小麦粉使いの魔法使い   作:蛙顏の何か

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月下美人

「いやぁ〜、遊んだ遊んだ」

 

「ふぅ、私も疲れたよ」

 

 

日が暮れた空には、星空が見え隠れしていた。和泉さん達と別れた僕達は、公園のベンチに座っていた。

皆体育会系なのか、バレーの他にも様々なスポーツで遊び、和美は勿論あれだけ体力のあるアキラさえも疲れを見せていた。

 

「それにしては、二人とも元気そうに見えるけど」

 

「それが若さってものさねゆかりん君

デザートが別腹な様に、女の子の遊ぶ時は別燃料で動くのさ」

 

「でも和美はよく飛び跳ねてそこまでの元気があるね、私も今日は流石に疲れた」

 

本当に遊び尽くした。ここまで遊び疲れたのはもしかしたら人生で初めてかもしれない。

 

 

「裕奈も、来れたらよかったのにね……」

 

僕達の中で欠けたもの、そして、今も尚、一人で苦しんでいる裕奈の事を思うと、自分だけこんなに楽しんでいいのかと罪悪感が芽生えてくる。

 

 

「……今日、来ると途中にゆーなの家にも寄ったけど、やっぱり来る気はないって」

 

「あー、やっぱりそうか……」

 

と言うことは、裕奈はやはりまだ外に出る意思はないと言うことだろうか。

あのいつも外で元気良く遊んでいた裕奈からは想像もつかないような状態であり、これでは彼女の健康状態も心配だ。

 

 

「でも、裕奈もいつまでもこのままって訳じゃないでしょ」

 

「どうしてそう言い切れるの、和美?」

 

現に僕だって、伊織の事はまだ吹っ切れてない。しかも色んな問題に多く悩まされている今の僕では何を考えて、そして解決していいかが解らず、考える時間が欲しかった。

だが、周りはそれを許してはくれない、学校へは高畑先生と神楽坂さんが強引に連れて行くし、周りの教師や生徒は一方的に僕を攻め立てる。自分の身体の異常も解らず、世間ではお尋ね者の家族の安否も気になって仕方が無い。

 

こんなに多くの問題を抱えて、僕の頭はショート寸前だが、休日はアキラや和美に連れ回されてそんな事を考えている余裕もなかった。

 

「何故?何故かって?それは愚問だよゆかりん

裕奈には、私達が居るからさ」

 

和美は、いつになく真剣な表情でアキラに視線を向け、そして、僕を真っ直ぐ見つめた。

 

「裕奈は今一人?違うね、今も私達がいる

友達の事を心配して、毎日欠かさず会いに行く

そんな人間を、本当に孤独だと言えるかな?

本当に孤独な人間は、誰にも想われず、誰にも声をかけてもらえない

孤独の捉え方は人それぞれだけど、でも、私の友達にはそんな事はさせない

私の思う孤独には絶対にさせない」

 

「和美……」

 

いつになく真剣で、熱の入った口論をする彼女に思わす見惚れた。

彼女の真剣な眼差しは、じっと僕を捉え、裕奈だけでなく、その言葉が僕も言っているようにも感じられた。

 

 

「まぁ、裕奈もこのまま引きこもってる訳にも行かないから、登校してきたらそんな事も考えられないくらい、私達の我儘に付き合って貰おうかね」

 

我儘なんて事はない、その我儘で、今僕は救われているのだから。

 

「(うん、いつでも付き合うよ

だから、大丈夫

もう、心配かけないよ)」

 

心の中で感謝し、改めて思った。

僕は本当に友人に恵まれている。これ程までに友達思いな彼女達に出会えた事はとても幸運な事だ。

この地で彼女達に会えた事、この巡り合わせをくれた伊織に改めて感謝した。

 

何故か和美は、悪代官の様な怪しい笑みを浮かべ、手をワキワキさせているが、きっと彼女なりにこの場を和ませようとしているのだろう。和まないが。

 

 

「それじゃあアキラ、後は頼んだよ

朝倉 和美はクールに去るぜ」

 

「もうこんな遅い時間だよ、辺りも暗くなってきたし、アキラも一緒に送って行くよ」

 

「いやいいよ、ゆかりんは校門近くまで行ったら大変な事になるし、私とアキラは今日は別方向だしね

 

それじゃ!バイバイキーン☆」

 

