真剣でオラに恋すんの?GT   作:縦横夢人

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遅れましただウラ!
……すいません、トクノスケが乗り映ってました
しかし一ヶ月で一話、それに話が進んでないな……うん何か絶望orz
まぁこれから一つ二つの大きな事件以外は原作キャラ(ロリ多数)と知り合っていく話なんで、速め速めにちょびちょびと書いていきたいと思います。
あとがきで大事な話(?)があるのでぜひ見て欲しいです。
ではどうぞウラ! ……ッハ!?




第5話・裏

 

 

「さて、報告を聞こうか……」

 

 そこは極寒を思わせるほど冷たく暗い一室。唯一上から照らす淡いスポットライトが男の顔に影を落としている。顔の前で手を組む部屋の主と思しき男はその対面の闇に声を投げ掛ける。

 

「ハっ、しかし……」

 

 闇から出てきたのは眼鏡をかけた一人の老執事。知的な印象を持ちながら、しかし老人とは思えないピシっとした姿勢と静かながらも只者ならない雰囲気を携えて、執事は主に言葉を返す。場は緊迫した空気で進む――

 

「……部屋を明るくしてはどうですか、帝様?」

 

「あ、やっぱそう思う?」

 

 ――わけもなく、その空気は部屋の灯りと共に晴れていく。

 

「はぁ……わざわざそんなものまで用意したのですか?」

 

「おう、一度やってみたかったからな! あぁすまん、片付けといてくれ」

 

 側にいたメイドに指示し、後ろにあったスポットライトを片してもらう。しかしこんなことをするためだけに平然と用意できるのは、さすが九鬼と言うべきか。いや、つまらないことに使えるのはさすが九鬼“帝”と言うべきだろう。

 ある意味でこの方らしいと心の中でため息をつくクラウディオをよそに帝は笑いながら本題に入る。

 

「で、どうだった?」

 

「ハッ、このようになっております」

 

 クラウディオは書類の束を渡す。一番上にあった紙には「孫悟空調査資料」とういう大きな文字が書いてあった。 

 

「ふんふん……なるほどな」

 

 それをパラパラと読んでるのかわからない速度で眺める帝。ふざけているように見えるがその内容を一瞬で理解するのはさすが九鬼を束ねる者。納得したように頷いてクラウディオに目で促す。

 

存在しない(・・・・・)……ね」

 

「はい、この川神にも、日本にも、世界にも孫悟空という存在しません。同じ名前の者はおりましたが関係を見受けられず、()という存在は今ここにいるということ以外何もわかりませんでした」

 

 クラウディオが渡した書類は、悟空のことを調べてまとめたものだった。だが結果は著しくないようで、クラウディオが珍しく苦い顔をしていた。

 それは仕方がない。なにしろあの(・・)九鬼が誇る情報網を持ってしてもわからなかったことだ。主人の命を受けそれを成し遂げる。それが“執事/メイド”としての矜持であり誇りである。それはパーフェクト執事と呼ばれる彼にとって命の次に大事なものである。だからこそ主の命を果たせなかったことを悔やんでいた。

 

「第二位……マープルのやつは何て言ってた? あの(・・)計画の人間じゃないのか?」

 

「いえ、第二位は「そんな御伽話の人間を作れるわけあるかい……」と呆れておりました。ただ彼女でさえもここに存在している孫悟空という人間は知らないそうです」

 

 あの『この世の歴史全てを暗記するほどの人間離れした記憶力』の持ち主で“星の図書館”、“魔女”の異名も持つ九鬼家序列第二位≪マープル≫でさえ知らない彼。まさか絵本から出てきた、というバカな話もあるまい。

 

「ふむ。いろいろと聞きたいこと、つか調べたいことが増えたけど、まぁあまり深く踏み込むこともないか。じゃあもう一つ」

 

 帝は先程までのお気楽な雰囲気を一変するように瞳を細め、最初に演じた芝居以上の冷たさでクラウディオを見る。いや睨むと言った方が正しいのかもしれない。

 その顔は九鬼総帥としての顔。真剣な瞳と宿す覇気を感じる度に心震わされる自分を抑え、姿勢を正す。そんなクラウディオを知ってか知らずか帝は告げる。

 

「あいつは使える(・・・)か?」

 

「……帝様、それは――」

 

 紋白様がかわいそうでは、と続けようとしたが変わらぬその瞳に言いよどんでしまう。孫悟空は紋白様にとって必要な存在だ。本人は気付いていないかもしれないが、あれは傍から見ていれば一目瞭然だ。その感情を直接的には言えないが、乙女(・・)の瞳だった。

 今まで勤めてきた世話役としてそれがわかるからこそ、彼を無闇にこちら側(・・・・)に巻き込むことに抵抗を感じてしまう。

 

