バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第三問

 

とある量子ハッカーが文月学園のサーバーに無断接続(アクセス)していた。学園のサーバー室に忍び込んだ後、デバイスを繋いで接続する。量子で構成された自分をサーバーの中に滑り込ませながら彼は呟いた。

 

「はぁー、かったりー何でこんなことしないといけねーんだか」

 

しばらく疑似的に空間として表示されるようになったサーバーの海を進むと目的の空間に到着したようだ。自分の目の前にウィンドウを開きファイヤーウォールを次々と突破していく。

 

「結構ちょろいな。天下の文月って言ってもこんな程度か。まあ俺たち量子ハッカーに比べたらこの時代の技術なんてちょろいか」

 

そんなことを呟きながら彼は最期のファイヤーウォールに到達した。それを確認してから、にやっと笑って、またハックをスタートさせる。

 

「よし、ラスト」

 

急に開かれていたウィンドウが全て赤く染まり、ERRORが表示された。彼はぽかんとしてから慌てて体勢を立て直そうとするが何もできない。

 

「……は?」

 

これでも彼も名の知れたハッカーだ。かなりのランクだし、それこそ聖杯戦争に参加できるほどの実力は持っている。しかし、そんな彼をしてもそのエラーは解除できなかった。

 

「ちょ、なんでだよ。SE.RA.PU(セラフ)並みに固い?!」

 

慌てている彼に無機質なシステムボイスが告げる。

 

『領域内への不正アクセスを確認しました。これより排除を開始します』

 

いきなり領域内は全て彼に向けて敵意を向けた。彼は驚いた。当然だろう、楽勝だと思っていたシステムに急に牙を向けられたのだから。

 

「どうなってんだ?!」

 

そこで彼は強制退出(ログアウト)に踏み切った。気が付けば彼はサーバーの前で息を荒くしていた。随分と無茶な退出だったようだ。

 

「……はぁ、どうにかログアウトできたけどなんだったんだあの化け物レベルは」

 

そう呟きながら彼は去って行った。途中で通路に放置されていたコードに躓きながら。

 

                    ☆

 

今日も今日とて平凡な日のはずだった。今この時間までは、文月学園中にいきなりけたたましいアラームが鳴り響く。

 

「ちょ、なんなんだい。いきなり?!」

 

学園長室……ではなく研究室に居た学園長がいきなりの事に驚いた。

 

「警戒アラーム?!」

「学園長大変です! 試験召喚システムに異常が」

「フィールドが強制的に張られていきます!」

 

周囲に居た研究者たちも驚きながらも現状を伝えた。

 

「数体の召喚獣が暴走している模様です!!」

「……なんてこったい」

 

監視カメラを見てみれば暴走している召喚獣たちの様子が克明に映し出されていた。学園長は盛大に顔をひきつらせて呟く。

 

「これはまずいことになったさね」

 

                    ☆

 

お昼の後の授業ってつらいよね。うん、そんなわけでのんびりといつものようにお昼ご飯を食べてからのんびりだべっていた。南が思いっきりあくびをする。

 

「ふぁー、ねむ」

「お昼の後って眠くなるよね。ちょうど今みたいな時間帯」

「そうじゃのう」

 

だよねー。ちょっとぼけっとしていると、黒髪ベリーショートの学ラン姿の女の子、広夢がやってきた。

 

「どうした? 三人ともずいぶんと眠そうだな」

「やほ、広夢。食べたすぐ後って眠くなるよねって話」

「まあ確かにな、とはいえ気が緩んでるといざって時に大変な目にあうぞ」

 

広夢は結構真剣な目で言ってくる。何かあったのかな?

 

「それはそうなんだけどね」

「大体もうそろそろ授業始まるぞ?」

 

あ、一番身近に危機が迫ってた?! 南と秀吉と三人で顔を見合わせる。それから壁にかかっている時計を見たらもう1時近くを指していた。

 

「うわ、もうそんな時間?!」

「しまった。教科書ロッカーだ」

「ワシもじゃ」

「いそげよー」

 

広夢の声を背にして廊下にあるロッカーへと僕らは急いだ。

 

                    ☆

 

廊下に出て教科書を取っていると、いきなりアラーム音が聞こえた。え、まさか地震とか? 驚いていると、いきなり召喚フィールドが展開される。

 

「あれ? 召喚フィールド?」

「教師居ないよな」

「そのようじゃの」

 

三人で口々に言い合ってると急に召喚獣が現れた。目が爛々と赤く光ってておかしい。その召喚獣は武器を構えるとこちらに狙いをつけた。あ

 

「! 南、秀吉 伏せて!!」

「?!」

「なんじゃ?!」

 

南と秀吉の体を地面に押さえつけて、召喚獣の攻撃をどうにかかわさせた。召喚獣は壁に激突する。反射的に懐にいつも隠し持ってた小型の銃型魔弾発射装置(自作)で攻撃を加えると召喚獣は姿を消した。や、やっぱり。

 

「ふぅ、現実世界に干渉可能ってどういうことさ?!」

 

