スターウォーズ短編   作:トッキー

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思ったよりも進んでない…。


スターウォーズ短編~魔法少女の世界編~②

 ミッドチルダはその日、大混乱に陥っていた。正体不明の大艦隊が突如として出現し、その艦隊を静止させようとして出撃した次元航行艦の大半が、大艦隊の正確無比な砲撃によってエンジンや砲塔を破壊される等、軒並み攻撃を受けていった。また、コリコイド・クリエーション・ネスト製のドロック級ボーディング・シップの奇襲を受け、碌な反撃も出来ずに制圧された艦も多数あった。

 

 その様子をホログラムで見ていたオビワン・ケノービは、制圧に一役買ったのが分離主義勢力側のものであったという事に対し、思った以上に役立っているという事実に内心驚いていた。

 

 そうしてミッドチルダの衛星軌道上に存在する、全ての宇宙船が航行不能になってしまっていた。

 またこの正体不明の大艦隊は、まるでミッドチルダを取り囲むかのように、配置されていたのである。

 

 

 奇跡的にも、航行艦には負傷者はいたものの、死者は出なかった。だがその攻撃は、この正体不明の艦隊の持つ攻撃力をまざまざと見せつける結果になった。

 

 

 

 

 

 すぐに地上本部や、次元航行部隊を交えた緊急会議が開かれたが、それは醜悪なものであった。それは「会議」とは名ばかりで、地上本部を除いた部隊の大半が、互いに責任を押し付けあうという場面が多かったのである。

 

 また「何故あれ程の艦隊の動きを把握出来なかったのか」、「あれ程の武装勢力が何処に存在していたのか」等の意見が多数あった。偶に「あれ程の技術を保有している等とは、我々時空管理局への反逆に他ならない」等といった、的外れも甚だしい意見も出ていたが。

 そしてレジアス・ゲイズ中将等の良識派は、その醜悪な会議に始終頭を痛めていた。

 

 だがその醜悪な場面も程なくして終わりを告げた。なんと正体不明の大艦隊を率いているであろう人物から連絡が入ったのである。

 映像に映し出された人物は、好々爺でありながらも思慮深く、そして強かさを思わせる風貌であった。

 

 

 『お初にお目にかかる、時空管理局のお歴々の諸君。私は、銀河共和国最高議長のパルパティーンという者だ。本日は諸君らに対し、「誠意ある」対応をしてもらう為に、ここに来ておる』

 「話!話だと!?今貴様等がしている行動が分かってるのか!これは立派な犯罪だぞ!!」

 『ほう、我々の今回の行動が犯罪だと…。それは一体、何故なのかね?』

 「何を言う!宣戦布告もなしに、このような行動など、犯罪以外の何物でもないぞ!これは貴様等の、その装備にも言える事だ!それに我々の許しも無く、そんな船に乗っている事自体、いやそもそも、我々に脅威を与えるような貴様等の存在が許されるものではないのだ!!」

 『ふむ、なるほど…。では君達は、我々の存在はそちらにとって許容出来るものでない。そう言うのかね?』

 「当たり前だ!そしてこのような平和を乱すような事等、我々は決して許しはしないぞ!!」

 

 

 この発言に周囲の者達は同調するかのように、一斉にパルパティーンに対し罵倒を投げかけた。

 しかしその発言に対し、最高議長であるパルパティーンはまるで心外であるかと言わんばかりに顔を顰め、言葉を繋げた。

 

 

 『ふぅむ…。しかし、お主達の言う「脅威を与える存在は許されない」とは、そのままお主達にも言える事ではないのかな?』

 「な、何ぃ…?」

 『数ヶ月前程から、我々の領海域内における、様々な犯罪行為が目に余るようになってきておるのだが』

 「だからどうした!そんなの、貴様等の問題じゃないか!!」

 「そうだ、そうだ!」

 『確かに。ただの犯罪行為ならば、それこそ我々だけで処理すべき問題だろう。だが…その犯罪行為を貴様達、「時空管理局」が起こしているとなると、話は別ではないかな?』

 「な、なんだと!?貴様、我々を侮辱するのか!」

 「そんな戯言、誰が信じるものか!!」

 『ふむ。ならばこれはどうかな?』

 

 

 そうしてパルパティーンは、クローン兵に身振りで、ある数箇所の映像を映し出すよう指令を下した。すぐに指示を受けたクローン・トルーパーは命令を実行した。

 改造された数隻のルクレハルク級ドロイド指令船を経由し、映し出された映像の先には、管理局が「解放」したとされているいくつかの惑星であった。

 

 一般的に「解放」という言葉を用いられる時、多くの者は自由を得て、そして全ての人間が満足のいく生活を送る事が出来る姿等を想像するだろう。

 

 しかし、そこに映し出されていたのは土地が荒廃し、多くの人々が路頭に迷っている姿でしかなかった。ある惑星では、そのような人々を傍目に、管理局員もしくはその関係者が助けの手を伸べるのでなく、横柄に振る舞い、暴行を振るっていた。

