青春と音楽と召喚獣   作:いくや

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 ええ……

 今話では、頻繁にモノローグの主が変わったりします。

 ★で、変わっていますので。
 分かると思いますけど。

 では、どうぞ!!



#10 秘密!

 

 楽しく部活する日が何日も続いた。

 そんなある日。

 1年生は5時間授業だったが、2年生は6時間授業の日だった。

 おまけに、梓ちゃんは病院に行ってくる(早く終わったら部活に来るとのこと)とかで、今部室にはオレ1人だ。

 

 楽器を勝手に触るのはどうかと思ったので、椅子に座って、手帳を開いてみた。オレは今まで軽音部で気づいたことや大事なこと・予定などは全て手帳に書いてたりするのだ。几帳面な部分もあるし大雑把なところもある。その手帳を数十分見ていたら、直射日光がオレに当たったりして眠くなってきたので、眠気に負けて寝てしまった。

 

   ★

 

 「あ、せんぱ~い」

 芸術塔の階段を上っていると、4人の先輩方が見えた。ちょうど、6時間目の授業が終わったあたりだったんだ。

 

 「お、梓。1年は5時間授業じゃなかったのか?」

 「わたしは病院に行ってたんですよ…大したことじゃないんですけど。それで今帰ってきました」

 「ってことは、今部室にはヒロ君1人?」

 部室に入ると確かに、ヒロ君がいたが寝ていた。

 

 「寝てる?」

 「あまりにも暇だったのだろう。まだ演奏できないからな」

 「それもそうだね~」

 わたしたちは机の方に歩いて、いつもの場所に座った。

 授業中とか一切寝ているの見たこと無いけど……相当眠かったんだね。

 

 「あれ?手帳?」

 「ホントだ~几帳面だね~」

 「ちょっと見ちゃお」

 「やめとけ律。人の手帳を勝手に見るもんじゃない。なあ、ムギ」

 澪先輩はムギ先輩に同意を求めるも、ムギ先輩は目を輝かせて見たいというオーラを出していた。

 

 「やめといたほうが ー 」

 わたしも一応、言ってみる。でも、

 「ちょっとだけ~」

 少数派のわたしや澪先輩の意見は通らない。

 律先輩が、ヒロ君の手帳を見てみる。

 

 「ほ~字きれいだな~」

 「ほんとだ~」

 「ちゃんと日記もつけてるぞ……ん? 何か写真が張ってあるみたいだ」

 パラパラとめくっていってると1ページだけ写真が張ってあったみたいで、そこのページを開いた律先輩。

 

 「あれ? これ、りっちゃんや澪ちゃんに似てない?」

 「ホントだ~ちっちゃいころのりっちゃんや澪ちゃんじゃないの?」

 と、唯先輩やムギ先輩が言ったので気になってわたしも見ることにした。

写真を見てみると、そこには3人の小学生の写真があった。

 律先輩や澪先輩を小さくした感じの人と、あと1人の人。

 

 「た、確かに、小さい頃の私たちだが……」

 「何で、ヒロがこの写真を ー ってあれ?」

 「まさか!?」

 『ストーカー!?』

 何でそうなるんですか……もっと他の理由があるでしょう。

 

 「違う。この写真覚えてるか澪?」

 「ああ。真ん中のって……」

 「うん。澪も覚えているよな。“ヒロ”だよな」

 『ヒロ!?』

 この可愛い写真の子が、ヒロ君? 同一人物じゃないでしょ!

 知りあいだなんて一言も言ってないし、ましてや律先輩や澪先輩が2人とも気づかないわけが無い。

 

 「でも……このヒロってわたしたちと同級生じゃなかったか?」

 「ああ………訳が分からなくなってきたぞ?」

 「前のページとか次のページ見てみたら?」

 唯先輩がそういった。ただ写真だけ貼ってるわけじゃなくてそのことに関して何か書いてあるかもしれない。

 

 “部活何にしようかな~野球は高校ではしたくないな~”

 

 「これじゃないな」

 「ヒロって元野球部だったんだ」

 確かに、運動できそうだ。関係ないと分かるとすぐに次のに。

 

 “新歓ライブ……軽音部すげえ!! 軽音部に入りてえ! でも楽器出来ないし……”

 

 「こうやって見ると、嬉しいものだねえ」

 「そうだな」

 「うん」

 もう、ここらで日記を見るのをやめにしたほうがいいかもしれないけど……気になる。

 

 “軽音部入部! 楽しくやっていこう! みんなに迷惑を掛けないように。 でもまさか、再会するとは思わなかったよ。 りっちゃん・みおちゃん。2人とも全く変わってなかったからすぐに分かったけど、オレは結構変わったからなあ。分からないよなあ。オレが転校したあと1年間入院とかしなければ、同級生として出会えたかもしれないのに……まさか先輩後輩だなんてなあ。でもいいや。再会できたことに感謝しないと。向こうが気づくまではオレからは何も言わないでおく。軽音部に入れてよかった~!”

 

 「え……?」

 「あのときのヒロとここにいるヒロが同一人物ってこと?」

 律先輩は思わず手帳を落としてしまい、そのひょうしに、中に挟んでたと思われるものが出てきた。

 

 「これは保険証だよりっちゃん」

 「りっちゃん・澪ちゃん、ヒロ君の生年わたしたちと一緒だよ……」

 ムギ先輩の口から衝撃の事実がこぼれ出た。保険証を見たのだろう。

 

 「ヒロ……」

 全員の視線が、ヒロ君に向く。これは……どういうことだろう。ヒロ君は1つ年上? 本来ならば先輩ってこと? そんな風に思っていたら、ヒロ君が起きた。

 

   ★

 

 ん……あら寝てたか……どんくらい寝てたんだろう。目を覚ますと、そこには4人の先輩と梓ちゃんが居た。

 

 「あ、すいません寝てました……」

 と、体を起こし、ひとまず謝る。しまったな~まさか先輩達が来るまで寝ていたとは。あれ……おかしいな……誰も喋らない。何かあったのかな…… まずは手帳を ー ってあれ?

