【凍結】 突然転生チート最強でnot人間   作:竜人機

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 ※主人公は喋る言葉がグロンギ語に自動翻訳されるだけで、グロンギではありません。
 よって数字の読み方、数え方は0の概念が無く9進法で物を数えるグロンギと違い、普通に10進法を使うため、数字はパパン(1)やバギン(9(10))というようなグロンギ独自の読みではありません。


2016.3/5
11話~20話まで一部手直しに付き、差し替えました。

2018.2/27
1話~31まで設定見直しにより一部設定変更+グロンギ語ルビ振りに付き手直し、差し替えました。



13 「誠実な商人さんって信頼できて良いよね」

 

 

 

 

 

 

「1枚でも良いから、と言っていたようですが、どれくらいお持ちに? 」

 

 通された商談用の部屋の高そうなソファーに座り、出された紅茶で喉を潤し、一息つけたところで早速商談へ。

 

「ザギショグガパゲデキュグラギデグ」

 

「えっと、大小合わせて9枚です」

 

 革袋から傷も欠けもない綺麗な赤い竜の鱗、大2枚、中3枚、小4枚の9枚全部を出して、テーブルに大きさ順に並べる。

 驚きで言葉も無い様子のフラウラ婦人。

 ヒートドラゴンの鱗はかなりの希少品らしいからな。状態が良くて複数枚どころか、3サイズずつ目の前に出されれば無理も無いか。

 

「出来れば即金でお願いします。この後に鱗を売ったお金でタロウス、外に止めさせて貰っているビックブル用の荷車とか色々買いたいので」

 

 シャンフィがオレたちの要望を伝えるが、フラウラ夫人は渋い顔をする。

 

「即金で、となると………一番小さい物一枚でも難しいですね」

 

「なら、一枚は、そちらの用意できる、良い値で構わないって言ってます」

 

「しかし、それは扱う物に適正な価値を付けるべき商人として許せることではありません」

 

「? 物を安く買って高く売るのが商人じゃないんですか? 」

 

 商人としての自身の矜持を述べたフラウラ夫人の言葉に疑問を持つシャンフィ。

 確かに商売とはそういうものだ。如何に原価を安くし物を売るか、商売人はその差額で儲けるのだから。

 

「たしかにそれも商人として正しいことだけれど、それは土地々々の物価の違いから、あるいは物を買う相手と交渉して互いに納得した上でのこと、何の話し合いも無く、適正な価値すら付けず、ただこちらに好きに値をつけて良いでは、それはあまりに不誠実です」

 

 腹芸なくして商人はやって行けないだろうが、しかしこうも誠実な人もいるものなのか。信用第一な客商売だからというのもあるんだろうが、この誠実さはこの人だから、て気がするな。

 

「………えっと、では、そちらが今、即金で用意の出来る、最低限の値を、前金とするのは、どうだろうか」

 

「前金、ですか? 」

 

 夫人の問い返しにオレはゆっくりと頷く。

 

「この鱗9枚を、あなた方商会を信用して預ける。

 鱗の売り上げの何割かを、後金としてこちらに、残りはそちらに、というのはどうだろうか、だそうです」

 

「確かにそれなら………」

 

 あごに手を当て考える仕草を見せるフラウラ夫人。何気ない仕草が絵になる赤毛褐色肌の美人さんである。若旦那と呼ばれるくらい―― 仕事を任せられるていることだろうから、恐らく若くて二十路前か二十代前半くらいか ――の子供がいるとは思えない若々しさもあって本当に美人さんである。大旦那さん爆発しろ。

 

 むぎゅ

 

 ―― シャンフィさん、何故に足を御踏みに? ――

 

 ―― なんとんなく鼻の下伸ばしてたような気がしたから。伸びるようにはなってないみたいだけど ――

 

 などとアホなアイコンタクトをチラリと交わしてる内に「では………」とオレの提案を煮詰めた案を出してくる夫人。

 

 紙面にして要約すると以下の通り。

 

 

 1.アーズ氏たち(以下甲)はフラウラー商会(以下乙)に「385(リオム)」と引き換えにヒートドラゴンの鱗9枚を預ける。

 

 2.乙は預けられたヒートドラゴンの鱗9枚で商売をなし、その売り上げから3割から4割を甲へ渡す。

 

 3.2の補足。ヒートドラゴンの鱗を加工した物の売り上げからは3割、そのままでオークションに掛けた物の売り上げからは4割とする。

 

 

 以上シャンフィ翻訳による紙面契約内容でした。

 