 またある惑星では、民間人の唯一の所持品を「盗品」と決めつけ、暴力を振るって強奪し、その何の罪もない民間人を「逮捕」していたのである。さらに、ただその場にいただけの人物も共犯者として捕らえようとしていた。彼等は慌てて逃げようとしたが、なんとそんな彼等に対し、局員らしき人物は下卑た笑みを浮かべながら、後ろから魔法を容赦なく撃ちこんでいったのである。当たり所が悪ければ致命傷になりかねない威力を、である。

 

 

 そしてそのような光景が、ミッドチルダや管理世界の全ての液晶画面に映し出されていたのである。

 

 それはもはや「解放」等ではなく、正しく「占領」と言うに相応しかった。

 

 

 

 

 『…さて、貴様達が「解放」したとされる星で、何故このような蛮行が行われているのかね?我々に納得がいくように、説明してもらいたいのだがね』

 「し、知らん!!こんなもの茶番だ!そうに決まっている!!」

 『生憎と、この映像は最新鋭の偵察ドロイドを通してのライブ映像だ。その性能は折り紙付きでね。茶番等ではない事は保障しよう』

 「う、嘘だ!こ、こんなの、こんなのでたらめだ!!」

 「か、閣下!大変です!!」

 

 

 恐らく自分が指示したであろう蛮行が、まさか暴かれるとは思っても見なかった高官の一人が狼狽しながらも否定しようとした。しかしそこに、彼の副官が慌てて会議室に飛び込んできた。

 

 

 「一体どうしたというのだ!」

 「さ、先程の映像を見た市民があちこちで『説明しろ』と暴動を…」

 「そんなもの、すぐに主導者を逮捕するんだ!デモ隊等、叩き潰せばいいのだ!」

 「大変です!他の惑星でもデモ隊が暴動を起こしている模様です!規模が徐々に膨れ上がって、手のつけようが…」

 

 

 副官の報告を受け、慌てて手元の端末で状況を確認してみると、管理局正門付近では多くの市民の姿が映し出されていた。

またあちこちの惑星では、それ以上に苛烈で管理局の公用車等が引っくり返され、デモ隊が管理局支部に突入しようとしているのが確認出来た。

 

 

 「くそぉおおお…」

 『さて、返答は如何なものかな』

 「し、知らん!私は何も知らんぞ!こ、これはあいつらが勝手に…」

 『何を言っておる。部下の行動の責任は、当然その上の人間の責任ではないか。当然部下の失敗は、上官である貴様等の失敗でもある。その行動の責任を、貴様等が取らずに誰が取るというのだ』

 「ち、違う!わ、私は、命令で…」

 『では、その命令を下したの誰かね?』

 「そ、それは…」

 『ふむ、では、返答は「ノー」で良いのだな』

 「な、何故そうなる!?」

 『何を言う。そちらの「解放」地域における暴動等、正しくそちらの落ち度だろう。そして、そちらが飽くまで我々の領海域内の惑星に対して「解放」等と言うのならば、今映し出されている抗議行動の発端は、一体何なのかね?まさか知らない等とは、絶対に言わせんぞ』

 「だ、だが…!」

 『「時空管理局」という組織全体で行っている事なのだろう?何故それぞれの部隊の行動を把握しない?何故その世界の法を把握し、遵守しない?我々が口にするのもおこがましいかもしれないが、一方的な法の押し付け等、従うに値しないのだぞ』

 「何を言う!時空管理局の法こそが、我々の法こそが絶対なのだ!!全ての者は、我々に従うべきなのだ!!」

 『…なるほど、それが本音か』

 「…え?あっ!?」

 

 

 大将の位にいる彼はまんまとパルパティーンの話術に乗せられ、自らの心底にあった意識を、あろう事か文字通り全世界と通信が繋がっている中で、暴露してしまったのである。

 こうなってしまうと、いくら弁解したとしても全て「詭弁」と一蹴されてしまうのは明らかだった。

 口を滑らせてしまったこの高官は顔を真っ赤にしていたが、それは彼だけであった。レジアス・ゲイズを筆頭に、この高官の配下の者達でさえ、あまりの事態に顔面蒼白になっていたのである。

 中には蒼白を通り越して、土気色になっている者もいた。

 

 

 『自分達が全て等と訳の分からない理論を振りかざし、気に入らなければ滅ぼす。…まるでわがままな子供のようだ』

 「黙れ…!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇええええええええええええええええ!!!!」

 『お主のような人物がトップにいる組織とは、正直思っても見なかった。先程、返答は「ノー」だと受け取ったが…こちらとしても、貴様のような人間がいる組織が、誠意ある対応が出来るとは思っておらん。少々遅くなったが、改めて宣言しよう。我々銀河共和国は今この時を以て、貴様達「時空管理局」に対し、宣戦布告する!』

 

 

 

 銀河共和国最高議長が声高らかに宣言した瞬間、そばにいたクローンの士官とTシリーズ戦術ドロイドに合図をし、進軍を命じた。

 パルパティーンを乗せたサブジュゲーター級ヘヴィ・クルーザー<マレヴォランス>からの命令を受け、共和国・独立星系連合の戦艦部隊の砲塔は、軍事施設に向け順次レーザーを発射し、上陸部隊を乗せたガンシップや上陸艇、そしてファイター群は一斉にミッドチルダに進撃していった。

 

 


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