バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第六問

 

「ただいまー……って、あんまりお客さんいないなぁ……」

 

あ、アキが帰ってきた。

 

「衛宮か。どうだった?」

「無事勝ってきたよ」

「それは何よりじゃ。ところで、悠里の姿が見えんが?」

「うん。トイレに寄ってくるってさ。それより秀吉、これはどういうこと?お客さんがいないじゃないか」

「……むぅ。ワシはずっとここにおるが、妙な客はあれ以降来ておらんぞ?」

 

 

秀吉が首を傾げる。そう、ぼくらFクラスは現在開店休業中と言えば聞こえがいいような状態になっていた。つまりお客さんが来ないのだ。神海に頼んで調査はしておらってるけどそれが終わるのはすぐってわけにはいかないだろうし。

 

「教室の外で何かが起きている?」

「かもしれんのう」

 

そうやってみんなで考え込んでいると、

 

『お姉さん、すいませんです』

『ありがとうね』

『いや。気にしなくていいわよ。お嬢ちゃん達』

『お嬢ちゃんじゃなくて葉月ですっ』

『子ども扱いしないでちょうだい!』

 

悠里と小さな複数の女の子の声が聞こえてきた。

 

「悠里が戻ってきたようじゃな」

「あ、うんそうみたいだね」

「なんか子供の声も聞こえたような?」

「妹とか?」

 

いや、居なかったと思うけど。あー、うん。居なかった。

 

『んで、探してるのはどんな人なの?』

 

ガラッと音を立てて扉が開き、悠里が入ってくる。話し相手はちいさいらしくて、悠里の影になって見えない。

 

『お、坂本。妹か?』

『可愛い子だな~。ねぇ、五年後にお兄さんと付き合わない?』

『俺はむしろ、今だからこそ付き合いたいなぁ』

 

二人はあっという間にクラスの野郎どもに囲まれてしまった。

ところで一人犯罪みたいな発言があった気がするんだけど?

 

『あ、あの、葉月はお姉ちゃんを探しているんですっ』

『あたしは弟を探してるの!』

 

どうやら女の子は人を探していて悠里に声をかけたみたいだね。

悠里はなんだかんだ言って面倒見がいいからなぁ。

 

『お姉ちゃんと弟? 名前はなんていうの?』

『あぅ……。わからないです……』

『家族の姉じゃないの? それなら、何か特徴は?』

『えっと……真っ黒なお姉ちゃんでした!』

 

なんか凄い特徴だ。

 

『黒いお姉ちゃんなら……何人かいるんだけど?』

 

否定できないか。鈴原さん黒髪だし、彩夏も黒髪だ。

 

『あ、あの、そうじゃなくて、その……』

『うん? ほかに何か特徴があるの?』

『その……すっごく真っ黒なお姉ちゃんだったんです!』

 

それは特徴の追加になってない気がするよ? 悠里も困ってるしこれは時間かかりそうだね。それを眺めていたらアキにちょいちょいと肩を叩かれた。

 

「ところでなんだけど姉さん」

「どうしたの、アキ」

「片方の声物凄く聞き覚えがあるんだ」

「はい?」

 

聞き覚えがあるって?

 

「あ、アキヒサ!!」

「やっぱりか」

 

そこに居たのはアキの義理の姉であるイリヤスフィールちゃん(いや、さん?)だった。

アキの姿を視止めるとこちらへと駆け寄ってきた。

 

「イリア姉さん、何でここに居るの?」

「キリツグ達と一緒に来たのよ! でもはぐれちゃって」

「そっか、イリア姉さん一人で来るわけないよね。じーさんと連絡取った?」

「とれていないのよ」

「そっか、じーさんが心労で倒れる前に連絡入れとかないとね」

 

アキはそう言って携帯電話を取り出して、どこかへ連絡を入れた。ふむ、切嗣さんたち来てるんだ……接客頑張ろう、うん。

 

「あ、真っ黒なお姉ちゃんだ!!」

 

決意を固めたその時に背中へと衝撃が走った。何事かと思ったらツインテールに勝気な感じの緑色の目の女の子がぼくに抱き着いていた。えっと、誰?

 

「えーっと、誰?」

「え?お姉ちゃん……。知らないって、ひどい……」

 

女の子の表情が歪んだ。やばっ

 

「真っ黒なお姉ちゃんのバカァっ! 真っ黒なお姉ちゃんに会いたくて、葉月、一生懸命真っ黒なお姉ちゃんを知りませんか?って聞きながらきたのに!」

 

それでよくこのクラスにたどり着けたね……って、そっか今着てる服黒いもんね。あ

 

「もしかして、あの時のぬいぐるみの?」

「思い出してくれたんですか!」

 

あー、あの時の子か。ぼくが観察処分者やるきっかけになった子、そういえば。

 

「お兄ちゃんと仲直りできたかな?」

「はい! お姉ちゃんのおかげです」

「そっか、それはよかったよ」

 

そうだ。兄妹喧嘩して、中々仲直りのきっかけが作れないからお兄さんの好きなもの買ってプレゼントにして仲直りしようとしてたんだよね。

 

「ちょっと、葉月……ってアキノ?」

「ん? 島田君どうしたの?」

「いや、ウチの妹と知り合いなのか?」

「うん、ちょっと縁があってね」

 

                    ☆

 

悠里さんが周囲を見渡して眉をひそめた。

 

「何でここまで客が居ないのよ」

「うーん、僕が戻ってきたときにはこの状況だったよ?」

「あ、アタシ知ってる!」

 

イリア姉さんが手を挙げた。

 

「? 何か噂とかあったの?」

「Fクラスの中華喫茶は殺人料理を出すって」

「「……」」

 

事実……ではあるんだよね。クレーマー対策だし

 

「とりあえず何か噂流しましょう。神海」

「……了解」

 

神海さんは一瞬現れたと思うと瞬きの間に姿を消した。

たまに思うんだけど神海さんって忍者?

 

「凄い! あれが本物の忍者なのね!!」

「イリア姉さん、言いづらいけど違うから」

「え、そうなの?」

 

イリア姉さんが残念そうになる。だけど言っておかなくちゃいけない。

 

「うん、彼女はただ単に気配遮断EXと敏捷Aを兼ね備えた一般人だよ」

「そっか、普通の人なんだ」

「それ普通じゃないよ」

 

姉さん、ツッコミは勘弁願います。





土屋って普通にアサシンとして召喚されそうなイメージがある。
……鼻血と言う呪いはあるけど。


葉月ちゃんが真っ黒と称してた理由は明乃がその日カソックを着てたからです。


閑話休題アンケート
『明久が実験で試薬を混ぜようとしています。どっちを混ぜる?

 試薬A 三票

 試薬B 一票

                              』

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