バカとテストと召喚獣 ~とある男の物語~   作:カンベエ

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第八問 物理
以下の文章の(  )にただしい言葉を入れなさい。
『光は波であって(  )である。』

姫路瑞希の答え
『粒子』

教師のコメント
良く出来ました。

寿々屋義行の答え
『必殺技』

教師のコメント
気持ちはわかりますが不正解です。

秋山隼人の答え
『希望』

教師のコメント
秋山君は少し疲れているようですね、何かありましたら相談にのりますので一人で抱え込まないで下さい。


第八話 バカと誘拐と近づく仲

木下、姫路、島田と妹が攫われた。その報告を聞いた隼人は酷く取り乱していた。

 

「っ・・・・なんで俺はそこまで考えられなかったんだ・・・・」

 

明久への襲撃があったという話は雄二と康太から聞いていた。大まかな狙いが明久と雄二の試験召喚大会の棄権だと予想はつけてあった。だがここまで手段を選ばないとは思っても見なかった、全く関係の無い四人まで巻き込んで・・・・

 

「あの四人に何かあれば俺は・・・・・俺はっ!!」

「落ち着けよ隼人」

「落ち着けだと!?」

 

何とか隼人をなだめようとした義行に掴みかかる。

 

「俺がもっと気をつけていればこんな事にはならなかったかも知れないんだ!!」

「・・・・・にしろ・・・・」

「?」

「いい加減にしろこのアホが!!!」

 

一喝、普段見ることのない義行の剣幕に気圧される隼人。

 

「ここであーだこーだ言ってたって始まらねぇってなぁ俺や明久だってわかる事だ!お前が次にしなけりゃならねぇのは何だ!?」

「・・・・・・・」

 

急速に頭の中が冷えていく、今まで見えなかった事が見えてきた。

 

「・・・・スマン、義行」

「へっ、悪いと思うなら今夜はステーキだな。分厚いの」

「分かった」

「え?マジで?」

 

半分冗談で言った要求がまさか通るとは思いもよらなかった義行は素っ頓狂な声をあげる。

 

「康太はいるか!」

「・・・・(すっ)」

「四人が連れて行かれた場所は分かるか?」

「・・・・二丁目のカラオケBOX」

「分かった、明久、義行、康太と亮とFFF数名付いて来い!」

『えー』

 

FFF団のメンツはそれはちょっと・・・・な表情をする。事情は知らないが四人を連れ去った不良たちは喧嘩やこういった荒事に慣れている雰囲気があったのだ、進んで関わろうなどと思える訳が無い。

 

「お前ら良いのか?木下や姫路、島田姉妹の好感度をあげるチャンスなんだぞ?」

『え?』

 

ここで沈黙を保っていた雄二からの援護が入る。

 

「突然不良に誘拐されて、何をされるか分からなくて怖くて、それはもう泣きそうなぐらいだ」

『・・・・(想像中)』

「そこに颯爽と現れて助けてくれた男子の事を、彼女らはどう思う?そう・・・・助けてくれてありがとう、と涙目で言ってくれるわけだ。しかももしかしたら『あれ?あの人ちょっとかっこいいかも』ってなるわけだ」

『!!!』

「それに女子を誘拐してあーんな事やこーんな事をしようという輩を放置出来るのか?異端審問会は」

『そうだ・・・・その通りだ!!』

 

バサッとお揃いの紫のかぶりものを纏うFFFの連中。

 

「女子たちを救い出し異端者に制裁を加えるのだ!!」

『うぃいいいいいいいい!!!』

 

FFF会長の横溝の号令で一気に士気が上がるFFF。

 

「とは言えこの人数で行けばバレる、横溝。腕っ節が良い方の奴と接客経験のある奴を合わせ三人だ」

『イエス、マム!!』

「すまない雄二、助かった」

「気にすんなって、こっちは俺と三宮、浦辺で上手くやっておく」

「恩に着る」

 

教室を出て廊下を歩き始めた隼人は、無意識に、その名を呟いた。

 

「・・・・木下・・・・」

 

―街中のカラオケ店

 

「すまないが此処に女子四名を連れた男たちは来ているか?」

「ええ、来ていますよ」

「部屋番号は」

「109です」

「そうか・・・・あんがと・・・・よっ!!」

 

イキナリ店員を殴り倒す隼人。

 

『えぇええええ!!?』

 

明久、義行、亮、康太、横溝、近藤、藤堂らが驚きの声をあげる。

 

「何で殴り倒すのさ!?」

「コイツもグルだ、そのまんまだったら援護呼ばれてたぜ」

「どうして分かるんだよ」

「真昼間に、制服着た女子三人と小学生を連れた不良連中が入っていったのにコイツは平然と部屋ぁ教えやがった、脅されているわけでも何でもねぇ、仲間だからさ」

『成程』

「さて、康太と藤堂は店員のフリして潜入しとけ。近藤、横溝はコイツを縛り上げて見張っとけ。明久、義行、亮、行くぞ」

 

