背後から聞こえてくる足音が遠ざかり、木霊し消えていく。
彼らはもう洞窟の奥へと進んだようだ。
木々の揺らめきに声をかける。
一対一。この場にはもう、二人きり。
話しかける相手は決まっていた。
「さあ、いい加減に姿を現したらどうだ。もうここには私と君しかいない。そして私を倒さなければ、ジンたちを追うことはできない」
人狼。君の敗因は初撃の奇襲を外したこと。
門番が門の前から退いた以上、全員で君に挑む必要はない。
そして、人狼はその姿を現した。
「なっ、」
その姿を見た瞬間、思わず漏れる動揺を隠しきれなかった。
そして理解し、溢れ出るのは悲しみにも似た感情。
名も知らぬ人狼。
私は彼らとの約束がなければこの身を喜んで君に捧げていたことだろう。
それだけの尊敬と献身を捧げることに否はない。
君は確かに気高く、どこまでも義に厚かった。
私の前に現れた人狼の目と耳は潰れていた。
潰されていたのでなく潰していた。
どうしてかと問うまでもない。
人狼はガルドから飛鳥のギフトを聞いていたのだろう。
そしてその能力(ちから)から逃れるために視覚(め)と聴覚(みみ)を潰した。
無論、狼である彼にはまだ嗅覚(はな)が残っている。
だから大丈夫だなどと何故言えよう。
彼はもう二度と、光も見えず何も聞こえない。
“フォレス・ガロ”。
自らのコミュニティのために自らの獣としての能力(ギフト)を捨てた。
ただ一度、この『ギフトゲーム』に勝つだけのために彼は人生を、ガルドを、友を守るために力を捨てた。
溢れるこの感情を抑えることなどできない。
ああ、本当にこの箱庭には私を打ち震わせてくれる存在が多すぎる。
人狼は吠える。それは私への怒りかそれとも変わり果ててしまった友への慟哭か。
「人狼。君は気高く強い、そんな君と同じ次元で戦うことに否などない」
私はこの世界に来て初めて闘う決意を決めた。
黒ウサギの耳はこの『ギフトゲーム』の大まかな状況を捕えているだろうが、見られていないことは救いだった。
「UuuuuOooooonnnn!」
人狼。私は君と本当の意味で戦おう。
影が蠢く。黒さは増し黒々とした色は何処までも深い闇の色へと変わっていく。
光があるから影は生まれる。光のもとに影はなる。
そして、輝きを受けたものの足元に這いつくばるしかない影は反旗を翻した。
足元から徐々に影は身体を飲み込んでいく。
頭の天辺まで飲み込まれ“山田真央”という人間を写し鏡にしていた私の身体は完全な影となった。
ドッペルゲンガー。二重に出歩くもの。
ドイツやヨーロッパの伝承に登場するその化け物の逸話はいくつか存在する。
そしてそのいくつもの逸話の中で共通しているものは二つ。
ドッペルゲンガーを見たものは死ぬ。
そして、ドッペルゲンガーは誰にでもなることができる。
「UuuuuOooooonnnn!」
「GuuuuOooooonnnn!」
響き渡る二つの雄叫び後、交差する獣の影がそこにはあった。
闇から出でて影として生まれる私。
誰でもない私は誰にでもなることができる。
敵が強大であればあるほどに私という影もまた巨大なものになっていく。
だからこそ、私を倒すためにはまず自分を倒せるようになる必要がある。
自分自身との戦い。
守るべき仲間とも戦う。
友と共に友と戦う。
それは夜の世界で影を探すように、自分の影を踏もうとするように。
ただ空振り、自分で絞めた縄を解くような、そんな空しい行為だ。
空しく、虚しく、空っぽだ。
そんな私を倒したものたちがいた。
私と戦いながら自分と戦い。
守るべきものを守りながら守るべき仲間と戦い。
友と共に友と戦い。
あらゆる姦計、謀略。背徳に惑わされることなく偽りの写し鏡を砕き。
私の真実にたどり着いたものたちが、かつていた。
その輝きは無類だ。
