バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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後528時間


第三幕

 

 

今日も今日とて学校なので出かけることとしよう。

 

「おはよう、アーチャー」

 

朝、目が覚めると美味しそうな匂いが漂っていた。制服に着替えてキッチンに居るアーチャーに声をかける。

 

「おはようマスター、朝食の用意は済んでいるぞ」

「ありがと、弁当は?」

 

弁当用意する時間が必要ないってすごく楽なんだよね。

 

「そこに用意済みだ」

「さんきゅ」

 

青いバンダナに包まれた弁当箱を鞄に入れる。これが最近の僕の日常になりつつあった。令呪に関しては既に手から別の場所に移しておいた、じーさんの話聞くと令呪って腕切られた場合には相手に渡る危険があるからね。

 

「いってきまーす」

「ああ、行ってくるがいい」

 

                    ☆

 

昼休み、今日も屋上で昼ご飯となった。

弁当箱を開けてアーチャーの料理に舌鼓をうっていると秀吉が弁当箱を覗き込んで言った。

 

「それにしても、毎日うまそうなものを食べておるのう」

「まあね、毎日食べたときの敗北感半端ないけど」

 

このレベルは絶対に無理な気がする。

 

「美味しいことはいいことじゃないのか?」

「…………料理しない人間にはわからないよ」

 

そんな話をしていると屋上の扉が開いて華やかな声がした。

 

「今日は屋上で食べよう!」

「……明乃、はしゃぎ過ぎ」

「ちょっとは落ち着きなさい」

 

ブラウンのロングヘアに琥珀色の目のスレンダーな女の子と赤い長髪をオールバックにした赤い目の女の子と濃い青の短い髪をツインテにした鴉色の目の女の子の三人だ。ブラウンの髪の女の子と目が合う。

 

「「あ」」

 

とある事情で別の家に引き取られた僕の姉、旧姓吉井明乃、新姓言峰明乃だ。学校ではあんまり鉢合わせしたことがないんだよね。それから学校一番の問題児であり、学園の事件解決人(トラブルシューター)だ。教師からの評判は真っ二つに分かれている。

 

「あら、木下に島田じゃない。どうしてここに?」

「………偶然」

 

姉さんの親友である坂本悠里(ゆうり)さんと土屋神海(こうみ)さんだ。姉さんとはよくワンセットで数えられている。

 

「そうじゃのう、お主らはよく教室で食べておるではないか」

「大体そうだよな」

 

教室でわいわいと食べてるイメージが確かに高い。まあ、今はそれどころじゃないんだけど

 

「姉さん、大丈夫? 顔色かなり悪いけど」

 

目元にクマできてるし、目も若干死んでる。ここ最近忙しいのかな?

 

「だ、大丈夫だよ?」

「いや、ぜっっっったい大丈夫じゃないよね?!」

 

姉さんは嘘が凄く下手だ。いや、嘘つこうと思えばつけるんだろうけど ああ、嘘ついてるなぁってすぐわかる。

 

「……だ」

「?」

 

ボソリと姉さんが何か言った気がした。

 

「もういやだぁぁぁぁ」

「?!」

 

いきなり大声出した?!

 

「何で三食ほぼ麻婆なんだよ! ぼくに仕事押し付けてくるのさ!! いい加減にしろよバカ親父ぃぃぃぃぃぃぃ」

 

姉さんの魂からの叫びはドップラー効果のように空の彼方へ消えて行った。

 

「魂からの慟哭ね。そこまで苦労してたの?」

 

坂本さんはドン引きしてる。

 

「三食麻婆って………」

 

南もうわぁって感じでこちらを見ていた。

 

「………栄養バランス的にも悪い」

 

土屋さんが冷静にツッコミを入れた。

 

「大丈夫かの?」

 

秀吉も心配になったらしくこっちを見てきた。麻婆ってことはあの激辛だよなぁ。多分、あ それよりも。

 

「てか、神父さん またなの?!」

「うぅ、ここ最近はさらに忙しいとかで色々丸投げしてくる。もう嫌だ。アキの家行く」

 

ぎゅううううと姉さんが僕を抱きしめる。ここまで来てるってことはかなりだよね。

 

「あー、はいはい 別に僕はか………」

 

ふとアーチャーの存在を思い出した。やばいやばいやばい、バレたら色々とヤバいよ。

 

「ん?」

「いや、じーさんに相談しよう? じーさんは役に立つか不明だけど、他のメンバーに話が回ればどうにかなるだろうし」

 

じーさんの天敵は神父さんだからなぁ。

 

「さりげなく酷いのう」

「衛宮さん可哀そうに………」

 

僕のじーさんの扱いは傍から見たら酷いものらしい、でもさ神父さん見ただけで怯えまくるじーさん見たら会わせない方が賢明って感じがするよ。

そんなわけで、急きょ実家に帰ることになった。

 





※多分、ドップラー効果ではなくやまびことかの方が正しい

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