「安全の為にも、俺はやめておいた方が良いと思う」
うーむ………、カラトの言っていることは至極的を射ているんだが………。なんか、味気ないよなぁ…。
「ってかお前、さっきまでPK集団なんてぶっ飛ばしてやるぜ!!みたいなテンションだったじゃないかよ。それはどうした、それは」
「んなもんノリに決まってるだろ。鈍いなぁお前。受け狙ってたの解らないの?芸人気質ゼロだな」
「ノリでやってたのか!?ヤなヤツだなお前!変な期待させやがって!」
少しでも見直した俺が馬鹿だった………。
全く……。ろくでもないヤツだな。
「じゃあ、面倒くさいから、小和田君の案は保留ね。異論は認めないわ。考えるの面倒だから」
「最低だな!なんだよ!?俺だから保留なのか!?俺だからか、おい!」
「つけあがってんじゃないわよ。誰がアンタなんかの為に」
「サトウなら良いのか?」
「勿論」
「ふぁあ!?」
即答!?一体なんなんだこの俺に対する扱いは!?
「…ヒメジマの中に俺は漢を感じる」
「今時の男子にゃああり得ない根性だな」
「………問題は、言われてる本人が何も気づいていないことだな」
「え?何?僕の顔に何か付いてる?」
「…ほら見ろ」
「ちょっ、ちょっと!何二人でこそこそやってるのよっ!佐藤君に変なこと吹き込まないのっ!」
また、俺だけ除け者にされている……。
せっかく勝ってレギオンマスターにまでなったのに、たった五人の御食事会の話の輪にすら入れないとは、なんと惨めなことか……。
よし、ここは一つ、俺から話を振ってみるか。
「あのさあ、そろそろレギオンの名前を決めた方が———」
「ん?もうこんな時間か………」
「あ、本当だ。そろそろ帰らないと家族に怒られちゃうな…」
「……一〇時か。ボチボチお開きにするか」
「そうね。夜道も危ないし」
「あの、ちょっと………」
「ん?どうした、リクヤ」
「……レギオンの名前って……まだ決めてないよな?……どうすんの?」
「………え?あ、それか……」
あちゃー。完全にタイミング間違えたなこりゃ……。
もう皆、帰る気満々で身支度とかしてるじゃん……。これじゃあ俺、構って欲しいだけのただのKY野郎じゃん………。まあ、実質そうだケド。
「まあ、また別の機会で良いんじゃない?」
「そうね。いちいち考えるの面倒だから、レギオンマスターの小和田君、考えといて」
えー。完璧に押し付けじゃんそれー。
それになんで俺の職権が悪用されてるんだよ!おかしいだろそれ!
………まあ、他にやること無いから良いけどさ。
———洗い物を皆で片付けて身支度を済ませ、サトウのマンションを後にする。
一階の入り口でさよならを言い、各々が自分の帰路へと遷る。夜道は暗くて危ない為、ヒメジマはサトウに家まで付き添ってもらうことになった。
カラトと途中で別れ、帰り道、ハタケヤマと二人きりになってしまった。
………何処となく気まずい…。
転校して来てからまだ日も浅い為、こうやってつるんではいる物の、ハタケヤマとは未だに打ち解けていない。持ち前の明るさでもう一人の方とは、転校初日からだいぶ打ち解けたのだが、コイツとは大したきっかけも無く、ここ最近はこういった気まずい雰囲気が二人の間に漂っている。
………インテリな感じがするんだよな。
そうだ、インテリ系オタクなんだコイツは。なんか、近寄りがたいんだよな…。
俺の考えすぎか?
「……なあ、小和田。お前まだ、時間空いているか?」
「……は?……えっ………ちょっ…」
「…何キョドってんだよお前」
人が真剣に考え事してるのに、話しかけられたらそりゃキョドるだろッ!!畜生!何も知らないくせに!
