小麦粉使いの魔法使い   作:蛙顏の何か

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激闘の学園祭 前編①

小学二年生になり、今は梅雨を終え七月の頭、空にはアドバルーンが浮かび、セスナ機が飛び交い、飛行機雲をひきながらデモンストレーションを行っている。

辺りには紙吹雪が舞い、仮装した生徒達によるパレードが行われていた。

学園中が熱狂に包まれお祭り騒ぎ、観光客も学園の壮大さに目を奪われていると、学園中のスピーカーから放送が流れる。

 

 

「只今より、第70回麻帆良祭を開催します!!」

 

 

開催宣言と共に、学園中が爆発したかの様に歓声が上がった。

 

今日はこの学園に来て二度目の学園祭であり、今は裕奈と和美を連れて屋台の食べ歩きをしていた。

アキラは午前は家族と回るらしく、午後から合流する予定だ。

裕奈は屋台で買ったフランクフルトと綿飴を両手に持ち、和美は学園祭の風景をカメラに収めていた。

 

「去年も思ったけど、相変わらずの凄さだね」

 

「そりゃあ麻帆良だからね、これくらいはするよ

それに一説にはこのお祭り、一日で数億の金が動いてるらしいからねー」

 

和美は手帳を見せてくれると、彼女の言ったら通り、学園祭ではあり得ない程の大金が費やされており、一学生が扱える様な物ではないが、この学園には何故かしらお金持ちのお嬢様が多数在籍しており大金の扱いや出処もそういった所なのかも知れない。

因みに別のクラスの那波さんや雪広さんなんかが、かなりのお嬢様だそうだ。

 

裕奈も和美の手帳を見るがやはり解らないのか首を傾げ、ムッと顔を曇らせると、何故がフランクフルトを僕の口に突っ込んだ。

しかも何で食べかけなんだよぉ!!

 

「二人とも難しい話してないでもっと食べて、もっと見て回ろうよ!!せっかくのお祭りなんだから!」

 

「あー、ごめんごめん、それもそうだったね

せっかくの祭りなんだから、楽しまなくっちゃ損だよね」

 

剥れる裕奈に笑いながら手帳を懐にしまう和美、僕もフランクフルトを食べ切り、なんの躊躇いもなく二人と手を繋ぐ。

確かに二人の言う様に、せっかくの祭りなのだからとことん楽しまなくては、それに難しい話しをしたせいで、裕奈が仲間外れになったと思っているかも知れない。

それにしても、あの内気な僕がよく自分から女の子に手を繋げたものだ、成長したね、僕。

 

「いや〜、ゆかりんもなかなかやるねー

この歳で両手に花なんて、このハーレム男子め!」

 

「ちがうよ!アキラが居るから両手じゃ足りないよ?

う〜ん、それだと何て言うんだろ?」

 

和美が「憎いね〜この色男!」と肘で突き、裕奈は綿飴を食べながら両手に花の三人バージョンの名称を考えていた。

二人の様に可愛い美少女を囲うのは、年齢=彼女いない歴の男として涙が出るほど感動するが、前にも言った様に僕はロリコンではない。

裕奈とアキラからは、何と無く好意性は感じられる(和美はどうか分からないけど)が小学二年生風情がこの歳で恋愛がどうだのなんて精神が未熟が子供にはまだ早く、子供の彼女達にとっては、好きと言ってもLOVEではなくlikeの方だと思う。

故に、今は好きがどうだの嫌いがどうだのなどと考えるより、純粋に子供としての時間の方を大事にする。

僕達は思春期を迎えてしまえば、もしかしたら今の様に四人で遊ぶ事なんて無くなってしまうかも知れない、時間は残酷であり、時が経つにつれて人は変わって行くもの、だから純粋な子供の内に、思いっきり遊び倒す、僕達の絆をもっと多く残す為に。

 

「次は何処にいくの?今度は射的とかに行きたいんだけど」

 

「私は世界樹の方に行きたいかな、そこで取材したいんだよね」

 

「ワーカホリックもダメだとは言わないけど程々にね、それに祭りを楽しむって自分で言ったんだからなるべく控えてね

裕奈の方は多分バイアスロン部辺りがさせてくれると思うから、途中でそっちにも寄ろうか」

 

二人から候補を聞き、和美がパンフレットを見ながら次の目的地のルートを探す。

裕奈と和美に手を引かれながら、世界樹前広場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この学園も相変わらずだな、あたし達が居た時よりも更に盛大になってんな」

 

「何年経ってると思ってるのよ、私達の時とは時代が違うんだから、こうなるのは当然よ

まぁ、確かに盛大だけど」

 

あたしはその辺の屋台で買ったホットドッグを食いながら、同じく仕事が休みであった夕子と共に麻帆良祭を回っていた。

空に舞う紙吹雪を、いったい誰が掃除するのだろうと疑問に思いながら、あたし達が在籍していた時とはまるで金の掛け方が違う麻帆良祭に圧巻していた。

 

「裕奈達も楽しんでるかしらね、変なのに絡まれなきゃいいけど」

 

「縁も居るし大丈夫だろ、それに小学生に手を出す様なロリコンは、この麻帆良には……いないとも言い切れねぇな……」

 

主に図書館に居る誰かを思いだしながら、裕奈ちゃんの事が心配になるが、あの娘は夕子に似て逞しいから大丈夫だろうと結論付ける。

それにいざと成れば縁も居る、伊達にあいつを鍛えてる訳じゃねぇんだし、女の一人や二人守れねぇようじゃ漢(男)じゃねぇ。

 

「まっ、いざと成ったら、ここの魔法教師達がなんとかしてくれるだろ

今は仕事や家事の事は考えず、祭りを楽しもうぜ」

 

