居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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当然のように番外編。というかグラブルSSR出なくてつらい。デレステは美波出なくてつらい。モバマスは報酬わくわくさんでつらい

※まゆの担当Pの名前を三浦として登場させています


番外編:結婚は16歳から可能

 

「ふーん」

 

「どうかしましたか、先輩」

 

 のんびりとネットサーフィンに興じていたら、思わず声が漏れていてしまった様子。声を掛けられて無視するわけにもいかないので、武内君を手招きして呼ぶ。

 

「これ見てみ、世間様の評価みたいなもん」

 

 そう言って見せたのはあるサイトに書かれていた文章。

 

「天使、ですか・・・」

 

「やー言い得て妙とはこのことかね。言われてみれば確かに天使みたいな笑顔してるし」

 

 『大天使ウヅキエル』『大天使チエリエル』面白い例えをする人がいるものである。島村は笑顔が確かに可愛らしく、天使である。緒方は守りたいこの笑顔みたいな感じで天使である

 

「・・・二人でユニットを組んでみるのも面白いかもしれませんね・・・」

 

「まぁ個人的には天使繋がりで神崎を入れてみるのもありかなと」

 

 堕天使だし、あながち間違いではないだろうと思う。とは言え現段階ではそんなユニットを組ませる余裕が無いので所詮夢物語である。いつか、三人で組ませてみたいなと思いながら、時間があればいいなと少し鬱になる。

 

「お二人とも、そろそろ時間になりますし、移動の準備をお願いします」

 

 二人であーだこうだとこの話題について話し合っていたら、千川に声を掛けられたため現実に戻された気分になる。

 

「あー・・・辛い・・・」

 

「そんなこと言って・・・、そもそもこの仕事を企画したのは神楽さんじゃないですか」

 

「ここまで大事になるとか思ってもおらんぞ・・・」

 

 今回の仕事は、ある会社の酒を飲み交わしたことが切欠だった。同姓同名の店長が経営する居酒屋でのんびりと酒を飲んでいた時に訪れたお客さんがある会社のお偉いさんで、酒が進むうちに仕事の話になって、今回の『ウェディングドレス』の仕事が出来上がった。話が飛躍しているのではないかと不思議に思われるかもしれないが、気が付いたら今のような状況に至る。

 346にとって、今回の仕事は渡りに船であり、乗るしかないこのビックウェーブに状態なのだが。

 

「暇なアイドル全員が撮影する必要はあったのか・・・」

 

 俺が今最も頭を悩ましているのが、これが原因である。暇なとは言ったが、本日に前もって仕事が入っていたアイドルは参加していない。が、うちのプロジェクトメンバーと俺が担当しているアイドルは皆本日仕事が無く、参加することになっている。頭を悩ましているのはこれが理由である。向こう側が何を思ったのか、新郎役にプロデューサーを指名してきた。何故なのかと聞いてみたのだが、近しい異性と撮影してこそとかなんとか。さっぱりわからん。

 

「あーもう、何故なのか・・・」

 

「うじうじしてないで、馬車馬のように働いてきてください。ほら、ドリンク上げますから」

 

 千川は、無関係ですと言わんばかりに笑って飲み物を渡してくる。そんな千川を見て、少しイラついてしまう。

 とはいえ、実際無関係なので仕方がない。面白い事あればいいですね。そんな事を言う千川に見送られながら、俺たちは会場に向かった

 

 

 

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 今回の撮影場所はとある教会。なんでも一度765の面々もここで撮影をしたことがあるらしい。だからなのか今回の撮影の話も案外すんなりと受け入れられた

 

「タキシードは何とも窮屈なもんだな・・・」

 

「そうでしょうか?私は身が引き締まる気がして中々良いと思うのですが」

 

 そんな会話をしながら、スタッフに呼ばれるまでのんびりと過ごす。

 

「三浦は・・・・・・どうしたんよお前。顔が青いぞ・・・」

 

 武内君の同期であり、同じく俺の後輩である三浦に声を掛ける。

 

「あ、あぁ・・・先輩・・・。助けてくださいっ・・・」

 

 切実に助けを求められて、少し引いてしまう。一体彼に何があったのかと話を聞いてみる

 

「俺の担当アイドルの、佐久間まゆって知ってますよね・・・」

 

