居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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ドクターでスランプです



閑話:プロデューサーは休めない

プロデューサーの朝は早い。

日が出ると同時に…は言い過ぎであるが5時には目を覚ます。

彼は朝起きてから洗面所で顔を洗うまでの数分間、奴らが動き始める。

 

まず最初の戦いはキッチンで始まる。

ハイライトオフが基本の佐久間まゆ

1度嗅いだら忘れない渋谷凛

お嫁さんにしたいキュート五十嵐響子

朝食に婚姻届和久井留美

 

本日は4人だけであるが彼女達による朝食争奪戦が始まる。

この中でまともに料理をしてくれるのは五十嵐響子のみ。後の3人は互いを牽制する事で料理をする事を忘れ朝から闘争を繰り広げている。

 

一方その頃一ノ瀬は脱衣場から使用済みの下着を持ち帰っていた。

 

 

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プロデューサーは毎朝何故か用意されている朝食に疑問を持たずに食べ終わる。本日の感想は少し鉄の味がしたとのこと。世の中には知らない方が幸せな事もある。

 

仕事に向かう準備を終わらせた彼は鍵をかけ事務所に向かう。

 

誰も居なくなった彼の家の天井からアヤメ=サンが侵入し、火の元や水周りのチェックを行い、満足気に頷きその場から消え去った。ジャパニーズニンジャは不思議だ。

 

彼は電車で通勤している。

朝早いとはいえ電車は混む。人が詰まった電車内で稀に事件は起こる。

チカンである。

お尻を撫でるように触られ身をよじる。お尻、腹部、胸部、そして手がいよいよ陰部に触れようとした時手錠の音がなった。

 

「お話は、裏で聞くわね」

 

ありがとう早苗さん。あなたのお陰でプロデューサーの貞操は守られた。

手錠をかけられた美優さんを見送り彼はまたかと嘆息し電車を降りた。

 

そんな中ウサミンを見つけてしまいプロデューサーはなんとも言えぬ気持ちになった。

 

 

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事務所に着くと緑の蛍光色の服を着た悪魔が待ち構えている。彼女は決まって飲み物を勧めてくるがプロデューサーの財布と引き換えなのだ、余裕がある時にしか買えない、買わない。

本日のスケジュールを再確認しながら彼はデスクに置かれた書類を纏める。本日は蘭子と飛鳥を送迎した後にNGの収録に付き合う事になっている。送迎が必要なのは場所が少し遠いからである。他にも仕事があるアイドル達は自力で向かったり年長組が送迎したり、神楽が送迎したりと各自で動いている。その中でも神楽の送迎が人気である。理由は簡単、金が掛からない。その言葉を聞いた神楽は膝から崩れ落ちていた。

 

事務員が入れてくれたコーヒーを飲みながら彼は昔を思い出す。今よりも小さな事務所、指で数えるほどしか居なかったアイドル達、事務員によるドリンク代という給料の徴収、神楽の居酒屋全焼etc

 

背伸びしてブラックを飲んでいた飛鳥と、それを見て私も!と憧れを含み同じものを飲んでいた2人がコーヒーを噴き出した所で彼の意識は引き戻される。2人が揃ったことで送迎の時間である。彼はそっと立ち上がりキーを取り事務所を出た。

 

一方温もりたっぷりな彼の椅子に輝子と森久保が二人して頭を乗せていた。

 

 

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仕事先のADや監督との挨拶を終わらし彼は再び事務所に戻る。気がつくとお昼に丁度いい時間帯となっていた。

彼は基本昼食は何故か置かれているお弁当か出前を頼む。今日の気分はお弁当だったらしく連絡をしてから数分神楽が料理を届けに来た。頼んだ料理はミルフィーユカツ定食である。なのに数分で出来上がった事に疑問を持った彼は神楽に聞いてみた。

 

「世の中には知らない方が幸せな事もある」

 

その無駄に高い説得力によりプロデューサーは閉口するしかなかった。

そして彼が料理に舌鼓を打っている間は、神楽の命をかけた闘いが始まる。巧みにリボンを操り縛り上げ動きを封じ込めようとする佐久間まゆ、天才的頭脳により発明されたバールの様な物で襲いかかる池袋晶葉、得意のトライデントタックルで肋骨に的確にダメージを与える日野茜、フルートの音により聴覚を刺激し平衡感覚を奪いに来る水本ゆかり。他にも多種多様のアイドルが翌日からお弁当を渡すために神楽を仕留めにかかる。この事務所に神楽の味方は少なくなる時がお昼時である。

 

そんな中こずえの「ふわぁ」と言う欠伸により闘いは終わりを迎えた。小学生は最高である。

 

 

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次の仕事までに少し時間が空いた彼は荒木先生に連れられガチャを回しに出かけた。着くと早々万札を全て崩し100円玉を山の様に積み上げた先生を前にして、彼は言葉が出なかった。お目当ての品を手に入れた時の彼女の笑顔をこっそりと撮影していた神楽から翌日現像された写真を受け取りプロデューサーはテンションを上げていた。

 

 

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これによりプロデューサーという物がどれ程忙しい物なのか理解していただけたと思う。新しく入社して来てくれた武内君も同じ定めを辿るかもしれないが頑張れとしか言えない。

ただの居酒屋店主には荷が重すぎる事柄である。




山もなけりゃオチもねぇよ!

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