どうも、リクヤです。ただいま右手の<アームド・アーマーBS>にエネルギーが収束中です。
一拍を置いてアームの間からエネルギーが放出される。
ビームマグナムとは違い、収束したビームの照射がシバーをとらえる。
レベル差の影響でHPの減りは少ないがこれならば一気に半分程度までは削り落とせるだろう。
ここまで来て気づく。シバーの必殺技ゲージが被ダメージボーナスで七割近く溜まっている。
まずい……!
ビームの照射をシバーの後ろの岩ビルにずらし、いざという時にステージ破壊ボーナスで再度必殺技ゲージを溜めておく。
ここで必殺技は終わり、再びステージに緊張が走る。
「なかなか勘の良いニュービーね……。でも、一足遅かったわね」
その通りでございます。既に相手は大抵の必殺技なら十分に使えるほどのゲージが溜まっており、引き換えにこちらは先ほどの必殺技がやっと使える程度しかゲージが溜まっていない。
……何をするつもりだ?
相手は機関銃を腰にマウントしたまま動かない。
「…………!!」
シバーは一気に駆け、こちらに向かってくる。
ああ、もう!取り回しが悪い!
牽制のビームマグナムを射とうとするが、癖の強いこの強化外装は発射までに少しのタイムラグがある上に、発射時の反動が大きいため、真っ正面から射とうとすると気配で気づかれて先に避けられてしまう。
まずい、後ろに回られた!?
アームド・アーマーVRで振り向き様に殴り飛ばそう思うが時既に遅く、がっちりと羽交い締めにされてしまった。
「アタシを侮辱したバツね。くらいなさい、<ピーコック・ハモニカ>!」
首だけを振り向かせてシバーの様子を見る。胸の装甲が大きく開き、現れた無数の穴が赤紫の輝きを放っている。
今まで散々ロボット系ゲームをやってきた俺には解る。これは拡散ビーム砲だ!
そんなものゼロ距離でくらったらひとたまりも無い。いそいでシバーの拘束から逃れようともがくが、がっちりと脇の間に腕を通されていてどうにも抜けられそうにない。
こうなれば強硬手段に及ぶほか無い。
気づかれない様にビームマグナムの銃口をシバーの足に向け、発射する。
足への衝撃で拘束の手が緩んだ隙におもいっきり斜めに飛び出す。
しかし、予想より早くシバーは体制を整え、こちらに拡散ビームを放って来た。
「ぐ……!」
避けきれず、右肩が焼き切られる。体力もごっそりと削られてしまい、残り四割となってしまっている。
「くそ……!」
「ふふふ、良い気味ね。このままゆっくりハチの巣にしてやるわ」
まだ手はある。俺のたった一つのアビリティ……。条件はそろった!
「まだだ!まだ終わらんよ!」
ノルンの装甲が開き、隙間から新たに黄金の装甲が現れる。
アームド・アーマーVRがクロー状に変形し、フェイスマスクが外れてアバター本来の顔があらわになる。
「<角割覚醒(NT-D)>始動!!」
☆
「あーあ。グーのやつ、やられちゃってるよ」
「へぇ〜、お前には相方を哀れむだけの余裕があるのか?」
離れた所でグレープ・シバーとバンシィ・ノルンが戦闘を繰り広げる中、こっちはこっちでグレー・ツループスとの激戦が行われていた。
互いにHPは六割程度残っていて、向こうよりかはまだ長持ちしている方だ。
「余裕なんてある訳無いじゃん。こっちだってギリギリさ。……ただ、僕は君に勝てると言う確証があるだけさ」
「上等抜かすんじゃあねえぜ!俺がお前に負けるなんざあ万に一つもねえぜ!」
と口で言いながらもこれはなかなかヤバい状態だ。
このウイング・ゼロの常時発動アビリティ、<低飛翔(ロー・フライ)>はアバターそのものが身軽になり、跳躍やステップの飛距離が自然と伸びるというものだ。
ヒット&アウェイなどには最適だが、ここに来てこのアビリティは仇となった。
飛距離が長過ぎて着地を突かれる……!
ツループスの持つやたらと砲身の長いピストルの鉛玉が着地の度にパチパチとこちらに飛んでくる。
なんとか近づいてビームサーベルをぶち込んでここまで削ったが、正直キツいな………。
「さて…。どうした物か…」
☆
視界中央やや上に新たなゲージが現れる。これがNT-Dの稼動時間だ。せいぜい持って二十秒と言った所だろう。
機関銃を構えるシバーに正面からダッシュで近づく。
「何よこれ!さっきより早いッ!?」
見くびるなよ!NT-Dで変化するのは見た目だけじゃあないぜ!火力も機動性も抜群のNT-Dだ!
急いで機関銃を盾にするシバーの胴体目掛けてクローを振り下げる。
クローは機関銃とシバーの左手を貫通してボディに深い傷を作り、吹き出たオイルがノルンの装甲を汚す。
そのまま身体をクローで鷲掴みにし、持ち上げる。
「我が世の春が来たァーーーーーーーーーーーーッッッ!!!」
シバーの装甲をクローが貫通してアバターが胴体、腹、下半身に分かれる。ここでシーバーのHPは空っ穴になり、ポリゴンの粒子となって消える。
まだ十秒残っている。
見ればツループスが少し離れた所で俺に背中を向けている。相手は相方がやられたことに同様しているみたいだ。
勝機!
ツループス目掛けて大跳躍をする。
「なんとおぉぉぉぉぉぉおおおお!!」
「な……っ!?…がああああ!!」
アームド・アーマーVRをツループスの胴体に突き刺し、力任せに上へとクローをかち上げる。
ツループスの上体は縦に三枚に裂け、傷口から血を彷彿とさせるどす黒いオイルが吹き出る。
これでツループスのHPも尽き、戦闘が終了する。
NT-Dの稼動時間も終わり、装甲が閉まって、アバターが一回り小さくなる。
「まさかあそこから巻き返せるとは思っていなかった……」
「まあ、俺の手に掛かれば楽勝だな」
「ほざけ」
「まあ、終わったことだし、さっさと抜けるか」
「…そうだな」
二人でこの世界から抜ける魔法の言葉を口にする。
「「バースト・アウト」」
☆
視界が現実の物へと戻る。
目の前には食べかけのハンバーガーとSサイズのソフトドリンク。
ここは秋葉原駅のファーストフード店。
『ひぇ〜。疲れた〜……』
『今回は少し調子に乗り過ぎたな。今度からはレベル差を少し低く見積もらないとな』
ちなみに、目の前のカラトとはニューロリンカー同士で直結していて、思考通話で話している。
『しっかし、今になっても信じられないな…』
『何がだ?』
『決まってるだろ。ブレイン・バーストだよ。…向こうで散々ドンパチやっといてこっちじゃまだ始めてから一秒ちょいしかたってないんだからな……』
『まあ、普通じゃありえないよな』
食いかけのハンバーガーとドリンクを急いで平らげる。
秋葉原はブレイン・バーストで呼ばれている六大レギオンの内の一つ、黄色のレギオンの支配下で、無駄足を踏んでいるとバースト・リンカーに余計なバトルを引っ掛けられない。
『さてと…。用は済んだ訳だし、今日は帰るか』
『そうだね』
俺達はまた一歩<機動戦士>へと近づいた…。
今回は展開を急ぎ過ぎました。すみません。
アドバイス、コメント等があればよろしくおねがいしますm(_ _)m