最後に星が付くような『キラッ☆』としたポーズをとって和美は走り去って行った。

こういう時、彼女には何か考えがあり、彼女の場合は強がっている訳ではないので、この場合は追いかけず、どんどん小さくなって行く彼女の後ろ姿に手を振って見送る。

 

さて、後はアキラを途中まで送ろうと思っていると、袖をチョイチョイと小さく引かれ、振り返って見ればアキラが恥ずかしそうに縮こまり顔を赤らめていた。

 

何事だ?と思い彼女に視線を向けるが、何か言い淀んでおり、深呼吸をして落ち着くと申し訳なさそうに恐縮して尋ねてきた。

 

「あの…今日、縁の家に泊まってもいい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「別に、いいんじゃないの?」

 

どうでもいいとばかりに投げやりに返す神楽坂さん、いつも無表情な彼女だが、今日は何処と無く目を細めて眠そうにしていた。

 

帰宅の途中でアキラに何故かと理由を問いただしたところ、どうも彼女のご両親が仕事の都合上一日家を空けているらしく、一人では心細いとのことで宿泊の有無を聞かれた。

だが、今僕が生活している部屋は高畑先生の寮であり僕のものではない。なので高畑先生に聞こうと思ったが、高畑先生も仕事の都合で海外にいるらしく連絡がとれない。

ここは、僕よりもこの部屋で長く生活している神楽坂さんに決めてもらおうとしたところすんなり了承してもらえた。

 

「なんか眠そうだね、何かあったの?」

 

「委員長と追いかけっこして疲れた、もう寝たい」

 

委員長が誰かは知らないが、眠たそうに目を擦っている彼女は、まだ夕食も入浴もしていない。

そんな状態で就寝してしまっては明日に響いてしまう。

 

「もぉ、仕方ないなぁ

それじゃ、神楽坂さんはお風呂に入ってきて、その間に僕が夕食を作るから」

 

「ちょちょ、ちょっとまって!!夕食って縁が作るの!?」

 

「勿論、そのつもりだけど」

 

と言うよりも、この中で適任な者が他にいるだろうか。神楽坂さんは包丁を握ったことがない上にこんなに眠そうしていては怪我をしてしまう。

アキラはお客さんなので料理をさせるのは申し訳ないし、せっかくなら美味しいモノが食べたい。

 

ならば僕の出番だ。このマスター味っ子と言われた僕の料理捌きが火を吹くよ!

 

「な、何かお惣菜買ってこない?ほら、この時間ならまだスーパー空いてるし……」

 

「そんなのお金が勿体無いよ、あり合わせのもので作るからいいよ

大丈夫、心配しなくても口から光線が出る程美味しい料理を作るから」

 

「やめて!本当に出ちゃう!!イメージじゃなくて物理的に出ちゃうから!!」

 

「何でもいいから早くして……」

 

眠気に耐えながら、怠そうにその場で服を一枚一枚脱いで行く神楽坂さん。

僕は紳士だから彼女を直視しないように目を逸らすが、彼女はそれを気にせず下着姿になってしまったので、慌ててアキラが洗面所に連れて行こうとする。

 

「ほ、ほら!神楽坂も眠そうだし、料理作ってたら本当に寝てしまうよ!

なんかカップラーメンとか、冷凍食品とかないのかな?」

 

「そんな物ばかり食べてたら不健康です、子供は育ち盛りだからもっとちゃんとした物を食べなくっちゃ」

 

「でも眠い…ラーメンだったら戸棚にいっぱいあるよ」

 

「それはもしかして『高畑ラーメン』じゃないよね?

もうあんなクソ不味い料理、二度と食べたくないよ」

 

『高畑ラーメン』、思い出すだけでも悍ましい。ある日突然、高畑先生がラーメンを作った自信満々に僕と神楽坂さんにラーメンを差し出すので食べて見たところ、その味はゲロ不味いのなんのと酷いものだった。しかも最終的には酷い体調不良を起こし、神楽坂さんとトイレの取り合いをしていた事は、ついこの間の出来事なので良く覚えている。

 

「体調不良を起こさせる料理なんて料理じゃないよ

皆に美味しく食べてもらう為の料理なのに、あんなのじゃ毒と同じだよ」

 

まったく、料理好きとして許せない限りだとプンスカ怒りをあらわにすると、何故かアキラが苦笑して此方に生暖かい視線を送ってくる。

きっとアキラもその惨劇が目に浮かんだのだろう。

 

「あ、そういえば、タカミチが冷蔵庫にご飯用意してあった………」

 

「そ、そうなんだ………なら安心だ」

 

ほっ、と安堵の息を漏らすアキラ、もしかして残り物素材の料理はいやだったのかな?

