緋弾のアリア 世界を誑かす理   作:犬神使い

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一年もほったらかしにした上話が短くて申し訳ありません



えぇ、本物ですね

「石・・・・・・ですか」

 

 有紀さんが釈然としない表情で呟きます。

 

「えぇ、まだ実物を見ていないので絶対とは言い切れませんが、おそらくは」

 

「ちょっと待って。石が原因ってどういうこと? まさか石の幽霊というわけ?」

 

 菫さんは訳が分かっていないようです。

 そういえば菫さんにはあまり霊関係の事は説明してませんでしたね。いい機会ですし説明しておきましょうか。

 

「まずそこから説明しましょうか。石が原因というのは石に霊、もしくは怨念がとり憑いていたということで、菫さんが思っているような石の幽霊というわけではありません」

 

 というか石の霊ってなんですか・・・・・・。時々菫さんの考えは斜め上に飛びますね。

 私の説明を聞いて菫さんは顔を赤くします。

 

「あ、あら、そうなの?というか霊って人以外にもとり憑けたのね・・・・・・」

 

 菫さんは思わずという風に口にします。

 

「知らなかったんですか? 菫先輩」

 

「うっ。し、しょうがないじゃない。霊が見えるといっても私は所詮それだけだもの」

 

 有紀さんは意地悪な顔で菫さんをからかいます。

 おそらく何時もは菫さんがからかっているんでしょうね。

 

「まぁ菫さんにはその辺の説明はしてませんでしたからね。霊というのは基本的には人にとり憑きますが、別に人限定というわけではなく、中には人以外にもとり憑きます」

 

「へぇ、そうなの。それじゃあ、その石を壊せば今回の話は解決かしら?」

 

「えぇ、そうです」

 

「え? こ、壊しちゃうんですか? お祓いとかじゃなくて?」

 

 有紀さんが意外そうな顔で言います。

 

「残念だとは思いますが諦めて下さい。私にはお祓いは出来ないんです」

 

 私の能力的にも性格的にもお祓いは合いませんしね。

 

「あ、いえ。別に石を壊すのはいいんですけど、ただ悪霊を祓うのはお札使ったお祓いだと思っていたので。そんな直接的な方法だとは思ってなかったので」

 

 確かにそういった物が一般的には知られていますね。実際に神社等で行われている手法ですし、最も世に知られている手法でしょう。

 

「それは人それぞれです。確かにお祓いを主とする人もいますけど、私の力はそういった物ではないので」

 

「へぇ〜、そうなんですか。・・・・・・なんというか、今日一日で今まで思ってきたことが全てひっくり返りましたね」

 

「基本的に霊能者というのは表には出ませんからね。こうして霊的な問題でもない限り関わりなんて持たないでしょうし」

 

 寧ろ関わりなんて持たないほうがいいでしょうしね。

 

「そうね。私もあの件が無ければ沙代が霊能者だと分からなかったでしょうし」

 

 菫さんがしみじみとした様子で口にします。

 

「それではそろそろお仕事をしましょうか」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「そういえば、同室の方は大丈夫なのですか?」

 

 場所を有紀さんの部屋に移し、ふと気になったので有紀さんに聞きます。

 

「実は私一人なんです。私だけ余っちゃったらしくて。まぁ、そのおかげで部屋を自由に使えるんですけどね。少し待っていて下さい。今持ってきますから」

 

 そう言って有紀さんはリビングを出ていきます。

 私は部屋を見渡します。部屋を自由に使えると言っていた通り、部屋の所々に木彫りの人形や置物等が置いてあります。

 さて、待っている間に準備をしておきましょうか。

 私は部屋の四隅にお札を張り付けていきます。

 私のこの行動を疑問に思ったのか菫さんが聞いてきます。

 

「ねぇ、何をやっているの?」

 

「これは結界を作成している所です」

 

「結界?」

 

「はい。物理的・霊的問わずにあらゆる物の出入りを防ぐ役割と、部屋の保護の為の結界です。あとは、人払いの効果もあります。それと、これを持っていてください」

 

 私は菫さんにあるものを渡します。

 

「これは?」

 

 菫さんは私が渡したもの―――勾玉のついたネックレスを目を細めてみた後、結局分からないようで聞いてきます。

 

「それは守護の力がこめられた、言うならば簡易な結界です。持っているだけで効果があるので持っていてください」

 

「あら、危ないから出て行ってとは言わないのね」

 

「言っても聞かないでしょう」

 

「ふふっ、よく分かってるじゃない」

 

 しばらくすると、有紀さんが石を持って戻ってきます。

 その石を見て私は顔をしかめてしまいます。菫さんも同じように顔をしかめています。ただ一人有紀さんだけが平然と石を持っています。

 有紀さんは私達の顔を見て嫌な雰囲気を感じ取ったのか、恐る恐る聞いてきます。

 

「・・・・・・えっと、そんな顔をするって事は、実はこれって結構ヤバい物だったりします?」

 

「いえ、そういうわけでは無いのですが・・・・・・」

 

「だってこれ、見るからに石というより何かの骨に見えるわよ」

 

「そうですか? まぁ言われてみれば確かに何かの骨に見えなくもないですけど。・・・・・・もしかして本物だったりします?」

 

「えぇ、本物ですね」

 

「うわひゃあ!?」

 

 有紀さんは驚きのあまり手に持っていた骨を投げます。それを床に落ちる前にキャッチします。

 

「おっと」

 

「有紀・・・・・・あなたって子は本当にドジね」

 

「だ、だってこんなに綺麗なのに骨だなんて思わないでしょう!?」

 

 どうやら有紀さんにはこれが綺麗に見えているようです。

 

「有紀、あなたって目が腐ってたのね」

 

「それは違いますよ菫さん。これに憑いている霊がそう見えるようにしているだけです。多少でも霊感があれば効かないくらいの弱い術ですが有紀さんには効いたようです。有紀さん、これを」

 

 私はそう言って先ほど菫さんに渡したものと同じものを渡します。

 

「これは?」

 

「持っているだけで効果を発揮する簡易の結界です。それを付ければ問題なく見えます」

 

「へぇ、すごいですね。どれどれ・・・・・・あっ! 本当にさっきまで綺麗だったのに今は骨に見えます」

 

 

 

「では、始めましょうか。危ないですからなるべく離れてください」

 

 私は菫さんと有紀さんが離れたのを確認してから錫杖を取り出し振りかぶります。

 

冥福をお祈りします。安らかにお眠り下さい(さっさと成仏しろ! 憐れな亡者!)

 

 骨を中心に炎が燃え上がります。炎は骨を取り囲みながら燃え上がります。すると、骨から黒い靄のようなものがでてきます。靄は炎から逃げようと身をよじりますが逃げることはできずにそのまま燃え続けます。そして・・・・・・。

 

「終わったのかしら?」

 

「終わりました。これでもう悪夢は見ないはずです」

 

 靄は力尽き骨ごと塵になりました。大した抵抗もありませんでしたからこれで終わりでしょう。

 

「ですって有紀」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

「いえ、これからはむやみに物を拾ってこないようにしてくださいね」

 

「はい、気をつけます」

 

 まるで小さな子に言い聞かせるような言い方になってしまいましたが、今回のことで有紀さんも身に染みたでしょうからこういった事は無いと思います。これで、今回のことは終了です。


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