バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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※一部に獣化ネタがあります。苦手な方はご注意ください


閑話休題
第一問


 

[約束されし悪運EX]

 

 

「ただいまー」

 

ある日の事、すこしばかり用事があって出かけていた明乃が教会に戻れば誰も居なかった。驚いた明乃が周囲を見渡すが本当に誰も居ない。

 

「あれ? 誰もいないし」

 

ふらふらと教会の中を移動しながら誰かいないものかと探す。ちなみにだが、言峰家の家長である祖父の璃正は海外に出かけており不在だ。

 

「珍しいなぁ」

 

そんなことを呟きながら中を探すが本当に誰も居ない。少し心細くなってきた明乃が誰かいないものかと名前を呼びながら歩き出した。

 

「……親父ー? カレン姉さーん? アサシンさん? ギルさまー? ランサーさーん?」

 

わんと足下で声がした。驚いた明乃が下を見れば何故か足下に犬が居た。青い毛並みに赤い目、ところどころに金色のピアスのような装飾がついている。

 

「え? 犬……?」

 

明乃が犬と言ったことに反応して犬がガルガルと声を立てる。犬と呼ばれるのが嫌ならしい。それを感じ取った明乃が普通に謝る。

 

「ちょ、ごめんって でも君、普通に犬だよね?」

 

わしわしと犬の頭を撫でつつ周囲を見渡す。本当に今日は何故誰も居ないのだろうか?

 

「なんで誰もいないんだ?」

 

首を傾げている明乃の耳に何やら間の抜けたアナウンスが聞こえてきた。

 

 

『えー、毎度おなじみ聖杯戦争、聖杯戦争でございます。敗れた夢、忘れていた野望などがございましたらお気軽に―――』

 

 

「……一体なんなのさ」

 

聖杯戦争は停戦しているはずだし、それよりなにより一般人にその存在を漏らすわけがない。なのに、このアナウンスは普通に誰にでも聞こえるようだ。声の主を確かめるために明乃は近くの窓から外を確認してみる。すると外はあたまのわるいの結界に支配されていた。驚いた明乃がもっとよく見てみればなんか町中が虎模様だった。

 

「は、なんで虎模様? てかなんなのあの結界?!」

 

しばらく驚きっぱなしだったがちょっとだけ考えて冷静に戻る。

 

「そういうことですか」

 

今なんで家族が不在かわかった気がした。主に親父と居候の二人

 

「……だぁぁぁ、仕事増やすなぁぁぁぁ!!」

 

多分何かしらの騒動をやらかしているだろう。周囲の被害を考えて明乃は出かけることにした。

 

「あー、もうしょうがないなぁ。探しに行くか」

 

明乃が仕事着であるカソックに着替えて玄関へ向かおうとすると、犬が一緒について来た。明乃はそれに気が付いてしゃがみこんで尋ねる。

 

「あ、わんちゃん一緒についてくるの? てか、君も君でどこから来たんだか」

 

大体、教会に動物(しかもわりと大型犬)入り込む余地なんてあったっけ? と明乃は首を傾げつつ出発した。

 

 

                       ☆

  

[月の裏から狂気爛漫]

 

 

その頃、冬木郊外の温泉にて。何故か白いドレス姿の金髪緑眼の少女と黒いゴスロリ服に狐耳と尻尾をつけた少女が温泉から顔を出す。

 

「ぷはぁ、あれ? ご主人様ー? 一緒にくっついていたのに一体どちらへ?!」

「ふはぁ。うむ、ここは何処だ?」

「ってあれ? 赤セイバーさん」

「む、キャス狐ではないか」

 

不思議そうにきょろきょろと見渡して、お互いを見つけた二人は顔を見合わせる。そこへ何かが落下するような音と誰かが叫ぶ声がした。

 

「うわぁぁぁぁ」

 

どぉぉぉぉんと水柱が立つ。いや、湯柱か そこにぷかりと浮かんできたのは赤い皮ジャケットに黒い皮のズボン姿の青年だった。

 

「ちょ、アーチャーさん、なに空から落ちてきたんですか?!」

「おお、テンプレートというやつだな」

 

二人はまあ、一応心配しているようで彼の傍に近づいた。そして彼の様子を見て気がつく。

 

「てか、アーチャーさん完璧気絶してますね」

「まあ、あの高さから落ちれば当然かもしれぬな」

 

それからしばらくしてアーチャーが目を覚ました。目が覚めたら温泉の脇だったことに驚きつつも二人になぜ落下してきたのかと尋ねられて普通に答える。

 