冷蔵庫の中身を見れば、お惣菜が幾つか収納されており量もそれなりに多いのでアキラ一人増えたくらい問題ないだろう。

 

神楽坂さんがお風呂に入ってる間に、僕とアキラはお惣菜を温め食器を並べていつでも食事が出来る様にする。

何故か僕がキッチンに入る度にアキラが頻りにこっちの事を気にしてくるが、いったいなんだったのだろうか。

 

「神楽坂さんが上がったら、次はアキラが入っていいよ

着替えは持ってきてる?」

 

女の子は異性が入った後のお湯に浸かりたがらないと、良く耳にするので、僕もアキラに気を使って紳士的に彼女に譲る。

我が三峰家の異性である伊織は、そんな事を全く気にしない人なので、こんな気遣いは全く必要のないものなのだが、アキラは普通の女の子なのでその辺はしっかり配慮しなければ。

 

「うん、持ってきてるよ

ちゃんとバックに纏めて………」

 

と、途中まで言いかけたところで彼女は急に停止した。

もしかして忘れてきてしまったのだろうか。きっと彼女はこのお泊りが初めてだったのであろう、泊り道具を忘れることなど良くあることであり、僕の服を貸してもいいのだが、女の子は異性の服を着るなんて抵抗があるだろう。

 

「もしかして忘れてきたの?なら神楽坂さんから借りたら?少し小さいかも知れないけど、嫌じゃなかったら伊織服も持ってるし____」

 

「いや、違う

持ってきたんだ、持ってきたんだけど………」

 

まだ洗濯途中で、偶々持っていかれなかった伊織の私服を思い出し、かなりブカブカだが、大丈夫だろうと思っていると、アキラは言いづらそうに言い淀む。

 

「さっきのベンチに忘れてきた………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りはもうすっかり暗くなり、桜の咲き誇る春のシーズン真っ盛りのこの季節の麻帆良は、そこら中で桜の花びらが風に乗り舞い上がっている。

 

時刻は午後21時を回り、中学からは全寮制の麻帆良では、門限の関係から外に出ている者は居らず、辺りには人っ子一人いない。

 

「ごめん縁、こんな時間に付き合わせて、ご飯も途中だったのに」

 

「いいよいいよ、女の子をこんな夜に一人で行かせる訳には行かないからね」

 

アキラは申し訳なさそうに顔を伏せているが、女の子を一人夜道を歩かせるのは忍びないし、この様な夜中では変態の一人や二人出ないとも限らない。

夜は基本的には警備員ではなく魔法使い達、つまりは魔法先生、魔法生徒達が辺りを徘徊して警備しているらしいが、この麻帆良の地は広大であり、現存している魔法使い達だけでは圧倒的に人員不足であり、カバー出来ない所は必ず存在する。

なので、いつ何時アキラが危険な事に巻き込まれるか分からない。

 

「(麻帆良の魔法先生達は信用出来ないからね

やっぱり僕自身が護衛すれば安心でしょ)」

 

それに、友人と夜の花道を散歩するのも悪くないしね、とキザったらしいセリフが頭を過ったが、僕みたいななよったい子供が言っても格好悪いだけなので口を紡いだ。

 

 

「ねぇ、アキラ」

 

「なに?」

 

「裕奈が学校に来たらさ、皆で花見しない?」

 

僕はいつの間に、何と無しにそんな事を口にしていた。

 

「皆でお弁当持って、桜の木下でシート敷いて、皆で馬鹿みたいに盛り上がる」

 

そんな何時もの風景が目に浮かんだ。あの頃は馬鹿やってた。そんな事を言える程昔ではない筈なのに、今はとても遠い。

 

「他にもさ、ひな祭りやバレンタインで盛り上がって、麻帆良祭を皆でまた周りたいな

今度はアキラも一緒で」

 

「うん、行こう、絶対に

今度も皆で、馬鹿なことやろう」

 

 

花見だけじゃない、色んな事をして、様々な場所に行って、僕達の思い出をいっぱい増やそう。

もう誰一人欠ける事なく、誰一人悲しまない様に。

 