「――ヤツは使える。オレが保障しましょう」

 

 答えに迷うクラウディオの後ろからヌッと人が現れた。気配を出さずに現れた人物は、圧倒的な威圧感を持ちながら歩いてくる。そんな矛盾を成せる程の実力を持つ彼はクラウディオと同じような、しかしクラウディオとは違い全身刃物を思わせる覇気を纏わせていた。その覇気と合間って獅子のように見える金色の髪を揺らしながら帝の前で一礼する。

 

「へぇ? お前がそこまで言うほどか、ヒューム」

 

「はい」

 

 その男は先程悟空と握手を交わしたヒューム・ヘルシングだった。

 

「それはさっきのあいさつ(・・・・)でわかったのか?」

 

「……やはりお気付きになりましたか」

 

「うん、わからんかった。」

 

 あっけらかんとこぼす帝。

 では何だと言われれば――

 

「ただの勘だ!」

 

「……フハハ。そうか、勘か。――やはりあなたは我が主に相応しい」

 

 姿勢を正し改めて深く一礼する。

 

 

 

 ヒュームが悟空を一目見た時、何者にも動じないはずの鉄の心臓がドクンと脈打ったのを覚えている。自分でもわからないその高揚は、まるで川神鉄心と闘ったときのような闘争心の高まりのような、以前第二位に感じた恋のような……。

 しかし相手はそこらにいる子供と同じくらいの気の量しか持っていない。だが佇む姿勢からは“武”の一文字を感じた。

 

(ただの赤子ではないな……)

 

 確信を込めた瞳で見つめている(本人はその気でも他人には睨んでいるように感じるが)と、その子供と目が合った。澄んだガラスのように純粋で、ヒュームをしても綺麗だと思わせるほどの瞳だった。が、ヒューム自身が持つマスタークラス並みの力故に奥にあるモノ(・・)を見てしまった。刹那、今まで感じたことのないほどの威圧感がヒュームに襲った。

 

(ぬぅおッッ!!!??)

 

震える。身体が、心が、魂が。細胞一つ一つが啼いていた。それは恐怖ゆえか、それとも――

 

(クッ、クハハ……ッッ)

 

 主と赤子が、いや“孫悟空”が話している間、心の中で久方ぶりの嗤いをもらしていた。

 

 故にあの時――悟空とヒュームがお互い握手をした時、直接肌で感じたその力に感化されてしまったのか気付けばヒュームの左手は悟空の顔に向かっていた。こいつを試したいという思いがヒュームを埋め尽くし、頭より体が先に動いていたのだ。全力とはいかないまでも、それなりの一撃。冷静な部分が紋白様のお気に入りだと訴えてきたので紋白様達にばれないよう、それでいて容赦のない手加減なしの七割本気で放った。だがヒューム・ヘルシングといえば武の世界ではあの“川神鉄心”にも並ぶ伝説の存在だ。普通の人間でも――それも世にいる一般的な武道家を含めても――ヒュームの七割どころか一、二割の力を受ければよくて重傷、悪くて命を落とすかもしれないほどだ。それを見た目子供の悟空に振るうのは傍から見れば常軌を逸しているように見えるかもしれないが、ヒュームは効かないと確信していた。それをどうやって返してくるのかを期待するほどだった。

 だがそれは期待以上の“異常”で返ってきた。顔にめり込む拳も、受け止められたであろう相手の手も、避けられた時に感じる空気を裂いた風も、何も感じなかった。

 ……いや、違う。そうではない。刹那の世界の停止の果てにやってきたのは震えだった。左手が震えていた。拳に何か当たった感触もなく、珍しく動揺を隠しきれず固まっていたが、やがて気付き理解した。

 

(クッ、フフハ……なんてやつだ)

 

 ――まさかオレと同じ力で、同じ速度で相殺させるとは。

 

 聞いたことはないだろうか? 同じ力と速さでぶつかった時、力が相殺――つまり0になる。ボールとバットが真芯でぶつかった時打ったときの感触が無くることを、時速100km/hで走行中の軽トラの上から進行方向とは逆の方向に向かって球速100km/hで投げた時に数秒(そら)に止まることを。

 そして今回のように、ヒュームの拳と同等の力で悟空が放った拳がぶつかった時に起こるのは、±0の現象“無”。故に拳同士がぶつかった衝撃を感じず、衝撃の流れだけが腕に残った。

 しかしヒュームが一番驚いているのはそこではない。ヒュームがしかけたお互いのちょうど中央でぶつかった。それはつまり“先に出したはずのヒュームの拳を即座に察知し、同等の力で対応した”ことだ。しかもそれはお互いのちょうど中央でぶつかったのだ。ヒュームの拳と同じ力で、しかしヒュームより速かった。矛盾をしているようでその実インパクトの瞬間に調整し、合わせたのだ。