人狼。君の輝きを否定する私ではない。
君に称賛を送ることに否などない。
しかし、やはり彼らには届かない。
「uuon・・・」
戦いの末に人狼は倒れた。
そして、ゲーム終了を告げる声が直接頭の中に聞こえてくる。
――“フォレス・ガロ”のリーダー“ジル・ギレイ”が倒されました。
『獣を狩るもの狩られるもの』の“ノーネーム”側の勝利条件が満たされました。―――
“フォレス・ガロ”のリーダーが変わっていることに一瞬だけ戸惑う私だが、すぐに悟る。
人狼。ジル・ギレイ。君はどこまで友に優しい男だったのか。
それを友情と呼ぶには、あまりにも悲しすぎる。
―――――✠―――――
『ギフトゲーム』の終了が箱庭の中枢より告げられ、舞台区画から出た私達を待っていたのは十六夜と黒ウサギ、そして非道な手段により“フォレス・ガロ”の傘下にされていたコミュニティのものたちだった。
“人質”という手段で二一〇五三八〇外門付近に君臨し、その人質すらも殺害していたコミュニティ“フォレス・ガロ”を倒した私達“ノーネーム”。
だというのにその場には不思議なほどに喝采はない。
その理由はわかっている。
「俺達は・・・貴方達のコミュニティ――“ノーネーム”の傘下になるのですか?」
代表者の男は恐る恐る、ジンにそう言った。
それは感謝の言葉でも、解放された喜びでもなかった。
そう、“ノーネーム”。旗も名も失った私達に信頼はない。
“フォレス・ガロ”から逃れたところで“ノーネーム(名無し)”に捕まってしまうというのであれば、喜べるはずもなかった。
しかし、
私は失笑を止めることはしなかった。
それはジンを、“ノーネーム”を知らなすぎる。
だから、そんな不安も
「今より“フォレス・ガロ”に奪われた誇りをジン=ラッセルが返還する!代表者は前へ!」
十六夜の言葉と共に消え去った。
「聞こえなかったのか?お前たちの奪われた誇り―――“名”と“旗”を返還すると言ったのだ!コミュニティの代表者は疾く前に来い!“フォレス・ガロ”を打倒したジン=ラッセルが、その手でお前達に返還していく!」
旗も名もない“ノーネーム”。だからこそ、“ジン=ラッセル”というリーダーの名をブランドにして、信頼を勝ち取っていくという十六夜の作戦を私は事前に聞いていた。
粗暴で凶悪で快楽主義者だと自分から言っていた十六夜が何故”ノーネーム”に協力的なのか、その理由を知る私ではない。
だが、十六夜。お前もまた見つけたのだろう。私がそうであったように。
可能性を。輝きを。面白いものを。
――――この箱庭の世界で。
十六夜に背中を押され、ジンは1000人もの観衆の前に立ち“名”と“旗”を返還していく。
「“ルル・エリー”のコミュニティ――――そしてこれが旗印です」
渡された“ルル・エリー”の代表者の男は、返還された旗を抱きしめ泣き崩れていた。
「もう“ルル・エリー”とは二度と・・・二度と、名乗れないと・・・掲げられないと思っていたのに・・・!」
「その旗と名前、二度と手放さずにいてくださいね」
「ああ・・・!俺たちは“ルル・エリー”の名と旗印を、誇りを二度と無くさない!この恩は俺たちの旗が掲げられる限り忘れねぇよ、ジン坊ちゃん!」
ジンの手で次々と変換されていく“旗”と“名”。
その光景は闇より出でて影として生まれる怪物である私にも、感慨深いものだった。
「この光景を見ると実感できるのでございますよ。黒ウサギたちは本当に“フォレス・ガロ”に勝ったのですね。これで“フォレス・ガロ”の圧政もようやく終わりました」
何時の間にか隣にいた黒ウサギはウサ耳を躍らせながらそういった。
終わり?いいや、違う。
「これは始まり。新生“ノーネーム”。その序曲に過ぎないよ、黒ウサギ。ジン。十六夜。耀。“飛鳥”。彼らはようやく立ち上がった。この“箱庭”に」
