かちこめ! 花子さん   作:ラミトン

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そのはち 恐怖?秋を司る山の神!

 

 

~~~~

 

 

 太郎くんへ

 

 こんにちは。またお手紙書いちゃいました。

 

 太郎くん、突然だけど、神様って信じる? 私は正直、最近まで信じていませんでした。だって、見たことがなかったんだもの。

 

 でも、その考えは今日すっかり変わってしまいました。神様はいるんです。外の世界は分からないけれど、この幻想郷にはいました。

 

 神様に会っちゃった。すっごく優しくて、いい人たちだったよ。季節はずれだったからか、ちょっと神様らしくなかったけどね。

 

 幻想郷には、もっとたくさんの神様がいるそうです。いつか会ってみたいな。

 

 あ、それからもう一つ。以前私は幻想郷の厠の怪になるんだーって意気込んだけど、あれ、前言撤回させてください。ごめんね。

 

 トイレの花子さんでもあり、郷に生きる厠の怪ではあるけど、私は私。御手洗花子だものね。もっとありのまま、自由に生きてみることにします。

 

 本当に勉強することが多くて、少し大変です。でもまだまだ、がんばるからね!

 

 太郎くんも、がんばって子供を怖がらせてくださいね。それでは、お元気で。

 

 

 花子より

 

 

~~~~

 

 

 

 花子は空を嫌いになりかけていた。自力で飛んでいるわけではないが、彼女は今、母なる大地を自らの足で歩くことの大切さを身に沁みて感じている。

 

「ひえぇぇぇっ! 高いぃぃぃぃっ」

 

 叫びの通り空中高く――少なくとも、森の木々より遥かに上空だ。萃香に手を、こいしに足をつかまれ、まだ飛行を会得できていない花子は無理矢理空へと運ばれていた。

 萃香は飛行のイメージを掴むためとかなんとか言っていたが、このままではむしろトラウマになるであろうことは間違いない。涙目になっている花子に気づかず、萃香とこいしはとても楽しそうだ。

 

「ほぉーら花子、楽しいだろう?」

「今日はお天気だから、気持ちいいねぇー」

 

 などと暢気に笑いつつ、二人はその場で手を繋いでいるかのように回り始めた。当然、その間にいる花子も回転に巻き込まれる。

 

「ひょえぇぇぇぇっ!」

 

 抵抗すれば落ちるし、かといって怖いものは怖い。目を閉じれば和らぐかとも思ったが、いつ落ちるかも分からない恐怖に耐えられるほど、花子の精神は頑丈ではなかった。

 山に生い茂る森が、眼下でぐるんぐるんと回る。しかも、花子を回しているのは妖怪二人だ。こいしは無意識だろうが、萃香は確実に悪ノリで回転を加速させる。いよいよもって、花子は生命の危機を感じ始めた。

 

「やめてぇぇぇぇぇ」

「あははー、楽しいねぇー」

 

 残酷なほど純粋なこいしの笑い声が、花子を解放してくれないだろうことを教えてくれる。しかし、このままでは本当に危険だと思った花子は、最後の力を振り絞ってこいしに語りかけた。萃香は後回しだ。

 

「こ、こいしちゃん!」

「んー?」

 

 なおも花子を回しながらだが、こいしが応えてくれた。今が好機とばかりに、花子はパッと目を輝かせ、

 

「あ、あのね。本当に苦しいの、だからお願い、もうやめて!」

「んー」

「もう、もうだいぶ飛ぶ感覚も掴んだから! また川原で集中すれば飛べる気がするから! ね!」

「うーん」

 

 花子の足をつかんでいるこいしの顔は見えなかったが、その声が高速回転中に出されるべきものではないことは分かった。とぼけた声を出すくらいならば止まってくれと心の中で叫びながら、手を握っている萃香を一瞥する。

 もしかしたら萃香のほうが早いかと思ったのだが、目が合った萃香はにやりとほくそ笑んだ。意図するところは分かる。鬼は嘘をつかない種族だが、彼女は捻くれ者だ。言葉を交わさなければ嘘にはならないと言い切り、話して都合が悪くなるときは決まって口を閉ざしてしまう。今がまさにその状態だ。

 やはり、こいししかいない。もう一度、背後のこいしに聞こえるよう声を張り上げる。

 

「こいしちゃん、ねぇ、何でも言うこと聞くから、お願いだから――」

「あ、弾幕ごっこやってる!」

 

 唐突に、今まで何もなかったかのような素振りで、こいしが手を放した。そのまま凄まじい速度で、遠くのほうで妖怪同士が興じている弾幕ごっこを見物に行ってしまう。

 固定されていた花子の足が自由を取り戻し、慣性のままに振り回される。ここまでと見たのか、萃香がすぐに回転の勢いを殺し、花子を抱えてくれた。

 

