P3inP4   作:ふゆゆ

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※完全なる自己満足で書いてます。P3主人公の為の物語です。因みに番長も好きです。
 展開も死ぬはずの人が死ななかったりします。デスやらなんやらの設定は放り投げてます。
 巻き戻り、再構成、その後。好きなように考えてください。原作が複雑なので、すり合わせの段階でミスがあるかもしれません。遅筆になります。それでもいいという心の広い方はどうぞっ!


死は新たな始まり

 ――いかなる物も、そこに行き着く。

 絶対なる死という旅の終わりに。

 

 けれど、アルカナは示すんだ。

 

 

 死は一つの終わりであり、新たな始まりでもあるという事を。

 

 

 

 物語は調和を迎え、君は『力』の献身により新たな一歩を踏み出した。

 

 それはまさに絆の勝利といえる一歩。

 

 

 おめでとう。

 

 奇跡は今、ついに果たされた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を、見ていた。

 

 何処か懐かしい青色の部屋。

 青の部屋の主。そして優しげな笑顔を向けてくる青の少女。

 ――君達は誰?

 

 

 夢を見ていた。

 

 遠き日の何処かの光景。宇宙の光景。

 地球の上。遥か遥か上に居た。

 ――これは何処?

 

 

 夢を見ていた。

 

 青の部屋の住人に、掛けられた言葉。

 “契約”。とても懐かしい言葉。

 ――でもそれは、君達じゃなかった気がする。

 

 

 ノイズ。

 誰かの争う光景。目前に迫る醜悪な怪物。

 立ち向かう少年少女。

 ――君達は誰?

 

 

 

 

『――――!』

 

 ふと、自分を呼ぶ声が聞こえた。

 新しい風を感じさせる、力強い声が。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 湊は眼を開けた。閉じそうになる瞳を、我慢して開く。

 自分を呼んだ声の主を探そうと、髪で覆われていない左目で周りを見渡すが、列車の中にそれらしき者は見当たらなかった。

 

 そもそも、自分の耳には少し古いカプセル型の携帯音楽プレイヤーが着いている。そこからは割と大きな音量で音楽が流れてくるのだ。

 

 

(気のせい?)

 

 

 らしくもなく、その中性的な顔を怪訝にしながらも、もう一度眠りにつこうとしたところ。

 不意に暗さに気づいて、列車が丁度トンネルの中を走っている事に気がついた。

 

 

 

 

 パーッ――

 

 

 

「…………」

 

 

 トンネルを抜ければ、そこは。

 なんて感情に溢れた言葉は、どの物語で見たものだったか。

 

 

 列車の音と共にトンネルを抜けたそこは、今までの都会然とした光景は消えて、自然豊かな緑色が広がっていた。湊の、端整だが表情の無い顔が、少しだけその光景へと向ける。

 

 とても綺麗なのだろう。

 でも。それを見ても何も思わない、いつも通りの今の自分が。何故かこの時だけは、嫌でたまらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――さあ。再開しよう。

 世界へ至る、新たなるアルカナの旅路を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガタンガタンと、線路を叩く古典的な音が響く車内。

 湊はプレイヤーの音楽を止め、のどかな田舎に耳を澄ませながら目を瞑る。

 

 

 

『――間もなく終点、八十稲羽~八十稲羽~』

 

 

 

(ここか……)

 

 都会と違い疎らな車内を眺めながら、ぼーっとしていると。目的地へと近づいたと、案内が耳に入る。

 湊は席の上部に置いていた少ない荷物と、土産を降ろし準備を終えた。

  

 

 

 そして再度イヤホンを着け、音楽を流す。

 自分らしくもなく、最近ブームのスタイリッシュで明るい音楽だ。

 そうして到着を席に座り待ち、程なくして駅に着く。

 

 

 新しい仮の家がある町。

 一年という短い間、世話になる町だ。

 

 

 

 

 

 

 

 古ぼけた看板。木造の駅。

 人のいない駅。

 

 そんな駅を過ぎ、外を見渡すが全く人通りがない。

 こんなに人がいない光景を見たのはいつ以来だろうか。雑然とした都会の中では、こんな光景など見る事など無かった。

 かつていた場所では煩い程にひしめき急いていた車も、まるでそんなものは無いとでもいうように全く通りはしない。

 

 

「辺鄙な所だな……」

 

 

 

 そう感慨もなく呟けば。湊へと野太い声が掛けられる。

 そちらを向けば、腕を捲ったシャツを着た男性と手を繋いだ幼い子供が居た。

 見覚えのある顔。湊の親の葬式で見た顔だった。

 

 

「おう、もう着いたか。写真より男前、というよりは美形だな」

「…………」

 

 やはりこの二人が迎えのようだった。

 後ろにエンジンのかかった車が見えた。あの車で迎えに来たのだろう。

 

 両親が死んで以来。半年もなく各地を転々としていた自分を、少しだが長く面倒を見てやりたいと、一年間預かる事を名乗り出てくれた人だ。 

 遠縁で、さほど縁も無かった自分の面倒を、快く請け負ってくれた人だ。少し怖そうだが悪い人ではないだろう。

 

