そしてIF物もここで終了。
銃刀法という法律を知っているだろうか。
正式名称は銃砲刀剣類所持等取締法というらしいのだが、そんなことは今はどうでもいい。とりあえず日本刀とか銃とかを理由もなく所持してはいけないんだぞ、っていう憲法で定められた法律だ。
江戸時代とか戦国時代とかなら街中で腰元に差していても違和感無いし違法でもないけれど、現代なら非日常的だし犯罪だと思うのだ。うん、間違っていないよな。
何故にこんな現代人ならば当たり前の常識を今更ながら考えているのかと言うと、実際に目の前で背中に大小の刀を背負う中学生くらいの少女がいるのだ。
俺は今。シンプルに恐怖している。
それが本当に本物なのかなど問題ではない。
目の前の少女が背に背負った日本刀などまるで気にせず、自然に俺へ別の件で謝罪しに来たことが問題なのだ。
だっていつも背負っているということだろう。あんな小さな子が違和感なくなるほどに。
「いつも幽々子様が申し訳ありません!」
どうやら彼女は西行寺の知り合いのようだ。様なんて付けているけどもしかしたら西行寺は地元の有力者の娘とかでこの子は家の事情で仕えている子供なのかもしれない。
それにしても背中に隠れている刀が気になる。
「私の方からもよく言い聞かせておくので!」
なんだか本当にそれっぽいな。
西行寺の実家って金持ちだったのか。
だったら何でわざわざ家に食いに来るんだよ。それも食料が全て無くなるまで徹底的に。くそう。許すまじ。
「ありがとうございます。許してくださるんですね。沈黙も肯定と言うことですよね。これ、この間習った言葉なんですけど」
うん、君がそんな難しい言葉を知る機会がある環境が怖い。
あとで西行寺に一言申さなくてはならないようだ。子供の教育に悪いから気を付けてくれ、と。
それにしても年齢の割には礼儀もなっており、見た目からも良い子なのだと分るのだが、何となく腹黒い所がありそうなのだと邪推してしまうのは気の所為なのだろうか。
単に俺が背中の物体に恐れて萎縮しているからそう感じるのかもしれない。
というか俺が日本刀にビビッている間に勝手な話が構築されていく。別にいいけれど。
「よかった。もし許さないとか言われたら白楼剣を抜かなくてならないところでした♪(本日最高の笑顔で)」
そう言って腰元から脇差を覗かせ、軽く鯉口を切る。
銀色に鈍く輝いた光が目に入った。
なにそれ怖い。
俺は目の前に居る子を絶対に怒らせてはならない、と密かに心の中で誓った。