【凍結】 突然転生チート最強でnot人間   作:竜人機

23 / 32
2016.3/10
21話~31話まで一部手直しに付き、差し替えました。

2018.3/5
1話~31まで設定見直しにより一部設定変更+グロンギ語ルビ振りに付き手直し、差し替えました。




23 「ムリムリムリ、無理です! 」

 

 

 

 

 

 

「ハッ」

 

 鋭く放たれた左からの切り上げの一撃を手にしている「剣」で受け、お返しにと横薙ぎで切り付けるも素早く身を引いて躱してみせた。

 

 次いで放たれた踏み込んでの唐竹から切り上げの二連撃を躱し、あるいは受け弾き、体勢を崩して突きを繰り出すが、しかし無詠唱で展開された渦巻く風の盾でそれは防がれる。

 

「シッ」

 

 風の盾で「剣」が弾かれて体勢が崩されたところへカウンターの突きが襲い掛かってくる。何とか身を捻りそれを躱してバックステップ。間合いを取る。

 

 そして互いの隙を探して睨み合った。

 

 

 

    突然の拾捌「実力は上々」

 

 

 レイルを仲間にしたあの後、宿を引き払ったレイルを連れてまずはと、俺たちは工房を間借りしてお世話になるフェフたちクラン「翼の剣」に面通ししようとなり、彼らがフストレーでの定宿にしている「陽だまりの虎亭」へと向かった。

 

「紹介するね。今日出会ってアーズと私の仲間になった、レイルだよ」

 

「あら、可愛い娘じゃない」

 

「あの、僕、レイルって言います。歳は15です。

 えっと、あの、アーズさんたちに助けられたというか、拾われたというか、とにかく今日からアーズさんたちと一緒にやっていこうってことになりました。よろしくお願いします。

 それで後、その、僕、男です」

 

 賑わい始めていた夕暮れ時の宿の酒場は、オレが入ると共に少々静かになったが、丁度軽く飲んでいたフェフたちは暖かく迎え入れてくれた。

 そしてレイルを紹介し、まあ、案の定。俺たちと同じようにフェフたちもレイルを女の子と勘違いした。

 

「言われなきゃ男の子には見えないな」

 

「ほお、こんなめんこいとに」

 

「今まデ良くその手の趣味のヤツに襲われたリしなかッたナ」

 

 ついでと夕食を共にし、レイルとの親交を深めるオレたち。話題はもっぱらレイルの容姿で、シャンフィがリザやマリーを相手にいつか必ず可愛い格好させようと盛り上がっていたのは余談だ。

 

 ともあれ、そこでオレはレイルがどれくらいどんなことが出来るのかを見るために、拠点の改築が終わる頃までの間、近くの村々へ行商に出ることを思い付き、どうせならとフェフたちから2人を護衛に雇いたいと持ちかけた。

 

 護衛料は一人2,400(カヒイ)の4,800Kで、ボーナス危険手当付きだ。

 

 話し合いの結果、リザとマリーが護衛として同行することになった。リュコもついて来たがったが、なんとか宥めてお留守番となった。

 

 今回は前回の失敗、カロロ村であまり売れなかったことを踏まえ、金物以外も取り揃えるために出発は二日後とし、シャンフィとレイルに手伝ってもらい準備に勤しんだ。

 

 

 そうしてフストレーの街を出発し、街道沿いに南へ牛車で進むこと三日の今日。昼に辿り着いた開けた場所に出来た休憩地。

 

「レイルは剣術、ちゃんと使えるの? 」

 

「あ、はい。剣士だった父さんに剣術を習いましたからちゃんと使えますし、魔法使いだった母さんからも魔法を習ってますから、何かあっても自分の身は守れると思います……多分、ですけど」

 

 携帯食による軽食を取っている際、リザがレイルの腰に提げたショートソードを見て問えば、返って来たのはやや頼りない答え。

 

「……魔法は、何がどこまで使えるんですか? 」

 

「えっと、闇属性魔法を中級中位の「対魔法防御魔法【影霧】(シャドブラー)」までと、風属性魔法を初級上位の「防御魔術【風盾】(シルト)」まで使えます」

 

 次いでマリーからの問いにも答えるレイル。

 シャンフィに会話を訳してもらったが、なんというか実力が計りづらい。魔法の腕は仮にも中級中位の魔法を使えるということで魔法使いと呼べるレベルのようだが、肝心の剣術がどれくらいの腕なのかわからない。

 魔物の群れに追い駆けられて泣きながら逃げていた第一印象のせいか、剣術の腕はヘッポコな気がしてならない。

 

ジョギ(よし)ロギゲンゼロジャデデリスバ(模擬戦でもやってみるか)

 

『アーズ? 』

 

 オレは立ち上がると、幌牛車に載せていた「木剣」、魔道具化してシャンフィの護身用にしようと思っていたものから二本取り出して一本をレイルに放り渡した。

 

「レイル」

 

「え? とわ!?