「それもそうね、ウチの亭主も歴とした魔法使いなんだし、子供たちの事を任せても大丈夫よね」

 

「そうそう、旦那を信じてやりな

夕子もホットドッグ食って祭りの気分を味わいな」

 

「ん、ありがとーーーって!これパンだけじゃない!なにソーセージだけ食べてんのよ!!これじゃあベジタブルサンドじゃないの!」

 

夕子は手にした肉のないホットドッグをあたしの口の中に勢いよく突っ込んだ。

痛てぇ、相変わらず夕子のツッコミにはキレがあるが毎回オーバーリアクションなのでくらうこっちのダメージは半端ではない。

 

そんなどうでもいいコントを繰り広げていると、人混みからスーツを着た青年…いや、老けかけるてから青年ではないか。

人混みから出てきたおっさんはあたし達に気付き、こちらに近づいていた。

 

「こんな所で何やってんだよタカミチ坊主」

 

「はは、君は相変わらずだな、この歳でも坊主扱いかい?」

 

「たりめぇだ、あたしより年下でしかも弱いんじゃあいつまで経ってもてめぇは坊主だよ

一丁前に有害物なんて吹かしやがって、そんなに早死にしてぇのかよ」

 

自分の記憶では、まだこいつは二十代だったと思うのだが、それでも老け気味な昔馴染みのタカミチは苦笑いしながらもタバコを吹かす。

だが、あたしにはその姿が今はこの世にはいない師の姿と重なって見えて、何だか苛ついた。

 

「こんにちはタカミチ君、見ない間にまた一段と成長したねー」

 

「ダイオラマ球に居すぎなんだよ、使う分には構わねえが時間設定のいじり過ぎだ

おめぇ何年篭ってたよ」

 

ダイオラマ球の設定を長い間弄った状態で中で過ごせば、あっという間に浦島太郎の仲間入りだ。

だからあたしも縁の訓練の時は基本設定を弄っていない。あいつは若いからいいかもしれねぇが、あたしも年はとりたくねぇ。

まぁ、タカミチが老けやすい奴ってなら話は変わるが。

 

「さぁ、覚えてないよ

でも、何とか『咸卦法』の完成まで漕ぎ着けそうだよ」

 

「遅ぇよ、姫子ちゃんなんて直ぐ出来たじゃねぇか」

 

「比べる相手が違い過ぎるよ、それに出来ないのは君も同じじゃないか」

 

「それこそ比べる相手が違うんだよ

あたしの場合は『他の要素』が邪魔して両者を均等に合成できねぇんだよ」

 

タカミチは生まれつき呪文詠唱が出来ない体質だが、それでもそれを補う程の努力により魔法使いの中でも上位にいる。

だが、この『咸卦法』は究極技法と言われる程の超高度な技であり、どんなに才能があっても辿り着ける物ではないが、こいつはそれを目処がつく所まで来ているのだ。

努力の天才、才能がないこいつが唯一あるとすれば、まさにそれだろう。

まぁ、あたしはそれをも超える超天才だが、あたしは性質上、気と魔力を均等に合成する『咸卦法』を習得が出来ない。

性質なら仕方ないさ、超天才のあたしでもな。

 

「まっ、爺になる前に習得するんだな」

 

「また貴女はそんな事言って……ごめんねタカミチ君」

 

「いえいえ、いいんですよ、昔からこうでしたし、もう言われ慣れましたよ」

 

そうだな、あたしとこいつの間には遠慮は存在しないし、『紅き翼』の数少ないマトモで真面目キャラだからな、こんなことはあの頃なら日常だ。

 

タカミチは夕子の旦那にいつも世話に成ってるだの何だのと礼の言葉を言っていると、これ以上は長話になるなと思い話を中断させ、夕子に声を掛け、再び祭りを回ろうとすると、ポケットの携帯鳴り始めた。

タカミチの携帯も鳴っているらしく、あたし達に断りをいれて電話に出るが、あたしはあいつに断りをいれる必要がないし、する気もないのでそのまま電話に出る。

非通知で表示されていたが、もしかしたら『帝国』からかも知れないので電話に出るが聞こえて来た声は全く違う声だった。

 

《全魔法先生に連絡!緊急事態です!!》

 

聞こえてくる声は女、多分少女だと思う。

本当に緊急事態なのがかなり切羽詰まっており、声を荒げているが、あたしは魔法先生ではない。

しかも、この電話は普通の回線ではなく、電子精霊を通しての回線なので、どうやってこっちの連絡先を知ったのかと問い詰めようと思ったが、それより先に彼方は連絡を続ける。

 

《侵入者です!相手は結界を突破し侵入して来た模様、迎撃に向かった魔法先生及び魔法生徒数人が重傷

危険ランクAと判定、一般市民に被害が及ぶ前に侵入者の撃退をお願いします!!》

 

どうやらこの回線はタカミチの方にも通じているらしく、あっちもあからさまにこっちに視線を向けているし、夕子もあたしの電話が聞こえたのか、仕事用の魔法拳銃の取り出した。

 

どうやら、楽しい休日は終わったようだ、多分この後、学園長の爺からも正確な依頼が来るだろう。

 

「はぁぁ、マジでかったりぃなぁおい

これなら、今日は家でアニメ鑑賞してればよかったぜ」

 

愚痴を言っても仕方ない、これからは楽しい楽しいお仕事の時間だ、あたし達は戦闘準備を進める中、次の連絡が来るまでピリピリした空気の中で待機していた。

 

 

 

 

 




一気に時間が飛びましたが、このままやっていると本編に入るまでに70話程になりそうなので、これからはなるべく急ぎ足で行きます。なるべく。




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