P3inP4   作:ふゆゆ

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録画していたデビサバ2を見ました。

えっ……?
ってなりました。

えっ?
ってもう一度見てしまいました……そっちに行くのかと、戦慄してしまいました。

なんというアトラス。


暫しの休み

 全てのシャドウを倒し終わり、静寂がその場を支配する。

 

 茫然としている陽介、気絶した千枝。

 今まで銀色の拳銃を握っていた手を、じっと見つめる湊。

 

 

「ペルソナ……」

 

 

 湊が思わず口ずさんだ言葉は、『力』のトリガーワード。知るはずのないその言葉の意味を自分が知っている事に、何の違和感も感じない。

 きっと先ほどの声も関係しているだろうナニカを、疑問に思えど違和感は無く自然と理解できていた。

 

 

「す、すげぇ……」

 

 

 

 陽介の声に、ハッとする湊。自分が何故シャドウと戦ったのか思い出したのだ。 

 自分本位で感情の薄い自分。

 

 だけれども、何故だろう。シャドウに気絶させられた千枝を見て、憤りが湧いてきた。陽介が襲われるのを見て焦燥感に襲われた。理不尽に死を押し付けようとするシャドウに憎しみが湧いた。

 死を幻視して、この細い絆を守りたいと、思ったのだ。

 

 

 

 

(――絆? らしくもない事を……)

「ふ……」

 

 

 

 

 そこまで考えた所で思わず苦笑した。

 そう。自分らしくもない。

 絆など紡いだ事もないというのに、一体何を知ったような気になって考えているのだろう。そもそも今日会ったばかりではないか。

 

 

 それは兎も角、一先ずは女の子から起こさなくては。

 地べたに寝させるのは、不味いだろう。そう思い、動き出す湊。

 

 

 突然の苦笑と湊の動きに、びくりと反応する陽介が、少し可笑しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「里中さん」

 

「声ちっさ! もっと張ろうぜ! 有里ぉ」

 

「……里中さん」

 

「そうそう……って、変わってねぇじゃねぇか!」

 

 

 全く声量の変わらない湊に、ツッコミを入れる陽介。

 コントのような掛け合いをする二人は、これでも千枝を起こそうとしている最中だったりする。

 

 寝ている千枝は湊の学生服が掛けられているものの、直に触れるのは憚られるのか、二人とも声を掛け起こそうとしているようだった。

 

 

 

「っ……ぅぅ」

 

「あ、起きる」

 

「おぉ、本当だ!」

 

「声の大きさ、丁度良かったみたいだね」

 

「いやいやいや、絶対違うからねそれぇ!」

 

「んぅ、ぅ、ぅ、うるさあーい!! 何よ、人の耳元でぎゃーぎゃーとぉ! せっかくいい気持ちで寝てたってぇー……ぇ、ぇぇ?」

 

 

 呻く千枝に、湊のずれた言葉。しかもどこか誇らしげな言葉に、陽介がツッコむ。

 もうどこか疲れたような陽介の大声に、起きかけだった千枝がガバッと上半身を上げ、抗議の声を上げた。その余りにも場違いな内容は、心配していた二人を思い切り脱力させる。

 

 

 

「…………ふぅ」

 

 湊は安堵交じりのため息を吐き。

 

 

「なんだよ、それぇ……気が抜けるっつーか……ホントによぉ~」

 

 陽介はがっくりと肩を落とし膝を着いた。

 

 

 

 そんな二人を見て、え? え?

 と、首を(かし)げ、目をぱちくりさせる千枝。

 自分が今の今まで口走っていた事を、全く覚えていないようだった。

 

 しかし次第に意識がはっきりし始めたのだろう。無意識にか、掛けられた服を掴みながら、ハッとしたように周りを見渡した。

 

 

「お、おばけ、おばけは!?」

 

「……ふぅ、もういねえよ。こいつがやっつけちまった」

 

 

 

 陽介は肩をすくめ、苦笑いするように親指で湊を指した。湊はそれを受けた千枝の視線を受け止め、頷く事で返事をする。

 

 

「し、信じられない! 有里君が!? どうやって!?」

 

「俺だって信じられなかったっつーの! でも、こう腕伸ばしたら青い蝶がひらひら~ってなって、いつの間にか拳銃握ってて、んで、自分のこめかみに押し当てて撃ったら」

 

「拳銃!? 自分!? 撃ったぁ!? えっ、有里君自殺しちゃったの!?」

 

