希望少女の非ざる世界   作:youho

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第五話 始まるフラグ

《ところで、一つ訊いていいかい?》

《なに?》

 翌朝。魔法少女になったけど、スターを肩に載せていつも通り登校する。

《中学校というのは自宅から最寄りの施設に行くものだと思っていたのだが?》

《一般的には、そうだね》

 うちが住んでいるのは見滝原の隣にある波地見市。だというのに、わざわざバスを使ってまで見滝原中学校に登校するのというのは、スターに限らず誰でも疑問に思うのはうちだってわかってる。

《でも、スターも見ててわかってると思うけど、あそこは他とは違うんだよ。なんでも、外国の仕様を取り込んだ先進的な校風だかなんだからしくって。学校だけじゃなくて、市全体が。》

《僕は中に入ったことがないからわからないよ。外観が一般とは離れているとは思っていたけど》

 そうだよね。凄いガラス張りが目立つよね。渡り廊下だってガラス張りだし、教室なんてガラス壁だし。ただのガラスじゃないみたいだけど。

《うん。まぁ、理由はそれだけじゃないけどね》

《なにかあるのかい?》

《秘密。伊達に中二病やってるわけじゃないと言っておこうかな》

 なんて言っても、大した理由じゃないんだけどね。かと言って、気軽に話すような内容でもないけど。

《そうそう、一つ訊きたいことがあるんだけど》

《なんだい?》

《もし他に魔法少女がいたら、そういうのってわかるものなの?》

《ある程度の距離なら、魔力を感じ取れたりするよ。やろうとすれば、特定の相手を捜すことだって可能なはず》

《やっぱりそうなんだ》

 うちは同業者に対しても魔法少女だというのを隠しておきたい。他にも魔法少女がいるんだったら、うちは正体を隠してその人達をサポートしていきたい。

 魔女が蔓延っているのはわかるけど、それらはどうせ他の魔法少女がやってくれる。現に世界がなんの違和感もなく保たれている以上、うち一人が積極的に活動しなくたってなにも問題は無いはず。

 だったら、うちは自由に動いてピンチになった魔法少女を助けていきたい。なぜって、そのほうがカッコイイから。

《なにか隠す方法はないかな?》

《単純な方法としては、やはり魔法だろう。そういった魔力と、ソウルジェムを変化させた指輪も認識できないようにする魔法を常時発動させていれば、おそらく》

《まあ、それが一番かな。魔力だって消費を相殺するように戻し続ければいいだけだし。――ところで、スターはなんでついてきてるの? 学校に行きたくないんじゃないの?》

《君のことを妖歩に説明しないといけないからね。彼女がどこに住んでいるかは知らないが、大体見滝原で見かけるんだ。こうしてバスに乗っているのは、移動だって楽じゃないからさ》

《移動手段は置いといて。森沢さんに関しては、学校でも捜してみるよ》

《ああ、頼む。とはいえ、見滝原中学校に在籍しているかさえあくまで予測だから、見つかるとは限らないがね》

《そういえば、そうだね。ま、やるだけやってみるよ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、今日は先生から大切なお話があります。心して聞くように」

 朝のホームルームが始まってすぐ、先生が真剣な面持ちで話を始めた。こういう時って、大抵重要な内容じゃなかったりするんだよね。

「フライドポテトには塩ですか? ケチャップですか? はい、綾川くん!?」

 強い剣幕で指差し棒を男子生徒に突きつける先生。またなんかあったんだ。

「……どっちでもいいんじゃないですか?」

 指された生徒はかったるそうに答えた。その答えを受けて、先生は教卓を叩いて声を荒げた。

「その通り! いいですか女子の皆さん! そんな細かいことにケチをつける男とは交際しないように! そして男子の皆さんは、そんな細かいことを気にする大人にならないように!」

(大変だなぁ、先生……)

 気づいたら誰かとの惚気話を聞かされて、かと思ったらちょっとしたことで別れた話を聞かされて……懲りないなぁ。よくそんな何回も交際できるというか、なんでそんなに相手が見つかるのかいつも不思議に思う。

「あ、あと、転校生を紹介しまーす」

 思い出したようにさらっと重要な話が始まった。

(おろ。これは新展開な予感)

 こんな中途半端な時期に来るなんて、ベタもいいとこだと思うけど。一体どんな子なのかな。

「どうぞー」

 先生が廊下に向けて声をかけると、教室の扉が開いて誰かが入ってきた。

(うは、不思議感満載)

 入ってきたのは女子。歩くだけで小さくなびく綺麗な黒髪に、クールな雰囲気を漂わせる整った無表情。その歩き方からして、どこか普通とは違っていた。

「暁美ほむらです。宜しくお願いします」

 見た目通りの簡素な自己紹介。そして、先生が『暁美』までボードに書いたところで漢字がわからないのか、戸惑った目で暁美さんを見ていると、そこから暁美さんが『ほむら』と書き足して、一礼。そうして事前に知らされていたのか、一番前の空いている席に座った。

(……ん?)

 座る直前、一瞬こっちに目をやった気がした。その視線の先はうちじゃなくて、おそらく前の席の鹿目さん。

(しかも、この変な感覚。それに、彼女がしている指輪。彼女も魔法少女ってことかな)

 転校生で魔法少女。もう、フラグ立ちまくりじゃないかな。

(これは、彼女がなにか波乱を巻き起こすかな)

 必ずしもなにか起きるとは限らないけど、そう期待せずにはいられなかった。

 

 

 




はい、妖歩です。今回は短いですね。
原作と言動が違う部分が多々ありますが、そこはわざとですので。
波地見市というのは

『見滝原』『風見野』→滝・風→自然現象(?)
           原・野→陸的な
           見→一文字目と二文字目
           漢字でどちらも三文字
           平仮名で五文字と四文字

 ということから

現象と陸的な漢字があって、『見』を三文字目に入れて、かつ漢字でも平仮名でも三文字。

 ということで、『波地見』となりました。

それと、綾川くんというオリキャラを出したのも意味があります。
その意味が現れるかどうかはわかりませんが。


それでは

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