修羅神仏から悪鬼羅刹まであらゆる可能性を封じ込めた、この神々の遊び場に。
今ようやくの始まりだ。待ちかねた。私は彼らを見た瞬間から確信していた。
二度目の箱庭世界で、私は前回よりも満たされるだろう。
空虚なこの身体がまた前に進む。
逆廻十六夜。春日部耀。久遠飛鳥。
時代の新生児。超越者の赤子。憧れずにはいられないその輝き。可能性。
そして、ジン=ラッセル。
前の箱庭世界で消えゆく刹那に魅せられた光を継ぐもの。
「私に見せてくれ。その輝きを、光を、可能性を」
君たちに出会えて本当に良かった。
私の本心。本音を聞いた黒ウサギは確信した様子で私に問いかける。
「やはり、そうなのでございますね。黒ウサギは以前、真央さんに出会ったことがあります。いえ、いえいえ、貴方様はそれを隠そうともしていませんでした」
昨日、湖で黒ウサギと再会した時に私は確かに言った。
―――昔のよしみ、と。
「そしてジン坊ちゃんから真央さんが”ノーネーム”の意味を知っていたということも、聞きました」
知らないはずがない
かつて、私は多くのコミュニティを“ノーネーム”へと追いやった。
私の影に潜む“羨望”という欲望を満たすために。
「そして何より、その顔には覚えがあります。まるで子供のように純粋で、餓鬼のように節操がなく、光に憧れる影のようなその笑顔を黒ウサギは覚えています」
そうか。ようやく、思い出してくれたのか黒ウサギ。
実をいえば、意外とさみしかった。
私は私に敗北を教えてくれた君のことを片時も忘れたことはなかったというのに、君は私の姿形が変わっただけで思い出してはくれなかった。
そのことをさみしいと感じられるほどには、前の世界で暮した18年間の間で私は人間臭くなっていた。
「お久りぶりでございますよ。“背後から刺す魔王”」
「頭に元を付けてくれないか、いまに私は魔王ではない。ただの真央だ」
「そんな冗談を聞き逃せるくらいには黒ウサギは温厚篤実ですが、ジン坊ちゃんの傍にかつての敵を置いておけるほどに不実ではありませんよ」
普段の黒ウサギからは想像できないほど鋭い目が私を射抜く。
ウサ耳が逆立ち、艶のある黒髪を淡い緋色へと染めていく。
仇敵との再戦。それもいい。ここで黒ウサギと戦うことに否はない。
かつての私であったなら、欲望の赴くままに黒ウサギと拳を交えていたことだろう。
しかし、今の私は―――
「どうしたのですか。そちらから来ないのならこちらから―――」
両手を挙げ、苦笑する。
「―――どういうつもりです」
「降参だということだよ。私は今、君と戦うわけにはいかない」
「どうしてです」
「君と戦えば、ジンが悲しむだろう。ジンの涙は美しい。だが、むやみに流させるわけにはいかない。私が次にみるジンの涙は嬉し涙であってほしいと思っている」
戸惑う黒ウサギに私は笑いかける。
「私はね、黒ウサギ。ジンと約束した。ジンが望むのならば君の力になると」
「・・・信じろというのですか。謀略と背徳を司ると言われた魔王の言葉を。裏切りは貴方にとって生き甲斐のようなものだったと黒ウサギは記憶しています」
裏切りが生き甲斐か。
かつて私の提唱した『ギフトゲーム』を知っていては、そう思われてしまうのも仕方がなかった。
『ギフトゲーム』――魔王の正体を見抜け。
誰にでも成れるという私の能力(ギフト)を最大限に生かした、1ヶ月に及ぶ長期戦。
そのさなか、私は敵であるコミュニティのあらゆる人物に成り代わった。
真似て演じて踊り続けた。
結果、訪れるものは不協和音。
大概のコミュニティは私が手を下すまでもなく、内側から瓦解した。
コミュニティにおいて最も大切な仲間との絆を、私は引き裂き勝利した。
他の魔王がそうであるように、ただ壊され奪われただけならばまた再興の望みはあるだろう。