「ごめん、俺には荷が重いみたいだわ」

 

「諦めるの早すぎませんか!?」

 

 佐久間まゆは今流行りの・・・流行っていいのかわからんがヤンデレである。いや、個人的意見なのだが、あれは最早行き過ぎたデレデレなのかもしれない。見る人によれば全部愛情表現だろうし・・・。

 

「武内なら聞いてくれるよな!というか聞けっ!」

 

「わ、わかりましたから・・・。服が乱れますので胸倉を掴むのは・・・」

 

 暴走する三浦から少し距離を取って、被害がこちらに来るのを避ける。

 

「まゆがな・・・、ウェディングドレスを着るってわかった時に『うふふ、結婚前にウェディングドレスきるとぉ、婚期が遅れるって言いますよねぇ・・・。プロデューサーさんは、まゆの事大事にしてくれますよね・・・。遅れないように貰ってくれますよねぇ・・・』なんて言い出して、しまいには婚姻届けすら用意し始めて・・・」

 

「それは、その・・・ご愁傷さまと・・・」

 

「嫌だよ!俺まだ気ままに独身生活送りたいし!そもそもまゆ未成年だし学生だし!」

 

「頑張れよ、あと結婚式には呼んでくれよな」

 

「洒落にならない事言わないでください先輩!」

 

 いやぁ、意外とお似合いの二人だからこれを機に事が進展しないかなと考える。以前聞いた話だと自室の合鍵持ってるって聞いたし

 

「合鍵は俺が渡したわけじゃないですし・・・!そんな呑気なこと言って、先輩だってそんな事言えない状況なんじゃないですか!」

 

「俺はほら、担当アイドルは真面目・・・真面目なメンバー・・・?」

 

 真面なメンバーだしと言いたいが、はっきりと言えない。今日来る担当アイドルは橘に鷹富士と鷺沢の三人。橘は無駄に頭が良いし、言い出してもおかしくない。鷹富士に鷺沢なんて普通に結婚できる年齢だし、言い出してもおかしくない・・・

 

「もしかして、俺も結構やばい?」

 

「やばいです。幸いというかなんというか、三船さんとか割と本気に捉えそうなめんばーがいない事がまだ救いでしょうか」

 

「どうしよう武内君、俺死ぬかもしれない」

 

「冗談が過ぎますよ、先輩」

 

 だよねーと言いながら、内心は冷や汗だらだらである。割と本気でこの仕事受けなければ良かったと思えるほどである。ましてや吊り橋効果継続中の三人もいる、本格的にやばいかもしれない

 

「お待たせしました、アイドルの方も準備が終わったみたいなので、プロデューサーの皆さんもスタンバイお願いします!」

 

 そんなスタッフの声を聴いて、俺と三浦はある種の覚悟を決めて仕事に向かうことにした。

 

 

 

 

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「はーい、ではそこに立ってもらって、ポーズはお任せしますので自由にしてください!」

 

 そうカメラマンに指示されて、私は隣に立つ渋谷さんを見る。今彼女が来ているウェディングドレスは、彼女が好きな色である青色「蒼」・・・蒼色が大胆に使われており、彼女の容姿も相まって、とても美しい

 

「・・・あんまりじろじろ見ないでよっ。恥ずかしいし・・・」

 

「す、すみませんっ。・・・とても、似合っています」

 

 じろじろと見ていたことに不快に思われてしまったのか、感想を述べても「ふーん」とだけ言われてそっぽを向かれてしまう。

 

「申し訳ありません、この様な仕事は、何分慣れていないもので・・・」

 

「別に・・・、怒ってるとかそんなんじゃないし・・・。そんなに似合ってる・・・?」

 

「はい、とても、綺麗です」

 

 素直に綺麗だと思う。ステージ衣装とは違った服を身に纏った彼女はとても美しい。素直にそう伝えたら、恐らく自身の記憶の中で一番ではないかと思えるほどの笑顔を浮かべていた

 

--パシャッ

 

「思わずいい笑顔だったから一枚撮らせてもらったよー!」

 

 撮影中だったことを思い出し、渋谷さんが腕を絡ませやすいように、自身の腰に手を当てて腕を通す隙間を作る。

 

「なんか、手慣れてる感じがするね。私には関係ないけどさ・・・」

 