―109号室

盗聴器を付けた康太と藤堂が潜入に成功して、隼人、明久、義行、亮は隙を見計らって待機していた。

 

『替えの灰皿をお持ちしました』

『おう、ご苦労さん』

『ってかよ、こんなんで本当に来るのかよ?』

『さぁな、坂本に吉井と秋山っつったか?』

『まぁ来なかったら来なかったでコイツラで遊ぶだけだけどな』

『はははははははははっ』

 

「っ・・・・アイツらぁ・・・・」

「落ち着け明久、まだだ」

「そうだ、もう少し待てって」

 

飛び出しかけた明久を、義行と亮が抑える。

 

『あの、葉月ちゃんを離して私たちも返して下さい!』

『アンタたち分かってるんでしょうね?誘拐よ?バレたら一発で捕まるわよ?』

『ウルッセぇな!!オイ!コイツにちょっと痛い目見せてやれ!!』

『嫌っ!ちょっと離して!!』

『顔も良いし体も悪かねぇな・・・・』

『いや・・・・・助けて・・・・・』

『誰も来やしねーよ、来てもボコボコにするけどな!』

『助けて・・・・・秋山ぁあ!!!』

 

「もう我慢出来ない!!」

「落ち着けって言ってんだろうが!!」

「そうだ!ここで出たら作戦が・・・・」

 

ドゴンッ

 

『はっ!?』

 

金属がひしゃげる音に、思わずそちらを向く明久、義行、亮。隼人が前蹴りで、思いっきり扉を蹴り開けていた。

 

「・・・・・・」

「何だテメェ、こっちは今から大人の時間なんだよ」

 

歩み寄ってきて隼人の胸ぐらを掴む不良。

 

「・・・・せ」

「あ?」

 

隼人の呟きを聞き取れなかったのか?顔をしかめる不良。

 

「死にさらせ!!」

「おごっ!?」

 

不良のみぞおちに突き刺さる隼人の拳、ほぼゼロ距離なのに続けて繰り出される拳で不良の体が浮き上がる。

 

「もう一丁!!」

「――――――っ!!?」

 

金的への容赦無い蹴りで、白目を向いて悶絶する。

 

「テメェ何者だ!!」

「・・・・人を潰したいんならその面ぐらい覚えとけ」

「まさか・・・・こいつが秋山!?」

「へっ、飛んで火にいるなんとやらだ!」

「・・・・すまないな、木下。遅れてしまった。他も・・・・取り敢えず無事か」

 

ゴキッと首を鳴らせばボクシングとは似ているようで少しちがった構えを取る。

 

「テメェら・・・・無事に帰れると思うな!!」

 

―五分後

一方的な展開だった、一対十という戦いだったにも関わらず、隼人はほとんど傷を負わずに戦い抜いた。そして一瞬気後れしていた明久、義行、亮と潜入していた康太、藤堂によりこちら側はほとんど無傷で終わった。

 

「姫路さん!無事だった!?」

「島田、妹、無事か!?」

「・・・・木下、無事で良かったよ」

『・・・・あれ?俺らは?』

 

姫路、島田姉妹に抱きつかれる明久と義行、そして木下を宥める隼人。総スルーされた他のメンツはションボリとしながら不良たちをふん縛っていく。

 

「・・・・スマンが戻っててくれ、ちょっと疲れた」

「大丈夫?どっか怪我した?」

「・・・・分かった、戻ろうぜ」

「え?でも・・・・」

「ほらほら行った行った」

 

義行に促されて全員が出て行くとズルズルと壁に背を預け、床に座り込む隼人。

 

「・・・・情けない・・・・」

 

ズキリと痛む背中、ぬるりとした感触。手を濡らすは赤。

 

「・・・・木下」

 

ジャり、と足音がする。そこには木下がいた。

 

「秋山・・・・その血・・・・」

「・・・・・情け無い事だ、刺された事に後から気づくとは・・・・」

「情けなくなんか無い」

 

隼人の傷口に、ハンカチをあてがいながら木下が呟く。

 

「秋山は危険を顧みず私たちを助けに来てくれた、だから情けなくなんかない」

「・・・・木下・・・・」

「優子」

「?」

「私も・・・・隼人って呼ぶから、優子って呼んで」

「・・・・分かった、優子」

 

フラフラと立ち上がる隼人を支える優子。

 

「ほら、病院行きましょう」

「そうだな・・・・」

 

隼人を支えて歩く優子、不思議とその姿に違和感はなかったという。


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