今のジンが旗と名を失いながらも仲間を取り戻そうとしているように。
しかし、私に壊されたものは2度と元には戻らない。
謀略と背徳。
戦闘力以上にその戦い方を嫌われて、私は箱庭で最も恐れられる魔王の1人となった。
“背後から刺す魔王”。
その2つ名はこの箱庭の世界において、裏切りの代名詞に他ならない。
そんな私が信じろという。疑うことは無理もない。
しかし、私は――
「信じてほしいとそう言おう。それがどれだけ滑稽なのかも、君たちが詐欺師の詭弁を聞くほど愚かでないことを知りながらも私は信じてほしいとそう言おう。私は焦れた。憧れずにはいられなかった。仲間を最後まで信じつづけ、私に勝利した君たちを。敗北の刹那に見た輝きを」
だからこそ、箱庭の世界に再び来た時に黒ウサギを見た瞬間、歓喜に震えた。
再び彼らと相見えられる。あの輝きを目に焼き付けられる。
そして次こそは、あの輝きの影となれる。
しかし、
「現実はそう優しいものではなかった。私が再びこの箱庭に下りた時、君たちは既に敗れていて、その輝きは砕けていた」
「っっ、それはっ、貴方がっ、貴方のせいで―――」
「そうだっ」
溢れる感情の爆発を止めることはしない。黒ウサギの言葉を遮り、地面に膝をつき頭を垂れる。
「私がいけない。私が悪い」
私の所為だ。
「私が、あの輝きを砕いた。憧れ、焦れ、唯一無二であった本物を、壊してしまった」
そんなものはないと思っていた。
口でどれだけ綺麗ごと言ったところで、そんなものは存在しないと信じていた。
誰が、誰が信じられるという。
真実の愛。
そんな、不確かなものを。
少なくとも私には無理だった。
闇より出でて影として生まれる私には。
友はいる。コミュニティの仲間たちを信頼してはいた。
しかし、それが真実のものかと聞かれればあの頃の私は首を振っただろう。
この世界に本物(ホンモノ)などない、と。
だが、あった。
そこにあった。
あったんだ。
私は、気づくのが遅すぎた。
探せばそこにあったと言うのに。
気づいた時には、私は敗れ。箱庭を去らねばならなくなっていた。
だからこそ、再び箱庭に来た時に黒ウサギを見てまだ彼らがいると思ったときどれほど嬉しかったか。
彼らのコミュニティが負けて“旗”も”名“も失ってしまっていると聞いたときどれだけ悲しかったか。
そして、ジン=ラッセル。
彼らの光を受け継いだあの小さな少年に出会った時、どれほど私の身が震えたか。
私は決めた。ジンに出会ったときに誓った。
あの輝きにこそ憧れた。小さなあの手の熱さを私は生涯忘れない。
あの光こそを愛した。小さなあの瞳から流れた涙を私は生涯忘れない。
ああ、そうだ。そうだとも。
「私はもう2度と私の愛を見失わない」
壊してなるものか。壊させてなるものか。
あの本物(ジン)を―――――。
そこまで言って。黒ウサギの様子が変わっていることに気付く。
見ず知らずの老人のために身を捧げた月の兎こそ、黒ウサギの真実の姿。
献身の象徴たる彼女に私はジンのために仲間として働くと熱く語った。
その意を組んでくれない黒ウサギではないだろう。
淡い緋色の髪は既に艶のある黒髪に戻っていて、それはもう私に対する敵意がないことへの表れだった。
なぜ、顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせているかは謎だったが、私のジンに対する忠誠を理解してくれたのならそれでいい。
「あ、ああ、貴方は、“貴女”は、ジン坊ちゃんのことを・・・いえ、いえいえいえ!そんなのはいけません!まだジン坊ちゃんには早すぎます!」
早すぎる?ジンがかつて魔王であった私を率いるには幼すぎるという意味か。
確かに、傍から見れば力不足に見えるかもしれない。
だが、
「周囲の目など気にする私ではない」
