魔法少女リリカルなのは~俺は転生者じゃねえ!~   作:サッカー好き

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投稿出来ました!

ツッコミ所満載かもですが、温かい目で読んでもらえると助かります。

よろしくお願いします!


第22話『俺がサッカーを続ける理由』

季節は秋。

完治には3ヶ月以上かかる筈の怪我も相変わらずの回復力で1ヶ月で完治し、大好きなサッカーの練習に取り組んでいる俺、騎士(ナイト)は練習後に監督に呼び出しをくらった。

 

近くの喫茶店『翠屋』で話をする事になった訳なんだけど、事前に連絡してあったのか俺の母さんまで居て三者面談という形になった。

 

騎士(ナイト)。あんた、また何かやらかしたの?」

「今月はまだ何もやってないんだけど・・・」

 

母さんはジト目で俺を睨みつける。

確かに俺は月ごとに練習中に怪我をしたり、ゲーム中に接触して相手に怪我をさせてしまったり、帰りにパス練習のつもりで壁当てしながら帰ってたらミスって人に当てたり、塀を越えてガラスや植木鉢を割ってしまったりしちゃってるから疑われるのは仕方ない。

 

でも、今月は始まったばかりだからまだ何もやらかしてはいない。

 

「いえいえ、騎士(ナイト)君のお母さん。今回はそういったお話ではありません」

 

監督の言葉に安心する俺と母さん。

では一体何の話なのだろう?

 

「実はですね。先日、私の元にある電話が入ったんです。もちろん、内容は騎士(ナイト)君についてです」

「電話?一体誰から?」

「日本サッカー協会の方からです」

 

日本サッカー協会?

何でそんなところから俺についての電話が?

 

「その人物は、U-12サッカー日本代表監督『安部(まさる)さんだ。騎士(ナイト)君。君にU-12日本代表候補として強化合宿に参加してほしいと連絡が来た」

騎士(ナイト)がU-12日本代表候補!?」

「え?え?」

 

当人である俺よりも母さんが凄く驚いていた。

どうやらとても凄い事らしい。

 

「はい。きっかけは元々選ばれていた子が怪我で離脱してしまったようなんです。それで代わりに誰を招集するかという話で、安部監督から騎士(ナイト)君の名前が挙がったんです」

「で、ですがどうして騎士(ナイト)なのでしょう?」

 

母さんの疑問は当然だ。

俺の名前がどうして安部監督に知られていたんだ?

 

「阿部監督は夏の合宿でガンツ大阪ジュニアユースの視察に来ていたんです。その時に騎士(ナイト)君のプレーを高く評価してくれたようなんです」

「ああ。あの時ですか!でも、あの試合でそんな高く評価付きます?」

 

俺が大怪我しながら頑張った試合の時だ。

でも、2失点したし、最後は気絶して情けない姿を見せちゃったから、あまり良い評価をもらえると思えないんだけど・・・

 

騎士(ナイト)君。君は自身の力を過小評価し過ぎだ。だから直向きに努力し練習を欠かさずこなしている。君の良い点だ。GKを始めてまだ1年も経っていないから良く分からない気持ちもあるだろうが、君の今の実力は日本代表候補として呼ばれるくらいあると理解してほしい」

 

俺の今の実力が日本代表候補レベル・・・

実感が湧かないな・・・

 

「リフティングがまだ100回も出来ない俺にそんな実力ありますかね?」

「ま、まあ、GKとしての実力だからそこを求めてはいないと思うぞ?」

 

苦笑する監督はコーヒーを飲みながらそう言ってくれるが、まだ80回出来て喜んでいるレベルなんですよ、俺。

 

「詳しい内容は後日連絡が来ますが、日程は12/1から12/26の約4週間だそうです」

「え?4週間も?」

 

それは流石に長すぎじゃないの?

 

「どうやら海外遠征合宿のようでして、移動時間も考慮してこの日程になってしまうそうなんです」

 

国内ではなく、海外!

