真剣でオラに恋すんの?GT   作:縦横夢人

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くっそう、黒バス書こうとしてたらこっち書いてた。
黒バス書くって言ってたのにすみませんでした。
ではどうぞ


第6話

 

 

 

「すー……くぅ……すー……ぅんん、う?」

 

 朝。太陽が頭を出し始め、暖かな光が窓からを通り抜け部屋の主を照らす。一人用にしては大きいベッドに眠る少女≪九鬼紋白≫は、太陽からの起床の挨拶に規則正しい寝息をやめて薄目を開く。しかし誘惑を併せ持つその光と春始めの暖かさが+どころか相乗効果を生み出し、また夢の世界へと誘われる。

 顔にかかる日を避け、いざ行かんとコロリ寝返りを打つ。目を瞑ったままドアへ向く形になったところで、ふと違和感を感じた。うるさいくらいにいびきが聞こえる。それに顔に生暖かい風が当たって思わずピクピクと反応してしまい、気になって寝られない。顔の前に何かあり自分の睡眠の邪魔をしている。我が眠りを妨げるものは見敵必殺と無意識ながらも頭に浮かび、仕方なく確認しようと目を開けた。

 

「んがぁ~~すぴ~~」

 

「……」

 

「くかぁ~~んぐぉ~~」

 

「………?」

 

「むにゃむにゃ、オラまだまだいけっぞ~~。悟飯もどうだ~~?」

 

「…………ふぇっ!!?」

 

 目の前に映るのは少年≪孫悟空≫の特大の顔。それを認識するのに時間がかかったのは眠気の為か、はたまた思考外の事態の為か。夢へ誘う眠気が一気に覚める。ついで頭に血が上るほど顔を真っ赤になり、思わずババッと後ろに下がった。

 しかしまたまた頭が回っていなかったのか、ベッドの大きさに気付かず手を突いたのは宙の上。故にそのままゴチンと頭から床へ落ちてしまった。幸いそこまでの高さではなかったので重症とまではいかなかったが、かわいいたんこぶが紋白の頭にできていた。

 

「~~ご……ごっ……、ごくぅぅぅうううーーーー!!!!」

 

 そんなことに気付かないほど顔を真っ赤にした紋白は天を仰ぎ、また今日も日課のように叫んだ。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 さて、あれから30分後。

 九鬼邸の東にある九鬼家専用の訓練場。西にある従者専用の訓練場とは違い本家の人間と選ばれた従者しか使用できない場所で紋白と悟空が向かい合っていた。今この場には二人と壁際にいる世話役のクラウディオ一人だけしかいない。

 紋白が駆け出す。紅白の袴を苦にした様子もなく動けるのはさすが着こなしているというべきか。目の前の悟空に向かって軽く握った掌底を顎に向かって打ち出す。

 首を右に捻ってかわす悟空の奥、本命の胴着の襟を狙う。同時にかわした反動で前に出た悟空も右手首を掴み大外狩りを決めようと左手を出す。が、悟空はかわした勢いを殺さずに勢いそのまま右手で弾く。弾かれるのもわかっていたので繋げるようにさらなる一手を放ったが、それさえも流された。

 

「フッ、ハッ、ハァ!!」

 

「よっ、はっ、ほっと」

 

 また三、四、五と放つが、それも軽い調子でかわされ、弾かれ、受け止められる。当たらない攻撃に業を煮やし、続々と攻撃の手を増やす。

 と同時に――

 

「ご、くうッ! お前、はッどうして、こう、いつも、いッ、つもッ!!」

 

「よっ、ははは、いや~何か、さぁ? おめぇんとこの、部屋が、便所に近いせいか、つい寝ぼけて行、っちまうみてぇ、だ。たはは、わりぃわりぃ。そんな怒んなって。」

 

「それがッ、毎日はッ、おかしい、って……そこッッ!!」

 

「あぶねッ!?……なんちって♪」

 

「ムキャーーーー!!!!(゜皿゜井)」

 

 紙一重で当たりそうな攻撃も、余裕でかわされおちょくられる。思わず怒りが振り切りキャラ崩壊してつっかかるようにさらに攻撃の手を加速させる。

 その様子をクラウディオがまるで孫を見るように微笑まし気に見ていた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「ふぃ~今日もよく頑張ったな」

 

 さらにさらに一時間後。

 芝生の上で大の字に寝ている紋白と、汗をかいているようには見えないのに額を拭う悟空の図が出来上がっていた。

 

「いやーやっぱ紋白強くなってんな。ちょいとヒヤッとしたぞ」

 

「……うそつきめ」

 

 ――紋白の攻撃を悟空が受け弾く時、痛みが無かった。攻撃側は決してダメージを負わない……ということはない。相手が受け止める時、腕を伸ばしすぎて殴った衝撃がそのまま自分に帰ってくることもある。棒の先を真っ直ぐ壁にぶつければ持ち手が痛くなる、と言う原理だ。他にも流し、弾かれる時も下手な方向に流されれば手首を捻りケガをする場合もある。だというのに自分の手に痛みが無い。つまり悟空が綺麗に上手く流しているのだ。紋白自身頭に血が上り無理して放ったものもある。それすらも自然な方向に流され、五体満足で倒れている。