「手慣れてなんかいないですよ。こういった経験、今まで無かったですし。こうしろと、先輩に前もって言われていましたので・・・」

 

「そこは誰かから聞いた。なんて言うべきじゃないよ、プロデューサー」

 

「申し訳ありません・・・」

 

 これが所謂、女心というものなのだろうか。自身には理解できない気持ちを抱いたであろう渋谷さんが少し拗ねた顔をしたのを見て、そう思った。

 

 

 

「にょわー・・・、大丈夫プロデューサー・・・。きらり、大きいし、重くない?」

 

 不安そうに告げる諸星さんを、今はお姫様抱っこの形で抱き上げている。自身に身長が近しい彼女は確かに抱き上げるのに力がいるが

 

「問題はありません」

 

「良かった~・・・。きらりね、こういった仕事に憧れてたけど、身長大きいし、杏ちゃんとかに比べると可愛くないし、似合わないんじゃないかなって、不安だったの・・・」

 

「諸星さんは、皆さんと違った魅力を秘めています。そこまで自身を卑下する必要は、ないかと・・・」

 

 それにと、一拍開けて言葉を告げる

 

「諸星さんも、綺麗な女性ですし、私も緊張していますよ」

 

 先程から、諸星さんの胸が当たっていて何とも言えない気持ちが胸を埋め尽くす。

 

「んふふ~プロデューサー、ありがとっ!」

 

 嬉しそうにお礼を言ってくる彼女に、少しだけ自分も嬉しさが分け与えられた気がした

 

 

 

 

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 少し離れた場所で、武内君が諸星を抱き抱えて撮影しているのが見える。向こうは平和そうで羨ましい。こっちはなんかアイドルによる睨み合いが始まっている。

 

「というか高垣、お前今日ここに来る予定じゃなかっただろ・・・」

 

 何故かこの場にいる楓さんに疑問を覚えたが、我が道を往くのがこの人だ。何処かで話を聞いて、時間を空けてここに来たのだろう

 

「結婚式も、結構良いものですよ?ふふふ」

 

「いつもと違ってギャグにキレがないあたり、結構緊張してるだろ」

 

「それはもう、衣装を着てることに緊張してるわけじゃないですが・・・」

 

 なら何に緊張しているのやら。まぁ高垣は緊張していても難なく仕事をこなすし、心配も無用であろう。

 

「うふふ・・・」

 

「むぅ・・・」

 

 未だ睨み合いを続けている鷹富士と神崎を離しながら、まずは誰から撮影するのか決めてもらう。正直この手の仕事は早めに終わらせるにかぎる。ちゃちゃっと撮影してぱぱっと帰るのがベスト

 

「じゃんけんは、茄子ちゃんが絶対最初に勝っちゃうし、除外しないといけないわね」

 

「くじ引きも、除外しましょう。運が絡むものはこの際全部除外して・・・」

 

 高垣と新田が真剣に話し合っているが、そこまで撮影の順番が重要なのかと疑問である

 

「アリスは、とても、可愛らしいですね。お人形みたいです」

 

(外国の人の発音だと、名前で呼ばれるのも良いかも・・・)

 

 アナスタシアと橘は至って普通に接している。あまり順番に興味が無いのか、その会話には混ざらずに、二人だけで会話を広げている。珍しく、親しくない相手には警戒しながら話すはずの橘が、笑顔で話しているのをみて、成長したんだなと涙が出そうである。

 因みに、皆ドレスのカラーは白である。ただ違うのはそれぞれがアクセサリーを付けている所だろうか。アナスタシアは星をモチーフにした髪留めをサイドに、楓さんは花の形をした髪留めを、橘は小さめのティアラを、新田は長い髪を纏めるためか後ろに髪留めを、鷺沢は本を片手に。神崎は白い羽を背負って・・・

 

「神崎のあの羽ってオプションであんの?それとも自前・・・?」

 

「オプションにありました!」

 

 ここ最近、神崎は俺と話すときに標準語を使うようになった。彼女の中で何かが変わったのかもしれないが、俺にはわからない事である。

 というか、一体いつまで話し合っているのか。いい加減待たせているスタッフに申し訳なく思い、彼女達に任せるのはやめて、目の前にいる神崎と先に撮影することに

 

「神崎、先に撮影しようか。なんかまだ話し合い白熱してるし。鷺沢はトイレかなんかでいなくなってるし」

 

