P3inP4   作:ふゆゆ

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いやー、デビルサバイバー2見ました。
こう、結構はしょられてる部分もありますが、これでデビルサバイバー2の二次も書きやすく……いや、今はこれに集中しますけどね。はい。
何にせよ、ばんちゃん早く出ないかなー


非日常の足音が

 あれから、湊の物音に起きてしまった菜々子が、心配して部屋に来てくれるまで、頭の中をぐるぐる回っていたのは、テレビの向こうのナニカとその気配。暗いその気配は、やはり何か懐かしく感じた。

 あれから、湊はぼーっと床に座り込んでいた。

 何だか疲れてしまったのだ。湊が立てた物音に起きてしまった菜々子が、心配して部屋に来てくれるまで、着かれた頭の中をぐるぐる回っていたのは、テレビの向こうのナニカ。暗く感じたその気配は、何故だろうかとても懐かしく感じた。そんな事、有り得るはずがないのに。

 

 

 とはいえ、今は心配してくれた菜々子への返事が優先だろう、と菜々子にお礼を言ってから、ふらふらとベッドへと歩いていく。それに、元々深く悩むような性質ではなく、何か大事で無い限りは投げ捨てる事が多い湊。

 

 今日は疲れた事もあり、もう寝ることにしたようだった。

 

 

 寝る前にもう一度テレビを触り、波紋を立てて入っていく事を確認して一言。

 目を見開きながら、どこか衝撃を受けたように言った言葉は。

 

 

「っ! 夢じゃない。運命の人は、小西センパイなのか……」

 

 

 やはりどこかずれている言葉。 

 テレビ画面に手が入っていく事よりも、その事に思考が行くのは、なんとも湊らしいといえるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜は明けて翌日。

 少し馴染んできた学校へ登校した湊の前に、試練が訪れる。

 

 

 

 

 ごきげんよう。なんてドラマでしか聞かない言葉と、ドラマでも見ないファラオ被りを頭に、手には蛇のステッキを持った教師。祖父江という名前らしい。

 特技はダウジングでの失せモノ探し。

 好物、ロマン……

 

 湊は突っ込みどころが多すぎて、昨日の出来事を一時忘れるほどであった。何故、周りの生徒は気にしないのだろうか。これが田舎のスタンダードなのか……と、戦慄する湊。

 

 しかも授業で、その祖父江に当てられたものだからたまらない。

 

 

 まあ問い自体は、『西暦は何を基準にして始まったか』なんて常識の範疇であったため、すらっと『キリストが誕生した頃』と答えることが出来たのだが。

 これが『象形文字で自己紹介を書きなさい』とかだったら、どうしようもない所であった。

 まったく、田舎は侮れないものだと、湊は嘆息するのであった。

 

 

 

 

 

 

 そして放課後。

 湊は昨日と同じように、黙々と帰り支度を始める。そんな湊の耳に、近くの女子生徒が話していた昨日の事件の話が聞こえてきた。女子高生。いや女性という物は田舎、都会関係なく、噂好きであるものなのだ。

 

 

 

「逆さにぶら下がってたって何なの? ヤバくない?」

 

「処刑とか、そういうアピール? 怖すぎ~」

 

「死体見つけたの、三年の小西って人らしいよ。センパイが言ってて――」

 

(小西センパイ……運命の、人?)

 

 

 

 その何気なく耳に入った単語。小西。千枝の言うとおりなら湊の運命の人。

 しかしながら湊は特段これと言って何も思わない。そもそもが他人に対し何かを思うことが殆ど無い湊。小西に対しても、恋や愛なんて思いも有り得るはずなく。

 あの変な感覚も、恋や愛の類ではなく、純粋ではあるがもっと昏い感じだったわけで。

 

 どうにも微妙な気分だった。

 

 

「よ、よう。あのさ……」

 

 

 そんな帰宅の手が止まった湊へと、話しかけるのは昨日共にたこ焼きを食べた陽介。

 なにやら言い難そうにもじもじとしている。湊は思う。男のもじもじする姿なんて反吐が出ると。

 

 

「や、その、大した事じゃないんだけど……実は俺、昨日テレビで……」

 

「テレビ……小西センパイ……」

 

「うへっ!? な、何で分かった、じゃなくて! お、おおお前それ誰にも言ってねえよな? な? ……てか、やっぱりそうなのか……?」

 