 まぁ、細々したところは省いたが、実際は用意された同様の文の書かれた二枚の契約書を隅の隅まで隅々と、そんな紙に穴が開きそうなほどに確りとシャンフィは契約書に目を通して訳してくれているから見落としは無い。

 

「では、サインを」

 

「はい」

 

 二枚の契約書にシャンフィが代筆でオレの名前、アーズとそれぞれに書き、その下にフラウラ夫人が名前を書き込んだ。

 

 一枚の契約書にヒートドラゴンの鱗9枚を入れた革袋を添えてフラウラ夫人へ、もう一枚の契約書は385(リオム)、晶貨3枚と金貨85枚の入った革袋と共にオレたちへ。

 

 ちなみに貨幣価値はというと以下の通りなる。

 

 銅貨一枚   :1(カヒイ)

 大銅貨一枚 :100(カヒイ)

 銀貨一枚   :1(セウン)

 金貨一枚   :1L

 晶貨一枚   :100L

 大晶貨一枚 :10,000L

 

 銅貨100枚で100K=大銅貨一枚。

 大銅貨100枚で10,000K=銀貨一枚、1C。

 銀貨100枚で100C=金貨一枚、1L。

 金貨100枚で100L=晶貨一枚。

 晶貨100枚で10,000L=大晶貨一枚。

 

 大晶貨は余程の大商人か上級貴族や王族でもない限りお目に掛かることはないので忘れて良いとのこと。

 

 なお、シャンフィ曰く、街で暮らすなら、エテジエなら贅沢をしなければ大体3人家族でひと月2C、銀貨2枚前後あれば暮らしていけるらしい、だそうだ。

 

 晶貨4枚弱。予想は立てていたけど、随分な大金を手にしてしまったな。

 

 

 

 商談を終えてフラウラ夫人に送り出されてフラウラー商会を後にし、タロウスを見てくれていたティグリスさんと合流。そして日もすっかり昇り切り、昼食時を少し過ぎ始めた頃合い。

 

 くきゅう~

 

 約一名の可愛らしい腹の虫の鳴き声に馬車購入は一旦後回しに決定。

 

 道中で―― 先日こっそりと夜襲した盗賊から巻き上げておいた小銭 ――大銅貨20枚と銅貨50枚を入れた革袋をシャンフィへ渡し、ティグリスさんオススメという串肉の屋台へ突撃させた。

 

「はむはむ、はむ」

 

グラギバ(うまいな)

 

 選び買って来たのは鶏もも肉の塩焼き。値段は一本銅貨10枚、10K。

 高いのか安いのかいまひとつわからんが、ティグリスさんがオススメする屋台だけあって美味いことは確かだった。

 味はシンプルに塩だけだが、絶妙な塩加減と焼き加減で肉の旨みを引き出している。大ぶりの肉に歯を立てれば口の中でジュワリと広がり溢れる肉汁がこれまた美味い。臭みもなくて、肉自体も結構良い肉を使っているのだろうか。

 

「うまいだろー。俺もよく買うんだよ、これ」

 

 と一応職務中なのでこちらのおごりを断り、自腹で買ったティグリスさん。

 

 そんな感じでタロウスに繋いだ縄を引いて食べ歩きながら、フラウラ夫人から貰った紹介状の馬車屋? へと向かった。

 

 相も変わらず人が避けて行ったりするが。

 

 

 馬車屋カパル。

 紹介状の馬車屋はエテジエの北側にある職人街近くにあった。

 

 馬車屋では辻馬車や馬車の貸し出し、馬車などの製造修理販売を専門的に行なっているらしい。

 

 で、まあ、その門戸を叩くわけだが、フラウラー商会でのこともあり、その前に紹介状を持ってシャンフィに先に行ってもらうことにした。

 これ以上、肝の据わった話のわかる良い人がこちらの都合良く現れてくれるというのはありえないだろう、さすがに。

 

「行ってきますね」

『行ってくるね、アーズ』

 

ビゾヅベデバ(気を付けてな)

 

「おう、行ってらっしゃい」

 

 ティグリスさんとふたりで笑顔で送り出す。

 

 そして。

 

「あぁ、なんだ……… て、シャンフィの嬢ちゃんいないと言葉わからねぇんだっけな」

 

バンバ(なんか)グンラゲン(すんません)

 

 困り顔で頭を掻くティグリスさんが何を言っているのか分からないが、とにかく謝っておく。

 

『ブモーゥ』

 

 タロウスの鳴き声がどこか虚しげに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

         ドグ・ヂヂ・ボンデギビジュジュゾ(To Be Continued)………

 

 


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