シフトが変わってしまい慣れない生活送ってました。
けど言い訳にならないですね、すみませんorz
駄菓子菓子、最後にはとっておきを――(魔法カード―ネタバレ規制発動)
では、どうぞ
「な、なるほど。つまりそ……じゃない、ごっ悟空はこことは違う場所というか……世界?から来た、というのか?」
「おう! オラいろんな場所旅したけどこんなと知らねぇし、見たことねぇのいっぺぇあるしな!」
あれから気を取り戻すまでいくばくかの時が過ぎ、何とか落ち着いた私は改めて彼≪悟空≫から話を聞いていた。その内容は驚くべきのものだった。
「しかしまさか、い、異世界とは……」
考えてみれば始まりから異常だった。時が止まった世界、神龍との邂逅、七つの光る球、そして……彼との出会い。全て理屈では証明できない、まさに幻想(ファンタジー)のような話だ。誰が説明できようか。実際に体験した私にしか納得しようがない。
しかし――
「と、ところで悟空……」
「ん? どうした紋白?」
彼は不思議そうに尋ねるが、こっちはそれどころではないッ!!
「お、……ぉ……く……ぃか?」
「? なんだって?」
「だっ、だから、重くないかと聞いているんだっ!!」
今の私は悟空の首に手を回し、膝を抱えるようにして持たれて彼の背に乗っかっている――つまりおんぶされているのだ。
改めて考えるとこの格好は恥ずかしいものではないのか? あぁ!!近所に住んでいるだろうおば様たちが微笑ましそうに笑っている!! 口に手を当てて「あらあら」とかわざわざ言わないでぇ?!
「そっか? そんな重いとは思えねぇけどなぁ」
「そ、そうか……」
今思えばこんなこと幼い時に母にしてもらって以来ではないだろうか? しかしあれはまだ子供だったからいいものの(本人はもう大人のつもりです)、今やられては羞恥心だけしかわかない。
おんぶして後ろが見えない彼が、頭を抱え悶々と唸る私に気付かないことが不幸中の幸いだった。
「まぁでぇじょうぶだって! 車よりはかりぃからよ!」
「そ、そうか。軽いか……ん? 車より?」
それはどうなのだろうか? 車と比較されても……って、いうことはもしかして悟空は持ち上げたことが!?
「そんなわけないよね~」
あんなことは従者部隊の永久欠番、序列零(・)位の人物くらいしか思い浮かばない。いや、そういえば姉も通行の邪魔だと言ってバイクを持ち上げ放り投げてた気が……。序列零位は初めて会った時から人外だと感じていたが我が姉も達してしまったか、と考え思わず汗を垂らし明後日がありそうな遠くの空を眺めてしまう。
「そういやよ、何でおめぇはあんなとこにいたんだ?」
「……っ!?」
そんなことを考えていた私に、彼は意図せず爆弾を放り込んだ。
「……うん。それは――」
この時の私は何故か素直に話してしまっていた。心にたまった苦味を吐き出したかったのかもしれない。誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。さっき会ったばかりの見ず知らずの彼にこんな話をするのは私の心にある黒い感情の押し付けだ。しかしどこか根拠のない期待を込めている自分を自覚しながら、彼に向かってに言葉を溢した。
「ふーん、そっか。んなことあったんだな」
「……ん」
話した後でも彼の顔は変わらない。それは前を向いている彼の顔を見ずとも声でわかった。逆に言えば関心がないのかもしれない。呆れているのかもしれない。。今さら思えばこんな話を赤の他人にして戸惑うのは当たり前だ。自分勝手に期待して自分勝手に落ち込む。苦味を吐き出したのに気付かぬうちにまた吸い込もうとしていた。呼吸のように永遠と繰り返し前以上に闇を抱え込んでいただろう。
「くくっ……」
「……え?」
「あっはははははは!」
彼の笑いはそんな私の呼吸を止めるのに十分な衝撃だった。それは私に向けての嘲笑か、はたまた私の行動への冷笑か。ネガティブな考えばかり浮かぶが、そんな笑いは彼には似合わないと思っている自分がいた。
吸い込もうとしていた闇も空気も全て詰まり、思わず咳き込んでしまう。
「ははは、おっと」
彼は笑いを止め心配そうに声をかけてくるが、顔のニヤつきが止っていない。私はその声に肩を叩いて答える。
「ん、まぁそう暗くなんなよって! しんぺぇすんな!」
「ゴホっ、ぅう゛ん! ど、どうしてそう笑えるんだ? 勝手に飛び出したら普通、かっ……“九鬼”に、心配をかけてしまうではないか……!」
“家族”
そう言いかけて思わず詰まり、咄嗟に“九鬼”と言ってしまった。
彼は私の答えにどこか懐かしそうにしながら私を持ち上げなおして言った。
「別にいいんじゃねぇか? でぇじょうぶだって!」