 いつの間にか鷺沢は姿を消していた。恐らくトイレであろうと思うが、あの格好ならトイレも一苦労なのではないだろうか。一先ずいない人は後回しにするとして、神崎の手を取って舞台に上がる。

 

「神崎はやりたいポーズとかあるか?あるなら俺も付き合うが・・・」

 

「えっと、どんなポーズでも良いですか?」

 

 恥ずかしそうに指をモジモジと組む神崎に可愛らしいと思いながら、なんでもするよと伝える

 

「だったら、きらりさんみたいなのが・・・」

 

「諸星みたいなってなると、お姫様抱っこか?」

 

 そう聞き返すと、神崎は無言で頷いた。

 お姫様抱っこは女の子の憧れなのかね・・・、そんな風に考えながら、神崎を勢いよく抱き抱える。

 

「おっと、神崎随分軽いな」

 

 勢いよく持ち上げたものの、神崎が軽すぎてバランスを崩しそうになる。

 

「えへへ・・・、温かいです」

 

「よくわからんが、嬉しそうで何より」

 

 密着しているため、香る神崎の匂いが鼻孔をくすぐる。女の子らしく香水でもつけてるのかわからないが、良い匂いがする

 

「はーい、とりまーす!」

 

「おっと、神崎。アイドルに必要なものはわかるよな」

 

「笑顔、ですね!」

 

 そう答えて満面の笑顔を咲かせた神崎はとても可愛らしく、綺麗だった。

 

 

 

「次は私の出番ですね、うふふ」

 

 神崎の撮影を終えて、次は楓さんらしい。どのようにして順番が決まったのかはわからないが、新田と鷹富士が悔しそうに顔をゆがめているのが見えた

 

「楓さんは、なんか希望のポーズあります?」

 

「でしたら、神楽さんは椅子に座ってもらえますか?」

 

 言われた通りに椅子に座り、次の指示を待つ。

 

「その上に私が座ってっと・・・。ふふ、どうですか?」

 

 楓さんの柔らかな感触が足に広がり、少し理性が怪しい感じになる。そんな様子に気付かぬまま、抱き着くように首元に手を回して抱き着いて来る。

 

「顔、近いですね」

 

「これ写真に残していいんですかね」

 

 耳元で話す楓さんは、少しだけ体温が上がっている気がする。

 

「でしたら、こんな事したら、大変ですね」

 

 声が近づいてきたと思ったら、頬に柔らかな感触が広がる。その感触に慌てて、触れた部分に手を付けると少し湿っていた

 

「え、楓さん?まさか・・・」

 

「その、まさかです 」

 

 可愛らしくそう告げる彼女の事を見ながら、慌てて彼女を下す

 

「大丈夫です、誰も見ていないときにしましたから 」

 

「そういう問題じゃ無いでしょ・・・」

 

 頬とはいえキスをされた現実に、内心少し浮かれるが、悪戯っ子のように微笑む楓さんを見て何も言えなくなってしまう

 

「これで、私と神楽さんの、二人だけの秘密が出来ました」

 

 そんなことを笑顔で言って、彼女は新田達の元に戻っていった。

 楓さんの撮影の時に少し問題が発生したが、その後は特に何も起きずにスムーズに撮影は進んでいき。無事に終わった。

 控室にて、着替えをしながら三浦と武内君と話す

 

「三浦、生きてる?」

 

「俺、生きてますよね・・・?」

 

 質問に質問で返されて、むしろ何かあったのかと思ってしまう

 

「まゆに、小指にリボンを結ばれた後から、だんだんと気が薄れてきて・・・」

 

「なんか怖いからもういいよ、お疲れ」

 

 何が起こったのか聞いたら、むしろこちらが後悔しそうである。武内君は?と彼に尋ねてみれば、皆さん笑顔でしたと言われてしまう。何だろうか、今更だが彼は感想はと聞かれると笑顔でした。としか返さないような不安がある

 

「まぁ一先ずお疲れさまってことで、仕事終わったら三人で飲みに行こうか」

 

「たまには、良いかもしれませんね」

 

「部屋に戻ると、まゆがいるかもしれませんし・・・」

 

 三浦の闇は深い、無駄にそう思わされた仕事だった・・・

 

 

 

 

 




皆可愛い小並感

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