「いや、いきなりムーンセル(裏)が『ちょっと呼ばれてるから行って来い』と言われ、次元レベルで穴を開けられ足下から落ちたんだ」

「うわぁ、それはそれは災難でしたねぇ。して、貴方のマスターはいずこに?」

「マスター……か」

 

アーチャーの顔にいきなり影が出来たかのようになった。いきなり変わった様子にキャス狐が驚く。

 

「え、ちょ 何大切な何かをなくしたみたいな顔するんですか?!」

「いや、少々トラブルがあってね」

 

苦笑するアーチャー、その裏に何かあるなと感じ取ったキャス狐だったが特に気にすることでもないかと考えてスルーした。

 

                       ☆

 

[ウィーアー「ノット」ヒーローズ]

 

 

「おーい、お待たせ」

 

明久が駅前のところに来ていた。今日は平日なのだが、停学になった男子生徒があまりにも多いので授業がしばらく中止になったのだ。まあ、課題は出されているわけだが。それで出来た休日を利用して広夢が冬木観光に行きたいと言い出したのだ。それを明久が案内を買って出て今、この状況なのだ。

 

「よー、へぇ私服ってそんななのか」

「広夢もちょっと意外だね。もっと動きやすさ重視するかと」

 

明久も広夢も私服だ。明久はパーカーにズボンというラフなスタイルで斜めがけの黒カバンを掛けている。靴は動きやすそうなスニーカーだ。広夢は襟首の広い深い青の薄手の服、インナーにはモノクロのストライプのタンクトップだ。丈の短い水色のスカートの中に黒のレギンスを穿いている。靴は底が浅めのブーツだ。

 

「ん? これなぁ……ウミの彼女がプロデュースだ。ツッコミ入れて、どうにかこの感じにしたけど最初とんでもないくらいにヒラヒラだったんだぞ」

 

勘弁してくれと広夢は本気で嫌そうな顔で呟いた。

 

「へ? そうなんだ。別にたまにはいいんじゃない?」

「断る。てか、お前なんでボロボロなんだ?」

 

女の子なんだしおしゃれしたら? と明久が告げれば、広夢は即答する。それから明久の服の汚れ具合や髪の乱れ具合がおかしいことに気がつき質問する。

 

「もう、なんでさ」

「なんでさ、じゃないだろ。てかどうした?」

 

なんでさの一言でわかるとしたらそれはよっぽどのツーカーだ。もしくは置かれた状況が一緒の人間だろう。

 

「でかい方の弟に言いました。赤飯炊かれそうになりました。小さい方の弟に言いました。赤飯炊かれそうになりました。それでどっちも慌てて止めました。小さい方の弟に広夢の事、根掘り葉掘り聞かれました。ちょろっとばかし喧嘩になりました」

「どうしてそうなった」

 

それしか言うことがなかった。特に小さい方てか本来の義弟。

広夢の呟きを聞いた明久が叫ぶ。

 

「もう知るかぁぁぁぁ!! もう、なんでさ」

 

明久の発狂振りを見た広夢が一言。

 

「……観光案内じゃなくって気晴らしに行くことにするか?」

「あ、そこはちゃんとプラン練ってあるから大丈夫」

 

明久が取り出したメモ帳にはかなりメモ書きがされていた。

 

「おお、真面目だな」

「まあね。そのせいでデートだのなんだの言われたわけですが」

 

もうなんでさと明久はまた言った。明久の発言がようやく理解できた広夢が驚く。

 

「デ?! は?」

「弟二人にそう言われたわけだけどまずないわー」

 

うわぁと思いながら広夢は軽い気分で頼んだけどまずったかと反省する。どうにか同意の意思を示そうと口を開いて出た言葉は一言だけだった。

 

「……だな」

 





そんなわけでタイコロ×トラぶる時空でお送りします。話はじめに入っているのはチーム名です。

アンケートの詳細発表

・赤×白=[約束されし勝利の幸運A]
     アーチャー&明久√ 聖杯温泉へ家族旅行へ向かう衛宮一家の話

・青×白=[正義の味方の相棒ズ]
     広夢&明久√ 冬木観光に出かける明久と広夢の話、本当にそれだけ

・青×黒=[約束されし悪運EX]
     ランサー&明乃√ 不在の家族を探すために明乃が出かける話with犬化ランサー

・青×赤=[ウィーアーノットヒーローズ]&[月の裏から狂気爛漫]
     広夢&紅茶√ 冬木観光に出かけた広夢と明久が紅茶(月の裏ver)に出くわす話


でした。別に紅茶が嫌いなわけじゃないんだ。でもさ、月の裏での彼の暴走っぷりを見てネタキャラにしてもいいかなって思ったんだ。

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