Monster Hunter ―残影の竜騎士―   作:jonah

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「竜車の上にて、空想にふける」

位置的には14話と15話の間です。ユクモへの帰り道にてカエンヌが語ってるだけという。
捏造と思われる設定有り。どなたか専属ハンターの定義ってご存知ですか。なんかどのサイトでも「専属ハンター=プレイヤー」としかなくて…トホホ。
※ちゅうい! 特に面白い(・・・・・)要素は(・・・)ありません(・・・・・)

つまり時間の無駄。じゃあ書くなよ。最新話がうまくかけねえんだこのやろうっ。ちくしょうもうだめだ!(ひとりボケ(?)ツッコミ)
…………あー、でも、若干伏線っぽくないわけではない…かも。



【番外編】On the Aptonoth cart, he daydreams.

 

ガラゴロガラゴロ...

 

 心地よい振動が響く。

 怪我を負った身で単身リオレイア討伐に乗りでたオレを間一髪、なんとか救ってくれたナギは、今竜車の上でうつらうつらと舟を漕いでいた。ちょっと前まで団扇でパタパタ扇いでたんだが、疲れか、飽きか。オレにはよくわからんが、とりあえず寝れる程度には涼めたらしい。羨ましいこって。猫は桶の水風呂(多分既にぬるま湯風呂)に入ったままおねんねだ。

 孤島を出たのは2日前。そこに一番近い海に突き出た形になる小さな港町から遠ざかるにつれみるみる日差しは強くなりやがって、じっとしているだけで汗が滝みてェに流れ落ちる暑さだ。ああ、暑い。ついさっき出た砂原に一番近い位置にある村では、荷車を引くガーグァを暑さに強いアプトノスへと変えた。

 いつもの着流しを着ているナギですらついさっきまで「暑い暑い」と零していたんだから、レウスシリーズをがっちり着込んでたオレはたまったモンじゃねぇ。

 流石にヘルムは外して、蒸れるグリーヴとアームも荒っぽく脱ぎ捨てた。メイルも取り外そうかどうかは現在考え中だ。

 躊躇しているのはもしもの時――つまりいきなりモンスターが襲ってきた時にインナーしか着てなくって、出撃できませんでしたではお話にならねえからだ。が、逆に脱ごうかとも迷っているのは、果たして現在負傷中のオレが出撃しても役にたちそうにないからでもある。特に、目の前でリオレイアの片翼を斬り落としてくれたこいつが居る以上、オレの出番は無ぇだろうな。

 あれから特に雑談という雑談をしたわけでもなく、お互い必要最低限の会話しかしていなかったから、はっきり言って気まずい。

 もともとオレはおしゃべりな部類だから、沈黙は苦手だ。なんとなく落ち着かない。

 孤島のベースキャンプでの会話で、このナギ・カームゲイルという男が悪いやつではない、むしろ好感の持てる青年であるということはわかった。もともと好いた女の妹と、かわいい後輩の命を救ってくれたということは知ってたから、悪い印象はなかった。単にこの前は気が立っていたというだけで。

 御者台の後ろにくくりつけられている、かすかにレモンの香る水樽の蓋を開けて、からになった水筒を中に浸しながらチラリとナギを見る。砂原越えの為張られた日よけ布の下、片膝を立てて太刀を抱え込みながらうつらうつらするやつは細身で、とてもじゃないがあの頑強で知られるリオレイアの翼を落としたようには見えねえ。

 オレの出身は“街”と呼ばれるロックラックから西に数キロの、比較的大きな村だ。

 ハンターになった理由はこれといってない。村もユクモの倍以上はある規模だったし、街が近いということで商人達もよくそこを通り、そこそこ儲かっていた。専属ハンターも常に20人は常駐していたから、必要に差し迫ってというわけでもない。単に、「かっこいいから」が一番妥当な線だな。大陸全土、餓鬼共の将来の夢ナンバーワンに輝くのはいつだってハンターだ。大剣を得物に選んだのも、「強そうだから」。何か文句あんのか。

 ユクモ村では専属ハンターは書類上オレだけだ。オディルやエリザ、リーゼロッテも言ってみりゃあ専属のようなモンだが、あいつらはもとからユクモ村の生まれだから、厳密には専属じゃねえ。故郷を離れて、街――この大陸だと基本がロックラック――に出、そこのハンターズギルド本部である程度の実力が認められてから、大陸各地に存在する大小様々な村だの町だのに派遣されたハンター。これを正確には“専属ハンター”と呼ぶ。

 つまり、“専属”の枕詞がつくハンターは、本部で認められる程度の実力はあるっつーことだな。

 オレもそれは自負していたし、もともとユクモ村ではオレを除けば他のハンターは後衛職2人。リーゼロッテが唯一剣士職だったが、まだまだ駆け出しの新米ハンターだから、何かあった時に真っ先に矢面に立つのはオレ以外いない。

 それから、オディルに惚れた。オレが来るまではガンナーひとりで村を守っていた彼女は気高く、美しかった。フィルター? んなもん知らねえな。

 

