バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第二問

[約束されし悪運EX]

 

冬木の町を歩く明乃と謎の大型犬は挙動不審にきょろきょろとする幼馴染を発見した。明乃は普通に声をかける。

 

「あ、凛じゃん。やほー……ってどうしたのそのメガネ?」

 

振り向いた凛は獲物を見つけた見つけた肉食動物のような顔をした。目がキランと光ったようなないような?

 

「明乃、ちょうどいい所に居たわね。鴨が葱しょって歩いてきたって感じかしら」

「は?」

 

明乃が口をポカンとあける。それもそうだろう、いきなり鴨葱呼ばわりされたのだし。

 

「いいからとっととあたしに負けなさいーい!!」

「一体なんなのさー?!」

 

 

ガント用の宝石を宝石を構える凛に対して明乃は黒鍵を構えた。

――数分後

 

 

「勝った!」

「ま、負けたっ……このあたしが?!」

 

見るからに凛はショックを受けていた。大体かなり上級の魔術師とはいえ、肉弾戦に置いてもどきといえど代行者に勝てるとか考える方が難しいのではないだろうか?

 

「いや、なんで暴走してるのさ」

「……このメガネが外れないのよ」

 

思わず明乃が固まった。普段はそれなりにまともな幼馴染の暴挙の原因がそんなしょうもないことであることに驚きが隠せなかったのだ。

 

「そんなしょうもないことで暴れないでよ?!」

 

普段、君が気にしてる秘匿とか秘匿とか秘匿とかその辺のことも少しは考えろっ! 明乃が言えば凛が不機嫌そうに返す。

 

「そんなこと言ったってぇぇぇ、はっ、あそこに見えるのは桜、覚悟ぉぉぉぉ」

 

そのまま凛は走り去っていった。それをぽかーんと眺めた後、あわてて凛の去ったほうを向けばかなり髪の長い桜と似たような風貌の少女に凛が襲い掛かっていた。

 

「凛?! ……どうなってるのさ。それにしてもあの桜ちゃん、妙に髪が長い気が」

 

よく見てみればセーラー服姿だ。桜の通っている学校はブラウスにセーターだからセーラー服姿なわけがない。それにその桜の隣には彼女によく似た、ただしまとっている雰囲気が違う少女がいる。

 

「……人違いじゃね?」

 

その後、凛はさくっと彼女たちに撃退された。正確に言うと雰囲気の違う方の彼女が撃退したわけだが

 

「あ、うんそうだね。凛のうっかりなんていつものことだもんね」

 

明乃があきれて溜息をつけば、大型犬がわんわんと鳴いた。それで明乃が正気に戻る。そして今起こったことを反芻してから呟いた。

 

「……どうなってんさ、今日の冬木は」

 

                       ☆

 

[ウィーアー「ノット」ヒーローズ]

 

とりあえずと商店街にやってきた明久たち、そこにある肉屋でコロッケを買っていた。

 

「お、旨いなこれ」

 

広夢がコロッケをかじって呟く。それを耳ざとく聞きつけた明久が嬉しそうに言う。

 

「でしょー。ここのコロッケおいしいんだよね」

 

コロッケを食べながら歩いていく二人の目の前でいきなり喧嘩が始まった。二人はそのわきを通り過ぎる。

 

「喧嘩かぁ、めずらしいなぁ。冬木って治安いいのに」

「そうなのか?」

 

明久が言った言葉に広夢は首を傾げた。治安がいいというのは?

 

「うん、熱心な警察の人や消防の人っているみたいで犯罪発生件数は少なめだよ」

「あー、そういえば冬木は犯罪の事前発見件数が多いんだっけ。ウィザード(おれたち)の間でも有名だぞ」

 

その手の情報には困らないからなぁ俺たちと広夢が言った。初めて聞く話題に明久は目を丸くする。

 

「それは知らなかったよ。他になんか食べたいもの……ってあれ?」

 

また別の場所で喧嘩が発生した。どうやら金髪のツインテールの少女とライトブラウンのやや野暮ったい髪の少年の二人が喧嘩をしている。二人はそれを通り過ぎてからそろって首を傾げた。

 

