バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第七問

 

ふと教室の時計を見てみればすでに三回戦に近い時間帯になっていた。

 

「あ、三回戦だ」

「あら、行かないとね」

「あれ、アキヒサ何か大会に出てるの?」

 

そういえばウチの家族には何も言ってなかったような。

 

「まあね、知らない間に出させられてるんだけどさ」

「それって変じゃない?」

 

まあ、それが正論だよね。僕も普通に棄権しようと思ったし、でも。

 

「変でも何でもいいのよ。あたしにはやりたいことがあって明久にはそれに付き合ってもらってるの」

「ふぅん、アキヒサ 勝負するなら絶対に勝ってきなさいよ!」

「うん、わかってるって。じゃあ、いってきまーす」

 

イリア姉らしい激励に見送られて僕らは三回戦の会場へと急いだ。

 

                   ☆

 

会場に行ってみれば見覚えのある赤紫色の髪の女の子と知らない茶髪の女の子の二人が対戦相手だ。相手も僕らに気が付いたらしく声をかけてきた。

 

「あら、Fクラスの」

「やっぱり、根本さん?」

 

根本泰子さん、試召戦争の際に戦ったBクラスの代表だ。卑怯上等な人かと思ったら意外と公正明大なタイプだったことは僕の記憶に新しい。

 

「あら、Bクラスの代表じゃない」

「なによ 泰子、知り合いなの?」

 

茶髪の人が根本さんに尋ねる。誰?

 

「えっと、そっちは?」

「Cクラスの代表ね。確か小山だったかしら?」

「ええ、私はCクラス代表の小山友香よ」

 

へぇ、Cクラスの代表も女の子なんだ。代表が女の子の率高いなぁ。

 

「そろそろ三回戦を始めますがいいですか?」

「あ、はい」

 

お互いに向かい合う。悠里さんと根本さんが火花を散らしているように見えるのは気のせいだと思いたい。

 

「この前の借り、きっちり返させてもらうわ」

「そういうわけなの。ま、よろしく」

 

小山さんはさらっと言った。ちょっと鼻にかけたような感じもしなくは無かったけど割といい人かもしれない。

根本さんの台詞に悠里さんはあくどい笑みを浮かべて言った。

 

「はんっ、十倍返しにするわよ!」

「あはは、うわぁ……まあ、勝ちに行くのは本気なんでよろしくね」

 

全員の目が真剣だ。そしてみんな同時に召喚の言霊を紡ぐ。

 

「「「「試獣召喚(サモン)っ!」」」」

 

 

英語

Fクラス 坂本悠里 334点 & Fクラス 衛宮明久 196点

             VS

Bクラス 根本泰子 294点 & Cクラス 小山友香 179点

 

 

「あら、結構点数高いじゃない」

「当然でしょ?」

 

悠里さんと根本さんがお互いの点数を見てそう言った。

小山さんの点数も高いし、僕と同じレベルか。

 

「意外に高いわね。流石、Aクラスに勝っただけの実力ってところかしら」

「どうも、悠里さん!」

「わかってるわよ」

 

悠里さんと僕は慣れてきた前衛後衛のポジショニングで相手を迎え撃つ。

これまでの対戦者とは違って二人はこちらに下手な攻撃を仕掛けてこない。やっぱ代表ともなると手ごわいかな?

 

「「……」」

 

にらみ合いが続く。お互いにタイミングを見計らっているのだろう。でも、これはチャンスかも? 僕の召喚獣が弓を引く。その瞬間、悠里さんと根本さんの召喚獣がほとんど同じタイミングで走り出した。

 

「はぁっ」

「てやっ」

 

お互いの得物(悠里さんは拳だけど)がいい音を立ててぶつかった。お互いに飛びずさる。

 

「貰った!」

「あ」

 

二人に気を取られている隙に小山さんの召喚獣が武器をこちらへと投げ飛ばした。小山さんの召喚獣の武器が僕の召喚獣に当たろうとするけど、そうはいかない。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

「なっ」

 

僕の召喚獣が投影した神秘の盾が小山さんの召喚獣の武器を防いだ。僕の召喚獣は元々持っていた能力が一切合財消える代わりに自分の契約しているサーヴァントの能力が反映されているのんだよね。これを知ったのは二日ほど前、おかげで今までのスタイルで戦えなくなって凄い苦労しているだよね。扱い慣れてないし。

 

「……赤原猟犬(フルンディング)

「え、あ」

 

 

Fクラス 衛宮明久 106点

      VS  

Cクラス 小山友香 DEAD

 

 

それでもまあ、これくらいはできるけど。

 

「そういえば」

 

悠里さんたちどうなってるんだろう?

