バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第五幕

 

戦況を双眼鏡で眺めながら、僕は呟いた。

 

「……お、こっちが押してる」

 

見ていると、戦場を占める召喚獣の割合はFクラスの方がやや多めになってきた。この調子だと前線部隊が勝つかもしれない。

 

「まじか」

「凄いのう」

「でも何かおかしくないか? 前線部隊にしては数が少ない気が……」

「気のせいでしょ」

「いや、比奈丘見えてるのか?」

 

みんなが口々に何かを言ってるけど、それ以上に色々と気になることがあった。

 

「うーん、奇襲に戦力回してるとか? それとも何か別の作戦が……」

 

Bクラスの作戦が微妙に読めないんだよね。そんなことを考えていると屋上の扉が開いて、人が大勢やって来た。その数は十人前後、結構(試召戦争の部隊としては)大人数かもしれない。

 

「ここに居たわね。Fクラス!」

「こんなところに居るとは」

 

リーダーらしき二人組がやや息を弾ませながらこちらへとやって来た。ようやく納得できたよ。

 

「あー、こっちにも奇襲ってことか」

 

さっき考えたみたいに奇襲のために戦力分散を図ったらしいね。ま、奇襲されたら困るから先手を打つってところか。

 

「のん気にやってる場合かよ?!」

 

南に突っ込みを入れられた。解せぬ

 

「よーし、やるか」

 

比奈丘さんが珍しくやる気だ。

 

「ワシらが見つかったら不味いのではないかの?」

 

どうだろうね。なんで悠里さんがこんな目立つところに僕らを配置したのかはいまいちわからないよ。

 

「とりあえず目の前の敵をどうにかしてからだろ。試獣召喚(サモン)っ!」

 

須川君が召喚獣を呼び出した。召喚円からは胴着と棒を持った須川君の姿をした召喚獣が……。

 

「あれ? 召喚獣の姿が変わってる」

 

現れなかった。何かお坊さんみたいな格好をして、手には長刀を持っている。武蔵坊弁慶とかその辺のイメージなのかな?

 

「俺もだな」

 

南の召喚獣は前までは闘牛士の服にサーベル姿だったのが、部分鎧をつけて細身のランスを手にした姿に変わっている。ちょっとごつくなったなぁ。

 

「ワシのもじゃ」

 

秀吉のは羽織袴に薙刀が新撰組の羽織を着た和服姿に日本刀という姿になってる。何かちょっと勇ましいね。

 

「気を抜くなよ!」

 

比奈丘さんは服の色が赤から白になってる。正統派になってるよねこれ。あ、そうだ。僕の召喚獣は………。

 

「……なんでさ」

 

赤い外套はないけど、見慣れた黒のインナーに黒のズボンとブーツ、それから手に持った形の特徴的な弓。うん、アーチャーですよね、どう見ても。しかもご丁寧に髪の色が白くなってるし。設定直したはずなのに、なんでさ。

 

                    ☆

 

ふぅ、やっぱり暇すぎてしょうがない。

 

「前線組は快調みたいだね」

「うん、でも油断は禁物だと思う」

 

ツッコミを食らったよ。確かに油断は禁物だろうけどさー。

 

「まあね、とはいえぼくは正直もう出番ないかなって思うんだよね」

「油断してると……」

 

日向君の言葉をさえぎるようにどたばたと足音がして、十人ぐらいがやって来た。お、もしかして奇襲組?

 

「見つけたぞ! Fクラスだ!!」

「こんなところにも居たのか!」

 

あ、ちょっと気になる。

 

「にも?」

 

どこかで別のチームが探してるのかな? もしくは別のところで別の部隊と戦ったとか?

 

「どうかした?」

「ちょっと気になってね。試獣召喚(サモン)!」

「よくわからないけど試獣召喚(サモン)

 

うん、召喚獣召喚しないとね。

 

「あれ? 召喚獣の姿が変わってる?」

「うん、そうみたいだ」

 

ぼくの召喚獣はアオザイに黒鍵というなんかネタモノ感が満載の代物になってるんだけど。

 

「ま、武器が変わってなきゃ大丈夫か」

 

そんなことを呟きながらぼくは黒鍵を振るう。うん、それなりに平気みたいだ。戦い始めると日向君が呟いた。

 

「言峰は本当に凄い」

「へ?」

 

ぼくが何か言った?