「悪い悪い。ちょっと考え事をしててな。……時間なら空いてるよ」
「そうか、なら少し付き合ってくれ」
「…………へ?どこに?」
「そうだな……。ここからだったら秋葉原かな。……ちょっと、暴れ足りなくてさ」
「まさか、今からやりに行くの……?」
「ああ。構わないだろ」
「構わないだろって、そりゃ構わないけどさ………。そもそも、こんな時間にいるのか?」
「案外いるぜ。昼間よりは少ないが、それだけハイリンカーの密度が濃くてな。腕試しには割と向いているんだよ」
腕試しっておい……。俺、まだレベル2なんだけど………。
「俺、まだニュービーなのにそんなのとやり合えるのか?」
「大丈夫だ。お前はセンスがある。少しのレベル差ぐらい、なんとかなるさ」
「………そ、そうなのか……?」
「安心しろ。お前はお前が思っている以上に強い」
こんな積極的なハタケヤマは始めて見る。意外と軽いヤツなのかもな。
「……それで、行くのか?それとも行かないのか?」
「…………………ああ、それじゃあ、行こうか」
☆
「……さてと、それじゃあ、始めるか。ほら、ケーブル」
結局、二人で電車に乗り、秋葉原駅まで来てしまった。
駅のそばのベンチに、二人して座る。
加速世界では思考が一〇〇〇倍になる為、こっちにいる時間は実質三〇分にも満たないだろう。
渡されたケーブルを装着型携帯端末のニューロリンカーに差し込む。
「「バースト・リンク」」
キーを口にした途端、脳内に雷鳴の様な物が走り、みるみる内に身体がバーチャルアバターに成り代わって行く。
辺り一面はガラス張りにした様な青い空間。ハッキングしたソーシャルカメラが捉えた映像をそのまま繁栄しているため、周りは先ほどの風景と何ら変わりない。
一つ変わっているとすれば、全てが止まっていることだ。
正確には止まっているのではなく、速度が一〇〇〇分の一になっているのだ。
目の前を走る車も、路面をつつく鳩も、全てが微動している為、止まって見える。
「おい、こっちに来てみろ」
一つ目の鬼みたいなアバター(彼曰く、中級の妖怪らしい。ちなみに俺は、上級のにゃんこ先生)になったハタケヤマのいじっているウインドウを見てみる。そこには、たった今、タッグデュエルをしているバースト・リンカーの表みたいなもがある。それには勿論、リンカーのレベルも書いてあるのだが……。
「…………うわぁ……」
とにかくレベルが高いこと。とりあえず、レベル3より下はいない。
「安心しろ。ちゃんと相性とレベルの良いヤツを選んでやるから」
「……お、おう。よろしく頼む…」
すらすらと動いていたハタケヤマの指が止まる。どうやら相手が決まったらしい。
相手のネームは、<グレイシュホワイト・イージーエイト>レベル3と、<エメラルド・ウッズ>レベル5だ。ちゃんと闘える程度のレベルを選んでくれたみたいだ。
レベル2の俺とレベル6のハタケヤマ。足した合計は相手と同じな為、十分闘えるはずだ。
「基本、俺が前に出てじゃんじゃん注目取るから、お前が闇討ちしてくれ」
「了解」
「それじゃあ、始めるぞ」
ハタケヤマが中央のデュエルのボタンを押す。身体がにゃんこ先生からおなじみの<バンシィ・ノルン>にかわり、周りの風景が一変する。
「腐植林ステージか……。嫌な所を引いたな」
「文句を言うな、とにかく相手を捜すぞ」
周りには腐った巨木やキノコが生えており、紫色の瘴気の様な物が漂っている。なんと居心地の悪い空間だろう。臭いはしないのだが、息をするだけで気分が悪くなる。
「……………!ノルン、止まれ!」
「え?…わっ!」
エクシアに無理矢理後ろに押しのけられる。間髪入れずに、俺の足下の木に三センチ程度の大穴が空く。
真っ正面を凝視する。五〇メートルほど先に人の様なシルエットが二つ見える。