話がどんどん大きくなっていくのが流石の俺でも理解できる。

 

「勿論、その間の勉学は空いた時間に専任講師を呼んでいますので問題はありません。お金も個人の買い物以外は全て日本サッカー協会が負担するそうです」

「そうですか・・・騎士(ナイト)。あんたはどうしたい?」

「4週間、海外、日本代表候補・・・。うーん・・・」

 

急だけど悪い話じゃない。

それは分かってるけど、頭の整理が追いつかない。

 

騎士(ナイト)君。これは強制ではないから断ってもらっても全然問題ない。お母さんとしっかり話し合って決めなさい」

「・・・分かりました」

 

その日俺は結局返事が出来ず、保留という形になった。

 

返事は11月15日には絶対、とのこと。

母さんや父さんは俺の好きな通りにしなさいと俺に全てを任せた。

 

それで期日の前日。

俺は未だに決めかねている。

 

サッカーの練習がない日であったが、いつものグラウンドで俺はある人物と待ち合わせをしていた。

 

「おい、モブ野郎。急に呼び出しやがって一体何のようだ?」

「よっ、和也!来てくれてサンキューな!ちょっと相談したい事があってさ」

 

その待ち合わせしていた人物とは、俺と同じ学校でチームメイトの神崎和也。

俺と居る時はいつも不機嫌そうな顔をしているが今回はいつも以上に不機嫌そうだ。

 

「相談だと?ついに自分が転生者だと認めたか?」

「違えよ!俺は転生者じゃねえ!何回その話をしたんだよ・・・。相談があるんだよ」

 

どうも和也は俺が転生者だと信じているらしい。

他の友達は冗談だと分かって言っているのに和也は何で信じているんだろうか?

 

「お前が俺に?」

「ああ。実はさ―――」

 

和也は信じられないって顔しているが、俺は構わず今悩んでいる事を打ち明けた。

 

「・・・馬鹿かお前?いや馬鹿だったな」

「酷い!?」

 

開口一番馬鹿扱いされた。

流石に酷いと思うのだけれど・・・

 

「そもそも。悩む必要なんてあるのか?親も許可してるし、好きなサッカー、それも上手い奴らと試合できるなんてお前が特に好きな条件じゃねえか」

 

和也の言う通りではあるが・・・

 

「俺はサッカーが好きだ。でも、それはつい最近なったものでさ。そんなぽっと出の俺が、俺以上に長い間サッカーを真剣に取り組んで日本代表になるまで沢山の練習をしてきた人達と肩を並べて良いのかと思ってさ・・・」

 

俺はまだサッカーを始めて日が浅い。

好きになったきっかけだって、去年たまたまテレビで見た試合が楽しかったからだ。

 

そんな俺が真剣に取り組んでいる人達に混ざっていいものなのか、それが俺が今日まで決めかねていた理由である。

 

「真剣に取り組む?沢山の練習?馬鹿らしい。お前に良い事を教えてやる。日本代表に選ばれるような奴らは天才なんだよ。そこに凡人なんて一人も居ない」

「天才・・・」

「当たり前だろ?真剣に取り組んだり沢山練習するなんて誰もがする事だ。それでも日本代表に選ばれる奴とそうじゃない奴がいる。それは何故か?天才か凡人かの違いだ」

 

和也がそういうとペナルティエリア外まで歩いていった。

 

「シュートを受けろ。お前もそのつもりだったんだろ?」

「お、おう・・・」

 

俺はゴール前に立つと和也のシュートが放たれた。

軽いシュートだったので、キャッチして和也に返す。

 

「話の続きだが、お前は天才か凡人かで言うなら天才だろう。だから日本代表に選ばれる」

「候補、だけど、な」

「お前の言う通りで、他の天才達はお前より長くサッカーを真剣に取り組んで来ているし、練習量だってお前の倍以上は練習して来ただろう」

 

シュートがどんどん強く、鋭くなっていく。

だが、和也の話は止まらない。

 

「だが、それがなんだ?お前は今、真剣に取り組んでなくて、練習も適当にやっているのか?」

「そんな訳、ないだろ!」

「だろうな。でなければ俺のシュートをごとごとく止める事など出来る筈がない」

 

確かに全部止めてはいるけど、それが関係あるのか?

 

「お前はゴールを守る為に真剣に取り組んで、沢山の練習を欠かさずに今日まで頑張ってきた。それがしっかりと結果として現れている。結果こそが全てなんだ」

 

和也は休むことなくシュートを打ち続ける。

俺もそれを止め続ける。

 

「天才か凡人かの違いはな。結果を出せるか出せないか。ただそれだけなんだよ。特にスポーツなんて特にな!」

「ぐっ・・・」

 

さっきから容赦のないシュートの嵐。

それでも俺は頑張って止め続けるがギリギリなのが殆どだ。

 

「お前より長くサッカーをやり、努力し、頑張ってきた者など沢山居る!今お前が言ってる戯言はそいつらを馬鹿にしているようなものだ!」

「そんな事は―――」

「ある!」

 

腹の下正面に放たれたシュートを俺は抱えるようにキャッチする。

そのシュートはとても重く感じた。

和也の何かしらの想いが込められているように思えた。

 