「やぁー、楽しかった。どうだった?」

「どうもこうもないですよ、萃香さんもこいしちゃんも、酷いんだから!」

 

 顔はすぐ目の前にあるというのに、花子は遠慮なく怒鳴り散らした。しかし、萃香が動じた様子はない。

 

「まぁまぁ、あんな目に合ったんだ。いざ空を飛んだ時に嵐が来ても、もうビビらないで済むじゃないか」

「屁理屈ですよ」

「でも嘘じゃない。だったらいいのさ」

 

 これだ、と花子は頭を抱えたくなった。萃香の肩に手を置いておかなければ落ちそうで怖かったので、叶わなかったが。

 あれだけの目に合っておきながらも、花子は心から二人を責める気にはなれなかった。妖怪としての基礎が身についてから、すでに五日目。妖怪が空を飛ぶために行う訓練をひたすら行っていたが、未だに太陽の下を飛び回ることはできずにいる。

 人間が自転車に乗れるようになるのと同じで、飛べるようになる時間には個人差があるそうだが、花子は焦っていた。二人の妖怪に面倒を見てもらいながらその期待に応えられていないことが、申し訳なくて仕方がない。

 萃香とこいしにも、その焦りは伝わっているのだろう。やり方はともかく、二人は二人なりに少しでも早く花子が飛べるよう考えてくれているのだ。そう思うと、なおさら焦ってしまう。悪循環であった。

 とはいえ、こんな悪ふざけをされては面白くない。じっくりトレーニングすればいいと言ったのは萃香なのにと、不満げに唇を尖らせる。

 

「もう。私は真剣なんですよ」

「分かってるって。あんまり真面目に練習するもんだから、息抜きも必要かなってさ」

「どんな息抜きですか……。それよりも、萃香さん」

 

 先ほどから気になっていた違和感の正体に、花子はようやく気がついた。いつも萃香の肩にかけられている、あるものがなくなっているのだ。

 きょとんとしている萃香の脇腹――いつもそれがぶらぶらと揺れている場所を指差し、

 

「瓢箪、置いてきたんですか?」

「え?」

 

 悪ノリを終えて満足そうだった萃香は、左手一本で花子を支えて空いた右手をふと脇腹にやり、

 

「……え?」

 

 顔色を青くした。いつもの彼女らしくない、恐怖とも絶望とも取れる顔だ。花子としては気になったことを尋ねただけだったので、彼女がこんな顔をするとは予想できるはずもない。

 そのせいなのかどうかは知らないが、次の瞬間に起こった出来事を、花子は一瞬理解できなかった。

 

「私の――」

 

 それはあまりにも自然に、いつものように、何の気なしに。

 

「私の――!」

「はぇ?」

 

 萃香の左手が当然のように花子から離れ、支えをなくした花子がすっ呆けた声を上げ、

 

「私の伊吹瓢(いぶきびょう)がなぁぁぁぁぁいッ!」

「のぉぉぉぉぉっ!?」

 

 重力に思い切り引っ張られる花子の視界で、わめきながら飛び去っていく萃香。彼女はこちらを振り向こうともしなかった。

 助けてくれないのだな。瓢箪のほうが大事なんだろうな。そう思うととても寂しかったが、萃香にとってはそれだけ大切なものだったのだろう。

 涙が飛んでいく。いや、自分が落ちるほうが速いのだ。舞い散る涙の粒とは、かくも儚く美しいものなのか。そんな詩的で、それでいてかなりどうでもいいことを考え、口元には微笑など浮かべつつ――

 

「……黙っときゃよかった」

 

 誰ともなしに呟きながら、花子は森の木々に突っ込んでいった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 葉の生い茂る夏の木々であっても、落下する花子を完全に受け止めることはできなかった。それでもいくらかは衝撃を防いでくれたようで、かつ土が柔らかかったこともあってか、地面に激突しても奇跡的に軽傷で済んだらしい。

 実を言えば、日頃の飛行訓練が効果をなし、無意識のうちに妖力で落下速度を抑えていたからというのが一番大きな原因であるが、花子がそれを知る由はなかった。今はただ、全身に感じる激痛に呻き声をあげることしかできない。

 

「うぅ……いったぁ――」

 

 妖怪でよかったと、花子は痛みに支配されかけている意識の片隅で思った。人間ならば間違いなく死んでいただろう。

 程なくして、自分がへし折ったのだろう木の枝や葉が大量に舞い落ちてきた。申し訳ないことをしたなと胸中で森の木々に詫びつつ、なんとか這いつくばって適当な木に背を預ける。

 擦り傷がヒリヒリと痛いが、この程度ならばすぐに治るだろう。つばをつけておけばいいかとも思ったが、口も手も土だらけなのでやめておいた。手ぐしでおかっぱ頭を整えもんぺについた砂を軽く払って、立ち上がる。

