バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第三問

 

「いつもながら坂本の統率力って凄いよな」

「ホントだよね。最終的に内装一日で全部仕上げるなんて」

「流石代表じゃな」

 

清涼祭二日目の朝、僕らの教室は装飾を一新して、中華風の喫茶店に姿を変えていた。

ふと気が付いたんだけど女性陣が居ない。普段なら目立っている三人娘も端の方で本読んでるか寝てるかしてる比奈丘さんも居ない。

 

「あれ、姉さんたちは?」

「そういえばおらんのう」

「どうしてだ?」

 

さっきまでは居たよね?

 

                 ☆

 

Aクラスに設けられている仮眠室、そこにFクラス女子が集合していた。

目の前にあるのは鮮やかで手触りのいい布が六枚ほど。

 

「……これマジ?」

「んー、まあ集客ってことで 別に露出度高くないじゃない」

「……本当、ちなみにウェイターの男子の分もあり」

「あたしまで巻き込まんでも……」

「サイズがきっちりピッタリなところにツッコミを入れていいかしら」

 

うん、色々とツッコミを入れたいんだ。イロモノじゃないって話だったよね? 普通学園祭ごときでここまでするの?

 

「はぁ、今日みんな来るのに……絶対からかわれる」

「あら、ご愁傷様ねぇ」

 

夢路がぼくをからかうように言ってきた。いや、そう聞こえているだけかもしれないんだけどね。どうにもこうにも神経が逆なでされるっていうかさ。ついついきつい口調になる。

 

「どうも、ぼくってこういうのに合わない体型なんだけど」

「気にするな」

 

彩夏がサクッと言った。そこまでバッサリいかれるとまあいいかって感じがしてくる。

まあ、もうなるようになっちゃえ。

 

「そうかいそうかい」

 

                 ☆

 

姉さんたち居ないし今のうちにできることをしてみた。

鞄を漁って、タッパーを取り出す。

 

「さて、試しで作ってみたんだけど胡麻団子」

「食べてよいのか?」

「うん、試食だよ」

 

タッパーに詰めておいたのは試作品の胡麻団子、結構調子に乗って個数を作っちゃったんだよね。しかも作ったの昨日だから下手にお店に出せないし。

 

「ではいただくのじゃ」

「あ、ずるい。俺も!」

 

秀吉と南が我先にと食べた。感想言ってくれるかなって期待してたけどそれ以上にトリップしだしたことにびっくりなんだけど。トリップって女子の特権だと思ってた。

 

「お、美味そうだな」

 

そこにやってきたのは今回の喫茶店の裏方リーダーの須川君、あの泰山でアルバイトしているらしい。

 

「あ、須川君 胡麻団子これでいいかな?」

 

僕が作った胡麻団子をひょいと口に入れる須川君、調子に乗って作ったのにアウトだったら僕としてはものすごく気まずいんだけど……

 

「んー……うん、美味いな。これなら大丈夫じゃないか?」

「よし、中華ってちょっと苦手だからさ」

「へぇ、衛宮にも苦手な料理ってあるのか」

「知り合いが中華だけは美味いんだよね。下手な料理屋行くよりそっちの方が格段に美味しい」

 

凛の中華は美味しい、士郎とかよりよっぽど美味しいんだよね。そういえば凛って何で中華得意なんだろう?

 

「ふぅん」

「物は試しでもう一品作ってるんだけど食べれる?」

「何だ?」

 

冷蔵庫に入れておいた品を出す。それはこの世のものとは思えないほど赤く、ラップを外すと刺激臭が溢れだす。

 

「……これは」

「泰山の麻婆……味的には多分」

 

須川君の顔が蒼白になる。まあ、そうだよね。多分お店で撃沈する人大勢見てるのだろうし。

この麻婆豆腐ただの麻婆と侮るなかれ、とりあえず普通の人には食えない代物だったりする。僕が何でこんなものを作ったのかって? ……一瞬の気の迷いだったんだ。居ないとは思うけど営業妨害相手に出そうかなって思ったんだ。とりあえずは早朝のテンションはおかしいよねってことで。

 

「これは人類の食えるものじゃないよな?! これ食えるとしたらよっぽど人外だよな? 某常連の神父以外居ないぞ……いや、あの和服のおっさんや学ランもか」

 

和服と聞いてちょっとあれって思った。嫌な予感がする。

 

「ちょ、和服のおじさんってどういうこと?! もしかして目が死んでる?」

「ああ」

 

まさかの肯定が来るなんて、そこは否定してほしかった。じーさん何をやってるのさ。

 

「……なに食いに行ってるのさ。あれだけ体に悪いから刺激物は辞めろと……あ、ごめん。家庭内事情だった」

「……そうか、衛宮も苦労してるんだな。そして俺はこれ食えないんだが」

「そう? バイトしてるんだし味大丈夫かどうか聞こうと思ったんだけどね」

 

バイトの須川君に頼めないとなるとどうしよう。そこに意外な人から声がかかった。

 

「何話してるんだ?」

「あ、日向君」

「……それ、食べていいか」

 

キラキラした目で見つめられた。物凄く期待に満ち溢れている。

 

「「………」」

 

その目線に耐えきれなくなって、思わず須川君と顔を見合わせた。

 

「い、いいよ。食べれるの?」

「うん、好物だし」

 

そのまま麻婆を持って日向君は去っていった。何だろう、周りに花が見えた気がしたけど気のせいだよね……うん、気のせいだ。

 

「ここにも猛者が居た」

「同感だよ」

 

あれを食べれるのなんて言峰さんか姉さんかじーさんだけだと思ってたよ。

あ、僕? 食べれるには食べれるけど積極的には食べたくないタイプです。

 





一度はやってみたかったんだ。中華喫茶で泰山の麻婆ネタ
明久が作った理由は早朝のテンションです。他意は全く無い

アレを食べれるザビーズは凄いって思った。

須川君がバイトなのは単なるネタです。何で中華なんか提案したのだろうと思って考えた結果がこれだよ。

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