そう言うと黒ウサギはなぜかウサ耳まで真っ赤に染めながら怒った。
「そこは気にしてください!だ、大体ですねえ!貴女が良くてもジン坊ちゃんにも準備というものがあります。経験とか、体の成長とか、そういうもろもろがあるんですぅ!黒ウサギとしてはリリちゃんあたりといい関係を気づいてくれたらなぁと思っていたんですぅ!貴女がいきなりしゃしゃり出ないでください!」
準備?経験?成長?怒りの所為か崩れた口調の所為で半分くらいなにを言っているのかがわからなかったが、黒ウサギがジンを子ども扱いしているということはわかった。
なにを言うか。優しさと甘やかしの違いはわからない君ではないだろう。
確かにジン自身、黒ウサギに頼ってばかりだったと言っていた。
しかし、ジンは成長している。いつまでも子供のジンではない。
「ジンはもう立派な男だ。君は知らないだろうが、私はしっかりとジンの男の部分を見ている」
“フォレス・ガロ”との『ギフトゲーム』の際、ジンは耀と飛鳥の間に信頼が生まれるのを喜びながらも周囲への警戒を怠ることはしなかった。
ジル・ギレイを前に1人残った私に対して、時間さえ稼いでくれれば自分は勝利を掴みとると言ってみせた。
その姿は立派なものだった。
だというのに黒ウサギは頭から煙を出しながら
「お、男の部分を見た!?何を見たって言うんですか何を!?ジン坊ちゃんに何をしやがってくださったんですかこのお馬鹿様は!?」
などと意味不明な言葉を羅列しながら私に圧し掛かってきた。
そんなにジンが1人立ちすることを認めたくないのか。
「ええい!どこまで過保護だ君は!」
「黙らっしゃい!この変態色情ペドフィリア!やはり貴女は黒ウサギが駆除させてあがられますぅ!貴女みたいな存在は世界中の少年の情操教育上の害悪でしかあられませんですよ!」
「な、なに?日本語を喋れ、日本語を!何を言っているかさっぱりわからない」
そして圧し掛かってくるな。胸がもろにあたっている。
私は男だぞ。女性としての慎ましやかはどこにやった。
私に襲い掛かる黒ウサギ。
そこにはもう私が憧れた完璧な女性としての黒ウサギの姿はどこにもなかった。
艶やかな黒髪に女性として完成された肢体を持ちながら、なんて残念な女だろう。
結局、私と黒ウサギの小競り合いは全てのコミュニティに旗を返し終えたジンに発見されるまで続き、十六夜達の調停―――
「なんか面白いことになってないか」ヒソヒソ
「黒ウサギは真央さんが男だって知らないから」ヒソヒソ
「・・・真央の言動は誤解されやすい」ヒソヒソ
「「「・・・これは面白い」」」ニヤニヤ
―――によってなんとか終結した。
十六夜になにを言われたのかはわからないが、何とか平静を取り戻した黒ウサギは私に
「真央さんがジン坊ちゃんに対して本当に協力的だということは理解しました」
と一言謝りながら言った後、顔を赤らめながら
「ですが、黒ウサギは絶対に認めませんからねっ!」
と言ってきた。
黒ウサギが私を信じてくれたことは素直に嬉しい。
しかし、後半のあれはどういう意味だろうか。
さんざん考えてもわからなかった私は十六夜に理由を聞いたが、
「さあ」ニヤニヤ
次に耀に聞いてみたが、
「さあ」ニヤニヤ
そして飛鳥に、
「さあ」ニヤニヤ
あの3人、絶対何かを隠している。それを感じ取れない私ではない。
「山田さーん。そろそろ帰りますよー」
「ああ、すまない。いま行くよ、ジン」
しかし、友である彼らから無理やり聞き出すわけにもいかず、モヤモヤしたものを抱えたまま私は帰路へとついたのだった。
「うぅ、ジン坊ちゃん。真央さんとあんなに仲良く。十六夜さんたちの言っていたことは本当なのですね・・・ぐすん」
「「「ジン(君)も男の子だからな(ね)」」」クスクス
疑問、感想等がありましたらお気軽にお聞かせください。