右片方は、しゃがんだ形でこちらを見据えている。灰色がかった白の装甲。おそらくあれが<グレイシュホワイト・イージーエイト>。手にかけているのは長距離実弾砲か………?先ほどの牽制も、あれによる物だろう
そして、左片方は………、
「…なんか、凄い目立つ色だな……」
不植林ステージの淀んだ太陽光を照り返す程の滑らかで純粋な緑色の装甲が身体の至る所を覆い、角や肩や肘の装飾が植物らしさを醸し出している。
見て暮れだけでもすぐに解る。———<エメラルド・ウッズ>だ。
「……二射目が来るぞ!ボサッとしてないで跳べ!」
「……………ッ!!」
エクシアとは反対の方向に跳躍する。間一髪、イージーエイトが放った砲撃が肩をかすめ、俺の体力ゲージが1ドット減る。
すかさずエクシアが二人に向かって疾駆し、俺も遅れを取るまいと後を追う。
エクシアがイージーエイトに<GNソード>を展開して切り掛かる。<エメラルド・ウッズ>がエクシアに拳を叩き込もうとした所を、俺が<アームド・アームズVN>で遮り、右拳で顔面パンチをお見舞いする。
「……って、痛ってー!」
堅い!堅い故に痛すぎる!流石純粋な緑系統!堅さがハンパじゃない!!
鐘を打ったがごとく、右拳から全身へと振動と痺れが伝わってくる。そして、殴られた本人は……、
「踏み込みが甘いっ!!」
「ぐはっ!」
ぐへぇ〜、チョー痛ぇ〜!こいつ、殴り返してきやがった〜。
うわっ、体力ゲージ一割も削られてる………。堅さ故の攻撃力か……。
「この堅さは無視できない堅さだ!」
「……だから、……何だって言うんだ!」
確かに、この防御力とそれ故の攻撃力は無視できない………!
だが、これだけ堅ければ柔らかい所があるはずだ。同レベル同ポテンシャルの域は何者にも破れない。
これだけ反則的な堅さを持っているならば、極端に柔らかい所もある。絶対に。
「…食らえよッ!」
エメラルドの腹に蹴りを入れ、食らった本人は跳ねるように吹き飛ぶ。さっきと明らかに感触が違う。圧倒的に柔らかい。
エメラルドの装甲の中でも、一際明るい配色で厚い装甲は腕、足、頭、肩と胸だ。
他の腹や太もも、各間接はエメラルド、と言うより薄暗い緑色になっている。ここが穴場だ。
今蹴った腹と同じく、二の腕。あるいは首、あるいは太ももを狙って行けば自ずと勝機は見えてくるに違いない。
「こっちは大丈夫だ!お前は目先の敵に集中しろ!」
エクシアからのありがたい一言。………これで存分に闘える。
ちなみにエクシアは、<ビーム・サーベル>を引き抜いたイージーエイトと格闘中。思っていたより手こずっているみたいだ。
「……ハッハー!これでいたぶってやれるぜ〜。覚悟しろよ兄ちゃん!!」
エメラルドが起き上がり、さながらボクサーのごとく、ファイティングポーズをとる。
先手必勝。<アームド・アームズVN>で勢い良く殴り掛かる。狙うは一番避けにくい腹部!
「うわっ………!」
拳は空を切った。身をひねって躱され、足を掛けられる。見事にバランスを崩した俺は地面に倒れ込む。
「……って、あぶなっ!!」
目の前には、腐植林ステージ最大の特徴。毒沼が広がっていた。ドラクエなどでおなじみの、あれだ。
万が一、飛び込もうなら、レベル2の俺の体力はみるみる削れて行ってしまうだろう。
「………今からお前をここに落とす」
ひぇ〜、何だその宣言。あれか?これが俗に言う犯行予告ってやつか?おーい。おまわりさーん。助けてくださーい。
「……って、それどころじゃないな!」
「…つべこべ言わずに、早く落ちろ……!」
上半身しか起き上がらせていない俺を、エメラルドは情け容赦なくぐいぐいと毒沼に押してくる。
…ちょっ………それ以上はやばいって!誰か!誰か助けて——————!!