「? まあ」

(誰かに、言うような事じゃないし。)

 

 

 ――ていうか、何で知っているのだろうか。祖父江と同じでダウジングでもしたのだろうか。

 

 いきなり顔を真っ赤にさせる陽介。湊には何を思っていきなり挙動不審になるのか理解できなかった。しかし、とりあえずは頷いておく。

 ただ、何故言ってもいない昨日の出来事を知っているのか分からない。こう見えて陽介は祖父江の弟子か何かなのかもしれない。

 

 

 二人の間で、奇妙な沈黙が降りる。湊は一応自分だけ座っているのはどうかと、立って陽介をじっと見つめ、陽介はその全てを見透かすような瞳にそわそわと落ち着かない。

 

 

 そんな二人に高い声がかけられた。

 それは昨日共にたこ焼きを食べた千枝。後ろには赤いカーディガンを羽織った雪子が顔を覗かせている。

 

 

「ね、二人ともー。噂聞いた……って、何してんの?」

 

「えっ!? いや、その」

 

「ああ。こに」

 

「わ、わあああああっ! な、何でもねえんだ、なっ。なっ!?」

(頼む、言わないでくれぇっ!)

 

「? まあ、別に何も……」

 

「?? なーに。変なの、ってそうじゃなくて、何か昨日の事件の第一発見者小西センパイらしいって」

 

 

 

 成程。千枝の話を聞いて、納得がいった湊。やはり昨日見たニュースの女子生徒は小西だったのだ。

 そしてそれを聞いた陽介が、沈痛な面持ちになる。それはこの話に何か思う事があるからなのだろう。そして陰惨な心のまま、口調も自然落ち込んだ物となっていた。

 

 千枝もツラれたのか、どこか沈んだ顔で自然に椅子へ座る。因みに湊の席だったりする。

 

 雪子がそれに対し湊に申し訳なさそうに目配せをした。湊はわずかに首を振り、気にするなと伝えたようだ。気に障るどころか、千枝のそのあっけらかんとした性格は、湊にとっても好ましい物だったから。

 

 

「だから元気なかったのかな……今日、学校来てないっぽいし」

 

 

 

 

 一同の間に、暗い沈黙が降りた。映る視界も暗くなっているような。そんな気がした。

 沈んだ二人と、何かを感じさせる複雑な表情の雪子。そして無表情の湊。

 

 

 そこで、場の空気を変えようと思ったのか、それとも空気を読まなかったのか、湊は口を開く。昨日のマヨナカテレビの異常な現象についてだ。多分自分と同じ行動をしたのだろう二人は何も起きなかったのか、意見を聞いてみたかった。

 

 

 

「……昨日」

 

 ゆるゆるとした動きで湊へと視線が集まる。

 

 

 

「テレビに手が入ったんだけど、皆のテレビもそうだった? テレビが小さくて、中には入れなかったんだけど」

 

「はっ? テレビに手が入ったぁ? 」

 

「えっ? テレビに?」

 

「えぇ!? テレビに入った!? 手が!?」

 

 

 しかしそれに対する返答は、全員が全員疑問を呈したもの。湊はそれに対し首を(かし)げる。やはりマヨナカテレビはそういったものではないようだ。

  

 

 

「……ここらへんのテレビって皆そうなんじゃないの?」

 

「ちっがーう! 田舎だからってそんなテレビ置いてあるわけないじゃあん!」

 

「はは。……有里君って、何かずれてるかも」

 

「どこから突っ込めばいいんだよ、俺は……」

 

 

「いや、祖父江先生みたいな人は、初めて見たから」

 ――そういうテレビもあるかなって。

 

 

 湊がそういった結論に至った原因の先生について話が行くと、三人はハッとした後、やや苦み走った表情になる。

  

「そう、だよね。あれっておかしいよね……いつの間にか慣れちゃってた……」

 

「まあ、もう一年以上経ってるし……でもどうやって教員試験受かったんだろう」

 

「うん、まあ……あれは、ここくらいかも……って、でもそんなテレビは有りえ無いっつーの!」

 

 

 自分たちの常識に疑問を持ちながらも、陽介はしっかりテレビの事を否定した。それを見て、湊は何かに納得したようにわずかに頷き、三人に笑いかけた。

 それは微笑みだった。でも、どこか魅入ってしまう笑みだった。

 