様子を見てみたら相打ちになってた。もしかして

 

「衛宮・坂本ペアの勝利です」

 

気が付かないうちに勝ってた?!

 

                    ☆

 

さて、どうしようかとぼくは考える。

 

「………」

「おいおい、この嬢ちゃんが怪我するようなことになりたくないなら大人しくついて来いよ」

 

ここは校内でも割と人気のない路地のようなところ、目の前に居るのは態度の悪いチンピラ、それと彼に捕まったイリヤちゃんだ。どうやら彼女を人質にぼくや他の女子を誘拐しようとしているらしい。何故なのかはわからないけど。イリヤちゃんが小さな声で何かを呟いている。

 

「……ちゃえ……チャー」

「ん?」

 

チンピラが彼女の方を見る。その背後に見覚えのある白髪に褐色の肌の男の人が居た。あ

 

「やっちゃえ! アーチャーっ!」

「承知した」

 

イリヤちゃんの号令と同時に、アキのサーヴァントであるアーチャーさんがチンピラを殴りつける。ケンカ慣れしているチンピラであろうとも英雄である彼に勝てるわけなんかなくって、一発で伸びた。

 

「ぐはっ」

「あー、やっぱか」

 

こうなる感じは正直してた。バーサーカー来なかっただけよかったよ。

安堵している間にアーチャーさんがイリヤちゃんに尋ねる。

 

「大丈夫かね? イリヤスフィール」

「当然でしょ。淑女(レディー)はどんな時でも落ち着いているものよ」

「そうか、さてこの賊はどうしたものか」

 

本当にね。そこにさらに聞き覚えのある声がやってきた。

 

「おい、急にいなくなるなよ……って何だそいつ」

 

士郎だ。目の前の状況に目を丸くしている。

 

「ふんっ、淑女(レディー)を人質に女の子を誘拐しようとする不届き者よ」

「まあ、イリヤちゃん人質にしてぼくら誘拐しようとした間抜けってことで」

「ええっ?!」

 

士郎は驚く。まあ、そうだよね。(一応)平和な学校内で誘拐とか普通は無いし。

そこへパタパタと足音がして、ひょっこり覗いてきたのは、

 

「士郎、それにアーチャーもきゅ……ってどうかしたの?」

「あ、切嗣さん!」

 

切嗣さんにも事情を説明する。

 

「へぇ……誘拐……ね」

 

わぁ、結構いい笑顔してるよ。後ろではアーチャーさんたちがアイコンタクトで会話していた。

 

「(爺さんが怖い、兄さん以上に怖い)」

「(こんなキリツグ久々に見たわ)」

「(さて、どう出ることか)」

 

まあ、そんなの関係なくって。ぼくはぼくで動くわけだけど。

 

「切嗣さん落ち着いてください」

 

ぼくが切嗣さんに声をかけると再度士郎とアーチャーさんが目配せをした。

 

「(明乃って意外と勇気あるんだな)」

「(いや、待て)」

 

誰が止めるとお思いで?

 

「こういう時にはしかるべき機関に任せましょうよ。下手に物理よりも司法に任せた方がいいですし。それに末端潰しても意味ないじゃないですよ、末端から辿って親玉叩いた方がよくないですか?」

「あ、確かにそうだね」

 

うん、よかった。これでこいつだけボコっても目的がわからないままだから対処しようがなくなっちゃうよ。

 

「(……何か今明乃のイメージがガラッと変わった気がする)」

「(どうあがいてもあの神父の娘であるってことだな)」

 

そこにさらに誰かやってきた。

 

「あれ? 姉さんにイリア姉さんに士郎たちにじーさん?」

「あれ、アキ 試合終ったの?」

 

もう三回戦終わったんだ。

 

「うん、どしたの?」

「何でもないよ」

「うん? わかった」

 

アキには内緒にしておこう。色々と頑張ってるみたいだしね。

 





幸運Aは仕事をしまくっていると思う……色んな意味で
言峰家がなかなか出てこないんだぜ。どうしよう

衛宮家は実は息ぴったりだと(中の人(さくしゃ)的に)楽しいんだ。


閑話休題アンケート
『明久が実験で試薬を混ぜようとしています。どっちを混ぜる?

 試薬A 三票

 試薬B 一票

                              』

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