「お前に足りないもの。それは自分が特別な存在であるという立場の認識と凡人達の前を歩き、期待や嫉みを背負う覚悟だ!」

「立場の認識と背負う覚悟・・・」

 

俺はその言葉で本田俊輔の事を思い出した。

あいつは試合が終わった後、とても悔しがっていて、大会が終わって海外に留学するまで鬼のように練習をしていたらしい。

 

理由は俺との勝負に負けたからと言っていた。

自分のシュート数に対し、得点が1点など負け同然だとのこと。

試合だって、残り10分もない短い時間ながらも1点を取り、FWとしての役目は果たしている。

だが、俊輔はそれで満足できる選手ではなかった。

 

『ワイはストライカーや。点を取るなんて当たり前や。途中出場だろうと出たらチームを勝たせる。それが本当のストライカーなんや!それが出来ないストライカーなんて何の意味もない!』

 

試合結果は2-2。

確かに俊輔はチームを勝たせることは出来なかった。

 

だが、俊輔が変にミドルシュートに拘らずにドリブルで一対一を仕掛けられていたら結果はどうなっていたか分からない。

その拘りも含めて俊輔は負けたと思っているのだろう。

 

その話を聞いた俺は、俊輔に対して恐怖を感じた。

俺とは明らかに違う恐ろしい何かを感じたからだ。

 

多分、それがストライカーとしての立場の認識と周りの期待を背負う覚悟の違いだったのだと思う。

 

試合に出るからには最高の結果を求める。

俊輔は得点をとってチーム勝利に導く事が最高の結果なのだろうと思う。

それは俊輔だけではなく、周りの皆がそう期待していて、その期待を裏切らないように頑張っているんだ。

 

だけど、俺はどうだ?

楽しいから、負けたくないから、自分の事しか考えていない。

根本的には同じ考えを皆が持っている筈だ。

でも、俺にはそれしかない。

 

俺がどういった立場なのか、周りの皆からどんな風に思われているのか全く理解できていなかったんだ。

 

それで、今回みたいに日本代表候補というはっきりとした立場に、期待に、周りの目に、俺は戸惑っていたんだ。

 

「ここがお前の人生の分岐点かもしれないな!」

「分岐点・・・?」

「簡単な話だ!サッカーで(プロ)の道を進むか、そうじゃないかって話だ!」

 

そう言って和也は今までで一番の助走をとった。

本気の本気のシュートがやってくる。

 

ポストに当たるか当たらないかの際どいコースを狙い、それで尚手が痺れてしまうくらい重いシュートなのだ。

俺ですらそんな和也の本気のシュートを完璧に止めた事がない。

 

「さあ、どうすんだモブ野郎!らしくもなく、ウジウジ悩んでないで決めやがれ!!」

「くっ!」

 

俺はシュートに喰らいつく為に懸命に走り出す。

相変わらずの凄いシュートだ。

まるで俺から逃げるようにしてゴールへ向かっていく。

 

俺はどうしてこんなに必死になっているんだろう?

止めた時の瞬間が楽しいから?

そもそもどうして俺はGKをやっているんだ?

 

サッカーが好きになったきっかけはテレビで見たサッカーの試合が面白かったからだ。

GKが特に凄かったとかそういうのはなかった。

寧ろ点の取り合いでGKが可愛そうに思えたくらいだ。

 

それじゃあ、どうして俺はGKをやっている?

GKを始めたきっかけは、拓真との試合で―――

 

「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名前は神崎和也。

転生者だ。

 

今日も社会で役に立たない授業の始まりか・・・

 

『ええええええええっ!!??』

 

机でうんざりしていたら教室に綺麗な声が大きく響き渡った。

確認すると、なのは、アリサ、すずか。

俺の嫁達が驚いた表情をしている。

 

騎士(ナイト)君がサッカーのU-12日本代表候補!?」

「しかも、遠征合宿で12月から海外に行くって本当なの!?」

「おう!昨日参加するって返事したぜ!」

 

嫁達に囲われている銀髪モブ野郎がへらへらしながら自慢してやがる。

今すぐ止めさせたいが、リンディ様(無意識)から極力接触は禁止されているから近づけねえ。

 

「あんたがここ最近悩んでたのってその事だったのね」

「え?そうだけど、良く分かったな?」

「分かるわよ。騎士(ナイト)はすぐに顔に出るんだから。なのはやずずかだって気づいていたわ」

 

アリサの言葉に頷くなのはとすずか。

まあ、昨日、顔を合わせた俺ですら何か悩んでいるのには気づいたが・・・

 