 

 

「や、大きくなったなぁ……」

(葬式以来か……)

 

 

「…………」

 

 湊はぺこりと黙って頭を下げる。何か返せば、互いの共通点である親の葬式に行き着き、気まずい思いをするだけだからだ。

 決してめんどくさいからではないだろう。多分。

 

 

 

 

「あー。覚えてないか? 一度会ってるんだが……」

 

 困ったように頭を掻く。

 そんな彼の様子を、流石にこれから世話になるのにどうでもいいとは思えなかった湊。言葉少なに返す事にした。

 

 

「……覚えてます。有里湊(ありさとみなと)です。……よろしくお願いします」

 

「あ、ああ。そうか。えぇと、おじさんから聞いてると思うが、俺は堂島遼太郎(どうじまりょうたろう)だ。で、こっちが娘の菜々子だ」

 

 

 そう声を掛けられ湊の視線が向けられると、それまで興味深そうに湊を見ていた菜々子は、湊の無表情が怖いのだろうか、遼太郎の腕に隠れてしまう。

 頬が赤くなっているのを見るに、初対面で恥ずかしがっているだけなのだろうが。

 

 

「ほれ、挨拶しろ」

 

「……こんにちは」

 

 

 挨拶した後すぐに隠れなおす菜々子。やはり恥ずかしがっているのだろう。多分。

 湊はこれでも強面ではないし、普通の顔だと自負している。

 

 

「なあんだ、こいつ。照れてんのか? いてっ」

 

「っんぅ!」

 

「あっはっは」

 

「…………ふ」

 

 そう遼太郎が言えば、菜々子は顔を赤くして遼太郎の尻を叩く。

 より真っ赤になった菜々子を見れば、成程遼太郎の言うとおり、照れ隠しなのだろう。

 

 今までの家庭ではなかったその暖かいやりとり。

 思わず湊の顔にも微笑が零れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “ようこそ

  稲羽市へ”

 

 

 

 

 車外に流れるのは、そんな簡素な歓迎の文句が書かれた看板。

 車内に流れるのは、ありふれたどこぞのスキャンダルらしきニュース。

 後部座席にはしっかりシートベルトを締めた湊。因みにしっかり土産は渡してある。

 

 

『――柊みすずさんと昨年入籍したばかりの、稲羽市議員秘書生田目太郎氏に――』

 

「しっかし、今までの都会からこんな場所に来ることになるとは、お前も大変だな」

 

「…………」

 

 気を使ってくれているのだろう。湊は首を振り大したことは無いと返した。因みにプレイヤーは首に掛けてあるだけで、着けることはない。それが最低限の礼儀という物だろう。

 

 

 車が信号で止まる。車外に目を向ければ、そこには今人気絶頂らしいアイドルのポスターが張ってあった。前の学校の生徒が騒いでいたのを、ふと思い出す。

 

 

「――まあ。一年間だけだが、よろしくな」

 

「…………」

 

 そんな湊に遼太郎は再度声をかける。男臭い親しみの持てる笑顔だった。

 

 これからよろしく。掛けられた言葉を反芻する。

 なんだかそんな言葉を掛けられたのは久しぶりな気がした。湊はそれに頷く事で返す。笑顔は出なかった。

 

 遼太郎はそんな湊に苦笑いはしても、嫌な顔をする事はなかった。これもまた久しぶりな気がして、どこか不思議な気分であった。

 決して雰囲気が悪くならないのは、ひとえに遼太郎の懐のデカさ故なのだろう。

 

 そんな苦笑いをする遼太郎の肩を、指先でつんつんとつつくのは菜々子。可愛らしく恥じらい、湊の様子をお気にしながら小さく呟く。

 

 

「トイレ……行きたぃ」

 

 

 休憩のお願いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『らっしゃっせー』

 

 

 止まったのはガソリンスタンド。巻いたやる気のなさそうな声が、一同を迎えた。

 休憩のついでに、給油をしていくらしい。遼太郎に頼まれた、ウェーブしたくせ毛長髪の店員が作業をしている。

 

 湊は持ち主のいない車に一人いるのもどうかと感じ、車外でのどかな風景を眺めていた。視界を遮るものが少なく、すっと遠くまで見る事が出来る。

 

 

(悪くないな……)

 

 

「ねえ。君高校生?」

 

「…………」

 

 

 そんな事を思う湊に、店員から声が掛けられる。湊は静かに振り向いて、肯定の意味を込め頷いた。

 店員は湊の無表情に気圧されたのか、どもりながらも言葉を続ける。

 

「うっ、あー、えっと、うちバイト募集してんだけど、どうかな?」

 

「…………どうでもいい」

 

「はっ、はは。そう」

 

 

 

 湊の言葉に勢いを消されたように、話が一旦途切れた。

 しかしくせロン毛の店員は、何かの使命に燃えるようめげずにもう一度話しかけてくる。

 

「ここさ、都会から来ると、なーんも無くてびっくりっしょ? 実際退屈すると思うよ? バイトでもしないと」

 