 な、なんですかこれ? 」

 

「えーと、レイルの実力がいまひとつわからないから、これから模擬戦をやるぞ、って」 

 

「模擬戦!?

 ムリムリムリ、無理ですよ!

 僕を追い駆けてきた魔物の群れを一掃しちゃうようなアーズさんと模擬戦なんて!! 」

 

「もう、模擬戦くらいで何ビクビクしてるの!

 ほらっ、立って! 」

 

 模擬戦と聞いて早くも逃げ腰なレイルをシャンフィが立たせようと引っ張る。助けを求めてリザたちに目を向けるレイルだが――

 

「応援してあげるから、怪我しないようにがんばんなさい」

 

「……がんばってください」

 

 ――苦笑交じりの励ましを贈られるのみだった。

 

 

 そしてヘタレて逃げ腰だったのも束の間、剣を交わしている内にエンジンが掛かったのか、積極的に攻めてくるようになり、冒頭へと戻る。

 

 こうして模擬戦をしてみてわかったことは、レイルの剣の腕は決してヘッポコではないということと、どうもレイルは自分自身で認めてヘタレの臆病と言うだけあって本番に弱いタイプのようだ。

 性格が災いしていざという時に二の足を踏んでしまい、実戦で本領を発揮できないのだろう。

 

「トライスラッシュ! 」

 

 切り上げ、袈裟斬り、横薙ぎの3連撃で三角形の軌跡を描くMoLOで見知った片手剣スキル、「トライスラッシュ」を放ってくるレイルに一瞬驚くが、すぐに持ち直して3連撃を受け切ってみせる。

 

「くっ」

 

 トライスラッシュを放った後の硬直、隙を思ってか顔を引き攣らせるレイル。

 

 そしてオレは――

 

ボボラゼゼギギザソグ(ここまでで良いだろう)

 

 ――木剣を下ろして模擬戦終了を告げた。

 

「終わり、ですか……」

 

「うん、レイルの実力は充分わかった、って」

 

「……ハァ~」

 

 シャンフィがオレの言葉を訳し伝えると、それを聞いたレイルは腰が抜けたようにその場に内股に座り込んだ。

 

 ……レイル、シャンフィに燃料を投下するような仕草を素でやらんでくれ。目をキラッキラさせてるから。

 

 何だか関係ないことでドッと疲れた昼下がりだった。

 

 

 

 ぱちぱち、パチチッ

 

 

 この世界のエルフを始め、ダークエルフ、ドワーフ、ドラゴニアンは不老長寿な種族だ。

 

 夜番で焚き火を見ながら何をいきなり言い出しているのかといえば、寿命の長い純粋なダークエルフのレイルと共に生活していくことになって、ふと思ったというか気になったのだ。

 オレの寿命はどうなのか、この身体は老いるのか、と。

 

 それでレイルに聞いたのだ。エルフなどの不老長寿の種族はどんな風に歳を取り、どれくらい長くいきるのか。

 

 話によればエルフやダークエルフは20歳までヒューマーや獣人と同じ成長の仕方をし、20歳以降から不老となり、ゆっくりと歳を取っていくそうだ。

 ちなみにドワーフは30歳まで、ドラゴニアンは20歳までヒューマーや獣人と同じ成長の仕方をしてそれ以降からゆっくりと歳を取っていくという。

 

 寿命の長さは大体でドラゴニアン≒エルフ>ドワーフとなっているらしい。

 

 チートなこの身体のことだ不老不死などと言われても納得できそうで怖い。そして何より、出会った者たちが老いて死んでいくさまを見て、オレは平常でいられるだろうか………

 

 遠い未来を考えると、怖くて仕方なくなった。

 

 

 パチッ、ぱちぱち

 

 

 軽く頭を振って、考えを払う。

 

 まあ、今はどう考えても答えはわからない。

 

 今出来ることをやっていくのが一番だ。

 

 

 

 

 

 

         ドグ・ヂヂ・ボンデギビジュジュゾ(To Be Continued)………

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告