 問題は、ここがどこなのか分からないことだ。妖怪の山は大きい。山を覆う森も当然広い。飛べない花子にとって、萃香達を探すことは大変難しく思えた。

 とはいえ、じっとしていも始まらない。誰かに会えれば、道を尋ねることができる。文のような意地悪な人じゃないことを祈ろうと、花子は歩き出した。

 風が木々を揺らし、葉が夏の音色を奏でている。来た頃はまだ夏の初めだったが、もうすっかり太陽の季節だ。見上げた木々から溢れる木漏れ日があまりにも元気いっぱいで、花子は独りで森を彷徨うことになんの怖さも感じなかった。

 

 まずは川を探さなければと歩いていたが、一瞬視界の端に映ったものが気になって足を止める。

 ここは森で、季節は前述の通り、夏だ。土と木の茶と石の灰色、木々の緑が主な色彩となっている。そんな夏の森に、一際鮮烈な赤が見えたのだ。

 何気なくそちらを見やって、ぽかんと口を開けた。上空からは葉に隠されて見えなかったが、信じられないほどの大木が聳え立っていたのだ。その根元には空洞が作られ、中にはこじんまりとした赤い丸屋根の家が一件、すっぽりと入っていた。さきほど花子の目に入った赤色の正体は、この屋根だろう。

 大木の中に家を建てるという前衛的な発想にも言葉を失ったが、花子が何よりも驚いたのは、大木から見たらほぼ根元である位置から無数に伸びる木の枝だ。梨やブドウ、栗に柿といったあらゆる秋の果物が成り、その葉は夏だというのに真っ赤に染まっている。

 花子の立つ場所は夏も盛りだが、さして離れていない大木の周囲だけは、紛れもなく秋であった。

 

「……?」

 

 何がどうなっているのか分からなかったが、ここは幻想郷なのだ。あまり物事を深く考えすぎるとろくなことがないということは、いい加減学習していた。

 ともかく、家だ。誰かいるかもしれないし、山の住人ならばきっと花子がいた川の場所も分かるだろう。わずかに逡巡したものの、花子は秋に包まれた家を訪ねることにした。

 大木に近づけば、なるほどやはり秋である。生い茂る草もわずかに色を変えているし、落ちてくる葉はことごとく紅葉している。同じ木から落ちてくるはずなのに、イチョウやモミジとその種類は多彩だ。しかし、気温や湿度だけは夏と変わらない。暑い秋というものがどうにもおかしくて、落ち着かなかった。

 間近で見ると、窓やドアもどことなく丸みのある可愛らしい家であった。さっそく、木製の扉を二度ノックしてみる。

 

「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」

 

 声をかけてしばらく待ってみるも、返事はなかった。

 留守なのだろうか。日はまだ高いし、出かけていたとしてもおかしくはない。諦めて立ち去ろうとした、その時。

 

「はぁぁぁぁぁ――い」

 

 溜息をそのまま返事にしたかのような、なんともかったるそうな声が返ってきた。ノックをしてからたっぷり数十秒は経っているというのに。

 ともかく、花子は声を返した。

 

「あ、あの。お尋ねしたいことがあるんですけど」

「えぇ? こんな暑い日に……」

 

 暑いのと尋ねごとの間にどんな因果関係があるのかは分からなかったが、とりあえずは出てきてくれるようだ。

 じっと待つこと数分、木製のドアがようやく開かれた。

 現れたのは、花子よりいくらか年上の外見を持つ、金眼の少女だった。よれた臙脂色のランニングシャツと少しずり下がった短パンといういでたちは寝巻きもかくやといった酷い服装であるが、どういうわけかブロンドの髪には楓が三枚並んだおしゃれな髪飾りをつけている。

 あまりにも気だるげな顔だったので、花子は次の言葉を飲み込んでしまった。猫背の少女が下から上へ睨みつけるように、花子の全身を眺める。

 

「あなた、そんな服装で暑くないの?」

「……え? あ、いやまぁ、暑いっちゃ暑いですけど。夏ですからねぇ」

「あ、そ。それで、何の用?」

 

 うっかり本題を忘れかけていたが、少女が切り出したおかげで思い出すことができた。

 

「そうだった。あの、実は私、道に迷っちゃって」

「やだ」

「えぇっ!? まだ何も言っていないのに!」

 

 きっぱりと言い切られうろたえる花子を置いて、少女はさっさと家の中に入ってしまった。

 無常に扉が閉まり、再び玄関に立ち尽くすこととなった花子。遠くで鳴いているセミの声が、とても切なく感じた。

 分かってはいたのだ。幻想郷には変人が多い――あるいは変人しかいない――のだから、この程度は日常茶飯事と言ってもいいはずだ。

 そんな歪んだ幻想郷観を持ち出し無理矢理に納得しようとした花子に、声がかかった。

 