思わずそう叫んでいた。どうにか起き上がった二人が僕の方を見て驚く。

 

「アキヒサ?!」

「その手に持っておるのは?」

 

あ、気にするのはそこなんだ。まあ、現代社会っていうか日本ではまず見ないよね。よっぽどのことがないと。

 

「モデルガンだよ。本物を持ってるわけないよ」

 

二人に説明しようと思ったら、他の召喚獣が襲ってきた。それをどうにか、かわして二人を庇いながら僕は叫ぶ。

 

「っ 南、秀吉、ここは僕が食い止めるから教室に戻って! たぶん教室にはフィールド貼られてないはずだから!」

「そうは言っても」

「おぬしを一人にするわけには!」

 

うん、そう言ってくれると嬉しいよ。でもさ

 

「むしろ教室に戻って、僕は人を守りながら戦えるほど器用じゃないんだよ」

 

数体の召喚獣が一気にこちらへとやってきた。あ、まずい。そう思っていたら、召喚獣は飛んできた黒鍵(本物)に貫かれて霧散する。

 

「島田君! 木下君!」

 

姉さんの声だ! 振り向く間もなく後ろで声がした。

 

「へ、アキノってうわっ」

「のわっ」

 

多分、姉さんが二人を教室に引っ張り込んだのだろう。思わず口元がにやっとする。姉さんは流石だよね。

 

「ナイス姉さん!」

「もち、アキも急いで! 悠里の指示でバリケード張るから」

「了解!!」

 

軽く2・3発牽制のために撃った後、僕らは教室へと引っ込んだ。

 

                    ☆

 

教室に戻って一息ついた。うん、まさかこんなことになるとは。姉さんが渡してくれた水の入ったコップを一気飲みしてから尋ねる。

 

「はぁ、みんな無事?」

 

見回した感じはみんな居るみたいだけど。姉さんが返事をする。

 

「うん、教室にまでフィールド張られなくてよかったよ」

「それにしてもなんで急に……」

 

姉さんの隣では悠里さんがぶつぶつと呟きながら考えている。だよね。いきなりこうなるとか、なんでさ。

 

「それにあの召喚獣まずいよ。現実世界への干渉能力持ってるし」

「それってどういうことだ?」

 

広夢が首を傾げた。あー、フィードバックシステムって有名じゃないもんね。

 

「召喚獣って人間の数倍の力を持っているんだよね。こっちに攻撃しかけてくるとしたら怪我は免れないね」

「そんな……」

 

日向君が驚いたような声を出した。いや、別にデメリットだけじゃないんだよ?

 

「逆に言ったら現実世界からの攻撃も効くんだけど、そのレベルの身体能力持ってる人間って少ないからこのままおとなしくしてるのが吉だね」

 

僕の知ってる限り、姉さんと僕、広夢もいけるかな? 悠里さん……はギリギリ?

 

「召喚獣は使えないのか?」

 

いつの間にか参加していた南が聞いた。あ、それはそうだよね。でもなぁ。

 

「どうだろう」

「でも、召喚獣が暴走してるとなると下手に召喚しないほうがいいと思うわ」

「だよねー」

 

姉さんが気軽に言うけどそれって対抗策がないってことじゃないのかな。それを心の中でツッコんでから重大な事実に気が付いた。

 

「これどうしよう。帰りとか」

「……あ」

 

全員が顔を見合わせた。うん、そうなるよね。最悪……サーバーの電源切れまで? でも確かあれって予備電源で一か月が持つはずだし…………。

 

「あー、しばらく様子見しましょう」

「さすがに学園側が何か対策をとると思うのじゃが……」

 

秀吉の意見も正しいけど、あの学園長がすぐに対策を講じないとかないと思うなぁ。そんなことを考えてると広夢が僕の意図を感じてくれたみたいで言ってくれた。

 

「学園側が対策をとれない状況にあるかもだぞ。幸いここは環境も充実してるし閉じこもれるとは思うんだが……」

「特に心配なのはEとFかな」

 

日向君がちょっと不安そうにつぶやいた。あそこの二つは、他のクラスだと何かしらのオプションが付いているけどEとFはそういったものないし。いや、普通の学校は無いのが普通だよね。

 





お久方ぶりです(この小説では) 最近なんかよくネットが断線します。何ででしょうね?

そんなわけで本格始動のシステムエラー編です。ベースはアニメの「召喚獣暴走編」ネット関連に関しては彼らが居るので独壇場……になるといいなぁ。

何時もの通りの閑話休題アンケートやってます。感想欄にてアンケートの受け付けは致しませんのであしからず。

『ちょっとばかりお茶飲んで休憩といきたいと思います。
 じゃあ、何のお茶を飲みますか?

・魔法瓶使って、紅茶    ×2
・水入れ使って、水出し麦茶 ×1
・鍋を使って、煮出し麦茶
・急須を使って、緑茶    ×1

                           』


見事にばらけてる件。まあでも紅茶の独走でしょうか?

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