バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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強化合宿編
第一問


 

福原先生が強化合宿の冊子を持って入ってきた。もうそんな時期なんだ。

 

「さて、明日から始まる『学力強化合宿』ですが、だいたいのことは今配っている強化合宿のしおりに書いてあるので確認しておいてください。まぁ旅行に行くわけではないので、勉強道具と着替えさえ用意してあれば特に問題はないはずだとはおもいますが」

 

前の席から順番に冊子が回されてきた。

 

「集合の時間と場所だけはくれぐれも間違えないようにしてください」

 

まあ、集合場所に行き損ねて合宿行けないとか勘弁して欲しいし。

 

「特に他のクラスの集合場所と間違えないようにしてください。クラスごとでそれぞれ違いますので」

 

僕らがAクラスの設備を手に入れたとはいえ、他の待遇は殆どFクラスのままだ。Aクラスはきっとリムジンバスとかで快適に向かうんだろう。そうなると僕らはやっぱり狭い通常のバスだろうか。もしかすると補助席や吊り革かもしれない

 

「いいですか。他のクラスと違って我々Fクラスは現地集合――」

『『『『『案内すらないのかよっ!?』』』』』

 

あんまりの扱いに全級友が涙した。

 

                   ☆

 

「ってわけなんだよ。信じられる?」

 

明日から泊まりというわけで、今のうちに家族に顔を出しておこうということで今日の夕飯は実家で食べていた。

最近、アーチャーの目が妙に厳しい、まあ、あんな騒動やらかしたせいだけどさ。今日はアイリさんとセイバーとイリア姉は不在だ。女子会ならしい。そんなわけで今日の料理はどちらかというと男性向けなボリュームのあるメニューになった。

僕の話を聞いた士郎が箸を落としそうになった。慌てて落とさないようにしてからツッコミを入れる。

 

「流石にそれは無いだろ。場所卯月高原だし、現地集合って結構大変だぞ?」

「でしょ。お金に関しては(ちょっとばかし裏を使って)どうにかしたんだけど」

 

言質とか学園の裏事情とか色々とコネを使ってどうにかしたのだけど、バス手配までは無理だった。

 

「マスター、地味に不穏な感じがしたのだが?」

「え? なんで」

 

何か変なこと言った? じーさんが茶碗と箸をおいてから聞いてくる。

 

「そういえば他のクラスはどうなんだい?」

「えっと、Aがリムジンバス、Bが上級の観光バス、Cが下級の観光バス、Dが普通のでEがマイクロバス、Fは案内無しの現地集合……アレ?」

 

今更だけど酷過ぎじゃないのかなこれ?

 

「せめて案内は欲しいなぁ」

「そういう内容じゃ無いぞ!」

「そうだな。それは学校としていかがなものかと」

 

弟二人からツッコミが入った。最近、アーチャーも士郎に見える時があるんだよね。

ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。玄関に近い位置にすわって居た僕が出る。

 

「こんにちは」

「あ、舞弥さん!」

 

舞弥さんは元じーさんの部下だそうだ。昔、複雑な事情で分かれることになってしまった娘さんをどうにか見つけて、今はパティシエとして冬木で店を開いている。舞弥さん自身も甘い物好きだ。洋菓子系には特に目が無くって僕とも話が合うんだよね。

 

「明久、久しぶり これ今月の新作」

「わー、ありがとうございます」

 

舞弥さんのケーキ美味しいんだよねー。

 

「……兄さん」

「マスター」

 

士郎とアーチャーが呆れたような目でこっちを見ていた。なんでさ

 

                    ☆

 

下駄箱を開けてみれば、なんか封筒が入っていた。

 

「……なんだこれ」

 

裏を返してみてもこれと言って名前もない。何なんだろう? 首を傾げつつ家路に立つ。今日はちょっとした用事で帰りがそこそこ遅くなってしまった。そこに覚えのある声がした。