「あの、どちら様? 人間……じゃないね。妖怪か」

 

 高く柔らかな声だ。振り返ると、家の中に消えた少女と瓜二つの、やはり少女がいた。クリーム色のノースリーブシャツと、赤いミニスカート。先ほどの少女と同じ金髪だが、瞳は赤かった。秋の果物がたっぷりと乗ったざるを抱えて、額の汗を拭っている。

 返事に困っていると、少女はわずかに眉を寄せて、

 

「姉さん、いなかったっけ?」

「あ、さっきの人かな。えぇっと、中に戻っちゃいました」

「……あの馬鹿姉」

 

 溜息をついてから、少女が花子へと軽く頭を下げた。

 

「ごめんね。姉さんはこの季節になると、毎年あんな感じなの」

「いえいえ、お邪魔したのは私ですし。それにしても、この辺だけ秋っぽいですよねぇ。秋が好きなんですか?」

「あは、まぁ外れてはいないわね。私達は秋の神だもん、秋が嫌いなわけないわ」

「へぇー」

 

 呆けた声を出しつつ、にこりと笑う少女を見上げる。そしてふと、少女の言葉を反芻し、目を丸くした。

 

「て、え? えぇっ、神様!?」

「うん、私は秋穣子(あきみのりこ)。豊穣を司る秋の神。よろしくね」

「あわわわわ」

 

 大慌てで、花子は頭を下げた。そのまま土下座まで行くのではないかという勢いに、穣子と名乗った少女がわずかに身じろぎする。

 

「神様だなんて知らず、その、ご無礼を、えぇっと、お許しください! 私は御手洗花子と申します!」

「あはは、あなた面白いねぇ。嫌いじゃないわ、そういう子。でもまぁ豊作祈願された時以外働かないし、私はそんなにすごい神様じゃないよ。だからほら、頭を上げて?」

「は、はい」

 

 大層な神様ではないと言われたところで、花子にとって神様がすでに大層な存在だ。がちがちに畏まってしまい、これがむしろ穣子を困らせることとなってしまった。

 何せ、神なのだ。爆発するのではというほど心臓が脈打ち、花子の背中は気温以外の原因で汗びっしょりになっていた。

 なんとか頭は上げたものの穣子を直視できずにいると、やれやれと言わんばかりに苦笑して、穣子が自宅であろう家のドアを指差す。

 

「さっき出てきた、私の姉さんいるでしょ。たぶんまた寝巻きのまま接客したんだろうけどさ」

「あ、はい……」

 

 やはり寝巻きだったのかとどうでもいいことに納得していると、穣子が肩をすくめた。

 

「あの人も、私と同じ秋の神よ。紅葉を司る、ある意味私より秋らしい神様かな」

「……え? 嘘、あの人も?」

 

 無礼極まる発言であったが、花子は途端に肩から力が抜けていくのを感じた。

 神様といえど千差万別、八百万(やおよろず)とはよく言ったものである。思えば萃香やレミリア、フランドールも強力な妖怪だが、身なりも性格も子供のそれだ。なるほど、秋の神だからといって尊厳に溢れた遥か高みの者というわけではないらしい。

 納得しきってしまうのも失礼だとは思ったが、幻想郷の神は――少なくとも紅葉の神であるらしい寝巻きの少女と眼前の穣子は、もっと気楽に接しても良さそうだ。

 

「少しは緊張解けたかな?」

 

 穣子に言われ、花子は頷いた。もうすっかり心は落ち着いている。

 

「すみません、取り乱しちゃって」

「いいのいいの。素直な子は好きだよ。とにかく、中へどうぞ。暑い中で立ち話もなんでしょ?」

 

 川への道を聞こうと思っていたのだが、穣子はドアを開けて花子を待っている。

 急いで帰る必要もないだろうし、何より少し萃香を懲らしめてやりたい気持ちもあり、花子は神の住まう家に少しだけお邪魔することにした。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。お邪魔します」

「はい、ようこそ。今お茶と果物出すから、適当に座っ――」

 

 ざるをテーブルに置いた姿勢で、穣子が固まる。

 何事かと彼女の視線を追えば、穣子の姉であるらしい紅葉の神が、二つ並んだベッドの一つで仰向けに寝転がっていた。ランニングシャツと短パンを脱ぎパンツ一丁でだらしなく口を開けて寝ている様は、もはや神どころか少女であることも危ぶまれる光景だった。

 

静葉(しずは)姉さんっ!」

「うぅん? 穣子、おかえりぃー。暑いからなんか冷たいの作ってぇ」

「……」

 

 上半身裸でありながら色気の欠片も感じられない姉に近寄り、穣子はそこらのタオルケットを引っつかみ、少女――静葉にかぶせた。頭から足まで、すっぽりと。この頃には、すでに神様は偉いという常識が花子の頭から消えていた。

