「うぇい・・・・・・うぇい・・・・・・」
「大丈夫神楽さん?モザイクかけたくなるような顔してるよ?」
無言で姉ヶ崎の頭にチョップを振り下ろす。ズビシッという音
「いたっ!地味に痛いんだけど!」
「痛くしたんだから痛いに決まってんだろ!」
「アイドルにこんな事するなんてこの鬼!鬼畜!」
「アイドルだからって許されると思ってんじゃねーぞこの淫ピン!」
「淫ピン!?今淫ピンって言ったね!?謝れ!私だけじゃなく全国のピンク髪の女性に謝れ!」
「なんか向こう騒がしいねP君」
「遊園地だもんな、羽目を外して騒いだりする人だっているさ」
「どっかで聞いた事のある声だねP君」
「居酒屋経営してそうな声だな。最近よく耳にすることが多くなったよ」
「・・・・・・次は何に乗ろうかP君!」
「時間も時間だから観覧車なんていいんじゃないかな莉嘉!」
「わーぃ観覧車!莉嘉観覧車大好き!」
「リッカリーン」
「それいじょうはいけない」
「冗談もコレくらいにして向かおうか」
「神楽さんあれ見て!」
「あれって何・・・・・・観覧車じゃねーかそれがどうした」
あの後周囲の目が優しい目つきになったのに気がつき恥ずかしくなった俺達はいつの間にか見失ってしまっていたPと妹を探しているのだが姉ヶ崎が信じられないものを見た、といった感じの表情をして一点を凝視している。何を見つけたのだろうかと俺もそちらに目を移す
「あれは・・・・・・妄想お姫様じゃないか!」
なんてこった!喜多ちゃんが一人で観覧車に乗ってやが・・・・・・
「ままゆ・・・・・・だと・・・・・・?」
「そう、日菜子ちゃんとまゆが一緒に・・・・・・え!?うそ、ホント!?」
「おう双眼鏡で見てみろ。喜多ちゃんはいつもどおりだとしてままゆの方なんて今にも一つしたのゴンドラに飛び乗らんばかりに・・・・・・」
そう言いながらままゆが凝視しているゴンドラに目線を移す。Pと妹がいた。なんか察してしまったがしょうがないと思う
「うわほんとにいた・・・・・・。大丈夫だよね?さすがにまゆも動いてるゴンドラを渡ったりしないよね?」
「大丈夫だ・・・・・・たぶん」
「お願い自信もって大丈夫って言って!私怖くてしょうがないんだけど!」
「俺達には・・・・・・っ。Pと妹の無事を祈ることしかできない・・・・・・っ!」
――特に何もなかったよ!やったねたえty
「ん~!楽しかったー!」
日も傾き始めた頃、莉嘉は満足そうな声でそう告げた。観覧車に乗っている時にもう少し遊びたかったと呟いていたのだがその顔は晴れやかだ
「門限があるんだから仕方がないよな、今日はこれまでだ」
「門限なんてなくなっちゃえばいいのにー・・・・・・」
「莉嘉はまだ小さいからなー」
ぽふぽふと莉嘉の頭を撫でる。身長に差があるために莉嘉の頭の位置が俺の手を乗せるのにちょうどいい。まぁその頭を撫でられている莉嘉というと顔を俯かせてしまっているのであまり嬉しくはなさそうだ。年頃の女の子の頭を妄りに撫でるもんじゃないなぁと思いながら手を離す
「あ・・・・・・」
「?どうかしたか莉嘉」
「え?ううん、なんでもない!そうだP君この後は暇?」
「この後は・・・・・・特に何も予定は入ってないな。いつもどおり神楽のところによって晩御飯でも食べていこうと思ってたんだが」
手帳を開き予定を確認。何も入っていないことを告げると莉嘉は抱きつきながら
「それじゃあP君うちでご飯食べていきなよ!ママもお姉ちゃんも喜ぶよ!」
「おっと、急に抱きつくと危ないだろ莉嘉」
「えへへ~ごめんなさ~い☆」
「しかし莉嘉の家でご飯か・・・・・・迷惑じゃないのか?」
「だいじょ~ぶ!ママもパパも一度おうちに連れてきなさいって言ってたから!」
むぅ、と少し唸る。なんというか莉嘉の両親、母親の方は歓迎してくれている感じがするのだが父親の方が拳で語ろうとしてくる感じの人なのだ
「いいじゃん、プロデューサーきちゃいなよ★」
「お姉ちゃん!?どうしてここにいるの!?」
「莉嘉が門限を破らないように迎えに来て上げたのよ★」
なんという妹想いなのだろうかと思い、疑問が浮かぶ
「ところで美嘉、何で園内にいるんだ?」
「こまけぇこたぁいいんだよ!」
追求しようとすると睨まれた、最近のJKは怖い
ドオシテジャマスルンデスカー?
マテオチツケコノロープハアネガサキガ
ムフフ、サンニンデロープデムスバレテルナンテ・・・・・・ムフフ
「ん?また聞いて事がある声が・・・・・・」
「P君も?私も聞こえるんだけど・・・・・・」
「さぁプロデューサー!もうママには連絡したから急ぐよ!」
「わ、わかったから押すな!」
「わ~いP君と夕飯一緒だ~☆」
「莉嘉も莉嘉で抱きつくなー!」
騒がしくもあったけどなんだかんだで楽しかった遊園地だったと思う
「姉ヶ崎の奴め・・・・・・やっかいなのを押し付けていきやがって・・・・・・」
あの後ままゆと喜多ちゃんを姉ヶ崎が俺とロープで結び付けで離れないようにしていったわけなのだが。ままゆ怖かった。Pを夕飯に誘ったときなんて喜多ちゃんが妄想を中断して怯えるくらいに怖かった。なんとかPの昔の写真で落ち着いてもらい、後日Pを犠牲にすることでなんとかなったというわけだ。
ただいまーと返事が返ってくることはないとわかっていながら声を出して家に入る。これで返事が返ってきたら俺もうPのプロダクションで寝泊りすることにしよう
時計を確認するともう少しで19時といったところ。妹の門限が最近の子供にしては速いなぁと思いつつ冷蔵庫から適当に作り置きしておいたキンピラなどの惣菜を取り出しテーブルに並べる
冷凍庫に入れておいたジョッキを取り出しサーバーからビールを注ぎ席に座る。テレビをつけ夕食を食べ始めようとしたところで電話が鳴った
「はいもしもし」
『あ、神楽さんですか?突然で申し訳ないんですけど今からお店に行っても大丈夫ですか?』
「あー千川か、材料買ってないからあんまりたいしたもん出せんがそれでもいいならいいぞ」
『そんなに食べる人たちじゃないんで大丈夫です!』
「あいよっとすぐくんのか?」
『戸締りしたらすぐ向かうつもりですけど・・・・・・都合悪かったですか?』
「いや、大丈夫大丈夫。というか千川一人じゃないのか。何人くらい?」
『私と奈々ともう一人いるんですけど、その人は神楽さん会ったことないんじゃないかなと』
「ウサミンか、酒用意しとくわ」
『お願いします・・・・・・』
俺の一日はまだまだ終わりそうにないです