「た、助けてー!」
「はいよー」
エメラルドが一瞬で毒沼に蹴り飛ばされる。ついでに、ぼろぼろになったイージーエイトも毒沼に投げ飛ばされる。
「見た感じ、大丈夫そうだな」
「助けるの、少し遅くない…?」
「んなこたぁ、ないだろ。こっちだって抜け出すの大変だったんだからな。何がしたいんだか、あの野郎、牽制と受けしかしなくて、上手く攻められなかったんだよ」
「…まあ、二人とも沼に浸かっちまえばこっちのもんだな」
ああ、多分俺今、すげえにやけてるんだろうな……。すげえ悪いこと思いついた。
言わずともエクシアも気づいているみたいで、俺と肩を並べて二人を待ち構えている。
———案の定、二人はあわてて岸に上がろうとこちらに走って来た。……フフン!その考え、チョコレートよりも甘いッ!!
「ゴルァ!!んだぁ、誰が上がって良いっつったコルルァ!!」
「すったらぁ、一〇〇〇数えるまで頭まで浸かれやボケッ!!」
二人そろってエメラルドとイージーエイトを毒沼に向かってキックオフ!!
凄い悪いことしてるな俺ら!!でも、凄い充実感!!溜まらねぇぜこりゃぁ!!!
「…ギヒャヒャヒャ!!ほらほら、早く上がらないと死んじまうぜぇ!!」
「…ちょっ、マジ、……このままじゃシャレにならないわ……!……エメラルド!止む終えないわ!やっちゃって!」
二人が足を止め、何やらこそこそやっている。ついに諦めたか。なんだ、面白くない。
エメラルドがしゃがみ込み、技名を発する。
「<エメラルド・ウッド>!!」
何が来るかと、身構える。
次の瞬間、俺は、度肝を抜かれた……。
「はあ!?なんじゃそりゃ!?」
エメラルドの足下から、エメラルドで出来た巨木が生える。極太の幹。無数に別れる枝。上空で掌を広げる葉。その全てがエメラルドで出来ている。トトロの住まう御神木みたいだなこれ。
緑系アバターは、近接系の青アバターと間接系の黄色アバターの間の子だ。必殺技には見かけだけじゃ必要性が解らない物も多く、この巨木も想像の範疇外だった。
仕様なのだろうか。雪とも、胞子とも捉えることが出来るエメラルドの粉が木の下に降り始める。
絶え間なく伸びる幹に掴まったイージーエイトとエメラルドが、毒沼から脱出する。
枝を伝ったエメラルドが、こちらから少し離れた所に着地する。
「……勝負はここからだ」
「けっ、何言ってやがる。てめえ一人で俺ら二人に勝てるわけないだろ」
確かにそうだ。イージーエイトは恐らくあのまま木の上から砲撃をしてくるだろう。
そしたら、地上で俺達二人の相手をするのはエメラルドただ一人。どう考えたってレベル5の彼では俺らは倒せまい。
「…俺は一人じゃないさ」
「はあ?何を言ってやがる。どこを見たって、お前一人しかいないじゃないか」
ガシッ!無警戒の足首を何者かに掴まれた。……何が起きた……!?
足下に視線を走らせる。
———地面から、腕が伸びていた。
「な、なんだよこれ……!?」
「この巨木がただの木だとでも思ったか?」
畜生!なんだこれ!?いくら足掻いても離れやしない!