 強すぎればケガをさせ、弱ければガードを抜けられ攻撃が通る。そんな絶妙な力で流す悟空。悪く言えばそれほどの力の差がある、しかしよく言えばやさしく大事に扱われている。そう考え思わず顔を赤くしながらも納得する。

 

(ヒュームが薦めるわけだ)

 

 悟空が家に住み始めた翌日。今日のように悟空がふとんに潜り込んできて絶叫したものの、日課となっている朝の訓練のためにこの場所で相手役のヒュームとクラウディオを待っていると、その二人が悟空を連れてやってきた。最初は見学かと思いきや、なんと今日から護衛役として紹介したのだ。そのため訓練の相手も悟空に替わるという。悟空は出会った始めから少しハイカラな胴着を着ていたので武術経験者だろうと思って頷いたが、今までの攻防も含め改めて納得させられた。これほどの技術を持つ者だ。ヒュームやクラウディオが将来に期待できると見越して私と共に競わせるのだろう。

 しかしその意図を理解しながらも、暗い気持ちが湧き上がるのを抑えられなかった。気づけば水を飲む悟空に口を開いていた。

 

「……なぁ悟空」

 

「んぐっんぐっ、ぷはぁっ! ん、どうした?」

 

「私は……強くなれるか?」

 

 やってみてわかる。自分と悟空の力の差がどれほど離れているのかも。故にこのまま一緒にやっていても、悟空の強さを見せ付けられるだけではないかという考えが浮かぶのだ。

 母に宣言しておきながらも、自分の苦手、又は弱い部分だとどうしても卑屈になってしまう。だから零してしまった。

 

「まぁ確かに動きがまだまだなとこもあっけどな」

 

「うぅ……」

 

「ははっ、そんな落ち込むなって。けどな――」

 

“おめぇは強ぇよ”

 

 思わずバッと振り向きその瞳をみつめる。そこにはパーティー等でよく見る濁った嘘つきの色は無く、純粋で綺麗な黒があった。

 

「で、でも……」

 

「それれともおめぇ、オラに苦手なもんねぇと思ってんのか? 言ったろ? オラの頭よくねぇってさ。紋白と比べたら全然かなわねぇよ」

 

 ……まぁ確かに。あんなにドリルの前で頭痛そうにしていたらわかるけど。

 

「力が強いってだけで全部が強いわけじゃねぇさ。それにさ、おめぇには一歩踏み出す勇気があんだ。誰でも逃げることはできる。けどあん時紋は一歩踏み出したじゃねぇか。それさえありゃでぇじょうぶさ」

 

「……ふふ、そうだな」

 

 一歩。横にでも後ろにでもなく、前に進みだす一歩。母の前で短くても踏み出した一歩は、確かに私の心を変えたのだ。

 あぁ、やはり悟空の言葉は不思議と染み渡る。弱い自分の心に光を照らしてくれる。

 

「……次は絶対当ててみせるからな」

 

「あぁ、いつでも相手してやるよ!」

 

 決意を新たにした私は悟空と共に笑い合うのだった。

 

 

 

「さて、ではお二人とも。食事の後に数学の勉強がありますのでお早めに汗をお流しください」

 

 そこにタオルを差し出しながらクラウディオがこれからの予定を述べる。

 

「うむ、そうだな。では行くか悟空よ!」

 

 ………………

 …………

 ……

 

 あれ?

 そうして振り返った先には、

 

「……」

 

「失礼ながら悟空様はいつの間にか消えておりました。その、いつものように……」

 

 誰もいなかった。

 静かな場に風が吹き抜ける音が聞こえた気がした。

 

(あぁ、そうだな悟空。たまには逃げることもありだろうな)

 

 私は笑顔で持っていたドリンクボトルを握りつぶしていた。

 

 

 

「あちゃ~やべぇな。ま~たやっちまった……」

 

 さて、あの場から消えた悟空は多馬川沿いを歩いていた。頭で手を組みながら将来に“変態大橋”と呼ばれるだろう橋を取りすぎ、さきほどのことを後悔していた

 

「いやー勉強って聞くとなんかなぁ~。あっこの勉強は難しくて頭痛くなっちまう。いや、それよりも……」

 

(紋のやつが恐ぇかも……あいつもチチに似て怒らすと恐ぇかんなぁ)

 

 思わずブルッと震え冷や汗を流す悟空を追撃するように、腹の虫が盛大に鳴り響いた。

 

「それにメシ前に逃げちまったのもマズかったなぁ。オラ、はらぁへって死にそうだ」

 

 腹をさすりながらとぼとぼ歩く悟空。今帰っても紋白に怒られて飯抜きにされる可能性もある。

 どうしようかと悩む悟空の前に――

 

「あのっ!!」

 

 やせい の 少女 があらわれた!

 

「ん? おめぇどうした?」

 

「あ、う、えっと……」

 

 女の子は悟空が答えた途端にしどろもどろになり、ササッと後ろを向く。悟空が「?」と首を捻っていると、ごそごそと動いて服の中から何かを取り出し、悟空の目の前に差し出した。

 

 

 

「ま、マシュマロたべる?」

 

 

 




ちなみに悟空はバカじゃない……はず。
だって車の免許持ってるし。ただ勉強が苦手なだけだと思います。まぁ今回は仕様ですね。
S組入りもまぁ護衛という名目でなんとか……。
そして次こそ黒バス!!……書けたらいなぁ
それではまた次回
\(O∀O)/ウェーイ

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