地獄の文房具選びから数日後の今日。
わしが川神市に滞在する際、住む事になる家に来たのじゃが……。
現在、わしの目の前にある新しい我が家はかなりの敷地面積に大きな屋敷と
道場らしき建物が立っていた。
「影崎。ここに住むのはわしと何人の使用人だったか覚えておるか?」
「私を含めて二十人です。お嬢様」
「そうか……」
明らかにわしを含めた倍の人数が生活できそうな家だが、突っ込んだら負けな
気がして来た。
「では、お嬢様。新しいご自宅を案内いたしますので付いてきてください。あと、家具
などの設置やお嬢様の荷物なども先に運んでおりますので後でご確認ください。」
「……」
影崎の言葉に反応する事すら面倒になったわしは最低限の事を聞きながら30分ほど
我が家をガイドする影崎について周り、新しい自室に戻って、昼寝をしましたとさ……。
☆☆
その夜……。
「では、お嬢様。さっそく、学校の準備ですが……。
最新のスタンガン、催涙スプレーに閃光弾などを……」
「影崎。お主は小学校を戦場と勘違いしておるのではないか?」
わしの新しい部屋で教科書以外の危ない物がどんどん影崎の手により
ランドセルの中に収納されていく。
もはや危険物で教科書と筆箱が見えない。
ゆとり教育や虐めが酷いと聞いたことはあるが、
少なくとも、今の現代日本の小学校に武器が必要になるほど悲惨な事になっていないはずじゃ。
「何を言っているのですかお嬢様。幾つになっても男は変態で狼なので、
これぐらいしないと大変なのです。」
「なるほど。お主の頭が大変なのが、よくわかった」
昔からおかしい奴だと思っておったが本格的にダメになったらしい。
おそらく現代医学の力ではコイツの頭はもう治せないだろう。
そう考えると思わず、哀れみの視線を送ってしまう。
「お嬢様。準備が出来ましたよ」
影崎に渡されるランドセル。
わしは渡された危険物がたっぷり収納されたランドセルを抱え、
ゴミ箱の前に立ち、教科書と文房具以外の危険物を捨てる。
「お嬢様!何をするのですか!?」
「馬鹿者!!こんな物がなくても、わしは平気じゃ!!過保護も対外にせんと
本気で怒るぞ!!」
「確かにお嬢様は天下無双の最強美少女ですが、三大名家筆頭の
棗家の長女なのです!何かあったら大変な事になるのですよ!!」
「知るか!!だいたい……」
この言い合いは、他の使用人が夕飯を呼びに来るまで続きましたとさ。
ちなみに、真夜はなんだかんだで最新のスタンガンをこっそり
ランドセルに収納したそうな…。