 凍ったように動きを止める三人。

 しかしそれも次の言葉で氷解する。

 

 

「うん、分かってる。冗談だよ」

 

 

 その言葉が数瞬遅れて浸透した三人はどっと、疲れたように肩を落とす。

 そしてまったく。と息を吐いた。

 

 

「だぁー、何か不思議な奴だな、ホント。なんつうか掴み所がねえっつうか……」

 

「冗談なんて言わないような、クールな人に見えるのにね。というか神秘的って言った方がいいのかな……だから別におかしくもないのかな?」

 

「まあ、自己紹介からして普通じゃなかったもんねえ、落ち武者から紹介って。都会っ子ってすげーって思ったもん」

 

「いやいや、都会っ子の認識間違いかけてるからな、それ」

 

「ああ、あの、お、落ち武者から紹介……ぷっ、くくく」

 

「あー、また。何でその時じゃなくて今笑うのー? 相変わらず、ずれてるよね、雪子ったら、もう」

(男の子と一緒の時にこうなるなんて、珍しいな……)

 

 

 どうにも掴みきれないふわふわとした雰囲気の湊。三人が三人とも遠慮なく湊の前で印象を語る。

 その湊は、いきなり笑い始めた雪子に、少なくない驚きを抱いている。笑い所が、湊には理解できないのだ。陽介だけじゃなくて、雪子も面白い人だと、そう湊は感じていた。

 

 えっ、何、天城ってこんな感じなの? と陽介は瞠目するも、千枝はそれを無視して話を進める。どうやら陽介も知らない一面であったようだった。

 

 

「あ、ってか、雪子は昨日テレビ見た? ほら、マヨナカテレビ」

 

「くくくっ。え? えっと……うーん、私は見てないんだぁ……って、あっ。ごめん、もう行かなきゃ」

 

 

 何か用事があるのだろう、雪子は教室の時計を見て慌て始める。

 それに千枝は何か思い当たるところがあったのだろう、もしかして。と口に出す。陽介はこの雰囲気に、何か聞くこともできず、湊と目を合わせるだけだ。

 

(知ってる?)

 

(知らない)

 

「家の手伝い、忙しいの?」

 

「うん。ごめんね」

 

「そっか……頑張ってね!」

 

「うんっ!」

 

 なるほど。どうやら雪子は家の仕事を手伝ってるようだ。そういえばそんな話も聞いていたかもしれない。というよりも、陽介が知らなかったのはどうかと思う。

 そういえば。という陽介の顔を見れば、思いつかなかったのが正しいのだろうが。

 

 そうして雪子は一同へさよならの挨拶をして、ぱたぱたと慌ただしく帰っていった。千枝は慣れているのか、ひらひらと手を振っている。

 

 雪子が見えなくなって少しして、陽介が口を開いた。話題は湊の話に戻る。

 

 

「しっかし、有里の冗談。妙にリアルに感じたぜ。表情とか、テレビが小さくて中に入れないとかさ」

 

「確かに、有里君の言い方も冗談っていうか、どっちだろう? みたいなニュアンスだったし。そこんとこどうなの?」

 

「さあ? もしかしたら、ホントかもね」

 

「ふーん? そっかぁ、じゃあ、でっかいテレビなら身体全部入れんじゃない? なんてね」

 

「おー、なるほどっ! んじゃあ、ジュネスの大型テレビで試してみるか? なんつって!」

 

 

 なっはは! と笑う陽介。千枝も、面白そうだねー。結局マヨナカテレビ人影くらいしか分からなかったし。と冗談めかせて笑っている。しかしテレビ買い換えたいかも、と呟くあたり、それとは別にテレビ売り場へ行きたいのようだ。

 

 

 湊は、ちろっと陽介を見て、千枝を見て、ふ。と何かを納得したように鼻を鳴らすと、らしくなく薄笑いを浮かべると。

 

 

 

「いいね。それ。行って試してみようか」

 

 

 

 そう口に出したのだった。

 




覚醒まで長いー。
あー、今更になって湊のペルソナを迷っていたりします。
多分プロット通りに行くと思いますが。
それではこれからもよろしくお願いします。
4/20加筆・修正

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