 もぞもぞと動いてタオルケットの位置を調整しつつ、静葉がうっすらと目を開ける。ぼんやりとしているだろう顔が、花子の方を向いた。

 数秒、目が合う。穣子がお茶の準備を始めるのと同時に、静葉が悲鳴を上げた。

 

「ちょちょ、ちょっと穣子! お客さんがいるなら言ってよ!」

 

 タオルケットで胸元を隠し、ベッドの脇に散乱している服の群れからオレンジのシャツを取り出している。

 今更恥らわれてもと花子は困ったが、とりあえず挨拶をすることにした。口元の苦笑いは、どうあっても消せそうになかったが。

 

「お邪魔してます。御手洗花子っていいます」

 

 小さくお辞儀をすると、とりあえずシャツだけを着込んだ静葉が髪飾りを直しつつ、取り繕うような笑顔を浮かべた。

 

「よ、ようこそいらっしゃい。ごめんね、こんなところ見せて」

 

 いえ、と一言返すと、律儀に姉の分までお茶を淹れたらしい穣子が戻ってきた。お茶請けだろう、剥かれた柿が皿に盛られている。

 赤いレースの膝丈スカートを穿いて、静葉がそそくさと席につく。その隣に穣子も腰掛け、花子も習って対面の椅子に座った。お茶はどうやら紅茶のようだが、以前咲夜が淹れてくれたものとは違う香りがする。

 持ってきたのは穣子だが、遠慮せずにどうぞと勧めてくれたのは静葉だった。建前があるのだろう。何も言わずにお茶を啜る穣子は、姉の立たせ方も知っているようだ。よくできた妹だ。

 

 本当は静葉も物腰柔らかで静かな少女なのだが、それは秋に限った話。冬は暗く春は苛立ち、そして夏はこの通り。季節を通じて性格が変わるのは穣子も同じなのだが、静葉はそれが酷く顕著であった。夏に遭遇してしまった花子は、とてもタイミングが悪かったと言えるだろう。

 しかし、少しばかり雑談をするうちに、静葉もだいぶ本来の性格に立ち戻ってきたようだ。時間が経つにつれて、先ほどの出来事を後悔し始めている。

 

「あぅー、穣子。お客さん呼ぶなら先に教えてよね。よりによってあんなところ見られちゃ、私の立場ってもんがないじゃない」

「何言ってんの。最初に花子ちゃんを迎えたのは姉さんだよ」

「え? そうだった?」

 

 きょとんとした顔でこちらを見るものだから、花子は曖昧な返事をすることしかできなかった。寝巻きで客人を追い払ったと知れば、静葉がさらに傷つくことは目に見えて分かる。

 しかし、それは出会ったばかりの花子だからこその遠慮であった。実の妹である穣子は、遠慮なく言い切った。

 

「姉さん、寝てたまんまの格好で玄関出て、花子ちゃんを追っ払ったでしょ」

「う、嘘……。私そんなことしたの? 花子ちゃん、ごめんね」

「えぇと、お休み中にお邪魔した私が悪かったんですから、気にしないでください」

 

 遠慮がちに答えると、静葉は何かに驚いたらしく目を丸くした。じっと花子を見た後、隣の穣子の袖を引っ張る。

 

「ちょっと穣子、聞いた? 妖怪なのにこんだけ謙虚な子っている?」

「いないってことはないんじゃないの? 確かに妖怪は基本的に自分勝手だけど、河童や山彦なんかは話の分かる奴もいるよ」

「まぁそうだけど。いやでも、いいわぁ。花子ちゃん、気に入ったわ」

 

 妙にべた褒めされてくすぐったくなり、花子は照れ笑いを浮かべつつ頭を掻いた。何せ相手は神様なのだ。嬉しくないわけがない。

 花子に興味を持ったらしい静葉が、テーブルに身を乗り出した。傾いて紅茶が零れかけたティーカップを、穣子がすかさず押さえている。

 

「ねぇ花子ちゃん、あなたはなんて妖怪なの?」

「姉さん、お茶が服にかかるよ」

「後で洗うからいいの。それより、ね。花子ちゃんにはどんな力があるのかしら?」

 

 大樹周りの作物の世話があるため毎日作業に勤しんでいる穣子と違い、彼女は秋以外は暇で暇で仕方ないらしい。客人とのお喋りが久しぶりであることも相まって、声音は穣子よりもおっとりしているというのに、静葉は妙に積極的だった。

 わずかに気おされつつ、花子は視線を宙に彷徨わせる。

 

「えぇっと、お手洗いで子供を驚かせる妖怪、でした。外では」

 