裕奈も和美も居ないが、僕とアキラは約束した。

今度はもっと楽しい日々にしようと。

契約書もない、指切りもないけど、この約束だけは、絶対に守ろうと自身の心に固く誓った。

 

 

 

「あっ、あのベンチだ」

 

いつの間にか目的地まで到着しており、アキラの指差す先のベンチは街灯に照らされ、薄暗い夜道でもそこだけは一際は明るい。

よく見ればベンチの上には子供用のバックが置かれており、それ見たアキラは一目散に走っていき、ベンチへ向かった。

 

「よかった、中身も無事だ」

 

中身に異常がないか確認して、安堵の息を漏らすアキラ。もしかしたら巡回中の魔法使い達に回収されたかも心配していたがどうやら大丈夫のようだ。

 

神楽坂さんも待っているだろうし、早く帰らなくてはと思い踵を返してもと来た道を戻っていく。

 

「ゆ、縁!!」

 

置いて行かれたと思ったのか、呼び止めるようにアキラの焦る声が聞こえてきた。

別に置いて行った訳ではないのだが、まさかアキラがここまで慌てるとは思わなかったので何だか可笑しくなり、笑を抑えながら振り向く。

 

「アキラ?」

 

振り向けば、焦った声を上げたにも関わらず何故がベンチの前で直立不動で動かないアキラが顔だけを此方に向けて突っ立っていた。

 

真っ直ぐ背筋を伸ばして、まるで気をつけの姿勢であり、彼女は何をしているんだと思っていたが、彼女の表情がどうもおかしく、恐怖や焦り…戸惑いかな?とにかく何か余裕のない感じだった。

 

「か、身体が動かない!」

 

「へ?」

 

「何かに縛り付けられているみたいに、何かに押さえつけられて___おわぁぁぁああ!!」

 

必死で訴えかけようとしていたアキラだが、直立不動の状態でバランスを崩し、受身を解くことなくそのままの状態で地面に倒れ伏せた。

 

「アキラ!大丈夫!?」

 

あまりにも危険な倒れ方をしたので打ち所が悪かったのではないかと心配で駆け寄ると、突然何かに左手を引っ張られた。

 

誰だと思い引かれた方に視線を向けるが、そこには何も居らず、目に見えない何かは未だに左手を引っ張っている。

 

「な、なに、これ……?」

 

引き剥がそうと自ら左手引っ張るが、手首に何か食い込む様な感触と痛みでこれ以上は動かなかった。

すると、今度は右手を反対方向に引かれ、抗う事も出来ず、強い力で両手を引っ張られ、体ごと宙に吊り上げられた。

 

「なに!?何なのこれぇ!!

ポルターガイスト!?」

 

突然起こった怪奇現象に戸惑いを隠せず、情けない声を上げてまだ自由な両足をジタバタさせる。

 

『フフフフフ____』

 

肌を撫でる様に吹く風に乗って、妖艶な女性の笑い声が周囲に響き渡る。

 

『獲物が二匹もかかってくるとは、今日はなんともツイているな』

 

未だに聞こえてくる声の主を探そうと周囲を見渡すが、それらしいモノは全く見つからない。

 

だが、見つかった。声の主ではなく『怪奇現象』の正体だ。

それは極細の『糸』。気を通した目でなくては確認出来ない程細いその糸で、いったいどうやって人一人の体を持ち上げているのかも謎だったが、その正体は『魔力』であった。

確かに魔力を通した糸ならば、いくら細くてもこれだけの強度を増す事は出来る。

 

「(何処だ、いったい何処にいる

魔力を使っているなら、犯人は魔法使いだ、術者も何処か見える所でこの糸を操作していた筈だ

でも何で魔法使いが?麻帆良に敵対する魔法使い?)」

 

麻帆良に敵対する者で良い思い出はないのだが、先ずはこの糸から如何にかしなければ僕達は正に蜘蛛の巣にかかった蝶だ。

 

両腕から気を放出すると、糸をあっさりと千切れ、縛る物がなくなった事により両足はちゃんと地面につき、両腕も自由になる。

 

「(簡単に切れたということは、この糸の魔法はあんまり魔力を注げないのかな?

