先に進まなければいけないのだけど、目の前には何時ぞや覚醒したウミとセイバーのコンビに完膚なきまでにぶっ壊されたシンジタンクのようなエネミーが居る。これをウィザード二人でどうにかしろっていうのは無理じゃないのか?
「これをどうにかしろってほうが無理じゃ……」
「アーチャーとかセイバーとかいないもんな」
サーヴァントいない状況でどうしろと、空気打ちもサーヴァントとマスターのコンビじゃないと意味がないし。つらつら考えていると不意に切れたはずの通信が聞こえてきた。
『あーテステス、聞こえてるッスか?』
あ、この若干やる気がなくてだれていて
「え、この声って」
「ジナコ?!」
『あ、聞こえてるようで何よりッス。いやぁ、派手にやってるスね。ジナコさん監視カメラから様子見てたッスよ』
どうやらジナコは研究室から監視カメラで見ていたらしい。確か研究室の扉はコードが外れた際に閉まってたはず。なのにどうして堂々と通信してるんだ?
「えっと、なんでジナコの通信が聞こえてるんだ?」
「そこから不明だよな」
『はいはい、難しい話はあとスよ。まあ、種明かしすると二人の横にいるッス……コードの件、二人ともありがとうッス。ただ、実は今ヤバい事態になってるんだ。この騒動、誰かが意図的に仕込んだものみたい』
は? 意図的に仕組んだもの? この騒動が!?
「え、そうなのか?!」
「意図的に仕込んだ?」
思わず聞き返す。一体何処の誰が何のためにだよ。ここのシステムハッキングしたところで有益なことって……色々あるな。うん
『うん、学園長の学園内用の端末に変なメールが送られてきたんだ。「今回の事件の犯人について」って件名で怪しいって思って調べてみたら、とある人物に行き着いた。それについては後、学園側でもシステム復旧しようとしてるんだけどできてないのが現状、悪いけど二人に頑張ってもらわないとまずいんだ』
ジナコが一気にまくしたてる。いつものキャラを維持しないくらいに焦っているみたいだ。そんなことは言われなくても分かってる。
「わかってるさ」
「ただ……」
ウミは言葉に詰まった。当然だよな。目の前のこれは今の俺たちじゃどうにもできないし。俺たちが少しどもっていると、ジナコが軽い口調で言ってきた。
『様子は見えてるッス。シンジ君のアレでしょ? もう、しょうがないにゃー。ボクも手伝ってあげるっス。カルナさん、たまには役に立ってくださいッス』
え、カルナってあの? 俺たちが驚いていると目の前にいきなり誰かが現れた。白い髪に赤い目、痩躯の男、前世で一度敵対することになってしまった彼の威圧感と存在感は忘れることは難しい。
「了解した。日向海人、日暮広夢、久しいな」
「カ、カルナ?!」
「えっと、なんで? 転生してないって……」
訳が分かっていない俺たちが口々に問いかけると痩躯の男、カルナは首を静かに横に振った。
「その辺の込み入った事情はあとでとジナコから言伝を預かっている。今は目の前のシステムの回復に努めろとのことだ」
ジナコにしては焦ってるな。これはよっぽどヤバイ自体のようだ。
「お、おう……」
「わかった。カルナ、指示やサポートは俺たちがする。それでいいんだな?」
俺がカルナに問えば、彼は今度は首を小さく縦に振った。
「そうしてくれるとありがたい」
「ウミ、カルナのサポート頼んだ。俺は生徒会との通信を回復させる」
ウミに指示を出しながら、量子空間内でコードキャストを使う際に表示されるウィンドウが俺の目の前に出す。よし、やるか!
「わかった。ヒロ、頼んだ」
俺たちの様子を確認するとカルナが赤い槍を出す。そして、彼の闘気は数段高まった。味方であるはずのこっちまでビリビリ来そうなほどの闘気だ。
「……我が主人、ジナコ=カリギリより『二人の力になれ』との命令だ。悪いが速やかに退場願おう」
主従仲改善されたんだな。俺は何となくほろりと来てしまった。まあ、そんなこと考えながらも通信の回復には努めているわけだが。
☆
戦闘は物の数分で終わった。圧倒的な差でカルナの勝利だった。
「さすがカルナ、ガウェインと同等かそれ以上って言われるくらいはある」
「通信回復完了したぜ」
こっちも作業を完了した。するとモニターが復活したらしいリンたちから通信が入る。
『さっすが、西欧財閥から逃げ切った天才量子ハッカー』
それは過去の遺産だよな。大体月ではその他大勢と変わらない普通のウィザードだったんですけど?