 今は違うのかと聞かれれば困ってしまうが、少なくとも子供を驚かすことはほぼ諦めている。曖昧な答えになってしまったが、二人の興味は別に逸れたようだった。

 ティーカップを受け皿に置いて、穣子が軽く首を傾げる。

 

「ん? 花子ちゃんは外から来たの?」

「あ、はい。何ヶ月か前に」

「あらま、じゃあまだ来たばっかなんだ。どうして幻想郷に?」

「そうですねぇ……」

 

 話すべきか少しだけ迷ったが、花子は今までの経緯を語ることにした。

 外からやってきた日から今日までのことをかいつまんで話すと、秋姉妹は興味津々に耳を傾けてくれた。弾幕ごっこができなかったり空を飛べないことを知るとやはり少し驚いたようだが、怒ったり笑ったりはしなかった。

 途中で静葉と穣子が質問を挟んできたりもしたので、話は二時間ほどかけて、ようやく終わりに近づく。

 今は萃香と空を飛ぶ修行をしていると話すと、少しだけ考え込む仕草を見せてから静葉が告げた。

 

「うぅん。飛ぶ練習ねぇ……。すぐにでも飛べると思うよ、花子ちゃんは」

「でもまだ、コツっていうか、そういうのが……」

「んー、違う違う。なんていうのかなぁ……ねぇ穣子」

 

 突然話を振られた穣子は、食べていた柿を飲み込み、指で唇を拭きつつ、

 

「んだね。姉さんの言いたいことは分かるよ」

「え? えっと、どういうことです?」

 

 うろたえ気味に訊ねると、それには静葉が答えてくれた。

 

「花子ちゃん、まだ自分が外の妖怪だと思ってるでしょう」

「……?」

「外にいたからできなかった、外と違うからうまくいかない、そう思ってるところがあるんじゃない?」

 

 言われて振り返ると、確かにそうであった。外の世界と幻想郷の常識を比べてしまい、外との違いを言い訳にしていることには心当たりがある。

 

「そうかもしれないです。だから私、幻想郷の妖怪にならなくちゃって」

「それそれ。その発想がもう間違ってるんだよねぇ」

 

 柿を一切れかじりつつ、穣子。いよいよもって理解できず、花子は困惑した。

 すぐにでも答えがほしかったのだが、静葉が飲み終わったカップを突き出しおかわりをくれと妹にせがみ、穣子が自分でやれとポットを姉に押し付ける問答がしばらく続き、とりあえず手元の柿をいただくことにした。

 結局自分で紅茶を淹れる羽目になった静葉が少しだけ退席し、なにやら文句を言う彼女を横目で見送りつつ、穣子が頬杖をついた。

 

「おいしい?」

「あ、はい。すごく甘くて、瑞々しくて」

「あは、ありがと。この家の周りはいつも秋だからね、気温以外」

 

 柿を頬張りつつさすがは秋の神様だと尊敬の眼差しを向けると、穣子は彼女に良く似合う微笑を浮かべ、

 

「ねぇ花子ちゃん。外の柿はどんな味?」

「外の柿、ですか? うぅん、こっちとそんなに変わらないと思いますけど……」

「だよね。うん、そうだろうね。柿はどこにいっても、柿であることに変わりはない。そりゃまぁ品種とかは違ってくるだろうけど、それが柿であるという事実は決して変わらないよね。例え常識の境界を越えても、さ」

 

 静葉が戻ってきた。話は聞いていたらしく、黙って妹の隣に腰を下ろし、ポットの紅茶をカップへと注ぐ。

 ちらりと静葉を横目で見つつ、穣子は続けた。

 

「外の世界にいた花子ちゃんと今幻想郷にいる花子ちゃんは、違う人なのかな? 修行の話をしてる間中ずぅっと幻想郷の妖怪にならなくちゃならないって力んでたけど、それ、本当に必要?」

「他の妖怪みたいにならなくちゃっていう花子ちゃんの気持ちは、私達にも分かるの。こんなだけど神様だからね、いろんな神様と比較されるともっとがんばらなくちゃって思ったりもするよ」

「夏はこんなだけどねぇ、姉さん」

 

 頬を膨らませる静葉を笑いつつ、穣子がカップの縁を人差し指でなぞる。

 花子は何も言えず、ただじっと続きを待った。二人の話から、何か大切なものをつかめるような気がしたのだ。

 紅茶を一口含み唇を潤してから、静葉が肩をすくめた。

 

「もっと自然に、力を抜いてやってみたらどうかな? 幻想郷にいたって花子ちゃんは花子ちゃんだし、幻想郷の妖怪にーなんて余計なこと考えるから、変に強張っちゃうんだと思うよ」

「うぅん、そうかなぁ」

「吸血鬼とか鬼とか、あのみょうちくりんな人間の魔法使いとも友達になったんでしょ? その上天狗にまでケンカ売ろうっていうんだから、花子ちゃんはもう立派な幻想郷の妖怪だよ」

