11話~20話まで一部手直しに付き、差し替えました。
2018.2/27
1話~31まで設定見直しにより一部設定変更+グロンギ語ルビ振りに付き手直し、差し替えました。
「ごめんくださーいっ」
馬車屋のカパルさん。
テエジエの北側にある職人街の近くにあるお店で、辻馬車に馬車の貸し出し、馬車や荷車などの製造と修理、販売をしている一般的な馬車屋さん。建物は馬車を出入りさせるために広く大きく取られた出入り口を持った、
職人街の近くにあるのは、製造とか修理とかが関係しているんだと思う。
プリヴェラ学院は街の南側に在るらしいから、このまま南側に行かずに用事を全部済ませたい。理由は「なんとなく」で、自分でもはっきりしないんだけど、多分学院を見たら泣いてしまうんじゃないだろうか。そんな気がする。
このテエジエは大好きなお父さんお母さんと移り住むはずだった街。本当はまだあまり来たくなかったんだけど、アーズに押し切られるように来てしまった。
でも、来てみれば「案ずるより生むが易し」って感じで、ビックブルのタロウスの世話やアーズのための通訳やらで何かを気にする暇もない。
それにしても、なんでみんなあんなにアーズのこと怖がるんだろう? 確かに強面といえる顔だし、話す言葉はこの世界じゃ聞いたことも無い不気味なグロンギ語だけども。それでも別に敵意を向けたり、殺気だって威嚇しているわけでもない。むしろ理性的に、できるだけ温和に接しているのに。
強面で言えば
「はいよ、何の用だい」
と、考えてる内にやって来たのは眼鏡を掛けた「竜人」のおじさんだった。
「………」
「うん? どうしたい? 」
「あ!? す、すみません!
ちょうど竜人の冒険者さんの方がアーズ、私の親代わりのヒトより厳つくて強面だな、とか考えてて、えとその、すみません! 」
「はっはっは、面白い嬢ちゃんだのお。
で、何の用なんだい? 」
「あの、馬車を買いたくてフラウラー商会からの紹介で来ました。
これ、紹介状です」
「フラウラー商会から? 」
掛けている眼鏡を直して私から受け取った紹介状に目を向ける竜人のおじさん。
「あの、親代わりのヒトと馬車を牽かせる子もすぐそこまで来てるので、呼んで来ますね」
なんとなーく居辛くて足早に来た道を戻ることにした。
「これは、なんと、いうか………」
連れてきたアーズとタロウスを見て、そんな第一声をこぼす竜人のおじさん。
紹介状に何か書いてくれてあったのか、一瞬目を見開いて身構えたけど、なんとか思いとどまったという
アーズと竜人のヒトの強面度合いを比べたら雰囲気とか抜きにすれば大差ないと思うんだけどな? みんな何をそんなに怖がるんだろう。
「………ボンタロウスビジバゲスダシャガゾギギンザガ、ゾンバロボガガスザソグバ」
「このタロウスに、ビックブルに牽かせる馬車が欲しいんだが、どんなものがあるだろうか、って言ってる」
「あ、ああ、ひとまず、今すぐに用意できるのは荷馬車か二頭立ての幌馬車、あとは四頭立ての箱馬車だが………」
毎度になりつつある反応に溜め息まじりになりながらも、めげずに馬車について問うアーズに、どこか腰の引けている様子で答える竜人のおじさん。
提示された値段は荷馬車が25
四頭立ての馬車でも余裕を持って買えるけど、アーズはどれにするんだろう?
そしてしばし思案したアーズはこう言った。
「えっと、四頭立ての箱馬車と、二頭立ての幌馬車を買うから、四頭立ての箱馬車に幌馬車を、牽引できるようにしてくれないか、って言ってます」
「四頭牽きの馬車に二頭牽きの馬車を引っ張らせるってのか、ビックブル一頭に? 大丈夫なのか? 」
「えーと、元々馬の牽く馬車ほどの速さは求めていないから問題ない。ゆっくりとならビックブルの力で充分いける、だそうです」
「まあ、そうまで言うなら箱馬車に幌馬車を牽かせるのは荷馬車用の牽引器具を上手く使えばできるだろうし、出す物さえ出してくれればやるが」
アーズは晶貨1枚と金貨8枚、108Lの馬車の代金とタロウスに合せるのも含めた馬車の改造費用とちゃんとした手綱などに銀貨70枚、70Cを引け腰の竜人のおじさんへ私を通して渡し、私たちは馬車の改造が終る頃までの間、必要な買い物をすませることにした。
そうして買う物はと言うと、大まかに衣類に食料と雑貨の三つ。
嵩張る物、重い物を後回しにするならまずは衣類で次に細々した雑貨、最後に食料と言ったところだけど、アーズのアイテムボックスがあるから、そんなの気にせずに買い物できるんだけどね、ホントは。
ティグリスさんが一緒だから気軽にアイテムボックスを使うわけにも行かないから普通に買うことに。
アーズ独自の魔法だ、で通せばティグリスさんは問題ないような気もするけど。
ティグリスさんの案内で服屋さんに道具屋さん、野菜屋さんに肉屋さんへ足を運び、買う物を買っていく。
服屋さんでは主に古着で私の服を買い、後はアーズのチートな知識と技術で裁縫するために布とハサミに針と糸をいくつか。
道具屋さんでは旅に必要なものを主に買い、他に薬扱いの香辛料を幾つかとアーズが薬草の調合用にと乳鉢など色々買っていた。
最後に野菜屋さんと肉屋さんで、それぞれ新鮮な野菜と鶏肉や豚肉を買い、そして来た道を戻るように馬車屋のカパルさんへ。
怖がられながらの買い物で、残金は276Lほど。
馬車の購入を除くと、服屋さんと道具屋さんでのアーズの買い物が一番高い買い物になりました。
「お、おおう、戻ってきたかい」
アーズを前に相変わらず引け腰の竜人のおじさん。
そうして持って来られた四頭立ての大きくりっぱな箱馬車に、幌馬車を牽引できるよう繋げただけあって見た目はチグハグで不恰好な馬車。いえ、牛の魔物であるタロウスが牽くから、もうこれは牛車かな。
ちなみに、街を出た後にアーズがチート全開で、牛車を見た目から何から魔改造する予定です。
幌の掛かった後ろの牛車の方へ買って来た荷物を載せて、タロウスを牛車に繋ぎ、竜人のおじさんにお礼を言って東門を目指して出発。
私は疲れただろうというアーズの言葉に甘えて、箱馬車、前の牛車の方へ乗って帰ることに。御者台にはアーズとティグリスさんが乗ってゆっくりと進んで行く。
そして元箱馬車はお金持ち用というだけあって椅子の座り心地が良く、ゆっくりと進む揺れに、自分で思う以上に疲れていたのか、私は街から遠く離れるまでぐっすりと眠ってしまいました。