 そうバイトをプッシュしながら近づいてくる店員。湊はそれでも相変わらず無表情のままだ。どうでもいいと言葉には出さないが、やはりどうでもいいのだろう。

 

 それでも店員は誘い文句を言い切って、湊に握手を求めた。

 

「ま、考えといてよ。……よろしく」

 

「…………」

 

 小さい町で軋轢を作らない為の処世術故か、湊はそっけなく応じる。

 そして手を合わせた瞬間。

 

 

「……!!」

 

「……?」

 

 

 店員が顔を一瞬歪ませた。驚くような、苦しんでいるような。そんな表情だ。

 湊は何か脈打つような変な感覚が体に起きた事に気を取られ、店員の様子に気付きはしなかったが。

 

 店員は表情を戻すと手を離し、別れの言葉を掛ける。

 それに反応し店員を見れば、丁度遼太郎達が帰って来ているのが分かった。

 

 

「……じゃ。仕事に戻んなきゃいけないから」

 

 どことなく憔悴した店員が、遼太郎達と入れ違いに去っていった。

 

 

 

「待たせたな。行こうか?」

 

 

 遼太郎にぽんと、肩を叩かれる。

 

 

 

 

 

 ――ズグンッ

 

 瞬間。

 頭が、撃ち抜かれたような痛みに襲われた。

 側頭部から突き抜ける、激しい頭痛だ。

 何かが目覚めそうな、目覚めたような感覚も共に湊を襲う。

 

 

「くっ……」

 

 

「んん?」

 

 

「だいじょうぶ?」

 

 

 菜々子から掛けられた声。初めて向こうから掛けてきた言葉。

 

 

「くるまよい? ぐあい、わるいみたい……」

 

 心配そうな表情と、声を聞くと次第に痛みが治まっていくのを感じる。

 湊は珍しくも、心配させぬよう微笑み、柔らかな声で返事をした。

 

 

「あ、ああ。うん。大丈夫だよ」

 

「長旅で疲れたんだろう。早く帰ろう」

 

 

 遼太郎の心配そうな声と、菜々子の気遣わしげな表情が、何故か嬉しく感じた湊であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空が曇り始めた頃、堂島家に到着した。

 湊に与えられたのは二階の一室。たった一年いるだけの部屋にしては、とても立派な部屋だった。

 ささやかながら暖かい歓迎会の後、まだ慣れぬ部屋に戻る。

 

 

 しとしとと、窓を叩く雨。降り始めた雨音を窓越しに聞きながら、置いてあった段ボールを解いていくと、前の学校の制服を見つけた。

 

 

 

 思い出されるのは、転校の時の光景。

 涙も感動もない簡素な、慣れた光景。教師は淡々と。生徒は皆興味なさ気な視線で。

 湊も何の感慨も感じない、去りゆく日常の一コマ。

 

 

 静かに制服の入った段ボールを閉じた。

 特段何か思ったわけでもない。何となく気に入らなかったのだ。

 

 

 

『これからはしばらくは家族同士だ、自分んちと思って気楽にやってくれ』

 

 

 

 遼太郎の言葉を思い出し。少しだけ気分が良くなったような気がした。

 そして新たに開いた段ボールには、こちらの高校の制服が。これは湊の新しいスタートの証。 

 制服を取り出して、服掛けに掛ける。

 

 

 

『……仕事だ。菜々子、後はちょっと頼むぞ』

 

『……うん』

 

 

 

 ふと、菜々子の悲しそうな顔も思い浮かんできた。

 遼太郎が出て行った後つまらなさそうに、天気番組やニュースを見ていた菜々子。

 口下手な湊は、一言くらいしか喋れないままであり。結局、遼太郎が刑事をしている事しか分からなかった。

 

 

『あっ! ジュネスだ! エブリデイ・ヤング! ジュネス!』

 

 

 なんてCMが流れるまで、菜々子は静かだった。あの元気も、湊に気を使ってくれたのかもしれない。

 

 

 

「ふうっ……」

 

 そんな事をつらつらと思い浮かべながら行った荷物整理。一段落ついたところで、柔らかいソファーに腰掛ける。プレイヤーから流れる音楽を聞きながら、一休みとばかりにボーっとする湊。

 

 

 思考を支配するのは、これから過ごす八十稲羽について。ガソリンスタンドの店員の言っていた通り、何もない町。都会に比べ静かすぎる町。でも悪くないとも思った町。

 

 しかし結局は今まで通りであり、それはつまり湊にとって、

 

 

 

(どうでもいい)

 

 という事である。

 湊はそこで思考を止め、襲い来る睡魔に身を任せて、そのまま目を閉じた。

 




映画化するという事で、もしP3のアルカナが死(死神)から再開できるなら二年後のP4でもできるんじゃないかっ!?
という妄想が爆発してしまいました。

えー、P3メンバーは出ない気がします。ゲスト出演で出るかな?
矛盾は突っ込んでくだされば、直す場合もあります。
読んでいただきありがとうございました!

4/15加筆・修正

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