「そう、それを、って、ちがぁう! それでどうやって化けもん倒すんだよ! っていうか、有里そしたら死んじゃってるからな、それぇ! 違う、全然違う! そんで青い光が渦を巻いて、ずわぁって何か出てきて……えっとぺるそな? だったか……あ~!! とにかく倒したんだよ! じゃなきゃ俺ら皆死んでるっつーのっ!」

 

「いや、そりゃ、そうなんだけどさ……しっかし、そっかぁ……」

 

 

 現実感が感じられないのか、どこかぼんやりと繰り返す千枝。

 陽介もどうあの光景を伝えたらいいのか、うーんと悩んでいた。

 

 千枝は、どうにも想像は出来ないが、湊が自分を救ってくれたと納得出来たようだ。更に自分に掛かっている服が湊の物だとも気づき、照れながら服を掴み立ち上がる。

 

 

「いや~、その。何だか有里君に助けてもらったみたいで……その、ありがとうね!」

 

「……別に。たまたまだし、気にしないでもいいよ」

 

「い~や! 気にしないなんて、そんな事は出来ないってば! あたしなんか真っ先に気絶しちゃったし……戦えなかったし」

 

「いや……女の子なんだし、戦いは」

 

 

 そう言った視線の先は、未だ悩む陽介を指している。

 

 

「花村に任せておけばいいんじゃないかな?」

 

「って、お前も戦えよっ! この流れは俺達に任せろよ! って言うところだろうが!」

 

 

 悩んでいてもツッコミどころは逃さない陽介。俺たちに任せろよ! の部分で、演技がかった仕草を挟みながら必死にツッコむ。

 湊は静かに、目を逸らすだけだ。

 

 

「え? 何で目逸らすの? 冗談だよな? な? 本気なんて事は無いよな?」

 

(……そっとしておこう)

 

 そんな陽介をあえて触れぬように、もう一度目を逸らして千枝へと振り向く湊。

 陽介は更に騒ぎ始めてしまう。

 

 そんな二人のやり取りが可笑しかったのだろう。千枝は思わず吹き出してしまった。

 

 

「ぷっ、ちょ、ちょっとやめてよ二人とも! 今結構真剣に落ち込んでたのに! 何か馬鹿らしくなっちゃったじゃん!」

 

「それでいいんじゃない? 笑ってた方がいいよ」

 

 ただでさえ気が滅入る場所にいるんだから。

 

 

 そう続けた湊。同意も込めた僅かな微笑みも共に。

 

 

 そんな湊に、どこか顔を赤らめて、照れ隠しに唇を尖らせた千枝が居た。視線をあちこちに彷徨わせている。

 このように同年代に声を掛けられ、女の子扱いされるのが初めてだからなのかもしれない。いつもは雪子が女の子として扱われ、千枝は異性の気のいい友達というポジションばかりだったのだから。

 

 

「……都会の子って、皆こうなの? 何か、凄い女の子慣れしてる感じがするし……女の子なんて言ってるし……」 

 

「? いや、こんな喋ったの、里中さんくらいだよ」

 

「! ほ、ほらぁっ、いいい今のもっ! そ、そんな事言っても騙されないからねっ!」

 

「?」

 

「ふっ。なぁに赤くなってんだぁ? 里中? そんな大事そうに有里の服握っちゃって!」

 

「うっさい!」

 

「ぐふぅっ!!」

 

 

 そんな千枝に何を思ったのか、にやにやしながら子供のようにからかいはじめる陽介。だがそれは千枝の怒りと照れ混じりの蹴りにより、一瞬にして粉砕された。

 

 

 けれど陽介の言葉と、今になって気付いた湊の格好に、自分の掴んでいた物が何か思い出した千枝。顔を赤く染め俯きながら、ぴーんと腕を伸ばしカクカクと鈍い動きで服を差し出した。

 口から出る言葉も上ずっていて、動揺を隠しきれていないのは一目瞭然だった。

 

「こ、ここれ。あ、ありがとね」

 

「……うん。どういたしまして」

 

 

 

 とはいえ湊もこんな状況は今まで覚えが無い。そもそも女の子と、いや例え男だとしてもこれほど親しげに長く話すことなど無かった。

 

 だからだろう、湊はどこか戸惑った様子で服を受け取るのであった。

 

 

 異界の中、どこか青い春の訪れを予感させるような、二人の様子。

 

 

 それを見た陽介が、妬ましく唸ったか、それとも自分には小西センパイが!と、早紀を思い出し強がったかは、定かではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぉぉぉぉおお、いてぇぇえ……畜生、俺だって小西センパイがいるんだからっ!」

 

「うっさい」

 

「ごぼぉっ!」

 

 




アニメ、これからどうなるのか楽しみですね。
あー、バンちゃんでないなー……

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