 

                    ☆

 

「なんなのよ。この強さは」

「っ」

 

Bクラスの人たちの召喚獣はボロボロだ。こっちの召喚獣は平然としてる。

 

「みんな凄いね」

「衛宮も少しは戦ったらどうだ?」

 

比奈丘さんに呆れたような顔をされた。酷いなぁ。

 

「出番がないんだよ。絶賛後衛だもの」

「ま、須川と島田、それに木下までもが強くなってるしな」

「だよねー。ん?」

 

比奈丘さんに同意しながら、ふと戦場の方をまた見てみれば。神海さんが何か動いてた。なんか中堅部隊が待機している辺りの窓を開けている。そして、僕を見つけると無言で指を拳銃の形にした。あ、もしかして。

 

「……なーる」

「? どうした衛宮……あ」

 

どうやら比奈丘さんにも見えたみたいだ。遊撃部隊ってそういうことだったのか。

 

「やりますか? 後ろをよろしく」

「わかった。がんばれよ」

「はーい」

 

僕は双眼鏡を覗き込みながら、召喚獣に弓を引かせた。

 

                    ☆

 

うーん。

 

「ふむ、結構しぶといなぁ」

 

ぼくたち中堅部隊の目の前にはきっかり十人が残っている。

 

「い、一撃で半端ない点数削ってるあんたが言わないでよ」

 

うん、ぼくが一撃加えてその後はみんなが攻撃を加えるってスタンスを取ってる。これは一応プランBとして考えられていたんだよね。ただし、それじゃあ一人の負担が大きすぎるからって却下になってたんだけど。

 

「えー? ぼくは普通に攻撃しているだけだよ?」

「言峰、色々と……」

「? なんでかな」

 

さっきから日向君に色々とツッコミを食らってる気がするんだけど。

 

「のん気に話するなぁっ!!」

「!」

 

ぼくの召喚獣に相手の召喚獣が向かってきた。だけどかわすことはしなかった。

 

「え? なんで?!」

「……凄いなぁ。アキ」

 

狙いばっちしだよね。相手の召喚獣は矢の代わりに使われた剣に貫かれている。絶対にアキの召喚獣の力だし、ついでに言うなら風切音が聞こえてたからわかってたし。

 

「衛宮?」

「ま、ぼくの弟は得意分野においては最強だからね」

 

いや、それじゃわからない、と日向君にまたツッコミを食らった。

 

                    ☆

 

「よし、こんなものかな?」

 

姉さんの傍にいた召喚獣を打ち抜く。その要領で他の召喚獣も打ち抜いた。よし、全滅。

 

「すごいな。スナイパーも真っ青だろこれ」

 

いや、それは無理だよと比奈丘さんに方を向いて笑っていると須川君の声がした。

 

「衛宮、比奈丘、すまん!」

「覚悟ぉぉぉぉっ!」

 

比奈丘さんの召喚獣に向かってBクラスの人の召喚獣が突っ込んできていた。頭の上の点数は物凄く低いけど、三人の攻撃をどうにかかわしきったみたいだ。

 

「お、『灰となり散れ』!!」

「嘘だろ」

 

比奈丘さんの召喚獣が腕を横薙ぎにすれば、相手の召喚獣は炎に包まれた。

 

「これ以上面倒を増やすな」

「うわぁ、丸こげ」

 

相手の召喚獣はギャグみたいに丸焦げになってそれから消滅した。

 

「ふんっ、これで済んだだけありがたく思え」

 

比奈丘さんがそう言っていると、その倒された召喚獣を操ってる人が何かを言った。

 

「なんでセブンスドラゴンのキャラがここに居んだよ」

「? おい、お前」

「戦死者は補習!!」

 

比奈丘さんがそのよくわからない単語に反応した。そして、その人に話しかけようとしたけどそれは出来ずに終わった。

 

「……」

 

比奈丘さんが連れて行かれた屋上の扉を見ながら呆然としている。

 

「比奈丘?」

「比奈丘殿?」

「どうかしたのか?」

 

戦闘が終わったのでこっちを見る余裕ができたらしい三人が比奈丘さんに心配そうに話しかける。比奈丘さんどうしたんだろう?

 

「……なんかあった?」

「いや、なんでもない……」

 

あたしはキャラじゃないぞ、そう比奈丘さんが呟いた。キャラ? 一体何のことだろう?

 

                     ☆

 

学園の隅の方、雑木林の中。

 

「……後一つ」

「……………」

 

黒いフード姿の何者かが禍々しいクナイをまた一つ埋め込んだ。





基本鈍足進行かつご都合展開です。それから高度な頭脳戦とか………誰も期待してませんよねー。基本的に自分はそこまで凝ったことしてないですし

そういえばプリヤの小説買いました。こうやって略すんですね。プリズマ・イリヤ、この前までプラズマだと勘違いしてた自分はアホですね。もしくはアレでしょうか、ポケモンのブラホワやってたのでそこが混ざったか。どちらにしてもプラズマ……

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