バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第六幕

さて、元Aクラスこと現FクラスにようやくBの代表以下数名がやって来た。代表が仕組んでいたのはこれだったらしい。

 

「あんた、結構とんでもないことするわね」

「あら、あんたも乗ったじゃない」

 

にやにや笑いあいながら話し合ってるこいつらを見て、心底最近の女子高校生って怖いと思った。いや、俺も今生では今女子高校生だけど。

 

「お前ら本当に悪役だよな」

「あら、日暮 何か言った?」

「そこの彼、何か言ったかしら?」

 

ぼそりと呟いたのが聞こえたらしく、いい笑顔でこちらを向いてきた。

 

「……ほんと、てめぇらは敵に回したかねーよ。俺らの敵として一番面倒な連中だ」

「なによその言い方。あたしが悪役みたいじゃない」

 

ふてされたような口調で代表が言う。ただし、それを見ても俺としては昔に出会った知能犯が思いつくわけで。

 

「それはどうも。こう見えても俺、昔は正義の味方とか志してたもんでな」

「あら、そうなの。それならあたしも一緒よ。むしろ今も追いかけてる真っ最中かしら」

 

あー、正義の味方とまでは行かないがこいつは弱者の味方をしようって傾向はあるよな。

 

「へぇ、明乃たち大事にしろよ。正義の味方は一人じゃ勤まらないぜ?」

「ふぅ、そろそろ行きましょうか」

「ふん、すぐに倒れるようじゃ面白くないわよ」

「本当にお前ら悪役だろ」

 

俺の呟き声なんてもう聞こえていないらしかった。

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

「さて、派手にやりましょう!」

「望むところよ!!」

 

代表同士が召喚獣をぶつけあう。あいつ直接対決のためにこの作戦立てただろ。唖然としてるBクラスの近衛に視線を向ける。

 

「はー、こんな代表ですまん。試獣召喚(サモン)!」

 

召喚獣が現れてみれば、何故か黒髪のもののどう見ても見慣れた幼馴染の姿をしている。

 

「……なんでだよ」

 

そう呟けば、召喚獣がチラッとこちらを向いた。その視線でちょっと理解した。

 

「……………はぁ」

 

英霊を召喚獣化って、絶対に前代未聞だろ。

 

                    ☆

 

ふと気になることが出来た。

 

「大丈夫かな、日暮ちゃん」

「どうかしたの?」

「いや、ツッコミ的な意味で」

「?!」

 

いや、いきなりどうした。と日向君に突っ込まれた。

 

                    ☆

 

あ、なんだろう?

 

「広夢、大丈夫かな?」

 

苦労してそうな気がする。

 

「? どうしたんだ。急に日暮って」

「何かあったのかの」

 

比奈丘さんと秀吉が不思議そうに聞いてきた。

 

「いや、なんだろう。胃がキリキリしてそうな感じが、気のせいかな?」

「なんだよ。その第六感的なのは」

 

須川君にツッコミを入れられた。

 

「アキヒサはいつも通りだよな」

「いや、衛宮がいつも通りなのか?」

 

さらに須川君のツッコミが冴え渡った。

 

                    ☆

 

 

召喚獣同士の殴り合いは最終局面を迎えようとしていた。

 

「はぁっ!!」

「せいやっ!!」

 

代表たちの召喚獣のクロスカウンターが決まる! その瞬間。

 

「………へ?」

 

突然、空気が重くなったような感じがした。

 

「!」

 

見てみれば、周りにいた連中が全員倒れている。召喚獣は一斉に姿を消し、あたりは静寂に包まれていた。

 

「どうなってんだよ。これ」

 

                    ☆

 

なんて言ったらいいのだろう? とりあえず、何かいきなり水の中に落とされたような感覚がした。

 

「!」

「?! どうなってるんだこれ」

 

周りの人間が次々と倒れた。驚くけど、それよりも先に現状が気になる。

 

「固有結界……にしてはちょっと稚拙? でも、まずい」

 

明らかに魔術による何かしらの工作があったように感じる。

 

「わかるの?」

「まあね。みんな倒れたし、多分魔術適正のある人間以外は倒れてると思う。秘匿の原則何処にやりやがった」

 

犯人とっちめるだけじゃ絶対に終わらないよね。この手の後片付けは教会……とっとと終わらせよう。

 

                    ☆

 

突然、世界が歪んだような気がした。

 

「?」

「!」

 

僕と比奈丘さんは同時に周囲を見渡した。変な違和感に焦りを覚えながら視線を元の場所に戻せば、友達が三人とも倒れている。

 

「南? 秀吉? 須川君?!」

 

みんなの傍によって揺するけれども、みんなはピクリともしない。慌てて呼吸を確認してみたらみんな普通に呼吸はしていた。眠っているだけみたいだ。

 

「おい、衛宮どうなってるんだこの状況!」

 

比奈丘さんが僕の方へやってきて、僕の肩を掴んだ。

 

「………ごめん、僕のせいだ」

 

そうとしか言えない。僕はこうなることを知っていたのに、放っておいてしまった。僕のせいなんだ。そう思うと居てもたっても居られなくなって、屋上の扉へと走り出す。

 

「衛宮!」

 

比奈丘さんの呼ぶ声に半ば出かかった扉から顔だけを覗かせて、比奈丘さんの方を向いて僕は言った。

 

「僕行ってくる。比奈丘さんはここに居て!」

 

急がないと。多分この規模なら学校全部覆ってるかも。

 

「……あんの、バカ野郎」

 

                    ☆

 

気軽に学園内を歩く龍之介たち、当然入門証などはなく不法侵入だ。

 

「? 旦那、何か変?」

 

突然変わった学園の空気に龍之介も感づいた。一応魔術の基礎だけはやっているので気が付けたのだ。

 

「どうやら結界のようなものですね」

「! もしかして。オレ、やばい所に来た?」

 

あっちゃぁとか言いながらも口元はニヤニヤとしている。龍之介は面白い事になりそうな予感がするなぁとか内心考えていた。

 

「そうなりますね」

「マジ? 衛宮さんに連絡入れたほうがいいよね」

 

龍之介は衛宮さんと書かれた電話番号を携帯から呼び出して、連絡を入れる。コールは数回もならずに画面が通話中に切り替わった。

 

「あ、もしもし。衛宮さん?」

 

龍之介がいつもと変わらない調子で喋る。電話口の声もそれに焦りが削がれたらしく次第に落ち着いた声に変わった。

 

「そうそう、何か今結界みたいなのに巻き込まれて。多分明久く……」

 

その単語を言い切る前に電話がぷつりと切れた。携帯を正面に戻してから龍之介は呟く。

 

「切れた」

 

多分衛宮さん、こっちに来るんだろうなぁ。とかしみじみ考えながら龍之介はキャスターの方を向いた。

 

「あちゃぁ……どしよ。旦那」

「どうしましょうか」

 





これといって書くことがないです。とりあえず最終決戦の幕は切って落とされた?

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