カーテンの隙間から差し込む朝日に顔を顰めながら、目を擦り体を起こす。昨晩は撮影が無事に終わった事で盛大に打ち上げをしていた。大人組に混ざり、久しぶりに多くの酒を摂取したせいなのか、軽く終わり付近の記憶が飛んでいる。二日酔い特有の頭痛に軽く悩まされながらも、シジミの味噌汁でも作り今日も頑張ろう。そう意気込んで布団を剥いだところで
「え……」
時間が止まった。ちゃんと時計の針が進む音も聞こえるし、実際時間が止まるなんて有り得ないことだけど、俺の中の時間は確実に止まった。
何せ隣に下着姿のウサミン星人がいるのだ。止まらないわけが無い。
深呼吸を何度か繰り返し、落ち着く。
(落ち着けるかぁあああああ!!)
待って待って、ウサミン下着姿って事はそういう事なの?
慌てて自身の格好を確認して見るが、自分はちゃんと寝巻きに着替えている。
これはもしかしてセーフなのでは無いだろうか。実際問題としてナナさん可愛いし、そういう行為をする事に躊躇いも無いけど、こうほら、段階をちゃんと踏んでからじゃないと個人的には宜しくない。
まだスヤスヤと気持ちよさそうに寝ているナナさんを起こさぬようにベットから降りて、こっそり部屋を出て居酒屋に向かう。店内が悲惨な事になっているが今は見ないことにする。そんな事よりウサミンだ!
昨晩記憶を無くすほど飲んだ事が悔やまれる。誰かに確認でも出来たら良いのかも知れないが、これでもし「昨晩は、お楽しみでしたね」なんて言われたら責任問題になってしまう。お互いいい歳だし、ゴールインまで一直線の可能性もあるぞ…。鍋に味噌汁の材料を入れて、火を付けて、1度止める
(顔洗ってスッキリしよう…)
頭の中を冷たいでリセットする事も兼ねて、洗面台に向かう。
風呂場と洗面所が扉1枚隔てられている我が家。その扉を開けた時、女神がいた。
「え」
違った周子ちゃんだこれ。
一糸纏わぬ姿で立ちすくむ彼女は、風呂上りだからなのか肌が濡れており
「ゆーとさん……?」
普段であれば雪のように白い彼女の肌は、今は少しだけ朱に染まり
「出来れば、余りジロジロと見て欲しくはー…」
まるで瑞々しい果実のような乳房は見て分かるほどハリがあり、先端のピンクの突起が上を向いている。
「……ゆーとさん?」
視線を下へとずらせば、整えられた毛が見えて
「反応しなさーい」
「あふんっ」
気が付けば平手打ちを貰っていた。そこで今更ながらに疑問に思う。何で周子ちゃんここにいるの?てか何で風呂入ってんの?
「いや、その前にゆーとさん。流石のしゅーこちゃんも恥ずかしいから、出てって欲しいかな?」
言われてから、そう言えば周子ちゃん裸だったなと冷静に思う。少しだけ、先っちょだけだからと網膜に深く焼き付けたその姿を後で何としてでも書き写す事にして、洗面所から出ていく。
「まじ眼福」
目の保養になりましたありがとう。と心の中で感謝を述べつつ、何故ここにいるのか聞いてみた。
何でも本来ならば昨日はPが送迎する予定だったらしいが、お酒を飲んでしまって送ることが出来なくなってしまう。その結果時間的に歩いて帰ることを良しとしなかった俺が、そう俺が泊まって行けと言ったらしい。
「覚えてないけどGJ俺!」
ん、さっきのウサミンの時と違って何で慌てて無いのか?そんなの決まってる。記憶が無いスケベよりも記憶のあるラッキースケベの方が良いに決まってんだろ。
誰に対する理由でもないがそう言わせて貰おう。リトさんまじ神様。
「そう言えばゆーとさん」
ひょっこりと顔だけ出してきた周子ちゃんに少し驚き、何かなと聞き返す。
「昨晩は、お楽しみでしたね」
神は死んだ。
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あの後、起きてきたウサミンと周子ちゃんとで朝食を取り。2人を無事に見送り事務所に駆け寄る。目的の人物は我らがあの人
「助けてあきえもん!記憶を思い出す装置作ってよ!」
「まず言わせてくれ、喋るな」
やけに辛辣な返しを受けて無駄にダメージを蓄積していく。と言うか開幕から何か不機嫌である。
「やっと作業も終わって寝れる!なんて思ってた矢先、打ち上げに付き合わされて、それも終わって今度こそ寝れる!なんて思ってたらカラオケに付き合わされ、さっき帰ってきて仕事の前に寝るぞ!と思ってたら君だ。あれか、私に何か恨みでもあるのか?」
「無いっす、すんませんハイ」
ハイライトが消えた目で言われてしまい何も言えなくなる。ヤベェよこの子、片手に銃とか持ってるしこのままだと眉間に穴が開く恐れがある。