 

(……ククク、いかんな)

 

 その後ヒュームは悟空から急ぎ離れるように部屋を出て近くの無人の部屋に入り、胸に宿った熱を吐き出した。

 

「フ、フックク……フハッハハハハハッハハハハハハァッッーーーーーーーーーー!!!!」

 

 止まらない、まだ止まらない。火山の如く燃える気と心を抑えるどころかコロナの如く焦熱させてワラい続けていた。

 

 

 

「孫悟空は必ず紋白様の、九鬼に光をもたらすでしょう」

 

 クラウディオは驚く。あのヒュームが直々に名前を呼ぶ。それはヒュームが認めたということだ。川神鉄心と並ぶ武の頂点に最も近いとされ、九鬼の者でも名前を呼ばれるが少ないあの(・・)ヒュームが、だ。

 帝は顔を変えずヒュームを見る。

 

「“孫悟空”……ね。それは九鬼にとってか? お前自身(・・・・)にとってか?」

 

「……フ、それはあなた自身のご想像にお任せします」

 

「くくく、そうか」

 

 帝とヒューム。お互い笑い出す。唯一クラウディオだけは緊張を保ちながら佇んでいた。

 やがて二人は同時に笑いを止める。

 

「故にしばらく孫悟空を育成すると同時に紋白様の護衛にしたいと提案します」

 

 クラウディオは今度こそ開いた口が塞がらなかった。主の命を絶対としながらそれ以外を自分絶対としているヒュームが、紋白という主から自ら離れ別の者を推しているのだから。

 これには帝も驚いたという顔をしていたが、目が笑っていたのでどこかでわかっていたのだろう。

 

「ヒューム、いくらあなたでもそこまで……」

 

「ふん、勘違いするなよクラウディオ。別に全部を認めたからと言うわけではない。むしろ逆だ」

 

「逆?」

 

 ふん、と気に入らないよう鼻をならすながらもすぐに嗤う。

 

「オレ自身が下にいるということが気に入らん。故にしばらく暇をもらいオレ自身もう一度鍛え直さねばならんのだ。全盛期に、いやそれ以上に進化しなければならん。そのためには少し時間が足りんかもしれんので打診したのだ」

 

 もちろんクラウディオ、お前にも手伝ってもらう。そう告げるヒュームの瞳を見て悟った。本気なのだと。

 

「……うん。よし、いいだろう」

 

「帝様!!」

 

「なーに紋白と悟空にはクラウディオ、お前を補助につける。ヒュームも別に毎日クラウディオを借りるってわけではないだろ? それに他のやつもいるんだ。

 ま、そんな心配もいらないだろうが」

 

 それは暗に悟空を信じているということだろうか?

 少し不安に思うクラウディオだが主の言葉とありそれ以上進言することはなかった。

 ただし、と続ける帝に目を向ける。ヒュームも下げていた顔を上げ帝を見る。

 

「気を付けろよ? あいつはいろんな意味で強いからな」

 

 そう告げた帝は思い出す。帝が孫悟空を出会った時感じたものを。

 

 

 

 どっしりした山のような身体で

 

 プニプニとやわらかそうな肌で

 

 猿のようなフリフリしてる尻尾で

 

 はちゃめちゃな性格を表したような黒い髪で

 

 太陽のような笑顔で

 

 人に安らぎを与える心の籠った声で

 

 放った――

 

 

 

「オッス、オラ悟空! 孫悟空ってんだ!」

 

 

 

 ――龍の嘶きを

 

 

 




はーいあとがきでーす。
というわけで前書きで話したので聞きたいのですが、ヒロインどうしよう?
……いえ何人かは決まっているのですが迷うキャラも多くて(汗)
ですので皆さんに聞いてみたいと思いまして、できたら感想でお願いします。
といっても多数決みたいのではなく、結局は自分の気分できまるんですけどねぇ。
一応今のところ紋様に揚羽(に、ひでお!?)、清楚ちゃんに燕にワン子、小雪にぐらいかなぁ。英雄組の義経と弁慶、それとモモーヨは迷ってる。百代はキーキャラだけど恋愛は……ねぇ?(泣)
あとは辰子ぐらいかなぁ……自分の好みだけじゃないよ?ホントダヨ?
とまぁお約束を挟んで今回はこれで終わります。
感想、評価、アドバイスをよろしくお願いします。
次は黒子かな? いくぜ太陽!!
「ウェーイ! マシュマロいる?」
「ウェーイ! お、いただきます!はぐはぐ」
作者「!?」

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