バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第四問

 

次の日のこと、各自習室にはひそひそと噂話が広まっていた。噂の元は不明だが。

 

『女子風呂でカメラが見つかったらしいよ』

『えー、それって盗撮じゃない。嫌だなぁ』

 

女子には嫌悪感を催す話だろう。しかし、別の女子が続ける。

 

『でも、男子のほうでも見つかったらしいよ』

『え、そうなの?』

 

噂話が尽きない自習室、AとFの部屋でもそうなのだが、その中でもFクラスの女性陣はマイペースを保っていた。明乃が不機嫌そうにシャーペンを回す。配られたプリントはあらかた埋まっていた。

 

「それにしてもこんなとこまで来て自習って」

「あら、これが妥当だと思うけど?」

「……なんで?」

 

悠里がしれっと返せば、神海が首を傾げる。明乃も似たような感じだ。その二人の様子を見た悠里が少しため息をついて聞く。

 

「あなたたちAクラスの授業受けてわかるのかしら?」

「聞くだけならどうにかなりそうだけど……」

 

理解はねーと明乃がぼやく。まあ、明乃が聞く分には大丈夫だろうが、それでも他のFクラスの生徒の大半が大人しく授業を聞いているわけがない。

 

「ま、聞くだけなら……ね。聞いたところで理解できるかできないかが重要なの、それからクラスのモチベーションの問題かしら。Aクラスを見てあんな風になろうとか、Fクラスを見てああはなるまいとか考えるでしょ」

「あー、わからないでもないな。ウチのクラスの男子は……」

 

その机に居た全員、明乃、悠里、神海、彩夏の四人は別の机に目を向ける。そこには教える夢路とその隣を(物理で)争奪しているバカの姿があった。全員が目をこちらに戻し口々に言い合う。

 

「ないね」

「あれにあこがれる要素を見出せってほうが無理だな」

「でしょ」

「……納得」

 

そう言って勉強し直そうとしたとき、別の机から霧島がやってきた。悠里のそばに近寄って聞く。

 

「……悠里、ここいい?」

「あら、翔子 いいわよ」

 

悠里が少し体をずらして霧島のスペースを作った。

 

「……ありがとう」

 

霧島は笑っていった。

一方その頃、Fクラスの中でもまともな方の男子はといえば……

 

「衛宮、すまんがここわかるか?」

 

須川が問題用紙を持って明久に尋ねた。問題文を見た明久が解説する。

 

「えっと、そこはBだよ。Aを訳すと一人でって意味で質問とは無関係、Cを訳すと投げていないって意味でまた無関係、Bがとても痛いって意味になって、喉がどうかしたのかって質問にあってるよね。これ本当はリスニングだから余計にわかりづらそうだけど」

「そうなのか?」

 

須川が驚いたような顔をした。明久がさらに続ける。

 

「うん、AとCには問題文に入っている単語と発音のよく似た単語が入っているから間違えやすい、リスニング形式の問題によくあるひっかけだね」

「なるほどな。ありがとうな、衛宮」

「お安い御用さ」

 

須川が居なくなるとすぐに南がやってきた。手には同じく問題文がある。

 

「アキヒサ、ここわかんない」

「えっと、それはAが正解、文章問題ならはじめの2・3行は丁寧に読まないと。これ見たら一発でセールの話だって分かるじゃないか」

「ごめん、ありがとな」

「はいはい。はー、なんで僕が解説やってるんだ?」

 

……明久を解説役に勉強をしていた。多分英語の話だろう。

そこに日暮がやってきた。そのままストンと隣に座って明久に話しかける。

 

「お疲れさん、俺もわからないところあるんだが」

「え、なにさ?」

「ここ」

 

問題用紙を見てしばし無言になる明久、そして言った。

 

「……ごめん、僕もわからないや」

「そうか……」

 

じゃあどうしようかーとか考えていると偶然木下優子が通りかかった。

 

「あら、あなたたちどうしたのよ」

「あ、木下さん。実は広夢がわからない問題あるって」

「そうなの、見せて頂戴、わかるかもしれないし」

「そうか? これなんだけど」

 

日暮は木下に問題用紙を見せる。その間に須川がやってきた。

 

「衛宮、すまん もう一問」

「えー、しょうがないなぁ」

「こんなの頼めるの、衛宮しかいないから」

「はいはい……ってさむっ」

 

明久が妙な悪寒を感じてぶるっと震えた。明久の後ろの方では木下がその様子をガン見していた。

 

「はぁ、姉上……」

 

事情を知っている秀吉は呆れる。姉は普段は自重する人間だったはずなのだが?

木下の様子を見た日暮は呆れながら言った。

 

「……木下、悪いことは言わん。身近な人間でネタを作るのはやめとけ」

「?!」

 

木下は驚いた。何を考えているのかまで見通されるとは思っていなかったのだから。

 

「節度は守れよ。ここの学校ってその手のモラル薄いよな。生徒モデルに腐った薄い本作るなよ」

「なななな」

 

日暮は呆れきり、木下はバレまくっていたことに戦慄をする。

その会話を聞いていた明久が首を傾げた。

 

「えっと、須川君、秀吉、腐ってるって?」

「おぬしは知らんままでいいのじゃ」

 

あれは地獄の沼地だと秀吉は考えていた。

 

「ああ、知らないなら知らないほうがマシだ。それにしても女子ってこの手のものに手を出すやつ多いのか?」

 

須川が呆れた。もしかしたら身近にそういう人間が居るのかもしれない。

 

「別に大半の女子が腐ってるとかないからな」

 

日暮がすかさずフォローを入れた。まあ、そう言いたくなる気持ちもあるのだろう。例えば雑食派みたいな人間もいるのだし。

 

「なんであなたがそう言い切るのよ」

「俺、女だし」

「えええ?!」

 

木下は叫び、なんだなんだとちょっとした騒ぎになるのだがまあ別の話。

 

その日の夜のこと、バカが数名大浴場に特攻した。

 





のんきに勉強会です。裏じゃあキナ臭いことになってるけどそんなの知ったこっちゃねー。って感じになってきた。

閑話休題アンケート

『次の色の組み合わせの内どれを選ぶ?

 ・赤×白
 
 ・青×白
 
 ・青×黒
 
 ・青×赤              』


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