「私もそう思う。がんばろうとか、こうならなくちゃなんて、いらないよ。ただ、『大丈夫、私はできる』って、自分を信じてあげて」

 

 静葉と穣子の言葉を受けて、花子は視線を落とした。自分を信じるという言葉が、胸の奥に突き刺さる。自分が弱くどうしようもない妖怪だと、だからこそ他の妖怪よりずっと努力をしなければならないと、ずっと思い込んできたのだ。

 もしも、自分に自信が持てるようになったら、自由に飛ぶことができるのだろうか。弾幕を飛ばしたり、こいしやフランドール、レミリア、萃香と一緒に肩を並べて歩くことができるかもしれない。今は、それがとても遠いことのように感じる。

 考え込んでいると、おもむろにミニスカートのポケットを探り、穣子が小さなブドウのブローチを取り出した。花子に手渡し、

 

「あげる。私が帽子につけてるのとおそろいの、友達になった印」

「え、でも、神様と友達なんて、私なんかじゃ……」

「私と友達になるの、嫌かな?」

「そ、そんなことないです! あの、じゃあ、ありがとうございます」

 

 遠慮がちに受け取って、花子はブローチをセーラー服の胸元につけた。少しだけ感じる重みが、安心感を与えてくれる。

 今度は静葉が立ち上がり、彼女のものと思われる机の引き出しから何かを取り出し、戻ってきた。

 

「じゃあ、私はこれをあげるね」

 

 差し出してくれたのは、彼女が頭につけているものと似た、それよりも少し大きい真っ赤な楓の髪飾りだった。

 もらってばかりで申し訳がないと思いつつ、素直に受け取って頭につける。輝く髪飾りを見て、静葉が微笑む。

 

「これで、私も花子ちゃんと友達。嬉しいな」

「ありがとうございます、大切にします」

 

 突然のプレゼントに戸惑いながらも、花子は二人の気遣いがとても嬉しかった。幼い花子にとって、新しい友達ができたという事実は、とても大きな心の支えになるのだ。

 一生の宝物にしようと心に決めていると、静葉が言った。

 

「花子ちゃん、もっと自分を大切にしてね。力が弱いとか、空が飛べないとか、そんなことで自分を蔑まないで。私も穣子も、花子ちゃんを友達だって呼んだ人はみんな、あなたそのものが好きなんだからね」

「友達のためになんて、思わないで。もっと自由に、もっと広大に、もっと、花子ちゃん自身のために、空を飛びたいって思うの。そうしたら、あなたの中にある力は、きっと想いに答えてくれるから」

 

 ほんの数時間しか話していないというのに、花子のことをこんなにも理解してくれている姉妹に、花子は感動のあまり泣きそうになった。なんとか我慢して、強く頷く。

 花子の首肯に秋姉妹が微笑むと同時に、玄関のドアがノックされる。ノックの後に聞こえてきた声は、聞き覚えのあるどこか間延びした声だった。

 

「こんにちはぁ、花子来てますかぁー?」

 

 人様の家をノックしつつ脈絡もなく本題を切り出す人物など、花子はこいし以外に知らない。どうして花子のいる場所が分かったのか見当もつかないが、なぜかこいしなら簡単に見つけられても仕方がないと納得できてしまう。

 もう、迎えが来てしまった。短い付き合いであったが、静葉や穣子と別れることに寂しさを覚える。彼女らが神であることを忘れてしまうほど、二人と話をするのが楽しかったのだ。

 何か、二人にお返しできるものはないだろうか。かばんをいつもの川原に置いてきてしまったことを悔やみつつポケットを探り、小さな感触を覚える。

 ポケットから出された花子の手には、赤とオレンジの模様が入ったビー玉が二つ、握られていた。宝物とまではいえないが、花子にとってはお守りのようなものだ。

 

「こ、これ。こんなものしかないですけど」

 

 一つずつ、穣子と静葉に渡す。それは本当に小さくて、二人からもらった綺麗な飾りに比べればいかにも安っぽいものであったが、秋姉妹は大事そうに受け取ってくれた。

 静葉は赤の、穣子はオレンジのビー玉をそれぞれ両手で包み、

 

「ありがとう、すごく綺麗だね」

「宝物にするよ。ずっと持ってるから」

 

 嬉しかった。二人と宝物を共有できたという喜びは、花子にとってとても大きなものだった。

 遠慮のないノックが次第に大きくなっていく。人の家を訪ねたことがないのだろうかと心配になるほど、こいしが力を込めているのだ。

 

「花子ぉー! いないのー!?」

 

 いなかったらどうするのだと思ったが、これ以上返事をしなければドアが壊れかねない。

 