『やはり剣士が前にいると、戦いやすくなるものだな。ありがとう、ベルフォンツィ。この村に来てくれて』

 

 いやぁ、あの時はにかんだオディルは可愛かった。思わず写真に残しておきたくなるくらいにはもう可愛くて可愛くて可愛くて可愛くてry。

 おっといけねえ、話を戻さねぇと。

 兎に角そんなわけで、オレはハタチの時に村を出てロックラックでハンターデビュー。目指した理由は締まりのねぇもんだったが、どうやらハンターとやらはオレにとっての天職だったらしい。1年でHR2になって、こりゃ将来有望だってんでもう3年は上位のベテランハンターに弟子にしてもらった。24でHR3をとって、ちょうどその頃そのベテランハンターが殉職。そのままもういいだろうとのことで派遣された先がユクモ村だった、と。

 気のいい連中の集まるこの村が、何よりオディルがいるこの村が、オレはすぐに好きになった。

 だから、力を求めた。貪欲に。オレがこの村を守ってみせる、と。

 クルペッコからの一時撤退の時にオディルをかばって腕を負傷したのは後悔していない。オレにとっての優先順位は、申し訳ねえが“オディル>村”、だから。ただ、オディルの中での最優先事項が家族と並んで村だから、大体同列だろうな。オディルの守りてえものはオレの守りてえものだ。

 この村に来てからも、鍛錬は欠かさなかった。さっきもいったがオレが倒れると剣士職が消えるも同然だからだ。その甲斐あってかどうかは知らんが、HRはなかなか上がらないものの、実力で言えばそう大して遜色ないだろうと思えるくらいには強くなった。

 

 つもりだった。

 

(……本当に“強い奴”ってぇのは…こいつみたい奴のことを言うんだろうな……)

 

 3年間、ハンターとして必要なものを叩き込んでくれた師匠も、ナギほど強くはなかった。断言できる。

 新大陸において狩人の本場とも言われるロックラックに4年――ほぼ半分以上が修行の旅みてぇなモンだったとも言えるが――住み着いていて、未だかつてリオレイアの翼を斬り落とした者など話にも聞いたこともない。レイアに限らず、竜といえば切断可能部位は尻尾と相場が決まっている。それだって尻尾の同じところに集中攻撃しなければいけないから、尻尾を切り取れるハンターといえば大抵は上位、あるいは下位でも最低HR3の4人パーティで、皆が双剣使いだとか、そういった場合のみに限られると聞いた。

 

(そもそもだ)

 

 いくらオレが3日かけてちまちまとレイアの体力を削っていたとは言え、飛竜相手に完勝。討伐時間十数分、斬り落としたのは片翼と片足、そして首。本人にまともな怪我は一切なし。

 

(…………ありえねえ)

 

 思わず「こいつは人間か」と引くのだって仕方ねえだろ? 普通陸の女王相手なら一週間の狩猟は当たり前だ。図体が違えば生命力だって違うんだから、当然のこと。

 だが、なんだか次の瞬間には「ああ、そうか」と理解したんだ。

 

(こいつは、Gになる男なんだな)

 

 一度だけ目にしたことがある、G級ハンターの狩り。あの時の恐怖と、こいつが戦った時に感じた恐怖は似ていた。

 そのG級ハンターは、まだ13歳の少年だった。

 

 天才。

 

 この言葉以外では表せないのに、この言葉ですらすべてを言い表せない。

 それは人間の戦いですらないとさえおもった。人の皮を被った竜なんじゃないかと。

 しかしそいつも戦いが終わればただの13のガキで。大人ぶってるが野菜が嫌いだとか、酒を舐めてみたら苦くてまずいだとか。街をあげての宴ではガキ向けの紙芝居だの人形劇だのに目を輝かせながら見入っていた。のに。

 

 最期はあっけなく死んだ。子供に多い感染症だった。

 

 誰よりも圧倒的な力で竜を捩じ伏せた少年は齢13にして最強の狩人となり、狩人として竜に喰い殺されることもなくベッドの上で死んだ。

 

 だから、恐怖心が消えた。

 

 どんな離れ業をやってのけようとも、所詮人は人。

 病にかかれば死ぬし、酒を飲めば酔う。

 あの少年を知らなければ、オレは今でもナギのことを恐怖の眼差しで見ていたのかもしれない。こいつは、随分傷ついたような顔をしていたから、過去にもそういうことがあったのかも。

 22だと答えたときは随分老けた22だと思ったが、こうして寝顔をみてみると、なるほどまだ20を少しすぎただけの幼さが垣間見えた。少年の面影が、ないわけではない。どうも雰囲気というか何かが達観していて、30のオレよりも年上な気がしないでもないのだが。

 

「……そうか……オレも、もう三十路か…」

 

もういい年したオッサンだな。

 

 ぼそっと呟くと、ばちりとナギの目が開く。

 オレはにやりと口角を上げた。

 

「よう、少年。お目覚めか?」

 

 

 




×NG

>(こいつは、G《黒光りして進撃する人類の天敵》になる男なんだな)
ぎゃあああああああ今すぐ駆逐っ!!

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