バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第十問

 

召喚大会も無事に終わり、学園祭の一般公開も終了した。

お客さんが居なくなった中華喫茶のテーブルの一つにみんなが集まる。目的はそのテーブルの上に置かれた腕輪とタブレットだ。

 

「で、これが優勝賞品というわけか」

「どんな能力があるんだ?」

 

転入生の二人が興味深そうにそれを眺めている。一番食いつきがいいのがこの二人だったりする。

 

「あたしのは召喚フィールドを出せるようになるものよ」

「僕のはとりあえず分裂はなしになって。その代わりに外見を変えることができる特殊端末なんだって」

 

うん、あのアーチャー仕様をどうにかできるものを欲しいって依頼して正解だったよ。ちなみに本来の優勝商品じゃないよコレ。

姉さんがすこしタブレットをいじりながら言う。

 

「へぇ、ある意味でボーナスだね」

「アバターの改造用ってわけか」

「特定の一個人用なのか?」

 

日向君と日暮さんが口々に尋ねてきた。本当に食いつきいいなぁ。

 

「ううん、何人か登録も可能みたい」

 

ならぼくも登録してと姉さんが言った。そうだよね。使い慣れて無い槍とか勘弁して欲しいよね。

わいわいとやっているとそこに神海さんと南がやってきた。

 

「……喫茶店の売り上げ計算終わった」

「ついでにウェイトレスとウェイターの集計も終わった」

 

は?

 

「え、そんなのやってたの?」

「知らなかったんだけど」

「ほら、お客さんに紙配っただろ。あれがアンケート用紙」

「へぇ、そうだったんだ」

 

あの紙にそんな意味があったとは知らなかったよ。

神海さんが悠里さんにノートを見せていた。

 

「……これくらい」

「うーん、まあ喫茶店の売り上げにしては良しか……あの営業妨害さえなければねぇ」

「まあまあ、というか売上どうするのさ」

「クラスの備品でも買うのか?」

「いいえ、普通にお金儲け(こういうさぎょう)って楽しいじゃない」

「「………」」

 

いや、いい笑顔で言われても。なんて返したらいいのかわからないよ?

 

「拝金主義者よりも酷いものを見た」

 

日向君が呟いた。拝金主義者って……凛じゃあるまいし。

とりあえず話題を変えよう。

 

「で、売り上げはどうするのさ」

「うーん、打ち上げの代金にでもする?」

 

悠里さん、首かしげても分からないよ?

 

「無駄遣いしないで取っておいたら? お金ってあるほうがありがたいし」

「ま、それもそうね。打ち上げといえば、どうする? お店でも取る?」

 

姉さんが尋ねたことにもう一回悠里さんは首を傾げた。

 

「え、なに言ってるの?」

「はい?」

 

                   ☆

 

それからちょっとして、それなりに片付いたFクラスの教室内ではどんちゃん騒ぎが起こっていた。

 

「まさかこうなるとはね」

 

せっかくいい設備なんだから使わないと損でしょ? という悠里さんの意見により、教室のキッチンで料理とか作って打ち上げをすることになった。

 

「といういか教室で騒いで平気なのかな?」

「まあ、今日は無礼講(ぶれーこー)ってやつでしょ」

 

姉さんの言うことも一理あるかな?

 

「それもそっか、姉さんこれ飲む?」

「お、さんきゅー」

 

缶ジュースを投げれば姉さんは見事にキャッチする。もう一本頂戴とか言われたけどどうするつもりなんだろう?

 

                    ☆

 

「はぁ、どうにか終わった」

「お疲れ様だね。島田君」

 

ちょうどよく島田君を見つけた。机に突っ伏してちょっとぐったりしている。

ジュース貰ったのはいいけど誰に渡すか決めてなかったんだよね。

 

「え、アキノ?!」

「アキからジュース貰ったんだけど飲む。はい」

「わっ」

 

島田君の首筋にジュースをぴたっと当てれば、物凄い勢いで慌てだした。

 

「慌て過ぎだって」

 

その反応が面白くてついつい笑ってしまった。

 

「笑うなよ」

「ごめんごめん」

 

                  ☆

 

僕がテーブルに座って(行儀悪い? 気にしない気にしない)いると彩夏さんがやってきた。その手にはジュースの缶がある。彩夏さんは姉さん達の方をみて呟いた。

 

「ふむ、いらんところでフラグを立ててるのは気のせいだよな」

「ん? どうしたの」

 

普通に仲良くしてるだけじゃん。

 

「いや、友人の旗立屋(フラグメイカー)っぷりをみてふと思う」

「?」

 

言っていることがよくわからなくて、首を傾げていると秀吉がやってきた。

 

「明久よ。料理がなくなってしまうぞ」

「あ、え? ホント?! 結構作ったのに……今食べに行く!」

 

食べ逃すのだけは勘弁して欲しいなぁ。

 

                   ☆

 

一方、校舎裏の人がほとんど来ないところに悠里と霧島が居た。お互いに正面から向かい合っている。霧島が意を決したように口を開いた。

 

「……悠里」

「はぁ、翔子 一応勝負に勝ったらって約束じゃなかったかしら?」

 

悠里は肩をすくめる。確かに試験召喚大会の時の約束はそうだった。

 

「……でも、今の内に言いたかった」

「で? どうしたのよ」

 

霧島は泣きそうな顔で言った。

 

「……私、悠里とまた一緒に居たい。今度は逃げないから、お願い、一緒に居させて?」

 

霧島の言葉を聞いて悠里は少しだけ苦しそうな顔をした。彼女にも思うところがあったのだろう。

 

「そこまであたしはあんたのこと縛ってたのね。ごめんなさいね、翔子」

「……ううん、そんなことない。悠里と一緒に居たかったのは私のわがままだから」

 

霧島の言葉を聞いて悠里が苦笑した。そして言った。

 

「バカね、もちろんよ。翔子、あたしにとってあんたは大切な親友の一人なんだから」

「……いいの?」

 

霧島がちょっと呆然とした表情で悠里を見る。悠里は霧島の目をじっと見ながら言った。

 

「ええ、あたしはあの時はまだ本当に子どもだった。あんたのこといっぱい傷つけた。それでも一緒に居てくれるんでしょう? なら、あたしはなにも文句なんてないわよ」

「……悠里っ!」

 

悠里はにっと笑って告げた。

 

「Fクラスに遊びに来たかったらいつでも来なさいよ。あ、今度から弁当でもいっしょに食べる?」

「……もちろん!」

 

霧島はとびっきりの笑顔で答えた。

 





清涼祭編終了です。
ちなみにですが別に百合っプルじゃないです。初めに言っておきます百合じゃないです。

一応設定としては 悠里と霧島は小学時代に仲が良く親友だったのだけれども、バカテスの原作派(雄翔好き含む)が原作の通りにしたくて、五年を過ぎた頃から苛められるようになり、霧島の家の人が心配、霧島自身も限界に近かったので、彼女を私立のお嬢様学校に入れてしまうみたいな設定が裏にあった。うん、説明しないと訳ワカメだよね。

ついでに悠里は中学に入るまでにかなり精神がスレてて、それをどうにかしたいから格闘技に手を出すようになった。って設定まで考えて小説にするのをあきらめた。本当は悠里と明乃の出会いがプロローグの予定だった。

閑話休題アンケート
『明久が実験で試薬を混ぜようとしています。どっちを混ぜる?

 試薬A 五票

 試薬B 一票

                              』

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