それとも相手の魔力より僕の気の方が相手より勝ったのか)」

 

何にしても、僕は魔法使いとの戦闘は初めてだ。伊織の場合は訓練であり手加減されていたこともあるので本当の戦いとは呼べない様なものなのでノーカンだ。

 

基本的には魔法使いは遠距離の戦闘を得意とする。僕は魔法がからっきしなので、遠距離の技は『遠当て』『小麦粉』『女王艦隊』しかなく、その内『小麦粉』は使用出来ない。

『遠当て』は遠距離と云うより中距離技であり、『女王艦隊』は大規模殲滅兵器にも等しいのでなるべく使いたくはないが、いざという時はアキラを抱えて惜しみなく使えばいい。

どうせ魔法先生達が後で修復してくれるだろ。

 

そう思い、先ずは魔法服を装備するべくポーチからパクティオーカードを取り出そうと手を伸ばすが、いつもはある感触が無く、伸ばした手は空をきる。

 

「(…やばい……ポーチ忘れた……)」

 

予想外の出来事で額からは汗が滲み出ており、何処に置いたのかと思い出せば、そういえば食事中は邪魔だからと思いポーチをテーブルに置いたのだった。

 

「(さ、作戦変更!こうなったらアキラを抱きかかえて寮まで逃走するしかない

幸い相手はまだ現れてないんだ、全力で逃げればまだ振り切れる筈だ)」

 

『小麦粉』も『女王艦隊』もない以上、『気』だけで魔法使いを倒せるとは限らない。

こっちにはアキラも居るので、なるべく安全な方法でこの場を離脱したい。

しかし、そんな事を考えている内に敵は僕達の目の前まで迫っていた。

 

 

奴は、空から現れた。

 

漆黒の夜空に溶け込む程に黒いローブを纏い、それを蝙蝠の羽の如く羽ばたかせ、ゆっくりと地上に降り立った。

 

「驚いた、こんな坊やが『気』を使うとは……

あの爺め、まさか初等部にまで息のかかった者を紛れ込ませるとは、奴も中々に侮れない」

 

それは、少女と言うにはあまりに妖艶な色香を持つ妖しげな女の子だった。

腰より下まで伸びきった長い金髪の髪は、黄金の様に美しく。深海の様に深く濃い青い色をした瞳は見た者を全てを呑み込む様なイメージがある。

背丈は僕とそんなに変わらない程低く、黙っていれば上質な人形ではないかと思う程に美しいのだが、彼女の口から時より見える犬歯は常人よりも明らかに長く鋭い。

 

『吸血鬼』

僕の頭の中には、何故かその言葉が過った。

そういえば和美が言っていた。『満月の夜、桜通りに現れては少女の生き血を啜る吸血鬼』の話を____。

 

まさか今日聞いたばかりの話の人物が目の前に現れるなんて思いもしないだろう。

しかもそれが魔法使いで、今まさに襲われそうになっているなんて、誰が予想出来たであろうか?

 

「まぁいい、それだけ活きのいい方が、魔力の回復も早まると云うものだ

悪いが小僧、貴様らは、この私の贄となってもらうぞ」

 

 

もし、こんな展開に導いた奴がいるのなら、そいつはとことん性格の悪い奴なのだろう。

それが神様って奴なのだとしても、その神様はとんだドS野郎に違いない。

 

 

吸血鬼は一歩、また一歩と、その妖しげな雰囲気を纏われながら僕に近づいてくる。

 

目の前には吸血鬼、その後ろには未だに糸に縛られたアキラが如何にか脱出しようともがいているが、糸が切れる気配は一向にない。

 

逃げる事は出来ない、戦うしかない。

 

拳を力強く握り締め、目の前の敵を見据える。

 

 

 

天にまします我らの父よ、あなたは何故、これ程までに私に試練を御与えになるのですか?

 

 

 

 

 

 




ゆかりんとエヴァ様が交差する時、物語は始まると言ったな。あれは本当だ。

ついにメインヒロインの登場か、胸が熱いな(真顔)

エヴァ様にお会いする為に、どれだけの時を彷徨い、書き続けてきただろうか。
ゆかりんの成長?いおりんの正体?そんなものはどうでもいいのだぁ!!全てはこの日この時の為にあったのだ!!

と、言うわけ、私はUQホルダーに行ってくる、誰も止めないでくれ(=゚ω゚)ノ

それにしても夏凜ちゃん可愛いな。どうだ、私と一緒にバレーボールをやらないか。

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