 

 「どこだ手帳」

 「なあ、ヒロ……」

 「はい?」

 「ちょっと話いいか?」

 やけに深刻そうな律先輩の顔。みんなの顔を見てみるとまた同様の顔をしていた。

 

 「ど、どうしたんですか?」

 「これなんだけど……」

 「あ、オレの手帳! まさか中身見たんじゃ!」

 「興味本位で……」

 げっ……人に見られちゃいけないようなのばっかりなのに。

 

 「先に謝っとく。すまん」

 「あ、いや……オレが放置して寝てたのが悪いんです」

 「でだな。コレなんだけど……」

 オレの手帳を開き、特定のページが見つかるとオレの目の前に持ってくる。そのページは、あの写真を張っているページだった。

 

 「あっ!」

 「本当に、あのときのヒロなのか……」

 「答えてくれヒロ!」

 律先輩や澪先輩。いや、りっちゃんやみおちゃんが真剣な顔をしてこちらの顔をうかがう。

 

 「その様子だと、写真だけじゃなくてオレのつぶやきまで見たみたいですね……バレちゃ仕方ありません。ええ、小学校低学年まであなたたちと遊んでいたヒロと今のオレ、同一人物です。水無月小学校に転校してすぐに、1年間入院して留年することになったんですよ。だからオレは本来の学年より1つ下。もちろん、このことは今までに友達は誰も知りません。先生くらいです。生年が1人だけ早いから分かりますからね……」

 

   ★

 

 この言葉を聴いて、わたし梓は裏切られたような気持ちになった。留年してるってことは確かに誰にも言い触らしたくないだろうけど、同じ学年ということで思っていたのになあ。そう思っていたら、律先輩が、

 

 「ヒロ!! 何で早く言ってくれなかったんだよ!」

 「そうだぞ! 今まで後輩として話していたヒロがまさかあのときのヒロと同じだなんて……」

 澪先輩まで、涙目になりながらヒロ君に抗議する。わたしや唯先輩、ムギ先輩は口出せる状況じゃなかった。

 

 「すみませんでした ー いや、すまん。オレが何か言ったところでりっちゃんや澪ちゃんは、当時のことを忘れているかもしれないと思ったから」

 「忘れてるわけ無いだろ! 3人で遊んだあの日々は……」

 「律の言うとおりだ。わたしにとっては……最初に出来た友達だぞ!」

 「まあまありっちゃん、澪ちゃん……せっかくの再会なんでしょ、落ち着きなよ」

 「今、お茶淹れますからね~」

 唯先輩とムギ先輩が何とか場を和ませてくれたけど、ここまで律先輩や澪先輩がなるなんて……

 

   ★

 

 

  『りっちゃん・澪ちゃん、大事な話があるんだ』

  『大事な話?』

  『うん。実はボク、転校することになったんだ』

  『転校!? じゃあもう遊べなくなっちゃうの!?』

  『そんなの嫌だよ』

  『ゴメン……お父さんが引っ越すからね、ついていかなくちゃいけないんだ』

  『そんな……』

  『本当の友達ならいつかまた会えるよ』

  『……ううっ……』

  『泣かないでよ澪ちゃん……笑って送り出してよ』

  『そうだな、澪』

  『ボクが居なくなっても澪ちゃんにはりっちゃんがいる。りっちゃんには澪ちゃんが居る』

  『うん』

  『じゃあ、いつか会えたら会おう!』

  『バイバイ!!』

 

 

 未だにくっきりと別れのシーンが残っていた。

 忘れることの無いような、思い出のシーン。あれ以降、女子と遊ぶなんてことは無かった。

 

 「今まで隠しててゴメン。再会できて嬉しいよ」

 「ヒロ~!!」

 澪ちゃんが泣きながら抱きついてきた。オレも自然と涙がこぼれる。

 

 「澪……お前泣きすぎだ」

 「……律だって……」

 りっちゃんは涙を我慢しながら、澪ちゃんの様子を見ていた。

 

     ★

 

 こんなことって実際にあるんだなあ……ちょっと感動しちゃった。そんな中唯先輩が声をあげた。

 

 「ねえねえ、じゃあさ、今度からなんて呼び合うの?」

 た、確かに……わたしにとって先輩と発覚した今、君付けで呼ぶのは……

 

 「今までと変わらなくていいじゃないですか? オレは1年生なんですし」

 「そういうものかしらね……りっちゃんと澪ちゃんだけは昔の呼び名で呼んであげたら?」

 「そうだぞヒロ! そっちの方がいいや!」

 「わ、わたしも」

 「そう? りっちゃん・澪ちゃん?」

 ……話が進んでいるけど……わたしはどうなるのかな?

 

 「梓ちゃんもそのままでいいよ、いくら年が違うとはいえ、同級生だもん」

 「え……?」

 「これからも1年生同士よろしくな」

 「あ、うん……」

 勝手に裏切られたとか思ってバカみたい……ヒロ君大人だよ。

 今日は、ヒロ君の秘密が一つ暴かれた日となりました。

 





 数話前の伏線を回収しました!

 結構書き直しましたね。
 このシーンは難しかったです。

 小学校の頃に、1年間入院してても進級は出来るらしいですもんね。
 希望すれば留年できるとか……どっかでそんな話を聞いたことあります。

 sideがコロコロ変わってすいません。
 こっちのほうが分かりやすいと思ったので……

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