくさん楽しいことがあったよ。みんなのおかげで、ありがとう」 

 「えっ……よせやい気持ち悪い」

 「気持ち悪い?」

 この2人は見ていていいなあ。

 

 「おおいみんなもうすぐ年明けだぞ!」

 「て、寝てるし」

 

  ゴーンゴーン……

 

 「あ、年明けた」

 みんなババ抜きしながら疲れ果てて、コタツの中で寝ていたのであった。

 

 「あけましておめでとうございます」

 TVから聞こえてくる声がちょっぴりむなしい。

 

 「肝心なときに寝てどうするんだよ!!」

 「……寝ようか」

 「そうだね」

 オレたち3人も、みんなに続いて寝ることにした。もともとみんなで年明けを過ごそうと思っていたのに……

 

 

 『みんな、起きて、起きて』

 夢の奥の方で、こんな声が聞こえてきた。これは夢じゃなく現実らしい。

 

 「今何時?」

 「初日の出見に行こう!」

 唯先輩が一人だけ元気にこう言っていた。他の放課後ティータイムのメンバー5人は眠そうに聞いていた。

 

 「眠いから良いや」

 「もう、こんなときに寝ててどうするの!」

 「いや、お前が言うか」

 12:00を寝ていた人物が ー ということだろう。結局、放課後ティータイムのメンバーで初日の出を見に行くことになった。

 

 「さわちゃん先生置いてきたけどいいかな」

 「いいだろう。憂ちゃんいるし」

 「竜也もいっか」

 唯先輩の案内で、近場の良いスポットにやってきた。

 

 「うわ~綺麗!」

 「でしょ、ここ穴場なんだ」

 「では、あけましておめでとうございます」

 『おめでとうございます』

 初日の出を見ながらの正月は初めてだ。

 

 「ところで、あずにゃんいつまでそれ着けているの?」

 「えっ?」

 梓ちゃんのほうを見てみると、ネコ耳が装着されていた。

 

 「な、何で誰も言ってくれなかったんですか~!!」

 「ゴメンゴメン、余りにも似合ってて」

 「ヒロ君も何で言ってくれないの!!」

 「違和感無かったから、唯先輩に言われるまで気づかなかった」

 「もう~!!」

 今年も楽しい1年になりそうだ。

 

 





 新年明けちゃいました。

 作者、軽音部に入ってるって以前言いましたが、未だにライブハウスでの経験は0。
 
 だから、詳しく内部の様子を描けませんでした……

 一回は演奏してみたいですね。

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