「い、いるよ! いるから外で待ってて!」

「はぁーやくぅー。もうすぐおゆはんだよー」

「まだ夕方だよ、もう」

 

 ぼやきながらも、わざわざ探しに来てくれたこいしを待たせるのは忍びない。

 花子は静葉と穣子に向かって、丁寧にお辞儀をした。

 

「それじゃ、私行きます。お世話になりました。柿とお茶、おいしかったです」

 

 頭を上げると、姉妹が少しだけ寂しそうに笑っていた。秋まで静かに暮らしているのだろう二人にとっても、花子と過ごした時はとても新鮮だったのだ。

 穣子と静葉は揃って胸元で小さく手を振り、

 

「がんばるんだよ。またいつでも遊びに来てね」

「次に会う時まで、元気でね、花子ちゃん」

 

 最後にもう一度小さく礼をして、花子はドアへと向かう。

 振り返ることはしなかったが、秋の姉妹が最後まで見送ってくれているだろうことは、見もせずに分かる。

 ドアを開けると、こいしが腰に両手を当てて、むっつりと膨れていた。

 

「遅いよぉー」

「も、元はといえばこいしちゃんが手を放したからなのに……」

「まぁいいや、早く帰ろ。萃香さんも、お酒呑みながら待ちくたびれてるよ」

 

 どうやら、瓢箪は見つかったらしい。萃香ならば能力で萃めればいいだけの話なのだが、結局地道に探したようだ。

 ひょいと花子を横抱きに抱え上げ、こいしが飛び上がる。彼女は大木の周りだけ秋になっていることに大して興味を示していない。

 遠のいていく大樹。生い茂る葉の間を抜けて上空に出る頃には、切り取られた秋の景色は完全に隠れていた。

 神様とすら友達になれるのだ。そんな自分を、もっと好きになろう。そう自分に約束しながら、こいしの腕の中で、花子はそっと胸元のブローチに触れ、目を閉じて髪飾りの重みに身を任せた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 夕食を終え、今日できなかった訓練の補完をするために、花子は川辺の岩で神経を集中させていた。座禅は組まずに、立ち上がったままだ。

 空を飛ぶ自分をイメージすることがどうしてもできなかった理由を、秋姉妹が教えてくれた。幻想郷の妖怪たる自分を想像してしまったがために、今の花子と噛み合わなかったのだ。

 もっと楽しく、ありのままの自分で空を駆け回る。萃香やこいしと、レミリアやフランドールと、穣子や静葉と一緒に。

 飛びたい。空を飛んで、幻想郷を見てみたい。皆と同じ視線から、御手洗花子として。

 

「飛びたい――」

 

 呟き、妖力を操る。少しずつバランスを取るように、慎重に。地面から体が反発するようにイメージする。

 

 そして、とうとうその時はやってきた。

 

「わ……!」

 

 わずかに。本当に少しだけ。それでも、経験したことのない感覚を花子に与えるには十分だった。

 浮遊感というものならば、何度か味わったことがある。体が宙に浮く心地というやつだが、本物とはだいぶ違うのだなと、歓喜と混乱の中でぼんやりと考える。少なくとも、こいしや萃香に振り回された時とは大違いだ。

 背の低い花子の視線は、せいぜいが大人の腰あたりだった。それが今は、だいぶ高く感じられる。

 高さにして数十センチ程度だが、しかし紛れもなく、花子は飛んでいた。

 水面に浮かぶような心地で、川の上へと漂っていく。月の光を反射して輝く川を上から眺めるのも、花子にとって初めての経験だ。

 

「わわ、萃香さん! 飛んでる、私飛んじゃってる!」

「うんまぁ、見れば分かるよ」

 

 大した感動もなさそうな花子の師、萃香。だが、彼女が口元に浮かべる嬉しそうな笑みは嘘ではなさそうだ。隣に座るこいしが「おぉー」と小さな拍手をしてくれている。

 喜びのあまり、花子はふわりと空中に漂ったまま身を翻した。

 

「すごい、飛んでるんだ……! 私今、飛んでぶへぇ」

 

 飛行のイメージが崩れ、川へと真っ逆さまに落下する。浅くて助かったが、こいしには腹を抱えて笑われてしまった。

 もんぺもセーラー服もびしょ濡れになってしまったが、花子はとても上機嫌だ。

 それはそれは小さな前進だが、それでも花子にとっては大きな一歩。

 失笑しつつも手を伸ばし、萃香がよくやったと褒めてくれた。それに笑顔で頷いて、ふと川面に目を落とす。

 水面に映る自分の姿は暗く見にくかったが、月光に照らされたブローチと髪飾りだけが綺麗に輝き、まるで穣子と静葉が祝福してくれているように思えて――

 

「ありがとう、ございます」

 

 花子の呟きは、川に運ばれ森の中へと溶けていった。


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