「………<エメラルド・ウッド>の真の能力。それは、俺の複製(クローン)だ」
「クローン……?…まさか…!」
地面から生えたエメラルドの腕がさらに伸び、肩が現れる。やがて<エメラルド・ウッズ>そっくりの頭部、もう片方の腕、上半身が全て複製され、穴から這い上がってくるように俺を引っ張って、全身を積もったエメラルドの地面から引っ張りだす。そして、俺に対するホールドも強くなる。
「これは、積もったエメラルドの粒子が一定量を超した時に生成できる、俺の忠実な下部だ」
そう言い、エメラルドは自分の隣に更にクローンを作り出す。
「さてさて。数だけ見ればこちらの形勢逆転。……一体どうする?ヤクザの御二方」
イージーエイトの砲撃により、エメラルド闘君ごと俺の右肩が吹き飛ぶ。……クソッ………!エメラルドばかりに気を取られて、見落としていた!
鈍い痛みを気合いで遮り、弱くなった闘君の拘束から逃れ、振り返り様に<ビーム・マグナム>をお見舞いする。
闘君は、思ったよりあっけなく原型を崩し、もとの粒子となって消えた。
「はっ、所詮闘君は闘君。一撃くれてやればこんなもんよ!」
「それはどうかな?これだけ積もったエメラルドから、どれだけ俺のクローンが作れると思っているんだ?」
更に一体追加。これじゃらちがあかない!
「……問題ない。要は、お前を叩き切れば良いだけの話だ」
エクシアがエメラルドに切り掛かる。それをエメラルドは闘君一体を盾にすることでやり過ごそうとする。
止むなく、闘君を叩き切る。…………しかし、その先にエメラルドの姿は無かった。
ならばどこに?……俺の目の前にいる。
「……………ッ!」
「ぶべらっ!!」
手痛い右ストレートをお見舞いされる。さらにそれと同時に、イージーエイトの砲撃がエクシアを捉える。
間一髪。身を横にずらしたエクシアの胸を、直径二〇ミリの実弾がかすめた。
なるほど、ようやくあいつらの手のうちが見えて来た。
闘君とエメラルド本体で俺達の足を止め、イージーエイトが主砲で射ち抜く。至ってシンプルな戦法だ。作戦名を付けるとすれば、『結局、空気になったゼルダとサムスが最後に勝つ作戦』だ。うむ、我ながらクソみたいなネーミングセンスだ。
「クソ………ッ!まとわりつくな気持ち悪い!!」
「……身動きが取れない……!」
「……何も出来ないまま死に行く気分はどうだ、おい?……さっきはずいぶんと好き勝手やってくれたからな。今度はこっちの番と行こうじゃないか」
再複製された闘君がエクシアの足を捉える。もう一体の闘君が更に胴体を捉え、完全に身動きが取れなくなる。
もがく彼をあざ笑うかのように、ゆっくりとエメラルドが拳を振り上げる。
「エクシア!今行く———」
エメラルドに殴り掛かろうとした瞬間、イージーエイトが俺の足下を射ち抜く。
「そっちには行かせないわ!」
更にもう一発、俺の胸に鉛玉がぶち込まれる。
……やべぇ。そろそろダメージが洒落にならなくなって来た……。
「へっへっへ……。このまま嬲り殺しにしてやるぜ……!」
「……ぐふっ……!……ごふっ……!」
エクシアはサンドバックのごとく殴り続けられている。……畜生!このままじゃ、消耗し切ってやられちまう!…あいつ、古参のハイリンカーじゃないのかよ!?
「…たく……嫌なんだよな。………こういう本気っぽいこと…」
「世迷い言を!お前のライフも既に残ってはいないだろ!…次の一撃でお前のライフポイントはゼロ!!ひょーひょっひょっひょ!!やったぁ!俺の勝ちだぁ!!」
「………何勘違いしてるんだ。…俺のバトルフェイズは終わっちゃいないぜ!!」
あれぇ。これ、こんな小説だったけ?
「何を言っているんだ!お前はもう身動きがとれないじゃないか!」
「………速攻アビリティ発動!!<アヴァランチエクシアダッシュ>!!」
やめろー!それ以上やると他のアニメになっちゃうからー!!
手札捨てるのか!?手札ってなんだ!?どこからドローして、どこに捨てるんだ!?この状況を作り出す為の素材がほとんどと言って良い程そろっていない!!
