P3inP4   作:ふゆゆ

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お久しぶりでございます!
活動報告に書いてありますが、旅行先で風邪らしきものに掛かりましてご無沙汰しておりました。
何とか回復したようなので、またこれからもよろしくお願いいたします!




コニシ酒店

「ここだ……」

 

「ここって……小西センパイんちじゃねえか……!」

 

 

 立ち並ぶ霧に包まれた家屋の一つ。『コニシ酒店』と書かれた看板が、ビニールの屋根――テントの上に掲げられ自販機が立ち並ぶ、何ら変哲の無い小さな店。

 

 ――人気のない商店街にあって、唯一光が漏れている事以外は。

 

 

 本来ならば気にする事ではない事だ。しかし、事この異常な世界に至っては、普通こそが異常となる。道を申し訳程度に照らす街灯以外で、これまで灯りのついた家などは無かったのだから。

 

 

 間違いなく、ナニカがある。陽介はごくりと喉を鳴らした。

 ナニカが居る。湊はその感覚で、中に居るナニカの気配を感じ取った。この世界に漂うそれよりも、シャドウが放つそれよりも、被害者の発見された現場よりも、そして唯一向こうの世界でそれを感じたあの人よりも、より濃厚で、より禍々しく、より純粋な、それ。

 

 死の、甘い香り。

 

 

 シャドウなら、どうにもなるという自信が湊にはあった。しかしこれほどの敵が居るとは思いもしなかった。果たしてこの気配を放つ者に自分は勝てるだろうか?

 どうしようもない不安が、湊を襲う。

 

 湊は目を閉じた。

 覚悟を再度確認する為に。

 

 

 湊は、ここにいるだろう助けを待つ人を、助ける事を選んだのだ。ならば敵の撃破は必須ではないのだ。けれど間違いなく戦闘は避けられない。理想は敵に痛手を与え追いかけられないような状況に追い込み、隙を突いて逃げ出す事。

 

 

 大丈夫だ。

 自分ならば。

 

(……やれる)

 

 

 そして目を開いた。

 ここに居たシャドウは、先ほどのシャドウ達で最後だったのだろう。もしかしたらこのどんどん強まる気配を恐れ、逃げて行ってしまったのかもしれない。

 

 

 湊は陽介を横目で窺う。

 

 

「うっしゃ! やってやるぜ!」

 

 

 顔を平手で叩き、気合を一つ。陽介らしいと湊は思った。自然と笑顔が浮かぶ。とはいえ人にはそうと分かりがたい薄い笑顔であったが。

 

 

 陽介は湊の視線に気づき、苦笑いをしぎゅっと顔を引き締めた。

 

 いつでもいける。つまりはそういう事だろう。

 

 

 ならば、行こう。

 

 

 未だ血なまぐさい状況には、なってないようだがやはり時間は早い方がいい。覚悟を決めることが出来た時間があったのは幸いだったろう。覚悟があるかないかでは、何事においても大分違うだろうから。

 

 

 互いに頷いて、一歩踏み出そうとした。

 その時だ――

 

 

 忌々しい声が何処からともなく空間を叩く。

 

 

『ジュネスなんて潰れればいいのに……』

 

『ジュネスのせいで……』

 

『そういえば小西さんちの早紀ちゃん、ジュネスでバイトしてるんですってよ』

 

『まあ……お家が大変だって時に……ねえ』

 

 

「……え?」

 

「一体、何処から……?」

 

 

 悪意に満ちた声が響く。

 陽介はその内容に、覚悟も何もが吹き飛んでしまう。

 何か気づいてはいけなかったものに無理やり意識を向けさせられて、無理やり脳みそをかき回されたような感覚に陽介は襲われる。

 

 白い意識が、単純な文字で埋め尽くされていく。

 

 

 お家が大変?

 誰の?

 大好きな小西センパイの――

 

 誰のせいで?

 それはジュネス。つまりそれは、自分にも関係があって――

 

 

「――村っ! 花村っ! 落ち着くんだ。この世界は普通じゃない。この声だって、僕らを弱らせる為の攻撃かもしれ」

 

「で、でもっ! 里中も言ってただろ!? 商店街が、ジュネスのせいでって……そうだ、なんで気づかなかったんだ。いや目を逸らしてたのかもしれねえ、そうだ小西センパイの家だって影響がないはずないのに。俺は、小西センパイ、小西センパイって、馬鹿みたいに浮かれて……」

 

「は、花村――」

 

 

『ジュネスのせいでこのところ、売り上げも良くないって言うし』

 

『娘さんがジュネスで働いてるなんて、ご主人も苦労するわねえ』

 

『困った子よねえ……』

 

「ほ、ほら……やっぱりそうじゃねえか!」

 

 陽介の悲鳴のような声が絞り出される。

 

 ――おかしい。何故いきなり?