「なんか今日妙だよな」

「あー、なんかね? よくわからないけど暴走している人多いねー」

 

犯罪とか発生してないからいいのかなと明久は考えながらコロッケをかじった。広夢も同意してから言った。

 

「ま、幼児連続誘拐とか、ホテル倒壊とか、謎の海魔発生とかないし安全か」

「……じーさんがごめん」

 

明久が急に謝った。かなり感情のこもった謝り方だ。

 

「どうした?」

「謝んないといけない気がしたから」

「??」

 

広夢は訳が分からずに首を傾げた。ちなみにこの時空では全部発生してないのであしからず。大体それをやらかしている大半は衛宮切嗣ではないぞ明久、メインは何処かの狂芸術家だ。

二人が歩いていると銀髪のロシア美人がやってきた。黒いコートに白いインナーで黒のズボンをはいている。かなりラフな格好だが、それが彼女の美しさを強調していた。明久に気が付くと嬉しそうに破顔する。

 

「お、明久じゃないか」

「あ、ナタリアさん!」

 

明久の養父、衛宮切嗣の師匠であるナタリア・カミンスキーだ。普通の時空では衛宮切嗣にジェット機を破壊されて死亡しているはずだが、この時空ではなぜか生き残っていた。四次聖杯戦争が終了した後ふらりとやって来て、切嗣を殴った。それからたびたび冬木にくるようになったのだ。

 

「元気にしてたか……ってお前が女連れとは珍しいな。こいつは?」

「クラスメイトの日暮広夢だよ」

 

話題を振られた広夢がカチコチになりながら返事をする。

 

「ど、ども……日暮広夢です」

「そうか、明久が世話になってるな」

 

ナタリアは広夢の頭を撫でた。それからしばらくの間、世間話をしているとナタリアが時計を見て、あ、と言った。

 

「そろそろ行かないと」

「何か用事があるの?」

「坊やのところにな。じゃあな」

 

ナタリアは颯爽と去って行った。その姿を見て広夢がぼそりと言った。

 

「……もう頭洗うのやめる」

「?!」

 

何があったのさ?! 明久は内心ツッコミを入れた。

 

                     ☆

 

アーチャーとキャス狐、セイバー三人は冬木の街を歩いていく。普通なら目立つ三人なのだがなぜか目立っていなかった。

 

「それにしてもアーチャーさんこの町よく御存じなんですね」

「まあ、それなりにだな」

 

キャス狐とアーチャーがそれなりに喋りながら道を進んでいく。セイバーは誰かを探すようにキョロキョロとしていた。三人ともが不注意だったのかなんなのか。

 

「わっ」

「わわっ」

 

誰かとぶつかった。茶色の髪をツインテールにした普通の少女とボリュームのありそうなウェービーな髪をポニーテールにまとめた気の強そうな少女の二人だ。服装は学生服だが、冬木にある学校の制服ではない。

 

「大丈夫か?」

「あわわ、だ、大丈夫です」

 

アーチャーが手を差し伸べる。ツインテールの少女がその手を取って立ち上がった。

 

「大丈夫だ。心配しないでほしい、それからありがとう。じゃあ行くぞ、さつき」

 

ポニーテールの少女が簡潔に礼を述べてツインテールの少女の手を引く。

 

「え、ちょ カナちゃん待ってよ! あの、ありがとうございました」

 

ツインテールの少女がどうにか礼を言って立ち去った。

 

「一体なんだったんだ」

 

アーチャーが首を傾げた。

 

「さぁ? それにしても先ほどの方、ご主人様に勝るとも劣らぬイケメン魂でしたね!」

 

キャス狐は目を輝かせた。

 

「余の奏者は一体何処にいるのだ!!」

 

赤セイバーは憤慨した。

 





今日の冬木は妙にキナ臭い。ちなみに連続幼児誘拐とかホテル云々はZeroネタさらに言うなら話の展開的には花札ネタです。だからと言って別にプロと勢とか、Zeroメンバーは出ませんけどね。なんかナタリアさんは出てきたけど。明乃ルートの眼鏡云々はコロシアムネタです。自分は正義の味方(大)√が意外と好きです。

出るわ出るわ個性的なモブの嵐、多分本編のどこかに登場する……はず。

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