軽い調子で言った言葉。何故かそれがのどにつっかかっていたものをストンと胸に落とした。
「子供ん時はやりたいことやりゃあいいさ。んでいっぺぇ心配かけてもいい。親ってぇのはどんなやつでも子供はでぇじなもんさ。けど甘やかせすぎちまうのは駄目だ。子供が自分でやり始めるってのが肝心だし、それに無闇に手助け出しても駄目だ。自分を作るでぇじな作業……ちゅうやつだっけかな? まぁ本当に手が必要な時に貸してやりゃいいんだ。それまでは自分一人で成長させるべきなんだ。
つってもこれは親にとってもむずけぇからついつい手ぇ貸しちまうしなぁ。だからおめぇの母ちゃんはすげぇんな!」
そう言われて考え、改めて気付く。私が勉学や武術に励んでいる時は見ないが、家族での食事の時はほとんど出席している。そう私一人(・・)の時でも一緒に出席していた。その時は私を無視していると思っていたのでプレッシャーしか感じていなかったが、今考えると無視しているのなら一緒に食事すらしないはずだ。それに私が母に目を向けるとすぐ見つけることができるが、逆を言えば私がいるところには母もいるということだ。それも今考えれば私を見張っていた、いや見守れて(・・・・)いたのかもしれない。
これはわたしの勝手な思いこみだ。けど彼に言われるとそういう希望がわき、体が暖かくなった気がした。
「ってかむずけぇこと考えすぎだぞおめぇは」
「で、でも――」
思いとは別に口から出た言葉。それは悟空が勢いよく回りだしたことによって強制的に閉じさせられた。
「わっ、わわぁ!? ちょっ、ごく、う、やめっ!?」
「ハハハハハハハハ!」
ぐるぐると回る景色はおんぶの振動と相まってのすごい衝撃を与えてくる。悟空はそんな私を知ってか知らずか、なおもスピードを上げて回る。
やっと止まった時には目を回してしまった。
「うぅ、ぐるぐるぐるぐる~」
「っと、へへへ! おめぇ考ぇすぎなんじゃねぇか? 頭固すぎっと、アイツ(・・・)みたいにがんこもんになっちまうぞ?」
いつか鬼ババになっちまうかもな、ニシシと笑って言う悟空に私の何かがブチっと切れた気がした。
「ウガーーッ!! 鬼ババとか言うなーーーー!!!!」
「わっ、いててて! いてぇってもんしろぉ!?」
彼の頭をポカポカと叩く。効いているのかわからないが彼は楽しそうに笑っているのでさらに力を入れを上げ叩いた。やっと彼に効いてきたのか彼は足を速め駆けだすが、こちらは背に乗っているのだ。逃がさないよう頭にしがみついて片手で叩き続ける。
こんなやり取りで誤魔化しているが、本当は母に見てもらえていた嬉しさとそんなことに気付かず勝手に落ち込んでいた自分に対しての恥ずかしさを誤魔化すためだとわかっていた。
同時に心の中で、胸に宿る暖かいものをくれた彼に向けて礼をいう。
そうしたやり取りが九鬼邸近くまで繰り広げられていた。
しかしこの時の私は本当に子供だった。嬉しいと恥かしいという気持ち以外で、身体が熱くなり鼓動が早まる気持ちを知らなかったのだから。
「えっと、たしかこのへんって言ってたよな紋白?」
「あぁ、ここをもう少し真っすぐ行ったところだが」
あれからお互い冷静になって九鬼邸を探し、自分でもわかる道に戻ってきた。
「あ! あった、あそこだ悟空!」
「おーあっこかぁ、でっけぇな! ブルマん家みてぇだぞ!」
そしてついに我が家に戻ってきた。さすがに皆に心配をかけているだろうと思い、最初に言う言葉と覚悟を決め門の前に来た。
が――
「あれ? 見張りの門番がいない?」
「? どうしたんだ紋白?」
いつも門の前に立っている門番がいないのだ。ここを出る時は誰もいない横道から抜け出したが、普段なら二人ほど立っているはずなのだ。それに家にも人の気配が少ない気がする。これでも九鬼家の娘というレッテルがあるのだからいないとわかればもっと大騒ぎになっているはずなのだ。
「人が少ないのだ。それに静かすぎる気もするし……」
「そうか? いるじゃねぇか人なら」
え、と言う前に悟空は空を指す。それに従って上を見ると――
「――我が妹に何をしているかぁぁぁぁぁぁあああああッ!!!!!!」
ズン、と上から人が降ってきて5m前に片膝を立てて着地する。その声、その姿、そして私には無い(・・)この家の特徴的な×点傷を額に付けたその女性。
その人は――
「小僧、我が妹から離れろ!! でなければ我が相手をしてやるぞッ!!」
――九鬼家長女にして我が姉として慕う≪九鬼揚羽≫だった。
ついに我らが準ヒロイン(?)が登場!!
まぁまだ未定ですけどね。え?ヒロイン枠に入れろって?
どうしよっかな~
――ってあ、ちょっやめ、アーーーー!?