て〜ててて〜ててて〜♪
ほらみろ!変なことするからBGMにクリ◯ィウスの牙流れ始めちゃったじゃないか!!どうすんだこれ!!
「まず一枚目ドロー!!…モンスターカード、<バンシィ・ノルン>を墓地に送り、<アヴァランチ・エクシア>、追加攻撃ッ!!」
手札って俺かよー!!
つーか、お前、その状態でどうやって攻撃すんだよ!
「はい、やってみたかっただけだから、冗談と余興はこれくらいにして。<アヴァランチエクシアダッシュ>、ブースト全開!」
即座の轟音。
闘君二体が捉えていたエクシアは、凄まじい早さで突進。エメラルドの頭を捉え、更に加速をし、巨木に衝突した。
エクシアの肩、足、背中のブースターからは、エメラルドとは違う輝きを帯びた緑色のGN粒子が吹き出している。
叩き付けられたエメラルドは、巨木にどんどんとめり込む。その度に、くぼみから枝のように伸びた罅が広がって行く。
「………どうやら、俺の方が一枚上手のようだったな。このまま圧死させてやんよ」
「……ぐっ……畜生………!」
「エっちゃん!?させないわよ!!」
イージーエイトがエクシアに主砲を射つ。
しかし、その弾はエクシアには届かなかった。
「そんな柔な弾じゃ、効かねえよ!!」
エクシアを捉えた銃弾は、ブースターから吹き出す凄まじい量のGN粒子に遮られた。
………勝機!!
「いつまでもいもってねえで、降りてこいよ!<アームド・アームズBS>!」
右腕から伸びたサイコフレームの板二枚に圧縮されたビームを、イージーエイトではなく、彼女の立っている枝に放つ。
程なく、ビームは枝を貫通し、イージーエイトはようやく地面に墜落した。
それと、ほぼ同時に、窪んだ巨木の幹の中心で爆発が起こる。
過度な圧迫に寄って、幹が完全に粉砕されたらしく、それより上の木が力なく倒れてゆく。
「ちっ、手こずらせやがって。…あとは、雌豚ただ一人……」
体力の尽きたエメラルドは、エクシアの掌の中でポリゴンの粒子となって消える。
そう、残るは、この忌々しい女ただ一人…………。
「「覚悟しろよ、このクソアマがぁ!」」
妙な巡り合わせから、今日、ここに、加速世界最悪のドSコンビが産まれた。
おまけ 『帰りの電車にて』
「はぁ〜、疲れた……」
「何言ってんだ。たったの一〇戦だろ」
「おい君、ちょいと多過ぎやしないかそれ?」
「良いじゃねぇか別に。おかげでレベルが一つ上がったんだ。感謝しろよ」
「…まあ、そりゃそうだけど……」
「……それに」
「それに、なんだよ?」
「俺のことも、だいぶ解ってもらえたみたいだしな」
「……………え?」
「お前、俺のこと避けてるだろ?上手くはぐらかしてるつもりなんだろうけど、丸わかりだよ」
「…………………………」
「まあ、解らなくもねぇよ。一緒に転校して来たのが、馬鹿みたいに明るくて、知らないヤツでもすぐに解け合う様なヤツだからな。……俺が暗くて近寄りがたく感じるのも仕方ねぇ」
「…………………………」
「どうせお前、俺のこと、なんか近寄りがたいインテリ系アニオタロリコン野郎とでも勘違いしてるんだろ?」
「…………まあ……そうだけど…」
「俺は、お前が思っている程気難しくも、インテリでもねぇよ」
「ロリコンとアニオタなのに関しては否定しないんだな?」
「そりゃそうだ。俺の唯一のポリシーにして、生き甲斐だからな」
「なんじゃそりゃ……」
「まあ、それだけ覚えておいてくれれば良いってことだ。…そうすれば、自ずと仲は短くなるもんさ。今日はありがとよ」
「……あっ、こちらこそ」
「また行こうぜ。今回は、なかなか面白いデュエルが出来たからな」
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