真剣にわしに恋しなくていいよ!マジで!!   作:ラリー

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プロローグ

 

わしの名前は棗真夜(なつめ まや)10歳

前世の記憶を持って生まれた人間じゃ。

ジジイ言葉なのは幼い頃から祖父に武術を教えてもらっていて気が付いたら

ジジイ言葉になっていたのじゃ。

まあ、前世が男じゃったから女言葉よりもジジイ言葉の方が気が楽で

いいんじゃがな。

ちなみに武術に関しては、やめたいとか面倒とか思っておったが気の扱い

を覚えてからというもの、楽しくてしょうがない。

なぜなら肉体を強化して飛天御剣流ごっことかドラゴンボールごっこ、ナルトの忍術

ごっこだの、少年だった頃の夢を叶えられて嬉しくてしょうがないのじゃが、

趣味でやっているのに『棗の麒麟児』『棗の才女』だとか言われてちやほやされるのが、

面倒でしかたがない。

理由はわしの家、棗家は不死川や綾小路を率いて国の為に戦った

名家にして武家という家柄であり、かなりの権力を持っている。

唯でさえ、その家の長女として注目されて嫌なのに、さらなる注目を浴びてしまったのだ。

周りが鬱陶しくなり、静かになるまで山で祖父と暮らしたのはいい思い出じゃ。

そして、そんなわしに最悪の試練が訪れた……。

 

「お嬢様。いくらむくれてもダメですよ」

 

「……」

 

「威圧してもダメです。お嬢様には奥様の伝言通りに……

 

 

 

 

 

 

川神の小学校に通っていただきます」

 

 

☆☆

 

 

 

最悪の試練。

それは小学校に入る事。

肉体年齢だけならともかく精神年齢が成人を超えているわしにとっては苦痛でしかない。

だからわしは今まで、家庭学習をしていたというのに今更ガキンチョ達と仲良く

ランドセルで登校しろと?

はっきり言って、嫌過ぎる。

 

だが、わしは両親に養ってもらっている立場。

思わず態度に出てしまうが、嫌とは口に出来ん。

むしろ今まで自宅学習を許可してくれていた事に感謝せねばならないのじゃが……。

何故今更?

 

「お嬢様に同年代の友達がいないからでは?」

 

「む……。ん?ちょっと待て、影崎(かげざき)。わしは今、声に出していたか?」

 

「いえ、お声には出ていませんでしたが、お嬢様の様子を見てなんとなくです」

 

まあ、影崎は4年以上の付き合いになるから

なんとなくで分かっても不思議ではないか。

 

「それよりもお嬢様。ランドセルの色ですが、基本の赤から最近でた新しい色まで

全てを揃えましたのでお選びください。」

 

「な!?」

 

影崎が手を叩くと、わしの部屋にぞろぞろとメイドたちが

女子に合いそうな、さまざまな色のランドセルを運んでくる。

なんじゃこれは……。

沢山のメイド達が、ランドセルを抱えつつ、軍隊のように整列する異常な光景に

驚いて思わず声を出してしまう、わし。

 

「驚かれましたか?これは全て旦那様と奥様の贈り物だそうです。

ちなみに、ここにある全てのランドセルですが○○メーカーの……」

 

「父上と母上はアホか!

たかだかランドセル一つを選ばせる為にこんなに買い込んでどうするのじゃ!!」

 

「ですがお嬢様、これでも少ない方なのですよ。

旦那様は初め、『真夜ちゃんの為に、この世に存在する全ての色のランドセルを揃えろ!』

と仰っていたのですから」

 

「……」

 

呆れ果てて物も言えないとはまさにこの事だ。

男親だから娘がかわいいのは分からなくもないが、これはひどい。

一般市民だった前世の自分が見たらきっと父上を殴り飛ばしていたに違いない。

 

「ちなみに旦那様はその後、隣に居た奥様にしばかれ

『甘やかしすぎです、ランドセルで有名な○○メーカーの女子児童用ランドセル全てで十分です』

と拳から血を垂らしながら仰られ……」

 

いや、母上はかなり厳しくしたつもりかもしれないが、

口の中にある全ての歯が瞬間的に虫歯になる砂糖菓子くらい十分甘いぞ。

なるほど…二人は似たもの夫婦なのじゃな……。

 

「赤一つで十分じゃ……他のランドセルは孤児院にでも寄付しておけ」

 

「お嬢様…なんとお優しい……。この事を奥様と旦那様が聞いたらきっとお喜びに

なるでしょう」

 

「頼む、後生じゃ影崎。父上と母上には報告しないでくれ……」

 

あの二人に知られたら周りを巻き込んで祝ってくるに違いない。

 

「では、続いて筆記用具と文房具ですが……」

 

もう勘弁してくれ……。

 

 


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