『ええ、本当に彼女には手を焼かされましたよ』
捕まるのなんざまっぴらごめんだったからな。あいつの話を伝播できなくなるし。
『パーフェクトです。ヒロムさん それにしてもこの状況で通信を回復させるとは』
生徒会のメンバーから惜しみない賞賛が与えられるけどそんなものにはあまり興味がない。
「はいはい、こういうのだけは俺の専売特許なんだよ。あとは脱出系だけだ」
のんきに通信と喋っていると肩に手を置かれた。振り返ればウミが真面目な顔をしている。あ、そうだったな。
「ヒロ、急ごう」
「急ぐぞ。日暮広夢」
「あいよ」
まだ終わりは先なんだ。こんなところで立ち止まっているわけにはいかねーんだよ。
☆
ジナコさんが寝ている二人の横でパソコンをいじりながら通信している。画面には海の中を行く二人と突然現れた白髪の男の人……ギル様並みに威圧感のある人が先へと進んでいた。
「ジナコさんすごいですね」
「にゃはは、褒めたってなにも出ないよー」
それでもパソコンを弄る手は止まらない。ふと横顔を見て気になったことを聞いてみることにした。
「それにしてもメガネ壊れたのによく見えてますね」
「一応、コンタクトつけてるしね。それよりもバリケード張り直したッスか?」
「はい、でもなんでバリケード張り直せとか」
あの後、いきなり何を言い出すかと思ったら撤去していたバリケード張り直せとか言われたんだよね。まあ、言われた通りクラスの男子とか総動員で張り直したけど。
「うーん、凡人特有の嫌な予感ってやつッス」
「そうですか」
あれだね。セイバーさんの直感って奴。あの人のあれ凄いからなぁ。後、ぼくとかランサーさんが時々感じる悪寒とか、あの辺のことを言うんだろう。ぼくが真顔で言ったらジナコさんはあっちゃあって顔になって訂正した。
「ま、それは冗談で一応ってやつッスね。コードを繋ぎ直してウミ君とヒロさんが内部に侵入してる状態ッス、それによる指揮系統の混乱も予想されるから気を付けないと」
「あー、わかったようなわからんような」
つまりどういうことなんだろう? 指揮者が居なくなるから何?? 首を傾げているとジナコさんは苦笑いしてから言った。
「アキにゃんは本当に科学系ダメダメッスね。そういえば明久君は?」
「あー……アキですか。アキなら……」
☆
ここは仮眠室、先ほどまではオペレート室に使われていたのだが、一部が片づけられて、ベッドに明久が眠っていた。フィードバックが体に来たらしく、作戦終了後に気絶してしまったのだ。
「……うぅ」
「大丈夫かの?」
少々うなされている明久の頭をベッド脇で様子を見ていた秀吉が優しく撫でる。そこにふいに扉が開いて、濡れているであろうタオルと枕のようなものを持った南が入ってきた。そのまま明久のところへ迷わずやってくる。
「よっと、大丈夫か。アキヒサ」
南は明久の傍に座り、声をかけるが返事はない。南はそれを気にしないで、明久の頭の下に枕のようなものを設置する。
「南、おぬしどこに行っておったのじゃ?」
「ほら、氷嚢作ってた。ウチの妹が風邪ひいたりしたときによく作ってたから慣れてるし」
南は明久の額にタオルを乗せた。それから明久の顔を覗き込む。
「大丈夫かー?」
「………」
返事はない。しかし、明久の表情が少しだけやわらかいものに変化した。
「そっかー、気持ちいいか」
よしよしと明久の頭を撫でる南、秀吉は真面目な顔で何か考えていた。
「それにしてもじゃがフィードバックシステムとはここまで人体に影響を与えるのじゃな」
「うぅ、ア……チャ……」
「大丈夫か?!」
明久が急にまたうなされだした。南は慌てた。そこにドアがまた開く音がした。
「衛宮の様子見に来たんだが……大丈夫か?」
「もしかして寝てたかしら?」
比奈丘と悠里の二人だった。悠里の手にはドリンクバーから持ってきたであろうジュースがある。
「……あー」
「うむ、うなされておるのじゃ」
南は渋い顔をして、秀吉はきっぱりと言い切った。二人は明久の寝ているベッドにやってきて明久の顔色をうかがう。
「……う、うぅ」
「かなりうなされてるな」
比奈丘がそう呟くと明久の手が何かを求めるように空を切った。それを見た比奈丘がその手を掴む。
「…………」
すると明久はその手を握り返した。比奈丘が少し苦笑してから明久にささやく。
「はぁ、はいはい握っておくから寝とけ」
「………」
明久の表情が少しだけやわらかいものへとまた戻った。
明久がどんな夢を見ていたのかはご想像にお任せします。ちなみに別に投影魔術使ったせいとかじゃなくって単なる疲労です。明久は割と原作よりは貧弱設定だったり。基本的に暴力振るってくるクラスメイトも居ないし、別に観察処分者だからってしごかれているわけでもない。ちなみに明乃は体力とかはチート、その分機械系とか苦手だけど。
CCCプレイなう。金ぴか√一気に五章までプレイ、心の中には無駄に
最後に閑話休題アンケート
※感想欄は集計しません。投票は活動報告にお願いします。
『ちょっとばかりお茶飲んで休憩といきたいと思います。
じゃあ、何のお茶を飲みますか?
・魔法瓶使って、紅茶 ×2
・水入れ使って、水出し麦茶 ×1
・鍋を使って、煮出し麦茶 ×1
・急須を使って、緑茶 ×2
』
見事にばらけてる件、どうした良いんだよ。
一応締め切りは第十問更新までです。