 

 湊は思い出す。千枝との話でこの話題が出た時、陽介は嫌な顔をしていたが状況はしっかり把握していたように見えた。

 今の状況は、おかしい。まるで陽介の心の底の淀みを浚い、そして凝縮させ心の弱い部分へ、投げつけたような唐突な混乱。絞り出されたような恐怖。そして無理やり付け足されたかのような激昂。

 

 

 何故?

 

 

 

 そこで、はたと気づく。そうだ、この世界に漂う雰囲気などよりも更に強い気配が中にいる。この世界の過剰な疲労の一因を担う要素の、更に濃く重い存在が。ならばいくら体調が戻ったとはいえ、本調子ではない上にこの場所へ来るまで走り続け、疲労が溜まっているだろう陽介への影響はあるべきだと気付くべきだった。

 

 

「ちっ。『ピクシー』!」

 

 

 呼びかけに、青い光が揺らめき形を成す。先ほど召喚したばかりのピクシーを呼び出した。

 宙から響き続ける毒持つ声に、叫び喚く陽介へ力ある言葉を解き放つ。

 

 

「『パトラ』! 『ディア』!」

 

 淡い光が二度瞬く。

 光が消えた後には、驚いたように目を(しばたた)かせる陽介がいた。夢から覚めたような、そんな表情であった。

 

 湊は油断なくピクシーを召喚し続ける。

 

 

「えっ……? お、俺……」

 

「戻った、かな」

 

「あ、ああ。何か迷惑掛けたみたいで、ごめん……何か唐突に寒気がして、いきなり怖くなって、頭ぐちゃぐちゃになって、ムカついて、ドロドロとした何かが……」

 

「気にしなくていい。中にいる、ナニカのせいだと思う」

 

「ナニカ?」

 

「シャドウよりも禍々しいナニカ」

 

「ッ……! そ、そんなん居んのかよ……」

 

 落ち着いた様子の陽介に、湊は漸くピクシーを消した。召喚し続けるのはそれなりの力がいるのだ。これから戦う相手を考えたら、無駄な力は使いたくない。

 

 湊は、陽介へと忠告を伝える。

 

「花村……中に入ったら、気を確かに持って。助けるべき人だけを見て、隙をついてすぐに出るんだ」

 

「わ、分かった……お前は、ソイツと……?」

 

「うん。だから花村に頼むしかないんだ。花村なら、出来る」

 

「お、おう。大丈夫だ。もうこんなへまはしねえから……」

 

「……多分花村なら、大丈夫だよ」

 

「お、おお?」

 

「きっと、大丈夫……だといいな」

 

「おお!? お前、何だよそれ! こう、そこはお前を信じて全て任せたっ! とかいうところだろうが!」

 

「……花村を信じて一部を任せるよ」

 

「おおいっ! 何だよその目! しょうがないなあ。って首を振るな! やれやれ。って肩を竦めるなぁ!!」

 

 

 けれどそれはいつの間にか、コントのようなやりとりに変化していた。

 陽介は湊へと律儀にもいちいち突っ込んでいく。

 

 

 そこに、先ほどまであった硬さは無くなっていた。淀んでいた雰囲気も、すっと変わっていって、陽介に心配はいらないように感じた。

 湊はそれを見て取ると、にこりと笑う。

 

 

「冗談はここまでにして」

 

「冗談なのかよっ! 本気かと思ったよ!」

 

「花村」

 

「ああ? 何だよ……」

 

「……『助けるべき人』だけを、見ていて。例えどんな光景があっても」

 

「……分かってるっつーの。この花村様にまっかせなさい!」

 

 

 そうして二人は沈黙する。それは束の間の覚悟の時だ。

 その沈黙は数瞬。二人は目を見合わせ、こくりとどちらともなく頷くと、より濃く甘く漂う死の香りの下へと飛び込んでいった。

 

 




デビサバ2、何だかストーリーはアニメオリジナルっぽいのかな?
今週のはまだ見ていませんが、先週ついにバンちゃん出てきたよ!
ジュンゴも出てきたよ!
名古屋と言う事で愛着あります。
でも原作でフラグが分からず、よくジュンゴがお亡くなりになったりしました。なんであんなめっちゃコロッと死んでしまうん?
まるでパトりまくった人修羅のようでした……

そしてフェクダつえええええええ!
ドゥベ弱体化してるのに、後の二体強くなり過ぎだよ!
峰津院のケルベ強すぎ!
朱雀より強いとか有り得ないだろJK。

とまあ、アニメはここらで……

劇場版ですが……PVが!!!!

動いてました、動いてましたよ~、そしてかなり現代版な都会になってましたね~、あの場面もありました!
公開が待ち遠しい!
恐怖を焼き尽くせ! ってなもんです!
何部作に変わってもいいからきっちりかっちりした深いストーリーを望んでいます。
特に神木さん!神木さん!

とまあ長くなってしまったので、ここらへんにしときます……
それでは、これからもよろしくお願いします!

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