邪魔して悪かったなあきえもん!と叫びながら出ていく。頬を何かが掠めて行ったが、振り返ったら命は無い。
あきえもんを頼れない今、やる事が無くなってしまう。だからこそこうなったら少しでも気を紛らわせようと事務所内に
『出張居酒屋』を開き、久しぶりに愚痴を聞くことに。特に意味は無い。
「あ、悠人さん。昨晩はお楽しみでしたね」
「あ、昨晩はお楽しみでしたね悠人さん」
「昨晩は煩かったですね悠人さん!」
上から順に渋谷本田島村である。こいつら確実に俺の精神削りに来てる。と言うか何故知ってるし、昨晩どんだけ煩かったのか俺達。
「いや、ナナさんが泊まってたらしいから」
「これはきっと何かある!」
「そう思って言っただけなんですけど…」
なるほど、カマかけられたわけだ。少しでも慌てた俺が悪かったのか。逃げの一手を打とうとしたら太眉ちゃんと病弱の2人が出口を塞いでいた。お前ら無駄にコンビネーション高めんな。
「悠人さん、ヤッたの?」
「直球で聞いてくるあたり流石だと思うよお前」
しぶりんがど真ん中ストレートを投げつけてくるけど、頑張ってバントで交わす。
「何も無いし、何も言わない!」
「じゃあ周子ちゃんに聞けばいいんですね!」
やめろ島村、お前何時からそんなに黒くなった。頑張りますロボだったお前は何処に行った。
しかし今は周子ちゃんが仕事でいないため何もバレる必要は無い。少しだけ安心していた所に、あきえもんが来た。
「頼むから少し静かにしてくれ…。ほら、悠人さん、お希望の記憶復元装置だ。静かにするのが無理なら、お店で見てくれ…」
神は居たと思ったけどタイミングがアウトである。神はいない、その代わり邪神はいる。そう思えたタイミングだった。
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結局、居酒屋にて脳内上映会が開催されることに。NGとTPの面子だけでなく、何故かその場にいた美波ちゃんとアーニャちゃんも参加してきた。止めてくれ、R18なんて誰も得しないぞ。
「悠人さんとナナさんのくんずほぐれつが遂に…」
「お前興奮しすぎて倒れんなよ病人」
「悠人さんはタコさんウインナーに一票」
「ポークビッツに一票」
「お前らに羞恥心は無いのか」
見てみろ美波ちゃんを、事情を把握してから顔真っ赤やぞ。隣のアーニャちゃんはよく分かって無いらしくて、美波ちゃんにしきりに聞いてるけど止めない。何故なら照れる美波ちゃんが可愛いから。
同封されていた説明書には、頭に被るだけと書いてあったので覚悟を決めて装着する。すると、目の前に設置されたスクリーンに映像が浮かびだす。
『楓さん、肌綺麗ですね』
『Pさんも、逞しい体をしてますね』
まず映し出されたのは楓さんとPの触れ合い。何故だろうか、室温が下がった気がする。
「ふーん、ふーん、ふーん!!!」
しぶりんが怖い。
違うシーンをと考えると、場面が移り変わる。
『美波はそろそろ露出を増やしてもいい頃だと思うんだよなぁ…エロいし』
『わかる、美波ちゃんもっと露出すれば男なんてイチコロ確定っすわ』
と、Pと談笑している俺の姿。しぶりんが無言で腹パンをかましてきて。病人が平手打ちを食らわせてきた。これ以上は俺の命が危ないかもしれない。
「Pさんに露出しないって言わないと…」
そんなの勿体ない!と考えていたら、まさかの続きが流れる
『こう、あれだよな。ムチとか持たせて女王様のコスプレさせて恥ずかしさに顔を染める美波が見たい』
『お主も悪よのぉ…』
部屋の温度が氷点下にいったかもしれない。
何処からか持ち出してきた石を、ちゃんみおが足の上に載せてくる。何で正座してたかな俺!?
痛みに顔をひきつらせ、根性で、場面を変える。
『アーニャちゃんにはメイド服が似合うと思うよ!』
『にゃんにゃん言わせたいね神楽君ご奉仕とかご褒美ね!』
「ミナミご奉仕って、何ですか?」
「アーニャちゃん、後で教えるね?卯月ちゃん、追加して」
慈悲は無いと言わんばかりに二つ程追加された。ぼちぼち骨が軋んでるきがする。
その後も多くのシーンが映し出され、石が増加していった。
問題のウサミンなのだが、その様なシーンは一切無く。寧ろナナさんが部屋を間違えて入ってきただけというオチで終わった。ヤッター!生きててもいいんですね!?と石をどけて立ち上がった所で、また映像が変わる。
一糸纏わぬ姿の周子ちゃんが写っていた。それにより場の雰囲気が先程と違い興味に埋め尽くされた所で、俺は考えるのをやめた。
最近書いてて思うのは、神楽は女の子に結構囲まれるシーンが、多いのでハーレムやないかこれって思う。