「まじか・・・。確かに、海外遠征合宿に参加するかどうかで悩んでたけど・・・」

「何で黙ってたのよ?相談してくれれば良かったのに・・・」

 

ジト目で睨みつけるアリサ。

なのはやすずかも頷いて賛同している。

 

「悪い悪い。深い理由はないんだけど3人よりも和也の方が相談しやすかったんだ」

「和也?神崎のこと?」

 

いきなり俺の名前が呼ばれて思わず肩をビクつかせてしまう。

振り向いてみると4人全員が俺の方を見ていた。

 

騎士(ナイト)君。神崎君に何もされなかった?」

「怪我とかはない?」

 

おろおろと心配した表情モブ野郎の身体を確認するなのはとすずか。

失礼だとも思ったが前科があるので何も言い返せない。

 

「大丈夫だよ!というか和也のおかげで参加を決意する事が出来たんだ。なっ、和也!」

「だ、黙れ!馴れ馴れしく肩に手を置くな!」

 

俺は馴れ馴れしく肩を組もうとするモブ野郎に抵抗しながら、昨日の事を思い出した。

 

あの日、俺の最後のシュートはモブ野郎に止められた。

今まで誰にも止められた事のないシュート。

魔法で軌道を操作し、威力を増大させたインチキシュートだ。

 

それをモブ野郎はキャッチして止めやがった。

モブ野郎から逃げていくように軌道を操作しているのに諦めずに喰らいつき、ただ手を伸ばしただけじゃ弾かれる威力にしたボールをセービングでがっしりとキャッチした。

 

俺のインチキシュートを初めて止めて喜ぶモブ野郎は笑顔でやってきてこういったのだ。

 

『ありがとう!俺、合宿に参加するよ!』

 

(プロ)の道を選んだのかと聞いたがそうではないらしい。

 

『プロになるかは分からないけどさ。俺が今後どうしていくかは決めたんだ!』

 

その日にあった糞情けない顔とは打って変わって晴れやかな表情をするモブ野郎。

 

『俺は守護神になるんだ!どんな相手でも安心して任せてもらえる存在に!それが今の俺が目指すべき目標だ!』

 

とても難しい事を簡単に言いのけるモブ野郎。

だが、モブ野郎の顔は本気だった。

 

自分の立場や覚悟をちゃんと理解しているのかは分からないが、さっきの糞情けない顔をしている時よりかは十分に信じられる。

 

だが、俺はそんな事は言ってやらない。

 

「そんな事言って、周りは味方ばかりじゃねえんだぞ?お前を陥れようとする奴も現れる。その時にお前は耐えられるのか?」

 

寧ろ不安を仰ぐ言葉を送ってやった。

しかし、モブ野郎は笑顔でこう返す。

 

『大丈夫!俺は「ナイスキーパー!」って言って喜ぶ人達がいればどんな事でも耐えられる!それが俺の力の源だから!』

 

喜ぶ人達・・・。

チームメイトだけではなく、試合を観ている全ての人達を指しているんだろう。

名前も知らない他人でも喜んでくれれば力になるってか?

 

そんな事はありえない・・・。

俺のときはそんな奴一人としていなかった。

 

でも、モブ野郎が言うと本当にありえそうだ。

今も同じクラスでもない奴らがモブ野郎の話を聞いて楽しそうだ。

モブ野郎には人を惹きつける何かがあるのかもしれない。

 

「神崎君が・・・」

「ふーん。あんたもやる時はやるじゃない」

「うん!少し見直しちゃったよ!」

 

そして、それは他人をも巻き込んでくれるようだ。

今まではモブ野郎と一緒にいても近づいてくれなかった俺の嫁達が自分から来てくれたのだ。

しかも褒め言葉なんて初めての経験である。

 

「と、当然だ!俺にかかれば『騎士(ナイト)』の悩みのひとつやふたつ簡単に解決出来る!」

「おう!頼りにしてるぜ、和也!

「ぬはははっ!任せておけ!騎士(ナイト)よ!」

 

俺はその日前世含めて一番楽しい学校生活を過ごす事が出来た。

 

そして、絶対に本人には言わないが親友と呼べる初めての友達が出来た。




如何でしょうか?

とりあえず、怪我については騎士の反則級の回復力という事で納得してくださいm(_ _)m

そして、海外遠征も突発的で普通に考えたらおかしいかもですが騎士を巻き込まないようにする為には仕方ないかと思います、、、

それでも楽しんで読めたと言ってもらえると幸いです!

次の更新も早く更新出来るように頑張ります!

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