 

「よー、嬢ちゃんどうした?」

「あれ、ランサーさんバイト帰り?」

 

戦争もおじゃんになったのでランサーさんはバイト漬けの毎日だ。せっせと女の人を口説いているらしいが失敗しているらしい。(アサシンさん談)

 

「おう」

「そっか」

「ソレ、どうした?」

 

ぼくが持っていた封筒を指さす。あーこれね。

 

「いや、下駄箱の中に入ってて」

 

ガサガサと開けてみる。間違いじゃないといいなぁ。

 

「えーと、何々『貴女の秘密を握っています』」

「典型的だなオイ」

 

間違いだったらよかったのになぁ。

 

「『身近な異性に近づかないこと、破る場合には同封した写真をばらまきます』」

「写真?」

 

封筒が妙に分厚いと思ったら写真が三枚ほど入っていた。一番上には清涼祭の時のチャイナ服姿がかなりローアングルで撮られている。

 

「……ほう、これは中々」

「何時の間に撮ったのさこれ」

 

次のはカソック姿で黒鍵をぶん投げている写真だ。背後には化け物の姿もある。

 

「ん?」

「……ヤバイ、凛にキレられる」

 

神秘の秘匿とかぎゃんぎゃん言うだろうし。三枚目はヤバい予感がしてランサーさんに見られないように見てみた。

 

「最後のは……うわぁぁぁ」

「どした?!」

「み、見ない、みな、視ない、みな、みな」

 

三枚目はこの前学園長の実験につきあった際の写真だった。召喚獣の装備を疑似的に装備できるという実験だったんだけど、現在のぼくの召喚獣はランサーさんのような装備なのでぴったりとした青いあのスーツになったのだ。あ、あれは恥ずかった。思い出してうわぁぁぁとかなってるといきなり後ろから声がした。

 

「何をそこで騒いでいるのですか?」

「ひゃあああ」

「全くうるさいですね。何か落ちましたよ……おや?」

 

カレン姉さんだった。思わず写真をぶん投げてしまったらしい。カレン姉さんが裏向きに落ちた写真を拾って何気なく表に返す。あ

 

「これは一体どういうことですか明乃? 別に貴女がこういう服装が好きな変態であっても別にかまいませんが」

「違います。学校の実験に強制的に巻き添えを食らっただけです」

 

そんなぴっちりタイツ用意されたって着るものか。

 

「いえ、その写真がなぜここに?」

「……脅迫状に同封されてました」

 

カレン姉さんの表情が変わる。

 

「脅迫状ですか?」

「はい」

「見せなさい」

「へ?」

「見せなさい」

「はいっ!」

 

思わず封筒を渡してしまった。封筒の中身を見てカレン姉さんがちょっと渋い顔をする。

 

「なるほど、明乃は早く行ったらどうですか。明日は早いのでしょう?」

「あ、そうだった」

 

明日、卯月高原に現地集合なんだよね。面倒だ。

 

                    ☆

 

明乃が居なくなってから、カレンが虚空を見て呟く。

 

「アサシン」

 

すると霊体化していた言峰綺礼のサーヴァントアサシンが姿を現す。どうやらカレンの護衛のようだ。

 

「何でしょうか、カレン様」

「明乃に脅迫状が届きました。すぐに犯人を調べ、脅迫材料になっている写真のデータ元を入手するように」

「ハッ」

 

アサシンはすぐに闇へと消えた。

 





いくらなんでも案内も抜きの現地集合は無いって思うんだ。せめて地図ぐらいはあるよね……よね?

さて、脅迫状の主は生きていられるのか? そこが問題な気がする。データ抜き取られるだけで終わればいいけど、多分さくっと()られても多分ばれないね! 流石アサシン!

そんなわけで合同合宿編スタートです。


ところでだけどランサーの衣装って女の人が着るにはちょっと恥ずかしいと思うんだ。

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